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  広告:「環境科学」の本 03.30.2004



「環境科学 人間と地球の調和をめざして」
 日本化学会編
東京化学同人、ISBN4-8079-0579-1 2000円
              
 この本は、恐らくこれまで無かった環境の本である。なぜならば、私自身もこの本を作るワーキンググループの一員であったが、その目標が「他にない本を作ろう」だったからである。そして、その目標は、大体達成できたように思える。

 まず、各章のタイトルから普通ではない。
1.どのような豊かさを求めるか
2.人間はどこまで長生きしたいか
3.人間と生物は共生できるか
4.人口を支える水と食糧は得られるか
5.どこまできれいな環境が欲しいか
6.環境の負の遺産は修復できるか
7.事業者による自主管理で環境は守られるか
8.将来世代にどこまで地下資源を残しておくか
9.リサイクルは地球を救えるか
10.ゼロエミッションは達成できるか
11.地球環境問題は解決できるか

 そして、各章の最後の節は、章のタイトルの大体同じになっている。

 以上の章は、9名の著者が執筆を担当している。その名簿を見ると、8名が工学博士である。環境「科学」という割には、工学的な見地をもって環境問題を眺め、そして、科学的技術的な見地から、解決の可能性を検討することを意図した本であることになるだろう。

 この本は、第一の読者として、理系の大学1、2年生を対象にした。しかし、出来上がってみると、実は、理系の大学1、2年生にはいささか難しいかもしれない。なぜならば、この本を理解するには、ある程度人生経験があった方が良いように思えるからである。むしろ、理系の大学1年生には、是非とも、姉妹書である「暮らしと環境科学」を読んでもらって、むしろ、文系の大学4年生ぐらいに、この本を読んでもらうと良いかもしれない。特に、メディアへの就職を希望している学生、公務員を狙っている学生には、是非とも読んでもらいたい。勿論、理系の4年生には、必須の環境本と言いたい。

 しかし、それよりも何よりも、実は、本当の意味で読んでもらいたい人がいる。いわゆる環境を職業としている人々である。あるいは、環境NGOや環境保全活動をしている人々である。なぜならば、環境問題の解決を目指すということは、人間がどのように生きるかを深く考えるという行為と同義であることが、この本の全体を通しての主張だからである。大体、第一章の最後の結論に近いところで、「われわれが求めるものは本物で、これを持つと心も豊かになる」、などと書かれた本は、余り見たことがない。

 まあ、そうは言うものの、本当に読んで欲しい人(独り言参照)は買ってくれないだろう。それに、価格設定に関与しなかったのだが、2000円という価格は、少々高いような気がする。もっと印刷部数を増やしても売れたと思うから、1600円ぐらいまで下げたかった。しかし、是非ともお読みいただきたい。下記の著者に交渉すると、著者価格で入手できるかも知れません。

 以下独り言。「ダイオキシン猛毒派」、「環境ホルモンで人類滅亡派」、「毒物で市民恐喝派」、「有機野菜で健康派」、「健康で150歳まで生きよう派」、「無害環境追求派」、「無菌、抗菌絶対奨励派」、「発がん物質完全排除派」、「放射線は絶対に害だ派」、「人間の感受性はそんなものではない派」、「マイナスイオン信奉派」、「石鹸万能・中性洗剤排除派」、「ゼロリスク探求派」、「企業性悪説全面肯定派」、「無条件ドイツ信奉派」、「スウェーデン無害化社会万歳派」、「環境魔女と環境天使の環境企業派」、「日本にもRoHSが必要という企業派」、「塩ビ無条件排除派」、「リサイクル万能派」、「リサイクルしてはいけない派」などの人々と、さらに、「環境完全無関心派」の人々は、どうしても読んでくれないだろうなあ。こんな人々を撲滅するための本なのに。


付録:著者、あいうえお順

浦野紘平  横浜国立大学大学院環境情報研究院 教授、工学博士
蒲生昌志  産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センターチーム長 工学博士
北野 大  淑徳大学国際コミュニケーション学部 教授、工学博士
五箇公一  国立環境研究所化学物質環境リスク研究センター室長、農学博士
中杉修身  国立環境研究所化学物質環境リスク研究センター長、工学博士
藤江幸一  豊橋技術科学大学工学部 教授、工学博士
前田正史  東京大学生産技術研究所 教授、工学博士
松村寛一郎 関西大学総合政策学部 助教授、工学博士
安井 至   国際連合大学 副学長、工学博士