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LED電球はマダマダだ 12.13.2009 |
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先日、さる量販店で、壊れてしまったポータブル型のひげ剃りを探しいたところ、店員が女性にLED電球を盛んに奨めている。 「これはすばらしいですよ。環境にも良いですし。自分のところでも、トイレ、居間、廊下などに4つ使っています」。 「そこのお客さんちょっと待って」、「LED電球はもう少々進化してから買った方が良い」、と言いたかったのだが、まさかそう言う訳にも行かない。 とうとう、その女性は、調光・調色ができる一番高価なLED電球を買わされてしまった。 このHPをご覧になる方であれば、ご存じの通り、省エネという点から言えば、現時点では蛍光灯で充分。今後、LEDがさらに進化すれば、蛍光灯を凌駕できる可能性はある、ということをご存じだと思う。 しかし、実際に使ってみないと、なんとも言えない。そこで、1個LED電球を購入してきた。そして、今回は、その比較記である。 1.比較用のLED電球、蛍光灯など 比較に使用した電球はLEDを含めて4種類。今回比較用に新たに購入した東芝製反射板(レフ)付きの蛍光灯以外は、現在使用中のものを外してテストした。 比較品リスト いずれも60W級の白色。 1).シャープ製LED電球 DL-L601L 消費電力 7.5W 価格 3680円 2).ナショナル製の古いパルックボールプレミア EFG15EL/10H 消費電力 10W 価格 1050円 3).東芝製 反射板(レフ)付きネオボールZ EFR12EL 消費電力 12W 価格 1260円 4).ナショナル製 古いパナボール電球 60型 消費電力 54W 価格 263円 価格は、ある通販メーカーのHPで調査したもの。 テスト0 消費電力の測定 消費電力は、しかし、計ってみないと分からない。そこで測定してみた。 小数点以下一桁まで必要なので、ワットアワーメーター(System Artware製)を使用。 LED電球はパッと一定の明るさになる。しかし、蛍光灯は、明るくなるのに若干時間が掛かるが、徐々に明るくなると同時に、消費電力も増加する。 LED 公称値 7.5W 実測値7.6Wで最初からずっと安定している レフ型蛍光灯 公称値 12W 点灯直後の消費電力は少ないが、徐々に上昇して、実測値11.6〜13.4Wでフラフラ 直感的な平均値が12.6Wか ボール型蛍光灯 公称値 10W 実測値最初は6Wぐらいからスタート。そして9.8〜10.1Wでフラフラ ボール型電球 公称値 54W 実測値 最初は52.1〜52.2Wが、徐々に増加して55Wに。 2.光量テストのやり方 見た目を報告するだけでは、余り客観的だとは言えない。そこで、今回は、写真をとって、それを元に解析をすることにした。 テスト1:光量と広がり方の違い テスト2:トイレ用としての適正 テスト3:影の付き方の違いと色温度 2.1 テスト1「光量と広がり」とその結果 三脚にセットした電球を壁の前に置いて、その壁に広がる光を撮影。カメラは、デジカメだが、色温度などを調整して何が分かるかを検討するために、やや本格派を使用。 カメラ:キヤノン5DmarkU レンズ:キヤノンEF100mmマクロ F2.8L 撮影条件 撮影モード マニュアル露出 Tv(シャッター速度) 1/10 Av(絞り数値) 5.6 ISO感度 100 結果は、以下の通り。 ![]() 写真1−1 LED電球 ![]() 写真1−2 レフ型蛍光灯 ![]() 写真1−3 ボール型蛍光灯 ![]() 写真1−4 ボール型電球 同じ露光なので、明るさの違いが写真に撮れていることになる。 LED電球は、普通なら前方にしか光が出ないはずなのだが、カバーで散乱させて光を広げているのだろう。しかし、全体的に光が弱いのが分かる。やはり、均一な照明用の光源ではない。 レフ型蛍光灯は、本来広がっている光を反射板によって前方へと送っている。そのため、もっとも遠くまで光が届いていることが分かるが、それよりも、壁のかなり広い面積が明るくなっていることが分かる。やはり本当のスポットライトとしては適性が低い。 ボール型蛍光灯は、かなり均一に光を放射しているが、それでも、根本にある部分からは光が出ていないので、やや前方に偏った光の分布のようである。 ボール型電球は、ほぼ均一に光っている。当然のことながら、カメラは壁と直角にセットしてあるので、この写真では、電球の真後ろがもっとも明るく照明されていることになる。 2.2 若干の定量化 これらの写真から明るさを比較するために、PhotoShopElements7に読み込んで、右下と左上の明るさを相対的に測定。 右下 左上 最明部 LED電球 27 76 188 レフ型蛍光灯 46 41 219 ボール型蛍光灯 25 105 192 ボール型電球 17 80 177 光の分布を定量的に評価し、光束を計算することは不可能だが、少なくとも、レフ型、ボール型の蛍光灯に比べて、LED電球の光束は少ないように見える。 光束とは、全体的な明るさを評価する言葉であるが、シャープのカタログでも、光束については、「30W形白熱電球と同程度、360 lm」と記載されている。lmは、ルーメンと読む。消費電力が7.5Wなので、48 lm/Wが効率である。これは、ルーメンパーワットと読む。 一方、東芝製のレフ型蛍光灯は、「全光束(lm):560」 となっていて、明るいことが分かる。もっとも、消費電力がこの機種は12Wもあるので、効率は46.7 lm/Wであり、これに関しては、LEDとほぼ同様である。 ボール型の蛍光灯でも、最新のモデルだと、光束は810 lmと明るい。効率も、81 lm/Wと、LED電球よりもかなり高い。 現時点でもっとも明るい蛍光灯だと、80 lm/W程度はあり、さらに、オフィス用などで使用される高周波点灯専用直管形蛍光ランプだと、省エネ目標値が 86.5 lm/Wであり、100 lm/Wも実現可能である。 いずれにしても、LEDだから効率がよいということは、現状では無い。まだ、蛍光灯が光の量を表す光束では優位にある。 このあたりは、本当のエコとは何かを考えている人々の中では常識で、メーカーでも、東芝、パナソニックあたりは、LEDの優位性は、光が直進すること、すなわち、スポットライト的な応用にあって、通常の照明ようとしては、まだまだだと考えていた。 一つ、ネット上の記述を引用しておきたい。 本当にエコなの? LEDの誤解を考える http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0803/05/news062.html ところが、なぜか急にLED電球のブームになった。そこには、今回、某量販店で唯一売っていたシャープ製の販売戦略があった。 2.3 テスト2「トイレ用としての適正」 量販店の店員、ひょっとしたらシャープ関係者かもしれないが、自宅のトイレにも使っていると言っていたが、果たしてトイレに使うとどうなるのか。 カメラは同じだが、レンズはEF17〜40mmF4Lで、17ミリで撮影したもの。露出は、マニュアルでセットし比較するペアは同一条件で撮影。 ![]() 写真2−1 LED電球を使ったトイレ照明 天井に光が行かない。 絵に斜めに妙な影が。 ![]() 写真2−2 通常の60W型電球の場合 天井への光が強い LEDの場合には、電球から上の方向に光が少ない。それ以上に、光の総量がやはり少ないことが一目瞭然である。 別の角度からもう1組。 ![]() 写真2−3 LED電球の場合 タオル掛けの影に注目 絵が暗い ![]() 写真2−4 通常の電球 天井の明るさが全く違うことが分かる。しかし、トイレに入って天井を見るか? と言われると、これはなんとも分からない。視線から下は、まずまず明るいようである。 もう一つ、面白い現象が見つかる。左側にタオルの掛かっていないタオル掛けがあるが、その影が、LED電球と通常の電球の場合で、全く違う。LED電球の方が明らかに影がシャープである。 そこで、第3の実験を行うことになった。 3. テスト3「影の付き方の違いと色温度」 光源を変えて、クリスマスの飾りを撮影した。しかし、それだけでは面白く無いので、色温度の調整を行ってみた。 RAWフォーマットで撮影し、それをキヤノンDigital Photo Professionalなるソフトで色温度を3000Kに変えて、JPGファイルとして出力したものである。 ![]() 写真3−1 LED電球の場合 3000Kに調整 ☆の影がくっきり 色は緑が強く赤がかなり不足気味 ![]() 写真3−2 レフ型蛍光灯 3000K ☆の影が見える ![]() 写真3−3 ボール型蛍光灯 3000K 色はもっとも中立的 ![]() 写真3−4 ボール型電球 3000K 本来の色温度はもっと低い(2900Kぐらい)ため 赤みが強い まず、小さなクリスマスツリー上の☆マークの影が全く違うのが分かる。どうも、LED電球が作る影は濃いように思える。恐らく、光が平行かつ直進して居るからのように思える。LED電球が普及すると、これまでと違った影が見られるのかもしれない。 元の写真では分かりにくいのだが、このように、色温度を下げて像を造ってみると、元々の色温度も微妙に違うことが分かる。 明らかに、ボール型電球の写真は赤みを帯びていて、色温度は低いようだ。あと100Kぐらい低めにすれば良さそうだ。 LED電球照明だと、撮れる写真はやや緑が強い(赤が弱い)ように見える。もともと、白色のLEDは、青色を発光するLEDに黄色の蛍光物質を被せて、見かけ上白色にしているに過ぎない。 光のスペクトルは、先ほど引用した http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0803/05/news062.html にも出ている。475nmぐらいのピークが、青色LEDが発してる青い色で、右側にある575nmが、黄緑色に見える色で、蛍光体が出している。 そのため、撮影した写真の色温度を3000Kに合わせてみると、どうやら緑色が若干強い、と思われる色になったのではないか、と推測できる。 いずれにしても、LED電球は、このようなスペクトルで表現している疑似的な白色なので、洋服の色などを決めるには全く適していない。 一般的に、デジカメで撮影した画像を印刷するとき、もっとも難しいのが、ピンク色の表現である。同じく、肌の色も難しい。この手の色は、かなり微妙なのである。しかも、見る側にしたら、見慣れているだけに、ちょっとした色合いの変化に対して感度が高い。 このシャープ製LED電球で照明したトイレでは、鏡に映った自分の顔色は赤みが失せていて、ちょっと二度と見る気がしなかった。そのうち、そんな顔色になりそうで。。。。 販売店としては、鏡を用意して、どのような顔色に見えるのか、消費者向けに示すべではないか。 蛍光灯も、三波長型だけに、やはり自然な色とは違って見える場合もある。しかし、三種類の波長が使えるので、赤の量を調整することが可能なためか、顔色がきちんと見えるように、微妙なコントロールができているように思える。 4.結論 LED電球が低価格化したために、普及が加速しそうだ。しかし、60W型だと言っても、まずは光の総量である光束が少ないことは覚悟しなければならない。特に、前方への光はまずまずであるが、後方への光は弱い。光の総量としては、シャープのカタログにも書かれているように、30(白色の場合)〜40W(昼光色の場合)型電球程度だと考えた方が良い。 スポットライトとして使うのであれば、同じ60W型でも、レフ型の蛍光灯の方が遙かに明るい。しかも安価である。ただし、消費電力は光の量に比例して多い。発光効率は、LED電球と変わらない。 発光効率に関しては、通常の電球型蛍光灯がもっとも優れている。いずれにしても、現状では、LED電球=エコ照明とは言いにくい。蛍光灯を抜いて初めてエコ照明のタイトルが付く。今後、LEDの効率改善がどこまで進むか、要注目である。 現状では、「照明をエコ化しようとすれば、白熱電球を止めて、蛍光灯に変える」、で充分である。それでも、蛍光灯の寿命は1万時間程度。交換するのが非常に面倒な場所の照明は、LED化すれば良いこともあるかもしれないが、やはり光束が少ないのが気になる。 トイレに適しているか。と言われると、やはり高価すぎてもったいない。寿命が4万時間ということだが、1日1時間点灯していたとしても、100年後に寿命を迎えることになるからである。 蛍光灯だと、寿命は1万から1.3万時間程度だ。点灯回数はかなり改善されたが、それでも、4万回程度である。さらに、点灯直後の光度に改善をしたモデルもある。 最近、パナソニックが売り出した、パルックボールQという製品がそれで、クイックランプという電球を仕込んで、最初の1分間の立ち上がりをアシストするようになった。消費電力は、その間、最大30Wのようだ。その後は、定格の10Wになる。お値段は1380円程度。 しかし、トイレなら、このパルックプレミアQでも、点灯回数の方で寿命が来るかもしれない。 「トイレは、普通の電球という考え方でも充分」なのではないだろうか。こまめに消すことがもっとも重要。 LED電球は、色温度が蛍光灯とも多少違う。スペクトルも当然違うので、色の見え方もちょっと違うのかもしれない。現状の白色の品質では、顔色から赤味が消えて、不健康な顔色に見えることが最大の弱点のようにも思える。二色スペクトルの根本的な欠陥かもしれない。将来、やはり三色スペクトルになるのでは、ないだろうか。 影の付き方も、かなりこれまでの電球と違う。部屋の表情がより鋭く変わる可能性もある。 このような商品は、売れることによって、製品が進歩し、そして、さらに売れるという好循環が必要である。そのために多少の犠牲は我慢しても、エコ技術の進歩に貢献するというポジティブ、かつ、好意的、そして使命感あふれる心境であれば、LED電球をお買いになることをお奨めである。 そんな寛大な気持ちは無い、ということならば、しばらく待つのだろう。 エコロジー感とそれによる満足度を考えるのなら、現時点なら、「やや高級な電球型蛍光灯がお奨めできる」のではないだろうか。 業務用で非常に高いところなどに設置するのであれば、LED電球も悪くはないだろう。交換のための人件費が節約できるだろうから。しかし、たかが60W級の電球がそんな高いところに設置されているとも思いにくいのだが。 |
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