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 パリで考えた新コタツ文明の恒等式   01.24.2010
     



(財)自治体国際化協会パリ事務所(クレアパリ)が主催した日仏地方自治フォーラムで、日本の温暖化対策などの話をした。わずか20分という講演時間であったし、日本語とフランス語の同時通訳なので、なかなか細かいニュアンスは伝わらなかったものと思われるが、新「一石二鳥」を説明する機会となった。

今回、自治体からの参加者は、京都市副市長の細見吉郎氏、川口市長の岡村幸四郎氏。

会議のプログラムは以下の通り。
場所は、なんとフランス上院のあるリュクサンブール宮殿のクレマンソーの間である。

14:30 開会式 上院議員、日本大使館公使、クレアパリ所長などが挨拶。

14:50 第一部 導入部
NPOである4Dの理事と担当部長、リリアンヌ・デュポール氏、ローランス・エルミス氏がフランス側から、そして、筆者が日本側からそれぞれ20分間の講演、そして、15分間の質疑応答

この4Dのお二人のご婦人の話が、全く理解不能。Agenda21のローカル版を作ることが重要。それが持続可能性の意味だという主張を延々と続けるのだが、実際、なぜそれが持続可能性なのか、実例としてどのような都市がどのようなローカルAgenda21を作ったのか、実例が出てこない。20分の持ち時間のところを30分以上使ったのではないか。これは日本以外では普通のことなので、何も感じないが。

フランスでは、環境グルネル法その1はすでに可決され、環境グルネル法その2が現在審議中。その説明でもすれば良いのに、と思ったら、司会者がそのようにうながした。しかし、説明自体はよく分からなかった。

その後で、こちらの枠になって、日本の温室効果ガスに関する政策の現状と今後の展望を話し、時間が20分しかなかったので、新「一石二鳥」の話をして終わる。ほぼ時間通りに終わったはず。

第一パネルディスカッション 
温暖化対策

日本から細見吉郎京都市副市長、フランス側からニコル・ゴンティエ氏(ダンケルク都市共同体整備局長)、がそれぞれ20分間講演し、その後、15分間の質疑応答

京都市の活動は、かなり具体的であり、なかなか中味が濃いのに対して、ダンケルクの話はぼんやりした話であった。ただ唯一注目に値すると思ったのは、ヘリコプターにサーモグラフィーの装置を搭載して、建物1戸1戸の屋根の温度を測定。天候にもよるが、建物の断熱性能の評価に使えるという実験をやったということ。パリも、ニースもこれをまねしたようだ。

第二パネルディスカッション
廃棄物問題とリサイクル

日本から川口市長の岡村幸四郎氏。そして、フランス側は、ピエール=ポール・レオネリ氏(ニース・コート・ダジュール都市共同体廃棄物担当副議長)。

ニースのゴミの分別も、パリと変わっている訳では無い。生ゴミは、ダストシュートに入れる。ガラスびんは別に集める。それ以外のゴミはすべて一緒にして集める。これで分別終了という訳では無いようで、どこかで、誰かが分別をしているらしいが、その様子は不明のまま。

川口市は、考えられることを良くやっているという印象。

18:25 カクテルパーティー ルネ・コティーの間

その後、本当にお酒と寿司などが少々というパーディー。一人のフランス人と通訳を介して話をしたが、どうにも英語が話せないフランス人ばかりのようだった。

クレアパリの職員の説明によれば、上院議員は、地方議員と兼職することが認められていて、むしろ、ある地域の代表者という意識が強い。

今回、セミナーに参加しているのは地方自治体の職員が大部分で、自分の地域のことだけを考えている人々が大部分。したがって、英語などを話すひとはほとんどいない、とのこと。これだと、日本の方が国際的なのではないか。

さて、セミナーの報告は大体以上で、勉強になったのは、やはり日本側からの発表だけだった。

これはなぜなのだろうか。多くの場合にそうなのだ。相手国からの参加者がどのようなことを知っていて、どのようなことを知らないのか、それをフランス側はどうも理解していない。

逆に、日本側の話が分かったかどうか。多分内容的に分かるはずだとは思ったが、そこも不明のままである。

講演の中では時間的余裕が無くて触れなかったのだが、時間があれば、新コタツ文明を説明するつもりではあった。となると、理屈にはうるさいフランス人に対して、新コタツ文明と普通の意味での省エネとどう違うのか、あるいは同じ部分はあるのか、などを明確に説明できることが必要である。これを強く認識させられた。そのための検討過程を文字として残すために、本HPを書くことにした。



パリで考えた新コタツ文明の数学的定義

アプローチとしては、まず、省エネと新コタツ文明は、同じような効果をもっているが、本当に同じなのか。この疑問から始める。

多分違う。これまでの経験でも、日本人に対して講演をした場合のリアクションを見ると、単なる省エネとは違う提案であるという完全に理解をしている感触である。

これをコタツを知らない他の文明の人々にも分かって貰うためには、定義をしっかりとする必要がある。これまで通常のべてきた新コタツ文明の定義は、「必要なとき、必要なところに、本当に必要なサービスを必要な量だけ」、であった

この定義と普通の意味での省エネとはどこが違うのか。しばしば行われる方法ではあるが、数学的定式化を行うことも有効だと思われる。

そこで恒等式を用いて、新コタツ文明の定義と意味を表現してみることにした。

まず、式の目的である左辺は、低炭素社会の実現を最終の目的とすることにする。すなわち、1人あたりの二酸化炭素排出量を下げることにする。

従来型の省エネという考え方を表現する恒等式は、恐らく以下のようなものである。

CO2排出量/1人あたり
=CO2発生量/エネルギー量 (a)
×エネルギー量/サービス量  (b)
×サービス量/1人あたり   (c)


(a)は燃料転換(例えば、石炭を天然ガスに切り替える)、原子力、再生可能エネルギーの導入などによって低減が実現できる。要するに、低炭素型のエネルギーへの転換を意味する。

(c)から先に説明するが、省エネを実現したとしても、極めて不便になったり、快適さが大幅に失われたりすると、これは大問題。そこで、1人あたりのサービス量は同じにすることを大前提とする。すなわち、前提=1人あたりに対するサービスの量は一定。

(b)この項を低減することが省エネである。すなわち、同じ量のサービスを提供するのに、より少ないエネルギー使用量で実現することが省エネの定義である。

例えば、ある部屋を冷房する場合、より効率の高いエアコンであれば、より少ないエネルギー消費量で、同じ温度にすることができる。

さて、この恒等式を眺めて、この式の範囲内で1人あたりの二酸化炭素排出量をさらに低下させる方法はあるのだろうか。すなわち、(a)(b)を変えること以外に無いのだろうか。

答は簡単。この恒等式で、それ以外に解が無いことが明確に示されている。やはり(c)を維持すること、すなわち、同じ量のサービスを行うことを維持するという発想では、これ以上の改善は実現できない。これが確実に言えることである。

すなわち、この恒等式をなんらかの形で拡張しないと、新コタツ文明を表現することはできないことが明白である。

新コタツ文明を表現する拡張式

そこで、次のように拡張をする。まず、サービス量を一定にすることが本当に必要なのか、と考える。必ずしもそうではないように思える。サービスの量が減ったとしても、その質が変化することによって、そのサービスを受け取る人の満足度(量)が同じであれば良いではないか、と考える。

これによって、次の恒等式になる。

新コタツ文明におけるCO2排出量の恒等式

CO2排出量/1人あたり
=CO2発生量/エネルギー量  (1)
×エネルギー量/サービス量   (2)
×サービス量/満足量      (3)
×満足量/1人あたり      (4)


(4)の1人あたりの満足量は低炭素社会においても、一定量を確保することを前提とする。

(1)、(2)は、先の省エネを表現する恒等式と同じである。ということは(3)が新コタツ文明の根幹であることになる。

すなわち、同じ満足量を得るのに、サービス量を減らすことがどこまでできるか、という立場でものごとの改善を考えるのが、新コタツ文明の実現のための思考の中味である。

ここで、それぞれの項の意味を再度整理すると、
(1)燃料転換、原子力、自然エネルギー
(2)省エネ
(3)新コタツ文明
(4)一定(変えない)
となる。

さて、この式で、新コタツ文明のすべての表現が本当にできるものなのだろうか。

これまで新コタツ文明の定義は、「必要なとき、必要なところに、本当に必要なサービスを必要な量だけ」、と表現してきた。これなら、満足度は維持できるだろうという直感で、この定義を決めた。

具体例を用いた検討

そこで以下、例を取り上げつつ、具体的に考えてみたい。

例その1:コタツそのもの
空間の大きさをコタツの内部に限ること、すなわち「必要なところのみ」に限るよって、より少ないサービス量(熱量)で同じ満足度を得ることが可能である。すなわち、新コタツ文明の恒等式の第3項、サービス量/満足量は、コタツという装置を使うことによって、少なくすることができる。


例その2:ビューティートワレ
パナソニックが最初に導入した暖房便座である。普段は、センサーのみが動作していて、ヒーターは作動していない。誰かが入ってくると、センサーはそれを関知し、ヒーターにスイッチを入れる。ヒーターは、高出力で、6秒後には、所定の温度まで便座を暖める。

温水についても同様で、保温をしていない。必要な水だけを、瞬間ヒーターで暖める。

この設備を導入することによって、時間を限る、すなわち「必要なときのみ」に限定することによって、同じ満足度を得ることが可能。やはり第三項を満足している。

以上、2つの例は、新コタツ文明の基本中の基本となる考え方なので、これらが恒等式を満足することは当然だと言える。


例その3:人感センサーテレビ
ソニーのモデルV5の考え方。見ている人が居なくなったら、画面を出すのを止める。これも良さそうである。時間を「必要なときのみ」に限定するということによって実現されている。しかも、満足度も維持できる。


例その4:人感センサー、温度センサー付きエアコン
三菱のムーブアイ的なエアコン。これも温風・冷風のサービスを空間的にも時間的にも制御する設備なので、良さそうである。快適性が変わらないかということについては、実際に使ってみたことが無いので分からない。個人の感覚によっては、冷房暖房の風にあたることが本当に快適なのか、その判断が分かれる可能性がある。

このエアコンが装備している「ドアが開いています」といった警報を出す機能は、空間を本当に必要なところに限定するという意味で必要。すなわち、新コタツ文明的な機能のように思える。

以上、例その1〜例その4は、講演などで話をしてきたことなのであり、いわば、新コタツ文明の優等生なので、新コタツ文明の恒等式を満たしているようだ。

そこで、これから先は、余り考えたことのないことを検証してみることにする。


例その5:車の相乗りサービス

地域に情報サービスを新設し、人々が同じ方向に出かける必要があるとき、車を人数分動かすのではなく、1台の車に相乗りすることによって、エネルギーの使用量を下げるということを実現したらどうなるか。

車の空間を一定とすれば、2人乗りにすることによって、1人あたりの体積を下げることができるではないか、という発想である。

しかし、何をサービスと定義するか。実は、これが問題である。この場合には、ある人がある場所から目的地まで移動することがサービスと定義すべきだろう。人1人が占める体積はどうも無関係である。

 となると、どう考えても、項目(2)の値が、2名で相乗りなら半分程度になることを意味し、項目(3)は変わらない。あるいは、逆に狭いという不満を持つことによって(3)の値は増大する可能性もある。

すなわち、「相乗り」は省エネ技術であって、新コタツ文明的ではないことになる。

余分なことながら、この場合、別のサービスについても、満足度がやや下がる危険性がある。それは、行きは良いが、帰りをどうするかということである。最大の効果を得ようとすると、帰りにも、同様の状況を作る出す必要がある。すなわち、相乗りした二名は、帰りの時間合わせるべく調整しなければならないからである。

これを考えると、人を移動させるときには、やはり公共交通が良いということになるのかもしれない。


例その6:電気自動車のカーシェアリング

公共的なサービスと自家用車の相乗りの中間的なサービスとして、電気自動車のカーシェアリングを実現したら、それはどう考えるべきなのか。

これも、まずは、何をサービスと定義するか、である。この場合も、ある人がある場所から目的地まで移動することがサービスと定義すべきだろう。

となると、やはり、(2)の項目が可変項目であり、それが電気自動車を導入することによって、下がるということでしかない。

カーシェアリングという仕組みは、(4)の満足度を下げないために、これを導入してみるということでしかない。

車を所有しないことによる環境負荷の低下は無いとは言えないが、それは、今回の恒等式では表現できていない。そのうち、考えることにしたい。

恐らく、個人のライフサイクルCO2といった概念を入れないことには、所有しないことによる環境負荷の低減を評価することができないように思える。


例その7:バスの運行可視化サービス

バスが今、どこを走っているかを可視化するサービスを加えることで、公共交通であるバスも、カーシェアリングと同様の効果を持つことができるようになる。

 結果的には、(2)の項目の数値を下げること、すなわち、省エネ技術として位置づけることが妥当である。


例その8:テレビ会議
 これは結構むずかしい。再度恒等式を提示して考えてみたい。

CO2排出量/1人あたり
=CO2発生量/エネルギー量  (1)
×エネルギー量/サービス量   (2)
×サービス量/満足量      (3)
×満足量/1人あたり      (4)

テレビ会議の場合、人と人が会議ができるような状況を作ることがサービスの内容である。サービス量は、恐らく、何人に対してそのような状況を作り出すかで表現できる。すなわち、5名の会議とか、3名の会議とかである。

そのうち、移動を要する人が何人かということが必要エネルギーの大きな部分を決める。大阪で会議をやることで、3名が移動するが、東京で会議をやれば2名の移動で済むのならば、東京でやることが(2)の項目の量を減らすことに繋がる。

もしも、テレビ会議を行うことによって、東京の3名も、大阪の2名も移動をしないで実現できるのならば、やはり、(2)の項目が量的に少なくなっていることになる。

テレビ会議は、従って、新コタツ文明的ではなく、省エネ的な削減策だと言えるのではないだろうか。

さらに難しい面もあって、テレビ会議だと(4)の項目の値を一定値に保つという前提条件を満たすことが不可能ということもありうる。

しかし、なんとなく充分納得できない部分が残る。別の見方は無いのだろうか。

なぜ違和感が多少残るのかを考えてみた。どうやら、こんな感覚を持っていたからのようだ。

人を会議のために移動させるということは、その人に対して空間的なサービスを行うことになる。東京から大阪までの移動だと、人の体積(重量でも良さそう)に移動距離を掛けたような量の空間サービスを行っているのではないか。

それをテレビ会議だと、バーチャルに実現することによって、空間的なサービスの実施量が大幅に減っているのではないか。

すなわち、(2)だけでなく(3)式の値が大幅に少なくなっているという表現をとって、なぜ悪いのだろうか。どうも悪く無さそうである。

しかし、さらに深く考えると、要するに、バーチャルに行うサービスの場合には、この恒等式が成立しないのではないか、と思い始めた。

すなわち、

CO2排出量/1人あたり
=CO2発生量/非バーチャルなエネルギー量  (あ)
×バーチャルなエネルギー量/サービス量     (い)
×サービス量/満足量      (う)
×満足量/1人あたり      (え)

となっていて、(あ)の分母と(い)の分子が違うものだから恒等式になっていないのだ。

むしろ、この場合には、簡便な形にして、次のように書き直すことが妥当かもしれない。

CO2排出量/1人あたり
=CO2発生量/サービス量  
×サービス量/満足量     
×満足量/1人あたり     
×バーチャル度

バーチャル度
=バーチャルな場合のエネルギー消費量
/非バーチャルな場合のエネルギー必要量


ただし、この式の場合には、バーチャルに行うサービスと非バーチャルに行うサービスが同等であるという仮定が入っていることになる。

これも実際には難しい仮定なのかもしれない。

もしそうであれば、

CO2排出量/1人あたり
=CO2排出量/満足度
×満足度/1人あたり
×バーチャル度


という式にすることがバーチャルな対策を含む場合の本来的定義なのかもしれない。



結論

新コタツ文明は、いわゆる省エネ技術とは発想が違う。

CO2排出量/1人あたり
=CO2発生量/エネルギー量  (1)
×エネルギー量/サービス量   (2)
×サービス量/満足量      (3)
×満足量/1人あたり      (4)

の式において、(3)を減らすことが新コタツ文明である。一方、省エネは(2)の項の値を減らすことである。

再び記述することになるが、(1)の項に、石炭から天然ガスへのエネルギー転換、再生可能エネルギー、原子力などが入る。CCSも、考え方次第だが、ここに入れることも可能である。

最後にもう一つ指摘をしたい。

実は、(4)を減らすこともあり得る。要するに、我慢をすることである。しかし、本HPでは、それを仙人社会化と呼んでいる。超長期を考えると、最後には、仙人社会化することが必要不可欠であるのかもしれない。

2050年までに先進国はCO2排出量を80%程度削減することになっている。これを1人あたりの排出量という意味で実現する道筋は、

(1)CO2発生量/エネルギー使用量
 この項目で0.6

(2)エネルギー使用量/サービス
 この項目で0.5

ここまでだと、0.6×0.5=0.3で、まだ70%減にしかならない。

そこで、新コタツ文明が出番になって、

(3)サービス量/満足度
 この項目で0.7ぐらいを実現する。
すると、0.6×0.5×0.7=0.21となって、79%削減が実現できることになる。

日本の場合には、2050年には人口が0.8倍ぐらいになっているので、さらなる削減が可能になっているはずである。

そして、残ったCO2発生量をカーボンオフセットの仕組みを活用して、ゼロにすることが、2050年頃の日本の温暖化対策になるだろう。


付録:
英語で表現する新コタツ文明の恒等式

CO2 emission per capita
=CO2 emission/energy consumption
x energy consumption/service
x service/satisfaction
x satisfaction per capita