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     MDGsの成果とSDGsへ    08.22.2015
             2030年をゴールとした国連の枠組み       




 2000年頃の話ですが、国連的な立場から見たとき、地球上での最大の課題は貧困の撲滅であると考えられていました。特に、20世紀から21世紀への移行することを考えると、20世紀の遺品かもしれない貧困をできるだけ早い期間内に解消しなければならない、と考えられていたと言えるでしょう。

 この段階での貧困は国単位の話でした。そのため、ミレニアムサミットが2000年にニューヨークで開催され、貧困の撲滅や、初等教育の充実、さらには、基本的な健康対策、例えば、妊婦の健康などが7項目、言い換えれば、ヒトとして最低限の要求とでも言える7項目にまとめられ、ミレニアム開発計画(MDGs=Millennium Development Goals)として、決まりました。

 以下の7項目です。
1. 極度の貧困と飢餓の撲滅
2. 普遍的初等教育の達成
3. ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
4. 幼児死亡率の削減
5. 妊産婦の健康の改善
6. HIV/エイズ、マラリアその他疾病の蔓延防止
7. 環境の持続可能性の確保


 加えて、手段として次の第8項目目が加えられています。
8. 開発のためのグローバル・パートナーシップの推進

 そして、それぞれの目標に対して、2015年のターゲットが決められていました。

目標1:極度の貧困と飢餓の撲滅
 ターゲット1 2015年までに1日1ドル未満で生活する人口比率を半減させる。1ドルは物価補正のために、1.25ドルに変わった。
 
ターゲット2 2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を半減させる。
目標2:普遍的初等教育の達成
 ターゲット3 2015年までに、すべての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする。
目標3:ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
 ターゲット4 初等・中等教育における男女格差の解消を2005年までには達成し、2015年までにすべての教育レベルにおける男女格差を解消する。
目標4:幼児死亡率の削減
 ターゲット5 2015年までに5歳未満児の死亡率を3分の2減少させる。
目標5:妊産婦の健康の改善
 ターゲット6 2015年までに妊産婦の死亡率を4分の3減少させる。
目標6:HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止
 ターゲット7 HIV/エイズの蔓延を2015年までに阻止し、その後減少させる。
 
ターゲット8 マラリアおよびその他の主要な疾病の発生を2015年までに阻止し、その後発生率を下げる。
目標7:環境の持続可能性の確保
 ターゲット9 持続可能な開発の原則を各国の政策や戦略に反映させ、環境資源の喪失を阻止し、回復を図る。
 
ターゲット10 2015年までに、安全な飲料水を継続的に利用できない人々の割合を半減する。
 
ターゲット11 2020年までに、最低1億人のスラム居住者の生活を大幅に改善する。

 さて、これらの項目がどのように達成されたのか、それは、以下の報告書をご覧いただくのが一番だと思います。

http://mdgs.un.org/unsd/mdg/Resources/Static/Products/Progress2015/English2015.pdf

 全体的には、まあまあ状態は改善された、とも言えそうな状況です。以下、個別の項目を見てみましょう。


目標1:極度の貧困と飢餓の撲滅
 ターゲット1 2015年までに1日1ドル未満で生活する人口比率を半減させる。

 次のような改善が行われました。

図1 地域別貧困の改善

 やはり中国の経済成長が非常に大きくて、世界全体の統計的な変化に多大な影響を与えています。2000時点での1ドル/日以下の貧困層の割合は、中国の方がサブサハラよりも多いという状況でした。

 1990年に中国では61%の人が1日1.25ドル以下で生活をしていましたが、それが、2015年の統計では、なんと4%まで減少しています。

 そのためもあって、世界全体で見ても、$1.25/日以下の人々が36%が存在していたのが、今や図2のように12%まで減少しました。これは、当初の目標が半減でしたので、その目標は達成されたと言えるでしょう。


図2 貧困の改善 世界全体

 ただし、地域差は残っています。サブサハラ地域では図1に示したように、依然として41%の人々が1日1.25ドル以下で生活をしており、これは、1990年では57%でしたから、とても半減したとは言えません。今後は、地域を特定しての対応をすることになるでしょう。

 他の地域の国々に問題はないのか、と言えば、一般論としては、むしろ、問題が増えたと言えるのではないでしょうか。

 現時点での経済的な問題というと、国による相違が問題というよりも、むしろ、国内の経済格差、すなわち、個人の問題になったこと、という理解が一般的であるかと思います。

目標1:極度の貧困と飢餓の撲滅
 ターゲット2 2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を半減させる。

 極端な栄養失調状態にある人口割合も図3のように改善されました。


図3 貧困の改善に伴い、極端な栄養失調状態にある人々の数も割合も減少した

 ということは、経済格差の中味は、と言えば、多数の人々が極端な飢餓に陥るほど劣悪ではないが、ごく少数の高所得者と呼ばれる人々が、かなりの割合の富を独占しているということを意味するものだと思われます。
 日本で言えば、ブラック企業の存在のようなものでしょうか。あるいは、ソフトバンクとかオリックスにおける超高給が問題なのでしょうか。


目標2:普遍的初等教育の達成
 ターゲット3 2015年までに、すべての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする。


図4 この図のように、サブサハラを除けば、世界のどの地域でも90%を超したということで、画期的な成果であったかと思います。
 ジェンダーギャップについても、次のように改善されています。



図5 初等教育のジェンダーギャップ

 統計的な進化はこの図からも明らかです。となると、この課題での問題でも、ボコ・ハラムなどの事件に見られるように、イスラムの一部での激しい女性差別と女性の初等教育への妨害のような個別の問題に移行しているように思われます。

 目標3は省略します。

目標4:幼児死亡率の削減
 ターゲット5 2015年までに5歳未満児の死亡率を3分の2減少させる。

 この課題の達成率は次の図6の通りです。



図6 5歳未満児の死亡率の推移

 ゴールが緑色の縦線で示されていますので、地域差がまだまだあるものの、かなりゴールに迫った地域も多いということでしょう。

 目標5は省略します。

目標6:HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止
 ターゲット7 HIV/エイズの蔓延を2015年までに阻止し、その後減少させる。

 HIVの新規な観戦者は40%程減りました。死者は、アンチレトロウィルス薬のお陰で、かなり減りました。しかし、若者層のHIVに対する理解は進んでいないという評価のようです。


目標7:環境の持続可能性の確保
 ターゲット9 持続可能な開発の原則を各国の政策や戦略に反映させ、環境資源の喪失を阻止し、回復を図る。

 まずは、温室効果ガスの排出量はこのように増加し続けています。


図7 温室効果ガス排出量の推移

 特にアジアの伸びが速いです。これも中国が主たる原因で、次がインドということになるでしょう。アフリカの伸びは低いままです。
 先進国からの排出量は、減少していますが、ご存知のように、日本は、東日本大震災と福島第一原発事故の影響で増加しつづけています。


目標7:環境の持続可能性の確保
 ターゲット10 2015年までに、安全な飲料水を継続的に利用できない人々の割合を半減する。

 飲料水の状況はどう変わったか。次の図8が良質な水道水の供給を受けている人口の変化を示します。 世界全体で見れば、ゴールは達成されています。やはり国レベルでの差が大きいことが問題です。


図8 改善された水道へのアクセスが可能%

 水資源は、自然現象としての水循環に依存していますので、限界があります。その限界に対して、どのぐらいの割合で水を採取しているかを図9に示します。



図9 水の循環からの水の採取量%

 色で分けられているように、25%以下の採取量であれば、まずます豊富な水に恵まれていると言えますが、75%を超すと、もう激しい水不足状態だと言えます。
 北アフリカ、西アジア、中央アジア、南アジアの状況が厳しいことが見て取れます。しかし、もっと極端な状況が本文に次のように書かれています。

Of these, 10 countries -- from the Arabian Peninsula, Northern Africa and Central Asia -- withdrew more than 100 per cent of renewable freshwater resources. Once a country reaches a withdrawal level above 100 per cent, it starts depleting its renewable groundwater resources, relying on non-renewable fossil groundwater or non-conventional sources of water, such as desalinated water, wastewater and agricultural drainage water.

 要するに砂漠地域では100%以上の水資源を使っているということです。再生不能な地下水、海水淡水化、農業排水の飲料水化などのようですが、これらは、産油国のような金持ち国ならなんとかなりますが、それ以外の国では無理です。しかし、もともと無理な使い方なので、大量の二酸化炭素が排出されていることは確実です。

 水は、輸出入をするには、余りにも安価なものなので、こんなことになります。日本のような国で、輸入品のボトル水を飲むことを、やはり考えなおさなければならないかもしれません。あるいは、水道水の品質を落として、飲料用はすべてボトル水にする方が、トータルな二酸化炭素排出量を下げることができるのであれば、それも一案です(計算したら、成立しないという結論になるのでは、と想像しますが)。


目標7:環境の持続可能性の確保
 ターゲット11 2020年までに、最低1億人のスラム居住者の生活を大幅に改善する。

 この推移を次の図が示しています。


図10 スラム人口は、人口数では増えていますが、割合としては明らかに減少気味です。この改善は、経済的な発展のお陰ということなのでしょう。



 環境問題全体を総合的に見るとどうなるのでしょうか。やはり、環境問題が2015年以後のもっとも重大な問題として残りそうである、という結論が、この報告書の強い主張となっています。

 より具体的には、気候変動、そして、その影響が確実に起きるであろう食料、水、自然災害の増大、などが問題であるということです。

 以上で、MDGsの報告書の内容をざっとご紹介しました。




 これで2015年が目標達成期限であったMDGsが終わりました。評価としては、まあまあ良く頑張った、と言えるでしょう。しかし、誰が頑張ったのでしょうね。国連ではなさそうです。やはり、経済全体としては、マクロ的に見れば正しい方向に向かっている部分があったから、MDGsの目標もまあまあの達成度だった。すなわち、2000年に定められた開発目標というものは、経済成長と両立可能というか、むしろ開発目標は経済成長目標と同じものだったということを意味するのでしょう。

 さて、MDGs終わって、これから何もしないのではなくて、次には、SDGs=Sustainable Development Goalという目標の設定があり、9月15日から17日にニューヨークで開催される国連総会で合意される手はずになっています。当然、上述のように環境問題を中心課題とすべきなのですが、現実には、なんでもありの17項目に及ぶ目標設定になっています。

 しかも、それぞれが細分化された目標をもっており、1.1から17.19までに分割されています。全部で何個になるのか、是非、このサイトでご確認下さい。
https://sustainabledevelopment.un.org/sdgsproposal

 これがそのまま決まったとして、どう料理すべきなのでしょうか。そもそも国によって状況が余りにも違いますから、それぞれの国がそれぞれの目標を決定することになるのでしょう。もっと分かりやすい目標を定めることが不可欠のように思います。

 SGDsのゴールは、2030年です。しかし、環境、特に、気候変動が最大の問題だということになると、先日、ドイツで行われたエルマウG7サミットでの2050年の削減目標、すなわち、「2050年の2010年比でIPCCの提案の40から70%の幅の上方の削減」という目標に到達する中間地点として2030年を捉え、具体的に一人あたりのエネルギー消費量と二酸化炭素排出量を各国が決める、といったことが考え方をせざるを得ないように思えるのです。

 この数値の意味を、日本の状況に照らして、もう少々検討してみましょう。日本は、2050年に80%削減を国際的に公約し、これは現在でも活きています。勿論、2030年までには今回約束草案で提出した2013年比26%削減を厳守しかければなりません。

 これを一人あたりの削減量にすると、どんな感じなのでしょうか。人口の推計のやり方などが変われば変わりますから、いささか流動的ではありますが、まあ、2030年までに、一人あたり25%削減、2050年までに一人あたり75%削減ぐらいだと考えて、それほど間違いはないと思います。

 一人当たりの排出量のうち、本当に家庭生活から排出する量は、現時点で2トンぐらいです。残りの9トンは、産業部門や輸送部門、エネルギー変換部門などからの排出なのです。

 家庭部門では、自家用自動車からの排出が31.5%を占めていますが、これらをゼロに近づけるには、それこそゼロカーボン電源による電気自動車か、ゼロカーボン水素を使う水素燃料電池車にでもする必要があるのです。

 もしもゼロカーボン電源が現実のものになれば、家庭部門、業務部門からの排出量はほとんどゼロになります。北海道などでの灯油などによる熱需要を電気でやれるかどうかが問題になるぐらいでしょう。

 産業部門は、厳しいです。やはり、鉄鋼、セメントの二業種は、炭素による還元作用を使っている高炉、石灰岩を原料としているセメントという特性があるために、どうしても、ある程度の排出量があると考えなければならないのでしょう。

 となると、もしも、2050年に鉄鋼業、セメント業が日本で今程度行われているとしたら、家庭生活からの二酸化炭素の排出量はほぼゼロとすることにしなければならないでしょう。

 もっとも、ゼロカーボン電力が実現し、自動車も近距離用は電気自動車、そして、ゼロカーボン水素燃料・ゼロカーボンバイオ燃料による自動車だけになれば、本州以南での家庭やオフィスからの二酸化炭素の排出量はゼロになるでしょう。

 北海道でも、地中熱の利用などによって、暖房を電化すれば、本州と同様の状況になり得ると思います。

 2050年がこのような状況であることを想定した上で、中間地点である2030年のSDGsを具体的に考える必要があって、なかなか困難な知的作業ではあるようです。

 このような議論を勢力的に行うことによって、なかでも先進国の消費生活にもっとも関係の深いGoal 12とGoal 13に対する意識を高める必要があるでしょう。

Goal 12 Ensure sustainable consumption and production patterns
Goal 13 Take urgent action to combat climate change and its impacts