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金沢大学シンポでの質疑・議論 02.01.2009 |
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1月31日、金沢大学の未来開拓研究公開シンポジウムが金沢駅前の石川県立音楽堂 http://www.ongakudo.pref.ishikawa.jp/ の邦楽ホールで行われた。 昨年6月、レスター・ブラウン氏と対談をした会場とどうも同じ場所だったようだ。 最初の特別講演を行ったが、話は、日本がどのような貢献をすべきか、という例の話である。 もうひとつの特別講演が、国連大学高等研究所石川金沢オペレーションユニットの所長、「あん・まくどなるど」さん。日本の農業についての講演だった。 その後、後述のようなプログラムで金沢大学の先生方の講演が行われた。特別講演では質問を受け付けなかったが、金沢大学の講演では質問を受け付けた。 午前中には、金沢大学の環境に関心のある先生方と2時間ほどの議論をする時間があった。 やはり、質問がでたり、また、議論をすると、それがなかなか面白い。何が面白かったか、そのご紹介。 C先生:まずは、全体像を。 A君:まず、午後の金沢大学未来開拓研究公開公開シンポジウムのプログラムです。 特別講演1:「地球環境の危機回避への日本の役割」安井至 特別講演2:「里山里海での環境保全型食料づくり」あん・まくどなるど氏 金沢大学教授陣による講演 講演1:「トキが舞う里山里海再生に向けて:能登半島教育研究フロンティア構想」 中村浩二教授 講演2:「環日本海域における土地・海・風の環:能登スーパーサイトが狙うもの」 岩坂泰信教授 講演3:「地球深部の謎に挑戦:海洋底をマントルまで掘り抜け」 荒井章司教授 講演4:「日本海の有機汚染に対する取り組み:国連環境計画北西太平洋地域海行動計画などとの国際協力研究」 川西琢也准教授 B君:能登半島という巨大な半島をもつ石川県。能登半島の面積は東京都の面積とほぼ同じということらしい。 A君:能登半島の人口は、となると、 人口 391千人(うち石川県区域335千人)(H12国調)となっています。 B君:東京都の人口を1200万人とすれば、40分の1ということか。 A君:もっともこの統計には、氷見市(富山県、総人口 52,689人(推計人口、2008年12月1日) )のような半島の付け根が入っているので、本当の半島の人口密度はもっと低いでしょう。 B君:また、日本海というかなり特殊な海に依存し、海の影響を受けている地域なので、日本海への思いも強い。 A君:今回の講演で、モホール計画 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB%E8%A8%88%E7%94%BB の後継計画ともいえる地球掘削船「ちきゅう」のプロジェクトの説明であった、荒井教授の講演を除くと、やはり「地域」と「環境」がキーワード。 B君:「ちきゅう」の計画は、余り知られていないと思われるのだが、日本が米国と協力しつつ推進しているフラッグシッププロジェクトの一つ。相当なお金を投入して、何をするのか、ときどきそれが問われるプロジェクトでもある。素粒子系の投資、カミオカンデや加速器はノーベル賞をいくつも取っていて学問的にも強いので、割合と評価されているのだが、これが学問としてどう評価されるのか。さらには、地震のメカニズム解明など、実利にどのように繋がるのか。船の建造費だけで600億円。 http://www.h4.dion.ne.jp/~jssf/text/doukousp/pdf/200807/0807_2627.pdf A君:予算などに関する質問は出ましたか。 C先生:こんな質疑応答が行われた。 質問1:マントルが浅いアフリカ大地溝帯をなぜ掘らないのか。海でなければなぜ駄目なのか。海だとしても、大西洋にも大地溝帯がある。なぜ大西洋を掘らないのか。 荒井先生:将来海になろうとしているところを掘っても、特殊なサンプルにしかならない。大西洋と太平洋の違いは、海洋としては太平洋がメジャー。太平洋を理解しないと、海を理解したことにならない。お金とエネルギーに余裕があるうちに、太平洋をやろうということ。 質問2:せっかく600億円もかけて船を作ったのだから、1年に1本掘れるのでは。 荒井先生の解答:いろいろな人の希望を聞いている。お金の要素が大きい。 A君:最初の質問は、極めて鋭いですね。 B君:本当だ。 C先生:1番目は地球科学的に鋭いが、実は、2番目も別の意味でなかなか鋭いのだ。船を建造することと、研究を遂行することが、予算の枠組みが違うみたいなのだ。だから、ある程度の競争的資金を取らないと、「ちきゅう」の活用ができない仕組みなのかもしれない。 荒井先生の話は、今回、以上の説明で終わりにしたい。他の金沢大学3名+あん・まくどなるどさんの話について、若干の説明と質問をざっとカバーしたい。 A君:中村浩二先生は、もともと生物学者で、里山里海の重要性と再生・維持を目的として様々な活動を行っているようで。 C先生:具体的には、能登半島に里山里海自然学校を開催したり、能登里山マイスター要請プログラム http://cr.lib.kanazawa-u.ac.jp/meister/ でリーダー人材の養成を目指したり、ということで活発に活動中。 A君:質問あるいは議論は? C先生:今回、具体的な目標として、トキが舞うような自然を再生したい、ということを掲げたので、それに関する質疑で、 質問:現時点の能登半島の自然を、今後、どのぐらい再生しなければ駄目なのか、といった質問があった。 中村先生の解答:すでに、十分に近いレベルになっている。佐渡島あるいは、新潟県と情報を交換しているが、現在の能登の環境は、すでにかえって良いのではないか。 A君:新潟は、とにかく、佐渡島よりも良いということですか。 C先生:トキは大きな赤松に営巣するが、赤松がどのぐらい残っているか、という観点では、能登の方が良い。また、餌になりうる小魚やドジョウはすでに再生している、との答えだった。トキよりも先に、豊岡市からコウノトリが来るかもしれない、ということも述べられた。 B君:豊岡市から輪島市は、直線距離で280km。これは日本海を越えればということで、そんな経路ではなく陸の上空を飛ぶと320km。 A君:渡り鳥でもあるコウノトリの能力をもってすれば、どうということのない距離かもしれません。 C先生:岩坂先生の風の環:能登スーパーサイトは、黄砂の国際研究が目的。最近の最大の関心事は黄砂に微生物が付着して、生きたまま日本まで来るかということだとのこと。岩坂先生は、元はと言えば気象学者。 A君:トリインフルエンザ関連ですかね。汚染物質が付いていることは、すでに常識ですが。 C先生:石炭由来の硫黄分が、黄砂に付着しているのは事実だという話があった。 B君:黄砂は日本海に落ちれば、そこでの栄養源になっているという主張もある。 C先生:それも、まあ、常識のうち。海洋の微量元素で何がもっとも不足しているか、と言われれば、それは鉄分。黄砂には鉄分が入っているのはまあ当然。しかし、どのぐらいの鉄分が溶けだすのか、など詳細は要検討だが。 A君:黄砂がもたらす有害物質は、硫黄分だけですか。 C先生:岩坂先生は、PAH(多環芳香族炭化水素、発がん性のある微量物質で、モノが燃えれば、多くの場合出る。車の排気ガスなどにも含まれる)に注目。 B君:有害性というと、いろいろと気になる人々が多いのでは。 C先生:質問があったのは、ところが原発関係だった。 質問:日本海の海水の現状に危惧している。日本の原発の60%が日本海にある。クリーンではあるが、温排水が出ている。日本の全電力の15%ぐらいの排熱が日本海に流れ込んでいる。対馬海流は深さ100〜200m。他の海峡も浅い。閉鎖性水域のような日本海だが、原発からの排熱が日本海の熱環境を変えないか。 岩坂先生の解答:現在、ヒートアイランドは極普通の言葉になった。これはあたり前になった。受け入れている。名古屋市の道路の被覆率と地面から出る水蒸気の量をしらべて、かなり影響が出るという論文を作って、発表しようとしたが、停年退職になってしまった。1980年の論文が死んだ。20年後にそんな概念が当たり前に受け入れられるようになった。 原発の排熱は局地的には大きな影響をもっているものと思われる。狭いところに捨てられている。外部の人間がその観測をすることを未だにできない。いろいろなことが分かるのではないか。気象学よりも微気象への影響は大きいのではないだろうか。水蒸気の発生量が相当なものなのではないか。農業とか漁業とかを原発の隣ではやらせて貰えない。重たい問題を抱えている。環境にストレスを与えるものができたとき、そして、疑問をもったときに、測定ができない。まだ切実なものとして取り上げられない。 A君:マイクロ気象への影響はあるだろう、ということで、日本海へのマクロな影響については、説明は無かった。 C先生:この質問に対して、最後に講演した川西先生が答えていた。 A君:川西先生は日本海の有機物汚染が講演のテーマだった。 C先生:まず日本海の海水の流れの説明。 日本海の重要性: 最深部3700m、平均1350m。しかし宗谷海峡は50m、間宮海峡も浅い、津軽140m、対馬海峡140m。 対馬海流から入ってくる。渦を巻いている。表層は、北の渦と南の渦がある。 深いところではどうなっているか。表層、中層、下層の3層。中層は、日本海北西部から沈む。下層水は、よくかきまぜられている水である。ウラジオストック沖から沈み込む。下層水の汚染は、北からの汚染を反映する。 日本海の汚染のレベルは、現状ではまだ問題だとは言えないが、PAHの汚染の状況などを見ると、北方からの汚染が入り込んでいるような状態だと推測されるので、今後とも、注意深い観測が必要。 A君:なるほど。 B君:質疑応答は? C先生:まずは、原発の排熱が日本海全体に与える影響について、岩坂先生への質問に答えて、 川西先生の解答:まず、ほとんど問題にならない数字のはずだ。地球システムの大きさが人工的な熱では影響は受けない。 A君:それは正しい。 B君:やはり、個人の感覚では、地球レベルのことになると分からないのだろう。 A君:ちょっと検討して見ますか。原発の出力を100万kWととして、面倒ですから、発電効率ゼロですべての熱を日本海に流したとする。 一方、太陽が地球に与える熱量は、ざっくり1kW/平方米だとして、1日8時間の日照があったとする。 2000m×2000mの面積に1日に降り注ぐ太陽熱のパワーは、晴れているとしたら、まあ、100万kWになる。雨の日もあるので、3km×3kmの海が受ける太陽熱のパワーが100万kWと言った方が正しいでしょう。 いずれにしても、原発1基の排熱は、3km×3km≒10平方キロの海面が受ける太陽熱と同じぐらい。 日本海の面積は、130万平方キロ。すなわち、130万円と10円を比較することになる。まあ、原発が1300基で1%になるから、このぐらいになると影響が出るのでは。 B君:地球温暖化が、人間活動による発熱の影響だと思っている人も未だに多い。 A君:地球温暖化とは何か、その回答ができないと大学入試に合格できないようにしないと、この国では知識が広まらない。 B君:地球環境を考えると、さまざまなことが人々の直感を超すようだ。 最近、面白い質問を発見した。「人類の人口がますます増大してゆくと、地球全体の重量も増してゆくのでしょうか? 」 A君:質量保存の法則を知っていれば、直観が使える。 B君:エネルギー保存の法則を知っていれば、地球温暖化が理解できる。 C先生:まあ、そんなもっとも基礎的な物理法則を知っている人は何人いるのだろうか。 それはそれとして、ここまで紹介しなかった「あん・まくどなるど」先生の話。能登半島における環境適合型農業の話だった。なかなか面白かった。最終結論として、「限界集落、集落崩壊が確実に起き始めている。そして、最後には、無人の農業が必要になるのではないか」、とのこと。これをどう思う。 A君:これは、現在整理しつつある本HPの農業への提言に係ることですね。 B君:われわれの主張は、 (1)日本特産の高付加価値農業 (2)お裾分け型農業 (3)超自動化農業ロボット この3つを適切な時間スケジュールで、バランスよく行うことが日本農業の再生策。 A君:(2)のお裾分け型農業は、自家消費として自然農業・有機農業などを行って、そのお裾分けを都市の数10軒に対して行う。お互いに顔が見える農業。 (3)の主張は日本の得意芸である全自動ロボットを農業目的に特化させ、地形情報などを全部持たせ、当然GPSを装備することによって労働力を極限まで少なくした農業を成立させて、付加価値の低い飼料やエネルギー作物用に使う。 しかし、このような方向性は、環境関係者によってなかなか受け入れられない。 B君:まあその通り。それも一理あって、これまでの高度に改変された人工世界が、例えば、金融工学に象徴されるのだが、人々の生活に悪影響を与えた。だから、人工的な農業は止めて、自然農業の「自然」によって付加価値をつけるのが正しい方向だという主張は受け入れやすい。 C先生:確かに、その通り。自然・有機農業によって、高付加価値を得るのが一つの方向性ではある。しかし、日本の農業人口を増加させ、休耕田の問題などを解決するために、引退した年齢層に自然農業をやらせるというシナリオは実質上無理。 A君:まず、一般論ですが、自給率そのものは、それほど大きな問題ではない、と思いますね。そして、これも一般論ですが、もしも国内の状況だけを考えれば、飼料やエネルギー作物など、品質はある程度どうでも良いものは、水資源の有効活用という面からは輸入した方が良い。 B君:確かに、そうも言える。水そのものは輸出入には適さない。トウモロコシは水の負荷が大きいから、水が無い国は自国生産を狙うよりは、穀物類を輸入をした方が良い。 C先生:ところが世界的な見地に立つと、大問題がある。水の無い国である米国がそのトウモロコシの大産地だということだ。米国中西部のトウモロコシ生産は、化石水と呼ばれる数1000年前に溜まった水を使っている。そして、枯渇したらもう再生不能な地下水なのだ。 A君:オガララ帯水層と呼ばれますが、まあ、100年以内でダメになるでしょう。 B君:となると、世界的な食糧供給危機。 C先生:100年後に、人口が減らないと困る理由の一つがそのアメリカの帯水層の状況だ。 A君:だから、一般論としてではなくて、世界的状況、特に、米国農業と日本の飼料生産といった限定的な状況を考えると、持続可能性という観点から、日本は水がある程度活用できるのだから、米国からトウモロコシを輸入すべきではない。自国でできるなら作るべきだ、となる。 B君:しかし、米国の機械化農業によって作られる作物の価格と競争するには、人件費を掛けることは不可能。となると、大規模農業をやるか、超自動化しかない。日本で前者が可能なのは限られた地域であって、どうしても、超自動化農業が選択肢になる。 C先生:午前中の金沢大学の先生方との議論で、どうしても噛み合わない先生が居て、ひとつは、「高付加価値産業」というのは、良くないという意見なのだ。「高付加価値」という考え方自体が、非環境的だということのようだった。 A君:よくあります。「自然回帰して、そして、自然の範囲の中での生活」を目標とすべきだ、という主張ですが、それは米国なら成立するが、日本だと成立しない。現在、人口が減少しつつあるとはいうものの、21世紀内には、成立しないでしょう。 B君:時間軸の問題がいつでもある。そんな自然回帰をゴールとすることが絶対に非現実的だとは言えないが、少なくとも、エネルギーを輸入する国日本にとっては、2100年までは無理だろう。 C先生:「超自動化農業」も、別の観点から反対された先生がいた。それは、「すでにできている。今さら何を」、ということだった。その先生は、農家出身で、実際に農業を実践中とのこと。しかし、良く話を聞くと、「これまでの農地をどんどんと拡大して、自動化を可能な状態にしてきたから、今や、田圃に足を入れなくても、農業ができる」、とのこと。 A君:われわれの主張は、「そんな恵まれた農地ばかりではない。能登には、日本棚田100選にも選ばれたし、一大観光名所になっている、「白米千枚田(しろよね せんまいだ)」が輪島の近くにある。 http://www.wajimaonsen.com/miru/010/post_1.html こんなところでも、自動化農業ができるのが、超自動化農業ロボット」。 C先生:結局のところ、今後、人口の減少と超高齢化を考えると、このような過疎地域では、「超自動化農業」が必要になるケースが出てくる。2025年にはそうなる可能性が強いのではないか、ということで意見が一致した。 A君:やはり、時間が大きな要素ですね。いつそれが必要になって、そして、いつまでにそれを準備すべきか、ということ。 B君:それはいつでも真理だ。ゴールばかりを述べるのではなくて、それをいつまでに、どのようなステップで進行させるのか、具体的なロードマップを議論すべきだ。 C先生:というようなことで、金沢大学のシンポジウムならびに、午前中の議論は、なかなか面白かった。最後に、世話人の先生と講演者のお一人と刺身をはさんでビールを飲みつつ話をする機会があった。お互いに「おもしろかった」、という感想だったので、大変に良かったと思う。関係者の方々にはお世話になりました。 |
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