プラズマクラスター・ナノイー・ストリーマ・ウイルスウォッシャー

     空気清浄機の付加機能のナゾ      02.20.2011 



  マイナスイオンは無意味であると本HPで主張していたのが、2000年から2002年である。その後、メディアも、マイナスイオンは無意味のようだという記事を書き、結果として、かなり下火になったように思っていたが、実は、そうでもない状況も残っているらしい。

 ごく最近発見したのは、九州にある某工業大学教授が、マイナスイオンを未だに布教していることだった。工学系の大学教授がマイナスイオンを信じるとは、一体何者、と驚いた次第。内容は、自動車の燃費向上。Googleで探していただければ、どのようなものか見つかるでしょう。

 実は、燃費向上ほど主観的なものはない。燃費向上グッズを使うと、人間、そのような運転をしてしまう、のが普通らしい。また、そうしないと高価な買い物だから、自らを納得させることもできない。

 マイナスイオンによる燃費向上については、2008年2月に、マイナスイオン等による「自動車の燃費向上グッズ」は効果が無いとして、業者19社が公正取引委員会によって排除命令を受けているのだ。

 Webを探してみると、「正直なマイナスイオン商売(?)」をやっている業者もいるので、大変面白い。一度、ご覧いただきたい。
http://www.nenpi-ion.com/

 大体、ハイブリッド車のように、大変な苦労をして燃費を向上させているのが現状だというのに、マイナスイオンなどという実在すら怪しいもので、燃費が簡単に向上するなら、すべての自動車メーカーが採用しているはずだということに気づかない。あるいは、気づいていても予算や寄付金の獲得上の理由などで無視をしてしまう自動車工学を専門とする教授が居ること自体が、驚愕すべきことである。

 この教授が関与する製品も、上述の「正直なマイナスイオン商売」の製品と似ていて、やはり、放射線を出す物質のようである。

 さてさて、そろそろ本題である。大手の家電メーカーは、さすがに、マイナスイオンを称する製品を売らなくなった。しかし、名称だけからでは正体が分からないものが、色々と健在である。

 不思議なことに、それらの正体不明が勢揃いをしている製品が、空気清浄機なのである。その理由の解析は最後に行ってみたい。



C先生:空気清浄機その2の第二部。プラズマクラスター、ナノイー、ストリーマ、ウイルスウォッシャーの正体を探るのが究極の目的。しかし、詳細が記述されている資料が少ないのが難点だ。

A君:充分な記述は無いのですが、資料は、各メーカーのHPということになります。

◆プラズマクラスター シャープ
http://www.sharp.co.jp/pcig/

技術的な説明
http://www.sharp-ssp.co.jp/pci/index.html

有効性の根拠の一例
http://home.hiroshima-u.ac.jp/mbiotech/ono_lab/image/sharp.pdf


◆ナノイー
http://panasonic.jp/nanoe/

技術的な説明
http://panasonic.jp/nanoe/about/mechanism.html

有効性の根拠の例
http://panasonic.jp/nanoe/can/index.html


◆ストリーマ
http://www.daikinaircon.com/ca/why/streamer/

技術的な説明
http://www.daikinaircon.com/ca/why/streamer/sikumi.html?ID=ca_why_streamer_index

有効性の根拠の例
http://www.daikinaircon.com/ca/why/streamer/


◆ウイルスウォッシャー
http://jp.sanyo.com/vw/mechanism/index.html

技術的な説明
http://jp.sanyo.com/vw/mechanism/mechanism01.html#point1

有効性の根拠の例
http://jp.sanyo.com/vw/mechanism/mechanism02.html#point1


C先生:これらのモノの実体などを検討する前に、なぜ、われわれがマイナスイオンをニセ科学だと判定しているか、その理由を再度述べた上で、その判定基準がこれらのモノをどう判断できるかを検討しよう。

A君:昔使っていたパワポのファイルを少々手直ししたものを示しつつやります。論点は非常に単純で、
(論点1)量的に説明ができない
という点と、もう一つは、
(論点2)寿命や活性の点からも説明が難しいだろうという点。
 まず、マイナスイオンのイメージから



図1 こんなものかと想像される。これが本当に活性が高い物質なのか。さらに、このようなモノは、寿命は秒オーダーとかなり短いはず。それが部屋の隅まで届くというのなら、別の物質ではないか。(論点2)



図2 量の問題。空気という気体であっても、その中に含まれる分子の量は極めて多い。そこに、数千から数万個程度の数のマイナスイオンが存在していたとしても、何も起きないだろう。まるで中規模のダム湖に目薬を1滴垂らした程度の濃度でしかない。(論点1)



図3 マイナスイオンドライヤーは、髪の毛をすべすべにするというが、それはオゾン水が効いているのではないか。オゾンの発生量は、マイナスイオンの50万倍もある。活性の高い分子として知られているオゾンが50万倍もあるのに、なぜ、マイナスイオンの効果だと断定できるのか。(論点1)



図4 シックハウスにも効く。脱臭にも効くと言うが、原因物質の分子の数を計算してみると、マイナスイオンがその分子を破壊するとしたら、20年ぐらい掛かる計算になる。しかし、同時に放出されるオゾンが脱臭作用に効いているとすれば、20分ぐらいとなって、実験値に合う。(論点1)


C先生:要するに、何か実際に効果があるとしたら、それをになっているのはマイナスイオンの50万倍も発生している物質であるオゾンなのではないか。

A君:マイナスイオンなどが、ウイルスや臭い分子を攻撃している図がメーカーのHPなどでは描かれていますが、あれは単なる想像図であって、誰も確認をした訳ではない。

B君:さらに言えば、「実はオゾンが効いている」と主張すると、「オゾンは活性酸素なので有害なのでは」、という反応が出て商品が売れない。そこでマイナスイオンという言葉を発明したのだ、というのが我々の主張だった。

C先生:大体準備はできた。それでは、順次検討を進めたい。

A君:ではシャープのプラズマクラスターイオンから。
http://www.sharp-ssp.co.jp/pci/index.html
+(プラス)と−(マイナス)のイオンで空中除菌するのは、シャープの「プラズマクラスター」技術だけ。
 これは、完全な想像図だと思われます。カビ菌やウイルスの表面に付着したときのみ、どうして非常に酸化力の強いOHラジカルに変化するのか、その証明をして貰いたい。

B君:プラズマクラスター発生の仕組を見ると、放電電極でプラズマを作って、イオンを作っているが、この方式だとオゾンが生成することが当然だと思われる。

A君:それにもっと不思議なのが、このようなプラスとマイナスの電荷を持った粒子がお互いに引きあうことなく空気中を漂うことができて、ウイルスや浮遊菌に選択的に付着すると、はじめて合体してOHラジカルができるという説明。

B君:普通に考えれば、プラスとマイナスの荷電粒子を同時に出すことは、合体して水に戻るので、効率を下げることでしかない。

A君:もともとプラズマクラスターイオンは、マイナスイオンとは同じではないということを主張するために意図的に作られたもので、想像では、プラスイオンも作る電極はあっても、そちらは余り動作していないのでは。

B君:要するに、プラスイオンも少々出してはいても、実のところは、昔ながらのマイナスイオンと呼ばれるものを放出しているだけなのではないだろうか、と推定できる。

A君:タバコの臭いを消すという主張もあるが、プラズマクラスターイオンが2万個/mlしかないので、臭いの分子をいくつ潰すのだろうか。やはり、オゾンが脱臭機能を示す主成分である可能性が非常に高い。

B君:シャープはせめて、プラズマクラスター生成装置が発生するオゾンの濃度ぐらいは発表すべきだと思う。

C先生:これまでの議論を聞いていると、プラズマクラスターイオンのかつてのマイナスイオンとの類似性は90%以上あるように思える。この程度のデバイスが、3000万台も普及したのは、この国に限らないが、やはり科学リテラシーの低さが原因だろう。そこをたくみに利用するのが、優れた営業担当者だということになるのか。

A君:次です。パナソニックのナノイー
http://panasonic.jp/nanoe/about/mechanism.html
 ナノイーは、やはり放電を使っているのですが、そこに水滴を介在させています。ペルチエ素子を使って電極を冷やし、その先端に空気中の水を結露させる。夏はかなり水が得られるでしょうが、冬の乾燥した状態だとなかなか水の量が得られないと思いますね。

B君:露点か。相対湿度が100%になる温度のこと。飽和水蒸気圧から計算すれば何か出そうだ。

A君:冬だとして、室温が20度、湿度が40%の室内を仮定。20度の飽和水蒸気圧は17.54mmHg。40%は、約7mmHg。これが飽和する温度は6度。ということは、6度以下に電極の温度を下げることができれば、そこに結露します。しかし、できれば、0度近辺まで冷やした方が良いでしょうね。

B君:そこに電界を掛ける。記述が無いのだが、恐らく5〜10kV程度の電圧ではないだろうか。すると、水がその電圧で引っ張られて、細かい水滴になる。

A君:さて、パナソニックは、できた水滴がどのようなものだと考えているか。それが、
http://panasonic.jp/nanoe/about/point.html
に書かれている。水滴のサイズは、スチームの10億分の1とある。

B君:スチームとは、本来は水蒸気という気体を意味する単語なので、そのサイズは水分子のサイズと考えるのが普通。

A君:水蒸気と湯気の区別が付いていないのでは。

B君:この説明書を作ったのは、一体誰なのだろうか。ここで述べている「スチーム」の実体は微小な水滴であることが確実。しかし、水滴と書くと、有難味がなくて、やはり売れないのだろうか。スチームなら有り難いというのも妙な話だが。

A君:微小な水滴といっても、空気中を浮遊する水滴であれば、やはり数μm程度のサイズでしょうか。湯気のサイズはこんなものだと思いますが。

B君:ということなので、直径5μmと仮定するか。直径5μmの水滴の重さはいくらだろう。

A君:重さは約0.2μg。その10億分の1とは、9桁下だから、μ、n(ナノ)、p(ピコ)、f(フェムト)。0.2fgということになる。

B君:水の1モルが18gで、6×10^23個の分子からなるので、0.2fgの水の分子数は、数100万個。通常のマイナスイオンの1000倍の水分だという表現があるので、パナソニックとしては、マイナスイオンは、数1000個の水分子を含むと考えているようだ。

A君:有効成分はやはりOHラジカルだそうだ。その発生量が毎秒4800億個ということなのだが、それをESRで測定したとのこと。どうやって測ったのだろうか。

B君:ナノイーのページは、どうも科学的な厳密性を重視していない。まあ広告なのだから当然だが。

A君:もしも微生物を不活化することに有効であるとするのならば、この微小な水滴がオゾン水である場合のように思いますね。

B君:いや。電気分解が起きて、次亜塩素酸が生成していて、その分解過程で、OHラジカルが生成しているというメカニズムも無いとは言えない。

A君:しかし、放電するほどの電圧ですからね。可能性は低いのでは。

B君:いずれにしても、パナソニックは、その実体をもっと説明すべきだ。危険かどうかの判断も付かない。

A君:もしもオゾン水であれば、それが微生物の不活化効果があることは既知ですから、効果があっても当然。次亜塩素酸水の場合でも同様。もし、それ以外であれば、どのような物質であるのか、科学的に充分な説明を要しますね。

B君:水中のオゾン濃度が1ppm程度で、微生物を不活化するようだ。

A君:ナノイーがオゾン水である可能性はどのぐらいあるのでしょうか。

B君:作り方から言って、可能性はあるが、確実だとは言いにくい。次亜塩素酸水である可能性よりは高いかもしれないが。

C先生:メーカーは、もっとキチンとした説明ができないのだろうか。それで通用してしまうのは、大変不思議な社会だと思うのだ。殺菌力があるということは、農薬だって医薬品だって同じ。殺菌のために農薬を使っているというと、それは怖い話だと思うのに、殺菌のためにナノイーを使うのは怖くないのはなぜなのだろう。

A君:次がダイキンのストリーマ
http://www.daikinaircon.com/ca/why/streamer/index.html?ID=ca_why_bio_index
このストリーマというのはある種の放電のこと。

B君:短い繊維状の形での放電を言う。

A君:価格.comなどでストリーマを搭載した空気清浄機を使っている人が、オゾンの臭いがすると言っていますから、オゾンが発生しているのでしょう。

B君:放電しているので、確実にオゾンは発生しているだろう。

A君:ストリーマ技術を、オゾンを発生させるために使っている。これはほぼ確実だと言って良いでしょうね。

B君:だとすると、微生物の不活化などに効果があるのは当然とも言えるので、もしもオゾンが活性酸素の一種であるということが気にならないで、微生物が怖いのならば、ストリーマ搭載の機器の方が、プラズマクラスターやナノイーよりも確実な選択肢だということになる。

C先生:比較的簡単に結論が出たな。それでは最後の三洋のウイルスウォッシャー

A君:これは、水道水の電気分解ですね。水道水には塩素が含まれている。どのような形で含まれているのか。塩素を消毒用に加えると、塩酸と次亜塩素酸になる。次亜塩素酸は、徐々に分解して、塩酸になる。すなわち、水道水には、非常に薄い塩酸が含まれている。

B君:塩酸の塩素イオンClが電気分解されると、Cl2なる塩素分子になる。これがまた水に溶けるので、その際、次亜塩素酸と塩酸が生成する。

A君:次亜塩素酸はHClOという分子ですが、分解するときに、やはり原子状酸素を放出しますから、オゾンと同じく、OHラジカルになって、これは殺菌力がある。

B君:水道水を消毒して機構と同じなのだからあたり前。

A君:その量もウイルスウォッシャーのページでは、8000兆個/mlと述べている。ただし、水分中の残留塩素濃度が1mg/Lのときとしていますが。

B君:しかし、非常に妙なのは、瞬時に効くOHラジカル、持続性の高い次亜塩素酸と区別して記述しているが、次亜塩素酸も結局のところ、OHラジカルになるのが、殺菌のメカニズムなのだけど。

A君:厳密に言うと、誰も分かってくれない。どこまで脚色した言い方が許されるのか。これがこのような広報を行う人の仕事みたいなものですからね。

B君:三洋は、高濃度活性酸素が効くと書いてある。活性酸素を空気中に放出しても気にならない消費者が多いということなのだろうか。

A君:余り考えていないのかもしれない。

C先生:いずれにしても、三洋のウイルスウォッシャーは、生成する次亜塩素酸の濃度にもよるのだが、微生物の不活化に効いても不思議ではない。

A君:まあ、水道水と同じだと思えば良い。

B君:汲み立ての水道水を霧状にして噴霧することでも充分に効くのかもしれない。

A君:それも多分事実。加湿するだけで、インフルエンザウイルスならば充分という我々の結論なのですから。

B君:マイナスイオンが全盛のときには、そのような加湿器が滝の快適さを売り物にして販売されていた。ところが、水槽を常時キレイにしていないと、レジオネラ菌が発生する可能性があって、メーカーは製造を止めた。

A君:レジオネラ菌は、どうも特殊な微生物で、他の細菌と共生しながら生存するようです。具体的には他の細菌が作ってくれた栄養素が無いと、自分一人では生存できない。その共生する細菌が、「ぬめり」の正体。このぬめりを除去しないと、レジオネラ菌が発生してしまう。

B君:24時間風呂にもレジオネラ菌が発生することで大問題になったが、風呂なのだから、ヒトが菌の栄養を持ち込むということなのだろう。

C先生:そろそろまとめで良いかもしれない。
 シャープのプラズマクラスターは、もっとも古典的なマイナスイオンの変形。何か効果があるとしたら、50万倍ぐらいも副生しているオゾンの作用。
 パナソニックのナノイーは、水滴がオゾン水もしくは次亜塩素酸水になっていれば、可能性があるが、それ以外だと効果がありそうなメカニズムが分からない。
 ダイキンのストリーマは、確実にオゾンの効果だと言える。
 三洋のウイルスウォッシャーは、大昔から知られている水道水を電気分解したときにできる次亜塩素酸水の殺菌力を使っている。
 メーカーは、良いという雰囲気ばかりを作っていて、もっと科学的な説明を心がけるべきだ。
 北里環境科学センターや、様々な大学での結果は出されているが、その再現性や実験条件の詳細を学会などで発表して、正当性が証明されたものだとは言えない。まして、きちんとした学術論文に耐えるほどのデータだとはとても言えない。なぜなら、本当の有効成分が何かが述べられていないからだ。以前のマイナスイオンの時代から、進化したとは言えるほどの状況ではない。

A君:それでは、最後に、なぜ、このようなモノが空気清浄機にフル装備になっているのか。そのナゾを議論しましょう。

B君:理由は簡単。前回の空気清浄機のところでも触れられているが、空気清浄機はその原価は公表できないぐらい低いものなのではないか。エアコンなどに比べれば、ボロモウケの商品なのだろう。低い原価をカモフラージュするために、色々な仕組が付いていることが重要。それには、できるだけコストが安くて、訳の分からないカタカナ語の装置が必要。

A君:付加機能をコスト的に見れば、ナノイーがちょっと高いかもしれませんが、他は単なる放電や電気分解だから、原価は100円から数100円程度でしょうか。これで付加価値を付けることが空気清浄機で儲ける方法になっている。

C先生:恐らく、そんな価格構造になっている。実売価格が4万円ぐらいの空気清浄機でも、重さは12kg。洗濯機も普通のものだと、実売5万5千円ぐらいのもので40kg。製品の価格は最後は重さで決まるようなところがある。空気清浄機は構造が単純で、使う材料も少ない。したがって、原価は低く、儲けの多い商品であることは確実だ。機能面でも差を付けるのが難しいこともあって、様々な付加価値で勝負ということになるのだろう。
 機能面でも差がないと表現したが、空気清浄機が必要不可欠という家庭内での状況は、これまで検討してきた結果からでは、ほとんど無いように思える。むしろ、加湿器などを適切に使うことが賢いように思う。
 要するに、空気清浄機はムード商品なのだろう。となると、やはり付加価値でどのようなムードを付加するか。メーカーはこれが勝負だと考えていても、全く不思議ではない。