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    今後の電力 数冊の本 (3) 
   06.14.2014
           日本は再生可能エネルギー大国になりうるか 北澤 宏一 著



日本は再生可能エネルギー大国になりうるか
  北澤 宏一 (著)
出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン (2012/6/29)
ISBN-13: 978-4799311691
発売日: 2012/6/29

<目次>
第1章 民間事故調から学んだこと ー 原子力のリスクを明らかにする
第2章 原発事故における科学者・技術者の責任
第3章 エネルギー政策の選択肢 日本はどの道を進むべきか
第4章 再生可能エネルギーの経済学
第5章 新エネルギー革命がこれからの100年をつくる
おわりに



 福島第一事故の3つの調査報告書の一つ、民間事故調の座長を務めた北澤宏一先輩の著書である。もともとは応用物理の出身ながら、その後応用化学の大学院へ。本Web主と同じ工学部5号館の4階が研究室の所在地であった。専門は、基本的には物性論だと言えると思うが、ご本人は超電導が専門だとおっしゃる。

 その後、東大教授を早期退職したことも本Web主と同じで、(独)科学技術振興機構の理事から理事長に。そのポジションを引かれてから、民間事故調の座長になった。現在、東京都市大学学長。

 この本は、民間事故調の座長として、様々な人々へのヒアリングを経験され、そのときの情報を生々しく記述するところから始まる。そして、今後の日本のエネルギーの考え方の一つとして、再生可能エネルギーへの転換が、結果として良い方向になるのではないか、という提案をしている。

 ただし、出版日が2012年6月29日と約2年の年月が経過してしまったために、いささか状況が変わってしまったことがあるのは否めない。

 もっとも大きなことが、円の為替レートの変化かもしれない。この本が出版された2012年6月の為替は1ドル=80円程度であるが、現在では、100円程度になっている。25%の円安である。


図1 為替レートの推移


 化石燃料の輸入金額が、当時、20〜25兆円であったとすると、それが25〜33兆円に増えていることになる。この5〜8兆円の増加がもろに効いて、原発が止まっていることによる化石燃料の輸入金額が、3.8兆円ほどになっていると言われている。

 また、ドイツ国内でのFITが成功例だと言われていたが、現時点、一部では失敗だと言われるようになった。

 エネルギー話の難しいところは、このように、状況の変化というか、評価を含めて、変動が非常に激しいことである。

 それはそれとして、以下、この本の内容と考え方をまとめるが、第一章、第二章は、福島原発の失敗に関する記述であることを考えて、細かい議論はスキップする。このような失敗を繰り返す可能性が多少ともあるのなら、再稼働は許容されないだろう、という教訓リストだとして記憶に留めたい。
 


C先生:ということで、第一章、第二章については、原発の再稼働についてどのような考え方なのか、を明らかにして、福島第一の事故の詳細などについては、取り上げないことにしよう。

A君:事故をもっと小規模に抑えることができたはずなのに、できなかったことがかなり記述されています。これは、危機管理がうまく機能していなかったということですので、ここでも重要なポイントとして、事実をリストアップしたいと思います。


第1章 民間事故調から学んだこと − 原子力のリスクを明らかにする

ポイント
■1:p40:非常用ディーゼル発電機が海側の地下のみに配置されていて、津波で冠水し、すべてダメになった。全電源喪失状態になったため、冷却水のレベルまでが分からなくなった。
■2:p41:ベントも当然動かなかった。しかし、ベントを手動で動かすことを想定していなかったので、やり方が知らなかった。ベントとは何か。高圧になっている圧力容器に水を注入することができないので、ベントを開いて、圧力を下げるべきだったが、手動でベントを開く装置がどこにあるか、現場の作業員は知らなかった
■3:p42:フィルター付きのベントになっていなかった。欧米では、ベントから排出される気体をフィルターで除塵してから放出する装置が当たり前だった。しかし、日本には、フィルター付きベントは設置されていかなった。信じられないほど、過酷事故を想定した対応になっていなかった
■4:p48:非常用電源がダメになったぐらいで、水位計などのセンサーまでダメになったが、電池などのバックアップがあれば、なんとかなったのではないか。当然その通り。しかし、バックアップは設置されていなかった
■5:p52:原子力安全保安院や原子力安全委員会が全く機能しなかった。本来、原子力のプロであり、何が起きているかを判断しなければならない人々が機能しなかった。これらの人々と組織に現場力がなかった。
■6:p53:エリートパニックを起こした。「エリートパニック」とは、情報を開示すると、国民がパニックになるに違いないというパニックを意味する。結果的に、情報伝達が行われなかった。
■7:p54:SPEEDIのデータが公開されず、放射性物質が大量に拡散した方向に避難した人々が多かった。
■8:p59:東電社長は、現場から社員を撤退させたい、と主張した。菅首相は、東電本店で、「撤退はあり得ない」と演説した。これは正しい対応だった。
■9:p64:原発事故をここまで大きくしてしまった遠因、中因は、これまでの国策民営型の原子力推進と規制のやり方にあった、と民間事故調は指摘した。このような体制が続く限り、複雑で危険な原子力という巨大システムを動かしていく資格は、日本にはない
■10:p65:安全神話のために、電力会社もメーカーも、「すでに絶対に安全なものに対して、『さらに安全性を高める』ことは、論理的にあり得ない」、「100%安全なものには、それ以上の安全性はない」と主張していた。自ら安全神話に囚われていた。
■11:p67:それに対し、スリーマイル島、チェルノブイリの事故を体験し、しかも、2001年の米国同時多発テロを経験したため、米国などでは、原発のセンサー類、ベントの改善、非常用電源の多重化、などの改善を着々と進めていた
■12:p70:推進する側と規制する側のなれ合いがあった。このなれ合いを破壊することが必要不可欠。
■13:p71:東電の圧力が強かった。あるパネル討論会でのこと。質問「30分以上原発の電力が喪失した場合、その先のことは考えなくても良い、という指針が原子力安全委員会にはあったとされるが本当か。本当ならなぜか」。それに対する解答「その指針ができたときには、東電の圧力が圧倒的に強かった。おかしいと思う人はいたが、東電に逆らって言える雰囲気ではなかった」。
 実際には、この指針は、原子力委員会で作られ、原子力安全委員会ができてから、そちらに受け継がれたものであった。このことは、大前研一氏をリーダーとする民間事故調が最初に指摘した。
■14:p73:「原子力ムラ」については、かつて経産省が采配を振るっていた、定年後の職を斡旋を含む人事システムだった。
■15:p73:政治の世界でも、自民系には電力会社から、民主系には、電力の労働組合から政治献金が流れていた。
■16:p74:大学の原子力工学科への電力業界からの寄付は、突出していた。
■17:p75:原子力規制庁は機能できるか。それには、職の斡旋などを含むシステムになったら無理。再就職の道を閉ざして、優秀な人材を集めることができるのか。

C先生:これらは、福島第一原発における失敗の歴史的な記述として極めて重要であり、これを無視しての再稼働はありえない。特に、安全神話というものに囚われていたという反省をどう生かすか、これがもっとも重要な鍵だと思う。

A君:その通りなのです。安全神話というものは、日本人のリスクというものへの理解のレベルを考えると、実に、日本人共通のマインドに余りにもピッタリだったと思いますね。

B君:安全神話のどこがダメか、というと、まさに「安全−危険」の二元論であるところ。リスクに関する唯一かつ絶対的真理は何か、と言えば、「リスクゼロは無い」ことで、対応法としては、「なににでもリスクはある。だから、リスクを定量的に捉え対応する」、と変える以外にないのだけれど、そのようなマインドに移行できていない。

A君:本来であれば、東日本大震災で、リスクはゼロではない、ということが分かったはずなのですが。

B君:いやいや、却って遠くなったような気がする。それは、天災は確かにある。そのリスクはゼロではない。しかし、せめて、人工物については、リスクはゼロにできると思っている人がいる。

A君:そう主張する人も、多分、本当のところは分かってはいるのですが、嫌なものは嫌だから、リスクゼロ以外は認めないという感じでしょうか。ビジネスマンのゼロリスク論は、「シェール革命」+「地球温暖化懐疑論」+「国家陰謀論」の三位一体論型が最近よくあるタイプなのですが、それも、不都合なリスクだからゼロにできると言え、と主張するのです。

B君:そろそろ、結論にしてしまうと、第1章での指摘は、今後、原発が再稼働する際に、これらの問題が再発しないように、確実に安全なものに変革されていなければ、社会的な合意形成ができないだろう、というリストのように見えた。


第2章 原発事故における科学者・技術者の責任

ポイント
◆1:p83:「核心の部分には分からないことが多いが、現時点での情報から判断すると、Aを仮定すればこうなり、Bを仮定すればこうなると思います」、というべきだった。
◆2:p83:SPEEDIのデータも、「まだ不完全なデータであるが、このような可能性がある」として、公表すべきだった。
◆3:p88:原子力安全・保安院の中村審議官が「メルトダウンが起きているかもしれない」とテレビで発言し、その後、複雑な政治的な動きがあった件は、「エリートパニック」の典型例であった。今回の事態を見ると、エリートパニックによって、却って信頼性を喪失しており、何も良いことはなかった。しかし、どこまで信頼してよいか分からない情報を、(1)そのまま公開する、(2)条件付きで公開する、(3)信用できるレベルの情報を選択して公開する、(4)すべてが分かるまで秘匿する、のいずれを選択するか。「日本の文化として、どれを選択するか」という議論が必要不可欠。

A君:この章は、何をどのように伝達すべきか、というコミュニケーションに関わることが議論されていますが、重要ではあるけれど、結論を急いで出せるというものもない。色々な事態が発生したときに、正しい実践が行われて、徐々に、状況が改善されるというものではないかと思います。

B君:科学者・技術者が何をいう存在なのか、という理解も同時に進まないと駄目なのかもしれない。しかし、すべての科学者・技術者が訓練を十分に積むという状況は、本性と反する行為だと思う集団が存在しているので。


第3章 エネルギー政策の選択肢−日本はどの道を歩むべきか

★1:p103:3つのエネルギー源の相対比較をすると、
□ 原子力には、使用済み核燃料の処理方法に問題がある。安全性については、「日本的空気を読む社会では正当な安全規制を行えるようにすることは極めて難しい」。ウランの埋蔵量などにも限界はある。増殖炉は未完成。
□ 化石エネルギーは、いずれ資源が枯渇する。すでに産出量は最大値を過ぎている。今後、中国やインドのエネルギー消費が増えれば、価格は高騰する。しかし、ここしばらくは、世界全体が化石エネルギー依存のまま。しかし、「気候変動」との関連で、その使用総量を世界全体として削減する必要あり。
□ 再生可能エネルギーは、価格が高い。お天気任せの不安定な電力供給源。しかし、10年前に比べれば、将来の本命になりうる状況になっている。
★2:日本学術会議の「エネルギーの選択肢分科会」の報告書がある。2年前のものなので、現時点に変換して記述すると、大体、次のようになる。
 もしも電力の半分を賄うと仮定したとき、再生可能エネルギーへの投資額は、年間5兆円を10年間。そして、電力コストは、30%アップ。一人当たりの負担額が4万円/年。しかも、電力の配電系統の増強に必要なコストは含まれていない。もしも電力の20%ぐらいを再生可能エネルギーにするのであれば、追加投資はそれほど必要にはならない。しかし、もしも50%を再生可能エネルギーにするには、蓄電池が必須。そのコストも、合計50兆円ぐらいかかる。一人当たりの負担額が、年間4万円を10年間ぐらい継続することになる。再生可能エネルギー+配電系統の強化、その合計で8万円/年/人を10年間ぐらい継続する必要があるので、これは大変。
★3:15%ぐらいの省エネを実現することが必須。これを現時点の状況に基づいて書き直すと、LEDバックライトになったテレビ、真空断熱になった450リットルぐらいの冷蔵庫、断熱性能を上げた家屋に適したエアコンといったものが導入されることが必要。

A君:★1のスタンスが基本スタンスで、これは、極めて妥当というか、これ以外にありえないスタンス。前回の記事で取り上げた城南金融金庫の吉原氏の本のように、最初に結論があるアプローチは無効であるということを意味しています。化石燃料への全面依存はあり得ないのです。

B君:★2の費用面も非常に重要で、最大限、再生可能エネルギーを導入しようとすると、国民一人あたり、年に8万円ぐらいの支出を10年間続ける必要がある。電気代が上がる形での支出増なので、これは負担が難しいのではないか。

A君:それが許容されるのなら、実行でするのか。技術的には問題があるのかないのか。それも問題ですが、それは、第5章の話題ですか。


第4章 日本は原子力発電から撤退することができるか

★4:2011年12月 総合資源エネルギー調査会基本問題委員会から「新たな基本的考え−望ましいエネルギーミックス政策」が発表されている。それによれば、
1.需要家の行動様式や社会インフラの変革をも視野に入れ、省エネルギー・節電対策を抜本的に強化すること
2.再生可能エネルギーの開発・利用を最大限加速化すること
3.天然ガスシフトを始め、環境負荷に最大限配慮しながら、化石燃料を有効活用すること(化石燃料のクリーン利用)
4.原子力発電への依存度をできる限り低減させること

 以上であるが、これは民主党政権時代のもので、すでに古い。

★5:現時点のものは、この本が出版されてから2年後の2014年4月になって決定されたエネルギー基本計画。その内容をご紹介をここで。まえがきのまとめの文章がこれである(p5)。

 我が国が目指すべきエネルギー政策は、世界の叡智を集め、徹底した省エネルギー社会の実現、再生可能エネルギーの導入加速化、石炭火力や天然ガス火力の 発電効率の向上、蓄電池・燃料電池技術等による分散型エネルギーシステムの普及拡大、メタンハイドレート等非在来型資源の開発、放射性廃棄物の減容化・有害度低減など、あらゆる課題に向けて具体的な開発成果を導き出せるような政策でなければならない。そして同時に、地球温暖化問題解決への貢献といった国際的責務も正面から受け止めつつ、国民一人一人の意見や不安に謙虚に向き合い、 国民の負託に応え得るエネルギー政策である。

A君:第4章は、コメント無しでいきますか。

B君:そうね。個々のキーワードは、第5章で出てくるからそうしよう。例えば、メタンハイドレート。分散型エネルギーシステムなどなどなのだけど。


第5章 新エネルギー革命がこれからの100年を作る

ポイント
●1:p165:まずは節電。
●2:p181:再生可能エネルギー製品は国産品愛用運動にしない。
●3:p185:太陽電池はまだ進化する。
●4:p197:浮体型を含めた洋上風力に期待。漁業者が経営者になること。
●5:p199:メタンハイドレートは難しいが、トライ!
●6:p201:再生可能エネルギーには電池が必須か。20%ぐらいまでなら、なんとかなる。電力の30%になると電池がいる。
●7:p202:電解・発電工場は必要。候補は、水素、アンモニア、アルミ、マグネシウム、ナトリウム、リチウムなどの金属。
●8:p221:地熱は法律がカギ。
●9:p224:中小水力は地方自治体の熱意しだい。
●10:p225:バイオマスも候補。藻類もあるかも。
●11:p239:貿易黒字という重荷。

A君:●1のまずは節電。これはいかなる状況でも事実です。これにも反対する人がときに居ますが、それは一部のエネルギー業界の人ぐらい。

B君:ヨーロッパでは、2020年までに、20%のエネルギー効率向上、20%の温室効果ガスの削減、20%の再生可能エネルギー化を「トリプル20」として推進している。

A君:日本だと2020年は、まだ原発事故の影響が余りにも大きいので、2030年ぐらいの目標を立てるべきかと思いますね。

B君:●2は、貿易収支を余りにも黒字にするとダメという話で、現時点では、化石燃料の輸入拡大でほぼ均衡状態になっている。化石燃料の輸入拡大という手段は良くない。これを再生可能エネルギー用の設備などの輸入、ということに切り替えるべきという話で、賛成。

A君:●3の太陽電池の進化だけれど、確かに、進化が早い。一時期、曲面にも設置できる有機太陽電池が有望かと思っていましたが、最近では、ペロブスカイト型という新しいものがかなり完成度が高くなっています。

B君:ペロブスカイト型は後発なのだけど、あっという間に、15%という変換効率を実現した。今後、本当に伸びるのなら、太陽電池の大部分がこれになる可能性すらある。問題は、鉛を使うことぐらいか。

A君:●4の着床式でも浮体型でも、洋上風力の経営ですが、これは漁業者が経営に参画することで、漁業権などの問題を解決しようということで、必須条件だと思いますね。

B君:●5のメタンハイドレートは、”トライ”、とのことですが、しばらくはもっとエネルギー価格の値段が上がるのを待つことで良いのでは。

A君:●6の蓄電池の必要性。ヨーロッパでは確かに20%とか30%の再生可能エネルギーが入っていても、電池は不要とされています。しかし、風力発電の特性が日本のものとは大違い。概ね平地で、いつでも西風が吹いているとでも言えるヨーロッパ。山があって、風況が複雑に変動する日本とはちょっと比較できない。それに、日本の場合には、太陽電池が多すぎる。最後に、電力の安定性に対する要求が高止まりしている日本と、比較的大雑把なヨーロッパの違い。

B君:まあ、電池は、日本の特技にすべき第一候補なので、蓄電池を入れることでも良いのではないか。コストは上がるが。

A君:●7のエネルギーキャリアの件は、すでに、2回取り上げました。
http://www.yasuienv.net/EneCarrier1.htm
http://www.yasuienv.net/EneCarrMetals.htm
特に洋上風力を浮体型で作ると、電力網をどうするかが大変な問題になるので、エネルギーキャリアが重要です。

B君:●8の地熱だけれど、原発のベースロードを置き換えるには、地熱が選択肢としてもっとも優れている。だから、もっとも推進をしなければならないと思う。

A君:しかし、稼働までに長時間を要する特性がある。そもそも適地の調査からやらなければならない。

B君:ベースロードの話は、最後にまとめて見よう。

A君:●9の中小水力もベースロードになり得ます。これは、将来の地域振興策として重要なので、自治体がもっと積極的に動くべきだと思いますので、同意。

B君:●10のバイオマス。バイオマスをペレット化して、石油発電の代替に使うのは賛成。

A君:しかし、藻類から石油は、現時点でのエネルギープロフィット比からみて、将来とも可能性は低いというのが、我々の見解。

B君:それに、培養のための水のコストを考えると、海水を使う以外に方法はないのだけれど、廃水処理などは、全く考慮されていない。遺伝子組み換えは、藻類の場合に非常に難しいので、そう簡単には実現できないけれど、万一、海水を使った遺伝子組み換え藻類培養が海洋に流れだすと、地球の生態系が大変なことになりかねない。

A君:●11の貿易黒字の話は、前回の吉原氏の著書のところと重なる。

本Webサイトだけの「付録」

C先生:それでは、付録という形になってしまうが、ベースロードを何で供給するか、という話題に。

B君:了解。最近この単語が話題になったのは、「エネルギー基本計画」で、最初は原発は「重要なベース電源」ということだったのが、「重要なベースロード電源」になったためだった。

A君:批判としては、「原発への依存をどうするか、ということについて、重要なベースロード電源という表現になっており、明確な表現が避けられている」。

B君:原発はベースロードとしての特性がもっとも優れている。すなわち、出力を変動させてないで、一定の出力で運転するのに適している。だから、昔からベースロード用として使われている。

A君:もっとも、多少の出力調整はできるのですが、日本ではやらないことになっている。フランスのように、80%もの電力が原発で発電されている国では、出力調整は勿論行っています。

B君:さて、ベースロードの説明から。

A君:このベースロード電源という言葉は、電力供給の基本概念としても重要なことで、24時間ほぼ同じような電力を消費している電力需要、例えば、家庭で言えば冷蔵庫、待機電力、無線LANなどの通信系、のような電力をカバーするには、発電出力を制御しにくいけれど、発電原価が低い電力を使うのが賢い選択になります。勿論、不安定な風力などには適性がありませんし、太陽光は、夜はもともと駄目という特性のために駄目。化石燃料を使うものでは、石油系の発電がコスト面で適用外になります。

B君:原子力以外なら、石炭火力がもっとも適性があるとされている。このベース電力を何にするのか。勿論、大量の二次電池が導入されるようになれば、話は変わってくるけれど、費用面ではかなり高価になって、石油火力をベースロード電源に使うことと同じようなもの。

A君:この北澤先生の本では、ベースロードとして、浮体型洋上風力が使えないかという提案をしています。確かに発電の安定性は多少高いのですが、ベースロードの役割は、1年365日、ベースロードになりうることで、日本が2個の台風に同時に襲われるといった状況になると、いかに洋上風力でも駄目な状況がありうるのでは。このあたり、やはり電池依存になるのでは、という気がします。

B君:原子力以外なら、やはりCCSを付けた石炭火力がもっとも現実的なのではないだろうか。CCSの費用は、大体コストが1.3倍になると考えれば良いので、まだなんとか競争力がないとも言えない。

そろそろまとめへ

C先生:そろそろまとめよう。この北澤宏一先生の主張を要約すると、(1)原子力も化石燃料も徐々に減らす方向性、(2)その代替として、再生可能エネルギー、特に、洋上浮体型風力がポテンシャルとしては有望。コストは高いかもしれないが、やるしかない。(3)電池を使うようになると、コストがますます高くなるが、まずは、使わないですむ範囲で。(4)いずれにしても、電力網の整備などは進める以外にない。

A君:ある意味で、国民に覚悟を求めている本とも言えますね。今ぐらいの電気代に加えて、4人家族なら、320万円の上乗せ分を10年ぐらいの月賦で払ってくれれば、かなり早く再生可能エネルギー中心で行ける国になるかもしれない。このA案は、北澤先生案よりも極端ですが、どうですか。

B君:4人家族で、携帯電話1台に月7000円×4=2万8000円。年33.6万円を払っているが、考え方を変えて、そのすべてを電気代の上乗せ払い分に当てる。

A君:どうも無理ですね。実際には、携帯の負担を月1500円以下にするのは簡単なのですが。

B君:代替案を考えろとなると、今程度の電気代で我慢をして貰って、原発を再稼働する。将来、原発はできるだけ減らす。再稼働で減る化石燃料の輸入代金を、再生可能エネルギー機器の輸入と製造、電力網の拡充に当てる。それだと、原発の減らし方に依存するが、20年から40年後には、再生可能エネルギー中心の国になっている。これがB案。

A君:それにしても、こんな極端な選択肢になってしまう。原発の安全性の確保が十分ならB案が良いという人には、それで良いのだけれど、B案は絶対にダメだという人が、A案が良いと言うとは思えない。

C先生:これが現在の日本の現実。A案が良いという人は居ない。しかし、B案が良いという人も、半分程度で、残りの半分の人々はどれも嫌だ。メルケル首相は、「これも嫌、あれも嫌は許されない」と叫んだが、これが日本の現状でもあるのだ。逆説的ながら、これを理解するために、読むべき本だとも言えると思う。