________________


  軽自動車 環境買い物案内  12.17.2006
     



 今年は、普通自動車の登録台数が400万台を切って、一方で、軽自動車の登録台数が200万台を超す見通し。

 軽自動車というものが環境面からみたときにどのようなものなのか、それを多少解明してみたい。

 できうるならば、是非とも、環境負荷の低い軽自動車をお買いいただきたい。


C先生:日本という国は、変わった国だといつでも言っているが、自動車メーカーがこれほど多数ある国も珍しい。

A君:何社あるのだろう。
普通車中心の、トヨタ、ホンダ、日産、三菱、マツダ、富士重工、
軽自動車中心の、スズキ、ダイハツ、
トラック中心の、日野、日産ディーゼル、三菱ふそう、いすゞ、
 これで漏れは無いですか。

B君:日本自動車工業会の名簿を見ると、それ以外にヤマハ発動機が入っているが、直接車を作っているという訳ではないので、まあ良いのでは。

A君:結局、乗用車系が8社。全部で12社。

B君:ドイツだと、ダイムラークライスラー、フォルクスワーゲン・アウディ、BMW、オペル(GM)、ポルシェ、そしてヨーロッパフォードが微妙なところ。6社か。割合と多い。ポルシェは、年間10万台程度のメーカーだが。

A君:イギリスは複雑。

B君:イギリスだと、フォードが、ジャガー、ランドローバー、アストンマーチンの商標権を持っている。ボルボ(スウェーデン)もトラックはスウェーデンだが、乗用車はフォード。ヴォクスホールはGM。ロールスロイスとミニがBMW。ベントレーはフォルクスワーゲン。さらに少数の車になるが、ロータスがプロトン(マレーシア)、MGが南京汽車(中国)。という訳で、イギリスには自動車メーカーはゼロ。いや、モーガン一つだけになった。

A君:フランスは単純で、プジョー・シトロエンとルノー。2社。

B君:イタリアも単純で、フィアットが、ランチア、フェラーリ、アルファロメオ、マセラティ、イヴェコの車種を、そして、フォルクスワーゲンが、ランボルギーニの商標を持つ。まあ、フィアット1社だけだ。

C先生:そういう意味だと、日本でも、トヨタ、スズキ、ホンダ、三菱自動車は独立だが、ダイハツ、富士重工はトヨタ系、日産はルノー系、というよりは、ルノーは日産系。しかし、それでもいすゞも独立だし、まだまだ多数の企業があると言える。世界の自動車産業は、米国、ドイツ、日本、そして、韓国、中国、インドといったところに資本が集中して、そして、ドイツ以外のヨーロッパにルノー、プジョー、フィアットがちょっと残るという構図になりそうな気がする。

B君:韓国だって、ヒュンダイ1社だ。KIAはヒュンダイ。デウはGM、サムソンはルノーだ。インドはやはりタタ1社のようなもの。

A君:ところで、この話、軽自動車とどんな関係があるのですかね。

B君:それは簡単な話。軽という規格があったからこそ、スズキがGMとの提携を解消して、独立系として残ることができた。規格の閉鎖性が企業の多様性を守っている

C先生:日本の市場は、しばしば閉鎖的であるとか規制が強いと言われるが、軽自動車などというものは、まさしくそれそのもの。現時点で、軽自動車なる規格を満たすものとして、海外から輸入が行われているのは、唯一、スマートKだけ。ダイムラークライスラー系のMCCという会社が作っているが。

A君:韓国やインドには小さな車がありますが、なぜ輸入されないのでしょうね。

B君:KIAのpicantoなる車は、車幅が1595mm、全長3495mm。同じクラスの現代santroは、全長3565mm、幅1525mm。いずれも軽自動車の規格をはみだしている

A君:日本の軽自動車の規格は、長さ3.4m、幅1.48m 高さ2.0m 排気量0.66リットル 以下。昭和24年、すなわち、1949年に軽自動車の規格ができたときには、長さ2.8m、幅、1.0m、高さ2.0m。排気量は、4サイクルエンジンだと0.15リットルだった。その後、何回ものサイズアップがあって、最終的には、現在の規格になっているわけですね。

B君:picantoもsantroも、日本の軽自動車の規格を意識して作られている訳ではない。大体、排気量が1.1リットルのエンジンを積んでいる。

A君:インドのタタを調べてみますか。一番小さいIndicaV2ですが、長さ3675mm、幅1665mmとかなり大きいですよ。エンジンは、ディーゼルの1.5L。

B君:インドの日本車はスズキが強くて、ワゴンRが人気。インドでのワゴンRのスペックは、長さ3495mm、幅1495mm、車重755kg。日本のワゴンRよりもサイズが大きく軽の規格をはみだしている。そして、かなり日本のものよりも軽いと言えるのに、エンジンは、1061ccのものを積んでいる。

A君:日本の軽にはなんと900kgを超える車種もあるのに、そんな車種でもエンジンは、0.66リットル。一方、輸出用は、車重755kgに1.1Lのエンジン。日本の軽はバランスが異常だという証明みたいなもの。

C先生:このように少々調査しても分かるように、かつ、毎回言うように、日本の軽は、異形の規格なのだ。こんな自動車を作ろうとする海外メーカーは無いようなバランスの悪い規格なのだ。わざとやっているのなら国土交通省も立派なものだが。そのために、もっとも重要な環境性能である燃費が犠牲にされている。

A君:そのバランスの悪さゆえに、輸入車との競争もなく、国内でも、かなりハンディキャップを頂戴しての勝負だったのでしょうね。

B君:軽自動車は、戦後日本の工業国化を狙う政策としては極めて重要だった。しかし、現在のような状況になって、なおかつこの規格を維持し、税金や保険金を割り引く必要性はどこにもない

A君:むしろ、車重、燃費、で規格を作って、環境負荷の小さな車には、税金や保険金を割り引くことの方が、今後の日本の産業の行く末を睨んだ選択だと言えるでしょうね。

B君:その通り。燃費を規制すれば、車重は減るから、燃費だけ決めれば良い。例えば、燃費が40km/L以上の車は、軽自動車として税金、保険金は割り引く、といった方向に早く転換すべきなのだ。

C先生:先日来述べていることだが、2100年に自動車なるものが存在しているとしたら、恐らく、燃費は200km/Lぐらいになっている必要があるのではないか。当然、1.5人乗り(+子ども)で、もしも、家族でどこかに行く場合には、これを何台か繋いで協調して走行できる。

A君:結構楽しそうですね。

B君:もう一つの異形の規格が携帯電話。この話は、別の機会に。

C先生:いやいや、今、多少話したい。携帯電話も異形。その通りだ。異形の規格のお陰で、通信3社が競争をしているが、携帯電話そのものを作るハードウェアメーカーは現在、シャープ、富士通、東芝、NEC、ソニー・エリクソン、パナソニック、三菱、三洋、京セラ、などがあるが海外での競争力を全く持っていない。やはり、日本の後進性を示している商品だ。
 携帯電話では、三洋のリチウム電池がトラブッたが、電池は、世界中に供給しているのに、本体は全然駄目なのだ。
 ということで、軽自動車を選択するとき、日本にしかない異形の車を選択しているという意識が不可欠なのではないか、と思うのだ。それがないと、どうしても、日本という国がある種の後進性から抜け出せないような気がする。

A君:大体、そんなところが、軽自動車の文化論でしょうか。こういう文化をもつ軽自動車ゆえに、性能もあるところに既定されてしまう。という議論に行きたいところですね。ただ、今の日本だと、「異形かどうかは問題ではない。売れる車を作ってなぜ悪い」、という現実主義・儲け至上主義の議論が出てくるのでしょうね。

B君:現実主義・儲け至上主義では、世界を相手にする製造業というものが長続きしないのだ。もっと本質的なところで目標を定め、それを真摯に追求しないと。

C先生:将来、日本という国が製造業を放棄してでも食える国になると言えるのか。最近の金融業・保険業界の行動を見ていて、全く駄目だと思うのだ。彼ら(金融業・保険業界)には、世界を制覇するだけの器量がない。目先の利益ばかり追っている

A君:という訳で、日本で販売されている軽自動車の特性を解析してみますか。データベースとしては、GPNの商品データベースを使わせていただきましょう。
http://gpn-db.mediapress-net.com/gpn-db/category/21/products_search.hgh
もっとも、このデータベースは、メーカーが自主的に作るものですから、不参加企業があるのです。軽自動車だと、三菱自動車が不参加。まあ、GPNにも参加していないとなると、これは問題だといわざるを得ないですが。それに、すべての車種が登録されている訳でもない。

B君:何を解析するか。やはり燃費が中心だけど、重量との関係。ちょっと調べて見ると、ここに載っていない三菱の最新の軽自動車iアイは、車重が相当に重いようだ。ますます異形の車ということのようだ。

A君:まあ、とにかく行きますか。図1が、軽全車についての、燃費と重量との関係です。当然のことながら、軽い車の方が燃費が良い。



図1 軽自動車の燃費と重量の関係

B君:この中には、マニュアル車(MT車)、オートマ車(AT車)、オートマ車(CVT車)と3種類の車があるはず。もっとも売れ筋は、当然ながら、AT車。

A君:AT車だけを残すと、図2のようになって、やはり燃費が悪いことを証明しているようなことになります。CVT車だけを残すと、図3のようになって、場合によると、MT車よりも良いかもしれない、といった状況です。


図2 軽自動車のAT車のみの燃費と車重の関係。



図3 軽自動車のCVT車のみの燃費と車重の関係


B君:これは、カタログの10・15燃費だということになると、これはメーカーによって車種によって、実際の燃費とは相当違うのが常識。

A君:実際の燃費は、やはりe-燃費でのデータを使うしかないですね。軽自動車では、こんなデータになっていて、このランキングに入っているのは、MT車とCVT車だけで、AT車は何もなし。



図4:e-燃費の軽自動車のデータ 2006年12月の10日前後のもの http://response.jp/e-nenpi/rank.html

B君:余り参考にならないな。

A君:ただ、スバルのR2RがMTとCVTと両方入っているのが興味深いところです。 R2RのMTは、790kgの車重、燃費はカタログ値で22.5km/L。CVTは、820kgの車重で燃費は同じく24km/L。カタログ上はCVTの方が燃費が良いことになっている。ところが、e-燃費の実際のデータでは、当然というか、あたり前というか、MT車が19.6km/Lと非常なる好成績で、CVT車が17.1km/Lと逆に悪い。とは言っても、AT車に比べればまあ良いことは良いのですが。

B君:普通車との比較はどうだ。

A君:普通車のAT車と軽の場合、何がもっとも違うのか、といえば、それは、車重が増えてくると、軽は燃費の落ちが激しい。図5を見ていただけれると分かるのですが、普通車の場合には、重くなると、エンジンも大きくできるので、車重が重くなっても、最適設計が可能になって、それほど燃費には響かない。
 ところが、軽だとエンジンの排気量が660ccと限られているので、車重が重い車だと、ターボを付けてみたりして、無理が始まる。



図5: 軽自動車の燃費と車重相関図に、普通自動車1000−1500ccの場合を作図

C先生:通常のATは、液体を使ったトルクコンバーターなるものを使うが、どうやらトルクがあるエンジンの方が適性が高いようなのだ。軽のエンジンのように、トルクが無くて回転で稼ぐタイプのエンジンは、車が重くなるとトルクコンバーターのすべりが多くなって、相性が悪い。1500cc程度までの小型車でも、ATよりもCVT車の方が燃費が良い。CVTは、ベルトなどを使う自動変速なので、すべりが少なくて燃費が良いが、余り大きなトルクのエンジンだともたない。

B君:要するに、軽を買うなら、まずはMT車。そして、どうしてもATなら軽量な車にしておけ、ということ。

A君:まあそうですね。車重は800kgぐらいまでの車なら、まあ、許せるレベル。できれば、750kgぐらいまでにしたい。

B君:となると四輪駆動車などは論外か。900kgを超すようなものもある。多分、走らない車だろうなあ。

A君:実は、雪道で最強なのは、スズキのジムニーという軽の四駆だったという話もあって。しかし、燃費的には論外。

B君:そういえば、三菱のパジェロとかが路肩から落ちているのを見たことがある。重い四輪駆動は、一度滑り出すとコントロール不能とのこと。

C先生:普通のAT車の効率は余り高いことは期待できないので、もしもMT車が駄目なら、多少高くても、CVT車を買うのが義務みたいなもの。税金などをまけて貰っているのだから、その分の社会還元だと思って

A君:燃費がよければ、自分にも還元される

B君:CVT車とAT車で価格差はいくらぐらいだ?

A君:富士重工のR2は、CVT車がMT車よりも5万円ちょっと高い。スズキのCVT車はなくて、比較不能。ダイハツはムーブカスタムにあるがAT車に比べてCVT車が14万円も高いみたい。装備が違うかもしれないが。
 ダイハツは、普通のAT車がMT車よりも6万円ちょっと高い。そして、スズキはAT車がMT車よりも7万円以上高いので、富士重工のCVT車はお買い得。ちなみに、日産(スズキのOEM)、ホンダ、三菱にはCVT車は無いみたい。

C先生:やはりダイハツ、スズキ、ホンダ、三菱などの戦略が価格優先だったのだろう。富士重工はかなり前からCVT車を出しているが、ダイハツはソニカなるCVT車を出したのが今年から。AT車よりも15%燃費が良いと主張している。ただ、ソニカは、過給圧の低いターボエンジンのようだ。本当に燃費が良いかどうか、それは実証が必要。

A君:やはり、環境性能の実証が必要不可欠ですね。

B君:米国では、環境保護局EPAが燃費の発表をしている。日本でもCO2発生量にして公表するのであれば、環境省ができるはず

C先生:軽自動車は世界的な標準からみても、異形だということがお分かりいただけただろう。それでも売れているのは、税制や車庫などの優遇があるから。その優遇を受けるのだから、せめて、燃費の良い車、MT車かCVT車を選んで欲しいところ。ところが、売れているのは、一見、立派に見える天井の高いワゴンタイプのAT車だったりしているのだ。なかなか現実を変えるのは厳しい。