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   COゼロ実現の常識 その
     
どのぐらいの発電設備が必要か 01.13.2018
               




 前回の続きです。自然エネルギーで大部分を賄って、火力による発電は炭素税を払い、製鉄やセメント製造から出るCOは、処理費用を炭素税として支払い、国有企業がCCSを実施して地下に埋める。これが基本方針になると思われます。
 具体的にどのぐらいの自然エネルギー、例えば、風力を「どこにどのぐらい」導入するか。となると、一番有利なのは、当然、風況の良いところということになります。日本の風況は、北海道の西海岸、東北の西海岸で秋田県以北が最良です。
 しかし、そうなると、需要地である関東圏まで、送電線をしっかり張り巡らす必要がでてきます。となると、需要の多い地域に多くの風力を設置することも、戦略としてあり得ることになります。
 太陽光については、確かに需要地にある戸建ての家のほとんどすべてに設置して、できれば、電池も同時に設置してもらって、自家消費を行うと同時に、デマンド&レスポンスの制御を行うことが最良のシナリオのようにも思えます。例えば、給湯装置は、ガス湯沸かし器はCOが発生してしまうので使えません。現在のガス管を使って水素を供給することは、恐らく不可能でしょう。給湯器としては、エコキュートのような設備にして、電力が余っているときに、ヒートポンプでお湯を沸かすという制御をすることが良さそうです。
 今回は、風力発電、特に、洋上風力、そして、太陽光発電に着目して、どのぐらいの台数の風力とメガソーラなどを建設しなければならないのか、を感じてみたいと思って作文をしました。


C先生:どのぐらいの風力と太陽電池が必要かを感じてみることが、今回の目標。それには相当の仮定を置くことが必要になるけれど、風力の場合、着床型と浮体型の洋上風力、それに、メガソーラを含む太陽電池、これらを中心に考えてみたい。

A君:それには、シナリオとして、需要地に近いところに風力も建設して、長距離の送電網は余り強化しない、という方法論について、まず検討でしょうか。

B君:まあ、そういうことになるだろう。そのような場合には、需要地に近いところ、東京電力の範囲内ということにして、この地域だと陸上風力はほとんど新設は不可能に近いのではないか。

A君:まあ、街の真ん中という訳には行かないのでしょう。いくつも仮定が必要なのですが、東京電力の範囲内に、どれだけの風力を設置するという仮定で、取り掛かりますか。

B君:東京電力が現在の供給能力、すなわち、認可出力が6684万kWなので、これを参考にするのだろう。1kWの出力の太陽電池を買ったとすると、年間1000kWhは発電するだろう。すなわち、1000時間はフルに動き、残りの時間は寝ていると考える風力の場合であれば、2000時間とすれば良い。すなわち、1500kWの風車で、年間300万kWhの発電量が見込まれるとのことだ。

A君:もう一度、確認です。太陽電池は、最大出力で動いたと仮定すると年間1000時間分しか働かない。実際には、1年は8760時間なのに、です。一方、風力発電はフルに2000時間分はなんとか働くということですね。ざっくり言えば、太陽電池は1/9、風力発電は2/9フルに働く。残りの時間はサボっているというのが発電力。

B君:東京電力の販売量が、2471億kWh。まあ、精度2桁とすれば、2500億kWhとするか。2050年になれば、電力販売量も2000億kWhぐらいに下がっているとしすべきではないか。それは、都会は自分でエネルギーを作れないので、電気代が非常に高くなるので、都会の人口は減る。地方なら、広い面積の太陽電池を設置すれば、電力を売って稼げるので、人口は増える。その頃になれば、毎日通勤するという勤務形態の人はかなり少ないだろうし。

A君:仮定としてですが、合計2000億kWhので再生可能電力が東京電力圏で必要。その内、1000億kWhを太陽光が、1000億kWhを風力が供給しているとします。勿論、水力などもあるのだけれど、まあ、無視。太陽電池で1000億kWh。これを1000で割れば、必要なkWになって1億kW。風力は2000で割れば、5000万kW。こんなところですか。

B君:風力は、東京電力エリアだと、着床型の洋上風力と浮体型の洋上風力で半分ずつといったところが現実的ではないか。いずれにしても、5000kW=5MWの風力発電機だと、なんと1万基を建設する必要があることになる。このクラスと、羽根の直径が120m。

A君:最近のニュースでは、大林組は、秋田県の能代市、三種町、男鹿市の沖合約59平方キロの海域に、海底に固定する着床式の風車(出力5000kW)を91基設置するとのこと。

B君:この計画の詳細は分からないけれど、常識的には、風車は、風向きの直角方向に、ローター径の1.2倍間隔がミニマムらしい。もっとも、風向きは若干変わるので、1.5倍ぐらいか。とすると、200mに1基設置できることになる。100基だったとしても20km。Google Mapでチェックすると、この間の海岸線が40kmぐらいある。相当、余裕を持たせているのかもしれない。

A君:40kmの海岸線があれば、5000kWの風車なら、西風だけを考えれば、200基の設置が可能という計算にはなります。

B君:東京電力の範囲内に、5000kWの風力だとして、風力を1万基か。200m間隔で1列とすれば、1kmに5基設置として、全部で2000kmというとんでもない数になる。洋上風力なので、発電時間が2倍長いとしても1000km、こんなに海岸線は無いのではないか。

A君:無いですね。いわき市から館山市の海岸線の長さが270kmぐらいですから。となると、4列か5列にすることになりますね。

A君:洋上風力は設備利用率が高い。なんといっても、風力発電というものは、風速が2倍になると、発電量は8倍になる。すなわち、3乗に比例するのですから。だから、必要な基数もかなり減るでしょう。それでも、相当な数ですね。

B君:実際、米国の場合だと、陸上風力であっても、設備利用率は33%ぐらいを考えているようなので、洋上発電なら、40%という計算もウソとも言えない。

A君:しかし、最善の風の状況でも、5000基の洋上風力発電機が必要ということになって、日本の海岸には、深さが50mぐらいまでのところに、風車が林立しないとダメ。実は、それでも足らないので、浮体型の風車も同数ぐらい存在しなければならない、というシナリオになりますね。
 図1に、茨城県の北部から千葉県の房総半島の地図を示します。
          

図1:総延長272kmの洋上風力帯が関東地方には存在する。特に、千葉県のエリアは、かなり風況が良いとされている。ここに4列、5列の洋上風力を建設する。

B君:それでは、風力はこの量を設置することは大変だということは分かった。次に、太陽電池の場合を検討してみるか。太陽電池であれば、屋根に設置する場合と、平地に設置する場合があり得る。

A君:関東地方なら家が多いので、まあ、まずは屋根でしょうね。平地の場合であれば、また、農地にもパラパラと太陽電池を設置しますか。農機の邪魔にならない程度に。自動運転を前提とすれば、結構の数が置けるかもしれません。

B君:まずは、どのぐらいの面積の屋根への設置が可能なのだろうか。

A君:東京都が作ったTOKYO太陽エネルギーサイトというGoogleMapがあって、それによれば、「適」と「条件付き適」の二種類があって、実際、設置を考えれば、適の面積が区によって、感覚が全く違っていて、目黒区は結構適が多いのだけれど、世田谷区はかなり少ない感じ。平均的には、面積の1〜5%ぐらいは太陽電池が乗る、と考えても良いのでは。2188kmが東京都の面積なので、最低20kmぐらいなら設置可能なのでは。

B君:どうやって考えるか。通常のソーラーパネルは、サイズ1.58m×0.81m=約1.3mで、240Wぐらい。南向きの屋根なら、日陰にならないように設置するとして、2mで200Wは難しいかな。

A君:まあ、もっと単純に考えて、出力が1億kWあれば、年間1000時間のフル出力分の電力が得られるとすれば、1000億kWhの電力が出ますね。
 1億kW分の出力の電池ですが、1mで150Wと仮定すれば、必要面積は、関東エリアに、ざっくり言って、700平方kmの太陽電池を貼れば、発電予定量は満たすことができるのではないでしょうか。しかし、傾けて張るので、2倍の面積が必要でしょうか。となると、設置面積は最低26km四方。そこに設置効率を考えて、その2倍が必要。となると、26km×52km。

B君:設置場所は、勿論、各家屋の南向きに傾斜した屋根なのですが、メガソーラなら、18ホールの普通のゴルフ場が、1km×1kmよりちょっと大きい土地があれば作れる。ゴルフ場を1300箇所分という感じの面積になる。

A君:関東地方には、1400万世帯が居住していますが、集合住宅もあるので、東京に近いところだと、そんなに屋根は無さそうですね。それなら、メガソーラとなると、Google Mapを見ると、関東平野と呼ばれていても、結構山が多くて、なかなか26km×52kmの面積を確保するのは難しい。それに、こんなに大きな面積のメガでなくて、ギガソーラーを作ったら、発電量がふらついて、送電線が大変でしょう。

B君:やはり、砂漠は有利だ。日本のように狭い国土で、開発が終わっている国は不利。ヨーロッパも似たようなもの。中国ならゴビ砂漠。中東ならどこでも砂漠みたいなもの。米国にもいくらでも荒れ地がある。

A君:一昔前は、石油は砂漠に出た。だから砂漠はエネルギー源だった。その前までは、農業がもっとも重要だったので、砂漠は不毛の土地に過ぎなかった。それが、現時点では、砂漠こそ電力の源ということになりましたね。

B君:26km×52kmがどのぐらいのサイズなのか。東京都は東西に長いので、横長で図示してみるか。

       

図2:東京電力圏内に、必要な自然エネルギーの半分を生み出す太陽電池、テラソーラーのサイズ?

C先生:ここまでは分かった。太陽光、風力が主力ではあるが、それが相当以上に大変だ。これら以外の再生可能エネルギーというと、水力、地熱、海洋エネルギーなどがある。そのポテンシャルはどうだ。

A君:まず、水力です。竹村公太郎氏の「水力発電が日本を救う」という本によれば、現時点の水力発電の電力販売量は最大900億kWh。東京電力管内の総電力が2000億kWh必要としましたが、それに比べるとそれほど多くはないですね。

B君:竹村氏のアイディアの面白いのは、国土のポテンシャルを一杯使ってしまっている水力発電だけれど、ダムを嵩上げするという方法論は無い訳ではなくて、それで、900億kWhを1250億kWhまで増加が可能。さらに、中小水力で1000億kWhも可能ではないか。要するに、現在の2倍以上になりうる。

A君:中小水力は、なかなか普及しないと思いますね。やはり結構人件費が掛かったりするので、コストが高い。ダムの嵩上げと貯水量の運用方法を変えるのでしたね。これは面白いのですが、その工事が果たして簡単なのでしょうか。また、貯水量の上限は、現在だと夏には、台風が来ることを想定して、かなり下げているのですが、それをもっとダイナミックに予想をして行うというのですが、台風の超巨大化も予測されるので、そう簡単ではないと思います。

B君:多少の増加は是非とも実現したいが、そう簡単ではないということか。

A君:次は地熱ですね。地熱のポテンシャルは、北海道、東北から北陸、関東北部などには結構あるのですが、そもそも人口密集地では難しい。それに、地熱の可能性があるところは、温泉地なので、もし地熱を開発するとなると、温泉宿が大反対。女将が怖いですね。なんといっても、発電によって得られる収入増が、女将への補償費として支払いにすべて化けてしまうのでは。

B君:電力という付加価値より、温泉という観光の付加価値の方が高いということだから、今後も、インバウンドの所得を増やす日本としては、地熱より温泉と言われれば、「そうかも」と答えることになるのかもしれない。

A君:そして、海洋エネルギーですね。日本は海洋国家ですから、確かに有望な国ではあるのです。しかし、具体的に何をやるのか、となると、海流発電、すなわち、海流のあるところにプロペラなどの発電機を沈める。

B君:海流発電でもっとも条件の良いところは、津軽海峡。そもそも、この海峡の潮の流れは、常に、西から東。それは、日本海という海の特性で、対馬海流が流れ込んでいるけれど、出口が少ないから。

A君:津軽半島の龍飛崎側から下北半島の大間側に、常に潮流が流れているのですが、ここは、この海流のために、大間のマグロを始めとして、非常に良い漁場。漁業権とどう折り合いを付けることができるか。

B君:もう一つの可能性のある地域は、黒潮の流れる奄美列島の島と島の間に、プロペラを沈める方法。どこが良いのか、全く分からない。

A君:黒潮は、東シナ海では、南、西諸島の西側を流れて、屋久島と奄美大島の間のトカラ海峡を通るとされています。

B君:ここか。口之島水道、中之島水道、諏訪之瀬島水道と名前が付いている。ここにプロペラを沈めて、屋久島・種子島・奄美大島に電力を供給するか。果たして、どのぐらいポテンシャルがあるのだろう。

A君:NEDOは、世界初の100kW級の水中浮遊式の海流発電の実証試験を完了したようですよ。昨年8月の記事ですが。
http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100824.html
 50kWの発電機を2基搭載。浮体の長さ20m×幅20m.定格流速15m/秒。浮遊深度30〜50mとあります。実際には、最大30kWの出力を記録したようです。

B君:なるほど。場所は、口之島の北側らしいな。IHIが、2020年以降に実用化を目指しているとのこと。海洋エネルギーはこの方式に期待か。

A君:まあ、海洋温度差発電もあるのですが。これは沖縄だけかもしれませんが、表層の温度と深海の温度の違いを使って、媒体を蒸発させてその体積の増加によって、タービンを回す。

B君:昔から佐賀大学がやっている。しかし、これもコストが高い。まず、海水の温度差を利用するためには、海水で錆びない金属を使って設備を作る必要がある。それは、具体的にはチタンなのだけれど、これは非常に高い。アルミではもたない。

A君:海洋深層水の温度4℃と表層の温度の差を使っての発電なので、そもそも熱機関として見たとき、温度差が30℃も無いので、効率は最悪。したがって、エネルギー・ゲインが本当に得られるのか、ポンプの電力にすべて使われてしまうのではないか、これが最大の問題で、佐賀大学で実験をやっていたときでも、海洋深層水の養殖用途など他の産業応用などを組み合わせて、なんとか経済性がでるか、という検討を行っていたのが実情ではないですか。

C先生:そろそろ長くなりすぎたようだ。これで、「CO実現の常識その2」を切り上げよう。いずれにしてもお分かりいただけると思うけれど、再生可能エネルギーとは、国土面積が決定的な要因となるもの。さらに言えば、人口密度が重要なパラメータだと言える。例外は、海洋エネルギーぐらいと言いたいところだが、実は、そこに漁業権が関係するので、やはり、人口密度と関係があるのだ。
 世界の人口密度を比較してみると、
http://ecodb.net/ranking/imf_area_lp.html
上位には、マカオ、シンガポール、香港、バーレーン、マルタ、モルディブと都市国家と島嶼が続き、そして、7位がバングラデシュ、8位が台湾、13位が韓国、14位がルワンダ、18位がオランダ、19位がインド、21位ベルギー、23位がフィリピン、そして、25位が日本だ。そして、26位がスリランカ、32位がベトナム。33位がイギリス。38位がドイツ。
 自然エネルギーは、人が多いと設置ができない
 中国56位、59位インドネシア、60位タイ、62位デンマーク。このあたりから、若干有利になる。デンマークは、すでに風力発電に相当投資したが、人口密度の数値からいうと、132人/平方キロ。日本は336人/平方キロなので、やはりかなり低い。ちなみにドイツの数値は231人/平方キロだ。
 感触としては、人口密度が250人を超している国と、150人以下の国では、状況が違う
 ただ、再生可能エネルギーのジャンルとして、洋上風力があるのが、海洋国家には若干の救いになっている。イギリスは、国家のリスクを真剣に考える伝統がある。したがって、相当の投資を洋上風力に投入しているが、それでもなおかつ自立が難しいので、原子力を真剣に考えている。もっとも、EUからの離脱の国民投票の件を見ると、国民レベルが高く、その伝統を維持していたのではなく、レベルの高い政治家が維持していたことがよく分かる。
 日本の洋上風力は、海がすぐに深くなるという難点がある。これを補うのは、浮体型。同時に、台風のような暴風対応としても浮体型の方が有利。ただし、高価だ。高価な買い物は、しっかりと準備をして長期的な投資プランを作らなければならない。これができているのが、イギリスとドイツ出来ていないのが日本だ。やはり、未来を読まない政治家ばかりの国の国民は、日本に限らず、ますます不幸になるのが、COゼロを目指さなければならないこれから2080年ぐらいまでの期間の世界を支配する状況なのだろうと思う。日本の政治家に2050年を語らせるにはどうしたら良いのだろう。2050年までとは言えないが、向こう20年間ぐらいは議員を続けることができる立派な政治家が当選する選挙に変えなければならない。しかし、小選挙区制にしてしまったので、もはや相当難しい。選挙に関する決定権を政治家が握っていること、それ自体が問題だと思う。