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   Net Zero Emissionで材料はどうなる
     
問題は鉄、セメント、プラスチックだ 12.10.2016
               



 パリ協定で合意されているゴールは3つ。まず、(1)まずは2030年であり、日本だと26%削減、(2)その次が2050年、日本だと80%削減、世界全体としては、G7などの目標が、40〜70%削減の上の方ということなので、60%削減。数値としては、2015年の世界の排出量を335億トンとすれば、135億トン程度。(3)そして、今世紀の後半のどこかで、Net Zero Emission=NZE人為的な温室効果ガスの排出量は、人為的な吸収量(植林などによる吸収)と等しくならなければならない、と記述されており、これがNZEということです。

 CO2を出すことは、大昔はむしろ難しいことでした。木材を森林から採取して燃やしても、もともと木が大気から吸収したCO2を大気に戻すだけですから、差し引きゼロでした。これを「木材(バイオマス)はカーボンニュートラルである」と言います。

 ところが、産業革命によって、蒸気機関などが発明され、石炭がその燃料として使われるようになりました。石炭だって、もともとは樹木が地中で変質したものですから、やはりカーボンニュートラルなのではないか、という疑問も沸きます。その判定の鍵は「時間」です。石炭などの化石燃料は、過去における樹木が原料だということでして、恐らく、億年単位で地中に蓄積された樹木が石炭になったのですが、人類は300年程度で、それを使ってしまう状況にあるということです。1億年と300年とは、30万倍ほども違いますから、消費の速度が余りにも早すぎるということが問題の本質です。

 一方、バイオマス発電のように、過去数10年で樹木が大気から吸収したCOを、再び大気に戻す行為は、まあ、地球レベルで考えれば、時間も短いので、差し引きゼロという勘定をしても良いだろうということです。

 化石燃料であれば、天然ガスであろうが、石炭だろうが、時間軸に関しては、それほど違わないのですが、石炭だけが、世界的に敵視されています。それは、排出するCO2量が、天然ガスの約2倍であるということから、狙われているわけです。この石炭を利用しているのが、製鉄とセメントだということになります。

 セメントの原料ですが、地球誕生以来大気中にあったCO2が海に溶け込み、水中に存在しているカルシウム分と反応して海底に蓄積されてできた石灰岩が、プレートの移動などが原因で地上に移行したものを原料として使います。粘土など他の原料と混合した後、高温にして製造しますが、その際、石灰岩は分解して、組成中のCO2分を大気中に放出することになります。地球がCO2をため込むための手段として、「石灰岩を合成したくれた」のに、それを加熱分解して、CO2を大気に戻すという行為が、問題だとされる訳です。

 プラスチックの原料は石油です。プラスチック製造には、エネルギーが必要ですが、再生可能な電力で製造することは不可能ではないのですが、問題は、廃棄物処理である焼却です。現時点では、多少リサイクルもされていますが、廃プラスチックは最後には焼却されることになるので、石油を燃やしたこと同じになって、CO2を出すことになります。

 バイオマス原料のプラスチックという手もあります。原料としては、サトウキビからの砂糖を使うのがもっとも簡単ですが、そのため、ブラジルの森林が伐採されてダイズが生産され、ダイズ畑だったところに、サトウキビを植えることになります。

 さて、NZE時代になったとき、これらの3種の材料のライフサイクルマネジメントはどうなるのでしょうか。資源循環、すなわち、リユース、リサイクルが問題解決の鍵になるのでしょうか。

      
C先生:NZEを実現しようとすると、もっとも難しいことの一つが、実は、上記3種の材料のライフサイクルをどのように考えるかなのだ。まあ、こんな図を描いてみた。英語で恐縮。12日に、国連大学でG7諸国からの循環関係の方々がミーティングを開くのだけれど、そこでの最初の皮切りの講演を頼まれたので。


図1:NZEを実現するための、資源循環として、重要な対象群。

A君:鉄とセメントは、製造時に莫大なCO2が排出されてしまうので、これをどうするか、その戦略を作ることが極めて重要。鉄の場合に限るけれど、最終的な形は、鉄を原料として、鉄を作るリサイクルが、排出量を下げる鍵。なぜならば、かなりのエネルギーが電力で供給可能だから。一方、セメントのリサイクルは、セメント分だけをコンクリートから取り出すために、相当に工夫を要するため、しばらくは実用にならないかもしれない。

B君:一方、廃棄物となってから問題なのがプラスチック。結局は、石油を燃やすことになるので、NZEを実現するには、プラスチックを完全に循環させる必要があるけれど、金属と違って、見た目が似ているので、分別をすることが極めて難しい。すなわち、完全な循環を目指して元のプラスチックに戻すなら、同一のプラスチックに分別することが必要になるけれど、それが難しい。それを自動化することができれば、可能性はないとは言えないけれど、フィルムのような薄いものをリサイクルするのは、低品位のリサイクル製品を作るだけだろう。

A君:日本の容器包装リサイクル法でのリサイクルは、使用者にリサイクル料金というものを払わせるのが主たる目的であって、実際にリサイクルをやる効果を高めるものではないのです。今となっては、かなり歪んだ枠組みになってしまいました。

C先生:これら以外にも、循環の検討が急務になっているものがある。NZE目指した温暖化ガス削減ためには、大量の再生可能エネルギーを導入しなければならない。となると、例えば、太陽電池、風力発電、リチウム電池などの蓄電池のように大量に導入される機器は、ゴミになったから捨てようという訳にもいかない。これらについては、リユース、リサイクルを完璧に実施しなければならない。

 自動車も、モーターがほぼすべての車に組み込まれる時代になるので、金属資源の塊であるモーターや電池のリサイクルが不可欠になる。それに、自動車の場合には、製品としての重量が圧倒的に重いのも問題になりうる。
 しかし、この話題は、別の機会に譲ろう。今回は、鉄とセメントの製造時のCO2排出量をどう考えるかNZEという可能性があるのか、ということを主たる目的にしたい。

A君:まず、鉄から行きますか。製鉄をNZEで行うことは可能なのか

B君:鉄を作るには、原料は当然鉄鉱石だけれど、その成分は酸化鉄。この酸化鉄から酸素を取り除いて、鉄にする必要がある。これを還元プロセスと呼ぶ。しかし、何が還元しているのか。実際には、コークスという形で高炉に供給される炭素が主役で、炭素が鉄と化合している酸素を奪って自分がCO2になることで、鉄ができる。

A君:酸素を奪う物質なり元素があれば、原理的には製鉄ができることになるのだけれど、現実に高炉の中で起きていることは、高熱の空気が鉄鉱石とコークスの隙間を通って、下から上に流れ、そこで生じる一酸化炭素=COで還元されるというプロセスなので、酸素を奪うもう一つの有力候補である水素だけを使った高炉方式がありうるかどうか。これができれば、NZEな鉄が見えてきます。しかし、炭素なしの新製鉄法が完成するかどうか、大変疑問ですね。

B君:アルミニウムは電気分解で作られるので、自然エネルギーによる電力を使ったNZEな製法も無いとは言えない。アルミと鉄鉱石を混ぜて加熱すれば、アルミが酸素を奪って、鉄はできることにはなるけれど、コストがいくらになるか全く分からない。となると、やはり鉄の製造には、少なくとも今世紀中、場合によっては、未来永劫、コークスが必須ということになるのかもしれない。

A君:鉄の場合、日本では、一人当たりの蓄積量が10数トンになっていますが、日本は、地震国ですから、建築物・土木関係では、かなり多めの鉄骨が使われています。となると、世界的には、途上国も入れた究極の蓄積量が、一人10トンになれば充分と考えればよいのでは。そして、その後は、電炉によるリサイクルを増やしていくことで、CO2排出量を下げる

B君:多分、数100億トンの鉄を作ってしまえば、その後は、リサイクルで行けるということになるかもしれない。先進国の人口は、2025年の予想が12億5000万人ぐらい。一方、2050年の世界人口の中位予測が90億人ぐらい。現時点での世界全体での鉄の蓄積量の推定値は、2010年のUNEPのレポートによれば、一人あたり2.2トンで、途上国は約2トン/人。
http://www.unep.org/resourcepanel/Portals/50244/publications/metal_stocks_full_japanese.pdf
 となると、先進国が10トン、途上国が2トンと見積もれば、それほど間違いではないかもしれない。

A君:となると、将来、世界人口が90億人ぐらいで一定になって、すべての国が先進国なみになるとすると、900億トンのストックがあれば、まあ、なんとかなる。70億人が一人あたり2.2トンの蓄積量があるとすれば、現時点のストックの総量は、ざっくり150億トン程度。すべての人が、10トン/人の蓄積量を持つためには、あと750億トンの製造が必要となる。すごい量ですね。

B君:現時点での世界の鉄鋼の生産能力は中国が過剰能力をもっていて、11億トン/年ぐらいか。50年間、フルに生産すれば、充分な供給量になる。

A君:世界全体での鉄の製造に関わるCO2の発生原単位は良く分からないですが、日本は世界でもっとも効率の高い国でして、1.7kg/kgぐらいだから、ざっと2kg/kgと考えればよいのでは。

B君:となると、750億トンの鉄を製造するのに、1500億トンのCO2が発生することになる。

A君:カーボンバジェットという考え方があって、今後、人類が出すことができるCO2の限界は、総量で約1兆トンプラスαが限界とされている。となると、その15%が鉄の製造に使われることになる。

B君:これは、途上国の生活の向上のために、まあ、仕方のないことだと考える以外にないだろう。地球の組成を考えると、鉄以外の金属が鉄の使用目的を満たすとは思えない。そこで、あり得る考え方としては、1500億トンのカーボンバジェットを鉄に分配するとして、これを超す部分については、CCSでの対応を義務化するという考え方ぐらいか。

A君:毎年の排出量で言えば、2050年には、世界全体でどうも22億トン程度の鉄が生産され、排出係数を考えると、35〜44億トンのCO2が排出されていると考えられます。

B君:2050年に135億トンが排出量の目標値だとすれば、やはりかなり多いことになる。

A君:そして、2050年以降だけれど、鉄の新規生産はできるだけしないで、完全リサイクルを目指す。それには、リサイクルを阻害する元素、特に銅が混入することは、鉄素材の劣化につながるので、リサイクル時に、銅をかなり除外するようなプロセスにする必要がありますね。

B君:自動車の場合、昔の車と現在の車の大きな違いがモーターの数。かつての車であれば、スターター、ワイパー、ぐらいがモーター駆動だったのに、最近だと、パワーウィンドウはあたりまえだし、パワーステアリングも、昔は、油圧だったのが、最近では電動になっている。

A君:モーターは、数としてかなりなものになるようですね。リサイクルをするときに、それらを一つ一つ取り除く訳にはいかないらしいですよ。

B君:現時点ではそうかもしれないけど、どうせ2050年には銅の価格が高くなってしまうので、自然にアルミ電線になることだろうから、自動的に問題解決になるのではないか。

A君:アルミ巻線にすると、モーターが大きくなるという欠点はありますが、そうなる可能性が高いかもしれませんね。

C先生:自動車が出たついでに、2050年以降、自動車のボディーが鉄以外の何かで作られるか、という話に行くか。今後、自動車というものがどうなるか。少なくとも、先進国においては、自動車は電動化の方向にあるけれど、途上国では、2050年でも、まだ、化石燃料を燃やす車が走っていると考えられている。しかし、燃費は最大限伸ばす必要があるので、ボディーの軽量化が不可欠だ。

A君:しばらく前まで、ボディーは、将来、GRP(炭素繊維強化プラスチック)が使われると考えられていました。もっとも、この材料、軽量で良いのですが、ぶつけたときに修理が利かない。

B君:それだけではくて、資源循環の立場から考えると非常に厄介な材料だ。使い終わると、いきなりゴミになる。もしも、長期間使おうとしたら、部分的にリユースをするような設計にしなければならないけれど、果たしてそれが可能なのだろうか。

A君:プラスチック類は、あるいは、炭素繊維にしてみても、原料は化石燃料でしょうから、焼却すれば、CO2が出ますね。NZEということが求められるとしたら、焼却して、その排ガスをCCS処理しなければならない。

B君:CCSのコストが問題になるかどうか。例えば、1トンあたり$30の処理費用だと考えたとき、プラスチックボディーを最終処分するのに必要な金額はどうなるか。

A君:高分子の平均組成を何で近似するか、ですが、エポキシのように酸素が組成として入っていたとしても、3/4ぐらいが炭素でしょうか。それに炭素繊維を考えなければならないのですが、将来は、セルロースナノファイバーなどが多少使えるとして、若干減らせば、炭素分が80%ではどうでしょう。

B君:ボディーの重量が分からない。これもエイヤと250kg程度と推定すれば、その80%で200kg分を炭素と仮定。これを二酸化炭素量にすると700kgを超すけれど、1台分のCCS処理料金が$22だから、余り廃棄物処理の問題にはならないという結論になるだろう。

A君:日本には、現在、乗用車が6000万台ぐらい。15年使うとすれば、毎年400万台がスクラップに。実際には、輸出されてしまうので、全く違うけれど。年間炭素分廃棄物が80万トンぐらい。これが燃やされれば、約300万トンのCOが毎年発生。2050年での日本の80%削減目標だとすれば、2500万トンがその時点での総排出量になるので、これは大きいと言えるかもしれない。やはり、先進国では、CCSの対象になりそうです。

B君:もしも全世界が対象となれば、2050年には乗用車数が20億台とも言われている。現在の日本の30倍以上。毎年、1億トンのCOが、ボディーのプラスチックを燃やすと排出される。2050年には、世界全体での排出量を40〜70%削減となると、現時点を350億トンだとして、150億トンが想定される最大排出量。その内の1億トンが自動車のプラスチックボディーの焼却ででる。まあ、燃費の向上が確実に期待できるので、2050年ならば、許容範囲か??

A君:しかし、その先の2080年で、NZEを実現するとなると、やはり、ボディーのような応力が掛からない部分は、パーツを再利用する方向にしなければならないのでは。

B君:一度、新しいモデルを作り始めたら、さらに、そこで使うボティーの外板は、5年でモデルチェンジをするとしたら、その3世代、15年間は、再利用可能な形式にするぐらいにしないと。これは、現代の自動車産業のマインドを遥かに超えたものになるけど、できないとも限らない。

A君:NZEのためには、やはりCCSを強制との見合いで、それぞれが選択することで良いということになりますね。

C先生:最後に、セメントを考えるか。セメント産業ほど、その原料を考えるとCOをゼロにするのがこれほど難しい産業はないのだ。あれほど大量に使う原料として、地球の組成を考えると、石灰岩以外はあり得ないので。しかも、鉄とセメントほど大量に作る材料も他には無い。

A君:2013年データですが、世界で、年間40億トンのセメント生産をしているようです。そのうち、中国の生産量が急上昇をしていて、2013年データでは、世界生産量の57.5%がなんと中国で製造されています。

B君:セメントのストック量の研究も見つかったけれど、ちょっと古いのと図がかなり読みにくいのが難点。
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/153319/1/Env%26Sani_24_03_051.pdf

A君:シンガポールや韓国ストック量が一人あたり30トン。日本は15トン超。アメリカは10トンぐらい。

B君:この論文では、原料である石灰岩由来のCO2排出量も推定されていて、これは、将来も増加し続けると推定されていて、2030年には16億トン/年ぐらいになるとのこと。大体のところ、エネルギー関連での排出量も同じぐらいになるので、2030年には32億トン/年ぐらいか。

A君:色々と調べたけれど、2050年のセメント製造に関わる排出量の新しい予測は見つからなかったのですが、2007年に、予測が出されています。2050年には50億トンという数値です。
http://www.wbcsdcement.org/pdf/csi.pdf(2007)
 この数値ですが、中国の経済発展を充分に予測していなかったようで、かなり過小評価かと思います。多少、効率は上がるかもしれないですが、恐らく60億トンぐらいの排出量になってしまうのでは。2050年における世界全体のCO2排出量の目標値を、現状から60%削減とすると、すでに最初に述べたように135億トンという排出の予定値になりますが、その半分近くがセメントから出ることになります。

B君:それは大変だ。やはり、セメントと鉄鋼で、2050年には全排出量の3/4を排出してしまうかもしれない。

A君:そして、これで2080年にNZEを実現するとなると、どうするのか、という大問題になります。

B君:やはり、化石燃料起源のCO2の排出量が多いといことになる。セメント産業も、最近では、廃棄物などなんでも燃やしているけれど、やはり石炭を全く使わないプロセスというものは難しいように思える。ざっとした感覚として、現時点で、全世界のCO2排出量の5%ぐらいはセメント産業由来ではないか、と思われる。2050年の数値は、見つからなかったのだけれど、生産量が2030年のさらに2倍になったとして、もしも、プロセスが現時点と変わらないとしたら、原料から30億トン/年、セメント産業全体として60億トン/年程度の排出量になるのではないだろうか。

A君:となると、やはり、2050年以降はCCSですかね。となると、準備をどの時点から始めたら良いのか。このあたりの各国の方針を決めないと、削減が難しくなってしまう。

B君:日本の2050年の排出量をもう一度整理してみると、鉄鋼からは、生産量が7000万トンぐらいに下がっているとしても、1.2億トンぐらいのCO2排出量セメントの生産量は4000万トンぐらいになっているとして、3000万トンぐらいのCO2を排出するのでは。この2つで、合計1.5億トンとなるので、2013年時点の約14億トンの排出量の11%をセメントと鉄鋼からの排出が占めることになる。2050年の目標値が20%(80%削減)なので、生産量が増えれば、その補正をしなければならないが、残りの9%を何に割り当てるか、ということになりそうだ。

A君:いずれにしても、日本の目標値は、2050年までに80%削減なのではあるのですが、鉄鋼とセメントというCO2削減対策が難しい材料生産については、その20%分の排出権から、一定の割合を非常に安価に提供するという優遇策をしない訳にはいかないでしょうね。

B君:電力と違って、鉄鋼はグローバル商品なので、仕方がない部分はある。セメントは、重たい上に、価格が安いので、輸出は余り考えなくてもよいとなると、全額支援するという理由はないかもしれない。電力は、当面、輸出入の無い商品なので、環境税の対象として最適だということになりそうだ。いずれにしても、石油の直接燃焼は、2050年にはゼロになっているだろう。

A君:ただし、それから先のNZEを目指すとなると、2050年以降の環境税の価格は、CCSの実質的なコストということになるように思います。となると、2040年代から、シャドー環境税を入れた環境経営をすることが、すべての企業に求められそうな気がします。

C先生:そろそろ結論で良いか。電力であれば、再生可能エネルギーという手があるのだが、日本のような狭い島国では、100%再生可能エネルギーというシナリオの実現はかなり難しいのだけれど、可能性が無い訳ではない。具体的にはかなり大量の電池やその他のエネルギー貯蔵技術を導入することで、電力の単価が非常に高くなることを認めて貰えば、実現不可能とは言えないのだ。必要なゼロカーボンエネルギーの残りの部分は、アンモニアなどの形での水素の輸入ということになるだろう。できれば、エネルギーは自給したいのだけれど。
 これに対して、鉄、セメントという2つの材料に関しては、いくら技術を変えろと言われても、手段は限られているように思えるのだ。そのため、温暖化対策をやるという話になったときに、どうしても反推進集団になってしまう。プラスチックは、多少ましだけれど、焼却という最終処分は、問題になる可能性がある。
 CO2対策の最終的な対応は、やはりCCSということになるけれど、日本のCCS用適地の状況では、大量処理の実現は難しい。さらに、誰がやるかが大問題。CO2を分離して、地中に埋めるのだけれど、すぐに放出されてしまったら、何の意味もない。となると、100年にも、9割は地中に残るというような条件が付いて来るだろう。一般的な企業にとって、100年後の結果を保証するということは、相当に難しい。となると、半公的な組織がそれを取り組まなければならないということになるだろう。
 もっとも、電力業界だって、原発に関しては、実はそうだった。本来、想定外ということが起きてはいけない。福島第一の事故にしても、総額数100億円程度の投資をしておけば、恐らくかなりの確率であのような事故が起きることを防止できた。それを怠ったために、最近の経済産業省の試算のように、事故処理費用が20兆円を超すという結果になった。原発を運用する企業は、一般企業のように、利益最優先という組織では駄目だったのだ。発・送電分離は良いけれど、原発は、送電会社と一体にするという政策が必要になるのではないだろうか。
 パリ協定のお陰で、2050年であるとか、今世紀後半(本記事では多くの場合に2080年を想定)のNZEとか言った超長期の想定をしなければならない状況になった。
 一方、日本の循環政策は、最終処分地不足ということが大きな動機になって実施された。確かに、2000年頃には重大な問題だった。そして、幸いにして、最終処分地不足に関してのみは、ほぼ解決という状況になっている。
 しかし、パリ協定に関する問題と資源循環に限らず資源利用の問題は、今後、一体化して考える必要があることが確実である。特に、もっとも大量に使われている材料である、鉄、セメント、プラスチックの3種の材料については、未来予測、より具体的には、どのような技術開発が可能かの予測ともしもその予測が不十分である場合には、最終手段として、CCSによる対策があるけれど、それに伴う経済的な問題を含めて、様々なリスクの比較に基づく予測が必要不可欠になっているのだと思う。