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  マクドナルドノスィズム  11.28.2004



 11月21日から、ソウルに出かけた。「国連の持続可能な開発のための教育10年」に関するワークショップで基調講演をするためであった。そこで、最近韓国で起きた事件として、反マクドナルドのハンバーガー事件があったことを知った。

 11月25日から26日。国連大学で、ゼロエミッションフォーラムが主催する2日間に渡るシンポジウムがあった。ここで、哲学者の今道友信先生が参加されたパネルディスカッションを聞いた。一点だけご紹介すれば、現在の世界には、「ノスィズム」がはびこり、これが様々な現象を引き起こしている、とのこと。

 韓国での反マクドナルド事件を調べているうちに、どうも、この2つのキーワードが重なってきた。


C先生:先週末の大阪、仙台、ソウルと全く休みがなかったもので、いささかバテ気味。やっと週末が来たというのが実感。

A君:ソウルの会議はどうだったのですか。

C先生:まあ、いくつかの発見があった。一つは、環境教育ということを行っている人々の人脈が意外と狭いということ。もっと多様な人々が取り組まなければならない。それに、環境教育の専門家が、必ずしも環境の専門家ではないということ。

B君:これまでのCREST安井チームの研究結果によれば、どうも小中高の先生方の環境認識が最悪という結果だと聞いたが。

C先生:そうなんだ。その結果を得るために行った質問が、次のようなものだ。このアンケートを実施したのは、2002年の5月ぐらいから2003年の11月までに行われた、各種の環境関係の展示会である。なかなかアンケートに協力してもらうのは難しいので、発泡酒を1本もらえるという餌付きにした。結果的に得たアンケート総数、年齢分布、環境意識は次の図のような状況。合計4350件余。環境展示会に来た人ということで、かなりのバイアスが掛かっているものと思われるが、それにしても、環境意識を聞いたとき、全く意識しない、余り意識しないが合計で11%であった。



環境問題の認識に関する質問
質問1:身の回りの環境は、20〜30年前に比べて、改善されているか。
質問2:大気汚染は、20〜30年前に比べて、改善されているか。
質問3:水質汚濁は、20〜30年前に比べて、改善されているか。
質問4:ダイオキシン汚染は、20〜30年前に比べて、改善されているか。

A君:答えですが、質問2〜4は、いずれもイエスが正解であることは確実なんですが、質問1については、イエスともノーとも正解のようですが。

C先生:その通り。ただ、この質問1については、なぜそう考えるのか、その理由をさらに質問していて、その回答から、正解かどうかを判定している。例えば、「身の回りの環境は改善されていない、なぜならば、自然が破壊されつつあるから」、と答えれば、これは正解。同様に、身の回りの環境ではないから、厳密には正解とは言えないのだが、「身の回りの環境は改善されていない。それは、地球が温暖化しているから」、という理由でも正解だとしている。

A君:なるほど。

C先生:次にその結果を示す。

図1:環境問題の正しい理解と職業との関係。小中高教員の理解が極端に悪い。


C先生:この図のように、小中高の先生方の成績は、なんと小中高校生なみであり、他の職業に比べて相当に悪いと言える。

A君:大学生に比較しても落ちているのは、問題なのでは。すべての先生方は大学を出ているはずなので。

B君:大分前に卒業しているのでは。

C先生:いやいや、それなら、年齢とともに、環境への理解が悪くなっているはず。ところが、年齢別の環境理解度は、次の図2のような結果。

図2: 環境理解と年齢の関係。年齢とともに環境問題を正しく理解している。

A君:明らかに年齢とともに、正しい認識になっている。

B君:となると、なぜ小中高の先生方の環境認識が間違っているのか。

A君:なるほど。なんとなく読めてきた。「ノスィズム」。あるいは、教員社会の閉鎖性。さらには、なんとなく旧左翼的な傾向に基づく、一部の環境NGO的な発想。

B君:いや。単に、社会的な勉強をしている時間がないだけなのではないか。

C先生:まあ、結論は出ない。しかし、今回、韓国で聞いた反マクドナルド的な発言をしていた人々は、教育関係者だったようにも思う。環境問題活動家には、ノスィズム的な面がどうしてもあるのだが、そんな感じを再確認した思いだ。

A君:そう言えば、ノスィズムとは何か、全く説明しないで使っていますね。
 ノスィズムなる語をインターネットで検索しても、Googleだとたったの1件しか出てこない。ラテン語の”nos”=「我々」という意味の言葉にイズムが付いている。エゴイズムという日本語は、ラテン語の「我」を意味する”ego”にイズムが付いている。
 要するに、我々主義。ある集団の「内部的な価値観」だけを共有して行動をしてしまう主義

B君:テロリストの大部分は、このような価値観で動いている。彼らの内部では、命を組織にささげることが最大の名誉なものなので、自爆テロが出てくる。通常の価値観をもっている人間では考えられないことが、ノスィズムの世界では起きるものと思われる。

A君:日本の特攻隊は、軍隊組織が強要したノスィズムだったのでしょうか。

C先生:オウム真理教のような世界もノスィズムの世界。テロリストが非常に狭い範囲での価値観で動いていることは事実。しかし、そのような考え方を一方的に非難するのは容易ではあるが、ふっと自らの行動を振る返ってみると、なんとなくノスィズムのような行動パターンを取ってしまう自分に気づくこともある。

A君:大体、「類は友を呼ぶ」というように、やはり似た価値観の人間が集まる傾向は、確実にありますね。しかし、それは危険。内部の人間だけでいつでも集まって議論をしていると、その内部だけに通用する議論になってしまう。

B君:話題が大分テロのような方向にずれてしまったが、もう一つの話題がマクドナルド。

C先生:そうそう。ノスィズムにはまりすぎた。その韓国版マクドナルドの話だが、事実関係は、次のようなものらしい。要するに、ファーストフード(ファストフードと書くべきだと思うが)が人体に危害を与えることを証明したい人達がある行動を取った。朝鮮日報の日本語版のHPを参照下さい。
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/11/11/20041111000076.html

11月11日2004年朝鮮日報からの抄録
 ハンバーガーだけを食べながら、その過程での体の変化を記録する。すでに、米国では行われ映画にもなったこの実験を、韓国の環境正義市民連帯のユン氏という青年が実行。1ヶ月続ける予定だったのだが、24日目にドクターストップがでて中止した。

 その団体の幹事であるユン氏は、通常の成人の摂取カロリーと考えられる2500kcalより25%多い3348kcalを摂取。脂肪摂取量は理想的な摂取量である50g前後の3倍近い142gを摂取した。ただし、運動も倍行うこととし、通常の韓国人成人の歩行数である5000歩のほぼ2倍である9560歩を歩行した。

 10月12日に開始。その時点での体重77.1kgが実験10日目には78.3kg。実験中断の翌日には80.5kgになった。体脂肪は、16.7kgから21.9kgと5.2kgもの増加。しかし、筋肉量は60.2kgから58.9kgへと減少。肝臓細胞の正常度を示すGPT量は、実験開始前の22(正常値4から43)から、75にもなった。

 この結果に対し、ユン氏の健康診断を担当した医師は、「複数の人を対象にした実験ではないので、拡大解釈は禁物であるが、過剰なカロリーと栄養が肥満を招き、肝臓細胞を破壊したものと見られる」という見解を発表。

 それを受け、反ファーストフード運動を展開してきた環境正義側は、ファーストフードの成分表示の制度化を求め、活動を行うとのこと。

 このような動きに対し延世大学の教授は、「高カロリー料理を食事ごとに毎日食べると健康を損なう。これはファーストフードに限らない」、と極めて妥当なコメント。

A君:なんとも無謀な実験を行うものですね。大体、必要カロリー以内に抑えて実験を行うべきですね。

B君:ハンバーガーばかり食べていると、それでも栄養のバランスが悪いから、なんらかの影響は出たはずだ。

C先生:どうも、マクドナルドの使っている牛肉には、成長ホルモンが多いのではないか、といった疑いを持っている人が多い。韓国で、この話題を話している人達も、なんだかそんな様子だった。

A君:マクドナルドと成長ホルモンで検索すると、結構大量にHPが出てきます。アメリカ人の子供は成長が早い。それは成長ホルモン入りの肉を食べるからだ、といった結論を出している人が多い。

B君:そんな簡単に相関性があるのなら、苦労はしない。毎度毎度言っているように、口から入るものと、血液に入れることは違う。

A君:カロリーは、口から入れるものに含まれる熱量ですが。。。

C先生:この韓国の環境正義市民連帯というものの行為を見ると、どうも、全世界的に環境運動にもノスィズムがはびこっているのではないか、と思わせる。

A君:マクドナルドについては、勿論、そんなに好意的に考えている訳ではなくて、できるのならあのような食物は食べたくは無い。なぜならば、栄養のバランスが悪そうだから。ただ、週に1回ぐらい食べたからといって、全く健康に問題になるようなものではない。

B君:マクドナルドというと、ブラジルの熱帯林を破壊しているのは、マクドナルドだという話がいつも出てくる。

A君:元熱帯林を牧草地帯にして、牛を飼う。これは自然破壊だ。

B君:勿論、それはその通り。しかし、もしも、森林を破壊して牧草地や小麦・トウモロコシ畑にするのが、駄目な行為ならば、米国の全土は完全にその通りだし、ヨーロッパの大部分の地域だって、そんなものだ。

A君:米国にメイフラワー号が渡った1620年には、少なくとも中部までのすべてのアメリカ、すなわち東半分は全部が完全に森林地帯だった。

B君:それが現在の姿になったのは、やはり農業・牧畜業のため。

C先生:牛肉を食べるのを止めよう、という考え方も有りえない訳ではない。なんといっても、牛肉はエネルギー効率が悪い。10倍の穀物を牛に食べさせて、人はやっと必要なカロリーを得る。すなわち、効率が1/10しかない。鳥だと2倍程度、豚でも5倍程度だと思う。

A君:しかし、どうも人間というものは、最後には赤い肉を食べたいようですね。中国では経済発展とともに、富裕階級の食生活が非常に変わってきている。どうも牛肉よりになっているらしいですから。

B君:やはりヒンズー教なるものは正しいのだろうか。

C先生:牛だけではない。イギリスあたりだと圧倒的に羊。放牧されている羊の数は、本当のところ実に莫大なのではないか。羊だから良いというものではない。

A君:だからといって菜食主義が絶対的に良いという訳でもないですね。やはり適量の魚・少量の肉を食べるのが合理的のような気がしますね。

B君:菜食主義だと、必須アミノ酸のことを考慮しなければならず、確かに多少面倒。

A君:アミノ酸には20種類があるのですが、人体を形成するには、このすべてが必要。しかし、体内で合成できるアミノ酸は、12種類しかなくて、8種類のアミノ酸は食べ物から取る必要がある。当然のことながら、食肉にはすべてのアミノ酸が含まれている。だから、すべてのアミノ酸が容易に摂取できる。しかし、菜食主義だと、野菜や穀物はすべてのアミノ酸を含むとは限らない。

B君:必須アミノ酸とは、イソロイシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、フェニルアラニン、メチオニン、リシン、ロイシンを言う。

A君:例えば、米国インディアンであれば、トウモロコシが常用食だったのですが、トウモロコシには、イソロイシンとリシンが不足。すなわち、トウモロコシだけだと健全な食にならない。これを補うのが、インゲン豆。トウモロコシとインゲン豆の組み合わせが、実はインディアンの伝統食。

B君:伝統食というものは良くできているのだ。日本だと、米+大豆で、すべての必須アミノ酸を得ることができる。だから、「飯には味噌汁」なのだ。

C先生:それが欧風だと、パンと肉という組み合わせになり、地球上に広まってしまった。確かに、必須アミノ酸の問題は無い。しかし、これだけが正しいわけでも、なんでもないのだが。

A君:マクドナルドの話から、かなり離れましたが、マクドナルドは、色々な訴訟の対象になって、話題になりますね。

B君:肥満訴訟については、米国でもさすがに成立しないようだ。高カロリー食であるのは事実だが、それを食べるかどうかは、客側の選択だから、というのが裁判所の見解。

A君:しかし、マクドナルドが負けた判決もある。有名なのがコーヒー判決。余りにも熱いコーヒーを出したから火傷したというもの。さらに、マックフライ(ポテト)用の油に、牛脂肪分が入っているのに、全植物性だと言っている。これは菜食主義者やヒンドゥー教徒にとって、重大な虚偽表示にあたる、として訴訟を起こされて負けています。

B君:肥満訴訟も、どうもマックなら金が取れるというもくろみでの訴訟だったようだが、どうやら、裁判所は、そんな訴訟を起こすこと自体を禁止してしまったようだ。

C先生:マクドナルドを弁護するつもりもないし、またマクドナルドだけを特別に攻撃する訳ではないのだが、やはりアメリカの世界支配のシンボル的存在。エジプトのような国でも、マクドナルドは営業が難しくなってきているようだ。

A君:世界全体が、どうも反米。確かに、地球環境を考えない国として、どうしても反米的な言い方になりますが。

B君:向こう4年間は駄目だろう。その次の大統領がヒラリー・クリントンになるのか、それとも、ライス女史なのか。

A君:女性大統領? これまでの環境コミュニケーションの研究によれば、女性の方が、多少とも環境に対して感受性が高いようだから、期待できるだろうか。

B君:ライス女史の履歴を見ると、石油会社のシェブロンの重役だったらしいから、やはり駄目なのではないか。

A君:そうかも。

C先生:無駄話ばかりになったから、そろそろ止めよう。
 まあ、今回のキーワードであるノスィズムだが、しばしば環境活動家もこのワナにはまることがあるようだ。自覚症状なしにノスィズムにはまると、極めて危険だと思う。韓国のマクドナルド事件を調べてみて、そう思った。大体、マクドナルドのハンバーガーでなくても、例えば高級食材の神戸牛であっても、同じものばかり食べれば、おかしくなる。大体、ヒトは、雑食が原則であって、食肉ばかりを食べるようには出来ていない。食肉ばかり食べるから、大腸がんが増えるのだ。

A君:最後に、このハンバーガーばかり食べる話は、元祖は米国にあって、監督みずからが実験台になった。そして、「スーパーサイズ・ミー」なる米国映画になって、12月25日には公開されるらしいですね。

B君:マックのスーパーサイズなるものはすごいみたいだ。ハンバーガーそのものは日本のものと同じようだが、コーラが1リットル、マックポテトが200gらしい。
http://portal.nifty.com/koneta04/08/17/02/

C先生:コーラ1リットルを毎回飲み続けたら、それこそ、体が壊れる。このスーパーサイズなるメニューは、今年一杯で廃止されるらしい。そして、サラダなどを薦める作戦らしいが、米国のサラダドレッシングは、砂糖が大量に入っているとのことなので、こちらも要警戒。