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  目黒区答申とプラスチックごみ 04.23.2005



 4月15日に目黒区ごみ減量等審議会は、区長に対して答申を提出した。この答申は以下の五項目からなり、プラスチックについても、提案4,5に関連することが含まれている。

提案1:ごみを作り出さない買い物の仕組み「めぐろ買い物ルール」を作る。
提案2:ごみの減量に有効な家庭ごみの有料化を区民とともに考えていく
提案3:学校、地域など目黒区全体で環境について学ぶ場をつくる
提案4:古紙回収を効率化し、節減した予算でペットボトル等のリサイクルを行う
提案5:廃プラスチックの安全で適正な処理の方法について、区民に充分説明する

 一般廃棄物の中に含まれるプラスチックをどのように取り扱うべきだろうか。環境省をはじめとして、その見解はプラスチックを埋め立てすべきではなく、熱回収を検討すべきであるとのスタンスになりつつある。しかし、その前に、可能な限り、リサイクル。それは当然だろうと思える。今後、3Rを推進するために、どのような技術を開発すべきだろうか。色々と問題はある。しかし、そもそも、このような問題を考えるとき、一体、何を基礎として考えるべきなのだろうか。


C先生:目黒区長からの諮問に対する答申作りが終わって提出した。12回ほども審議会と小委員会とを開催することになった。

A君:ペットボトルのリサイクルをやることにする、というのは良いのですか。今、目黒区だと拠点回収といって、スーパーや生協などの店頭での回収しかやっていない。

C先生:新しい容器包装リサイクル法ができると、かなり状況が変わると思われる。恐らく、自治体の収集費用が多少とも補填されるようになるのではないかと思われる。そろそろ東京都23区も、ペットのリサイクルには参加しても良いころなのではないか。そして、リサイクル率を75%ぐらいまで高めると、ペットボトルのリサイクル費用がどのように評価されるようになるか、それが一つの狙い。

A君:そういえば、ライフというスーパーが、容器包装リサイクル法の事業者としての負担金2億円を払わないことを決めたようですね。罰則規定がないらしいので。

B君:ライフがもしも不払いを実施したら、放置され許容される訳もない。一般市民としては不買運動を開始すべきだ。勿論、環境省、経済産業省も黙ってはない。

C先生:話がずれたが、容器はリサイクルすればよいというものでもない。

A君:なにをやっても、どんなにリサイクルをしてもリサイクルのできないようなプラスチックごみは出る。

B君:これまでだと、不燃ごみとして取り扱い、埋め立てをしてしまうのが、東京都流だった。しかし、埋立地がいつまででもある訳ではないと考えれば、適切に再資源化をし、最終的にどうしようもないものは、エネルギー回収をするしかない。

C先生:どのような技術を使ったプラスチックの再資源化を目指すべきかを検討するのが、今回のHPの目的だ。

A君:それには、リサイクルの効果をどう評価すべきか、という議論をしないと。判断基準が無いと、何も決まらない。

B君:以前、リターナブル瓶のリサイクルを最善としたその理由をもう一度考えるべきだろう。

A君:まず、LCAの結果。リターナブル瓶が最良。もう一つが、例のエクセルによるマテリアルフローソフト。これで、ビール瓶のフローを再現してみると、やはり圧勝。

B君:前回リサイクルの価値を議論したときに、リサイクル製品が新たに生み出す価値が重要という話をしている。LCAとマテリアルフローだけでは、リサイクルの価値は、評価できないという結論では無かったのか。

A君:ただ、前回のリサイクルの価値の議論も充分に納得できた訳ではない。

B君:何が不足?

A君:単に価値だけでは駄目なように思えるのです。なぜならば、材料のライフサイクルのどこにリサイクルが行われるのか、も重要な要因のように思えるのです。

B君:もとの製品に戻るか、あるいは、カスケードで、次の製品になるか、これも重要な要因ということか。

A君:そうです。カスケードだと、もう元には戻らない。しかし、製品よりも前の原料レベルに戻るのであれば、やはり、なんらかの付加価値があると思えるのですが。

B君:それは、その通りで、例のエクセルのマテリアルフローソフトで解析しても、もとの製品に戻ると、地球からの資源の採掘は減る。

A君:ただ、あのソフトには、一つ問題があって、別用途にカスケード利用された場合には、その別用途(別製品)を作るのに必要となる地球の資源は、節約されたことになるのですが、それが考慮されていない。

B君:確かにその通りだ。プラスチックの場合に、困るのは、品位という概念が無いもので、どんなプラスチックを作るにしても、原料は、やはり高純度のものになる。となると、別用途の品位の低い製品もその高純度品を使うことになってしまって、カスケードリサイクルが相対的に優位になる。

A君:少々具体的な説明をした方が良いと思います。現在、廃プラスチックを利用して、木の杭に似たものを作り、公園などで土木用途に使用している。これをギボク(擬木、偽木?)と呼ぶことがあります。この製品は、価値は低いものですが、もしも、カスケードリサイクルで作る以外にでも、どうしても、このギボクを作る必要があるのなら、それはバージン材もしくは相当品で作ることになるのです。

B君:その論理はおかしい。他のものに使えないような廃プラを使わなければならないから、ギボクを作る。もっと言えば、容器包装リサイクル法に基づいて、1トンあたり5〜10万円という法外な処理費を貰えるから、作るものがギボク。

A君:確かにそれは事実ですし、そういう製品もあるのですが、かなり良質の素材から作っていると思われるギボク製品もあるのです。

B君:それは、製品によって違うのだから、各論で評価をする以外に方法は無い。

A君:それはそうですが、それにしたって、評価の原理原則が欲しい。

B君:分かった。やはり、製品のライフサイクルフローを考え、どの段階へのリサイクルであるかを、考慮すべきだ。少々長いが、石油化学の状況を考えてみる。
 原油は、分留されて、軽質油から重質油までが分離される。硫黄分などは、それぞれ除去される。
 そのひとつに、ナフサ(粗製ガソリン)ががあり、ナフサが、様々な石油化学の原料になる。
 また、ベンゼン、トルエン、キシレン(BTX)といった化合物も作られて、様々なプラスチックの原料になる。
 ナフサからはエチレンも作られ、プロピレンも作られ、これらはプラスチックの原料になる。
 プラスチックが成形される前には、樹脂ペレットという大豆ぐらいの玉になる。
 これが成形されて、例えば、箱のような製品になり、輸送用などに使われることとする。さて、ここまでが、製品製造工程。
 さて、ここからが、廃棄・リサイクル工程になる。
 もしも、そのプラスチック箱が、通い箱のようなもので、再利用が可能であれば、それは、洗浄・検査工程を経て、再度箱として供給される。
 これがリユースであり、製品の寸前に供給されることになる。
 その製品の価値は、再利用であっても、機能的になんら問題は無いのだから、価値は、新品の箱の価値と同程度か、多少下がる程度である。
 ところが、その箱が何回か使っているうちには壊れてくる。パーツを交換できるように設計されていれば、パーツを新品に交換して、再度利用できるように修理される。
 ところが、修理不能となったら、その箱は、プラスチック材料としてリサイクルし、また、元の箱の形に成形しなおすのが、もっとも効率的。
 これがマテリアルリサイクルである。やはり、再生製品は、製品よりも前のライフステージに供給される。
 もしも、このプラスチックがPET樹脂などでできているときには、ケミカルリサイクルを行って、再度、PET樹脂に戻すことも理論的には可能である。
 もしも、この箱が、例えば、ポリエチレンとポリプロピレンとの混合物でできており、これを触媒で分解すれば、ある割合で、BTXに作り直すことも可能である。これが、さらに前段への原料を戻すケミカルリサイクルになる。
 さらに、多種多様なプラスチックの混合物である場合には、ガス化といった方法が採用される。塩化ビニルや塩化ビニリデンが多少混じっていても、このガス化を行えば、塩素は塩化水素として回収が可能。ただし、この際得られるガスは、CO、H2、HClといったものであり、これは、石油から樹脂が作られる製造段階では副生はする可能性はあっても、主たる化合物ではない。これはケミカルリサイクルとは言っても、カスケード的な色彩が強いものだと言える。
 廃プラスチックをコークス炉用の原料にすることも行われているが、これも分解されて出てくる物質が、基礎的な物質であり、H−C−C−Hといった化学結合は持っていないので、同様の性格だと判断すべきように思える。
 廃プラスチックを高炉に吹き込んで利用することが行われる。この場合には、発生したCOガスが、鉄を還元することに使用されるので、確かに還元力の活用をしていることにはなるのだが、次に述べるような考察をすると、燃焼反応との差がどこにあるのか、微妙だという考え方もありうる。
 最後に燃焼反応を考察する。プラスチックは、最終的には、「酸化されうる」という能力を使っている。この「酸化されうる」という能力だが、例えば、上記のようなCOガスを発生できるということでもあり、このCOガスは、酸素を還元することによって、自分自身はCO2ガスになる。高炉吹き込みの場合には、COは、鉄を還元しているが、焼却の場合には、酸素を還元している。
 この酸素を還元するということが、有機物の最後の能力であるので、上記の両者を別のものであると判定することに妥当性が無いというつもりはない。
 さて、この燃焼力利用あるいは焼却であっても、高効率燃焼、低効率燃焼、単純焼却処分と3段階がある。高効率燃焼とは、もしも発電に使えば、30%以上の発電効率が期待できる場合であって、低効率燃焼とは、通常の清掃工場の焼却炉程度の10%程度の発電効率を意味する。単純焼却処分とは、せいぜい、温水供給程度のエネルギー回収しか行わない場合を意味する。

A君:長かったですね。でも大体分かりましたよ。プラスチックリサイクルをある序列で考えようということですね。
 すなわち、
石油−ナフサ−BTX等−モノマー類−樹脂−成形−製品−別用途(含むガス化)−燃焼力利用(効率高)−還元力利用−燃焼力利用(効率低)
 そして、どの段階に戻るか、それを評価しようということですね。

B君:やはり分かるか。そうだ。製品が中心にあって、そこから前に戻るリサイクルは、できるだけ、製品に近いところに戻るものが良い。後ろにしか流れないリサイクルでも、できるだけ製品に近いところで利用されるものが良い。

A君:しかも、前に戻るリサイクルをより高く評価すべきだということですね。

B君:先ほどのギボクの話にしても、リサイクル品で作られる余り高級でないギボクは、もしもこれをカスケードで作らなかったら、本物の木が使われるか、コンクリート製が使われるだけだと考えればよいのではないか。

A君:製品のところがもっとも価値が高いと考えて良いでしょう。絵を描くと、こんな感じ。

図1:プラスチックに関するリサイクル価値軸の提案

B君:そして、製品自身よりも前に戻るリサイクルの価値が高い。方向がやはり重要。

C先生:こんな考え方が、しっかりとした枠組みになると、リサイクルを進めるための大きな方針が見えてくる。価格なども実際のものを調査して、精緻化を試みると良いだろう。

A君:現時点での結論は、こんな風になりますか。まず、製品自身のリユースが、もっとも価値が高い。もしも、マテリアルリサイクルをする場合でも、同一製品に戻るようなリサイクルの方が、カスケード型のリサイクルよりも、価値が高い。製品よりも前段階に戻すリサイクルを試みるのが良い。PET樹脂であれば、解重合が可能であり、すでに実用化されている。それ以外の樹脂の場合であれば、再度、樹脂の原料になりそうな物質が生成するリサイクルプロセスが良い。炭素−炭素の結合が切れてしまう一酸化炭素へのガス化などであれば、それは、別用途へのカスケードの一種として考えるべきだが、特殊なケースでは、製品に戻るリサイクルとして考慮すべき場合もありうる。高炉還元を燃焼力利用よりも上位に置く理由は無いわけではなく、同じ燃焼力利用であれば、効率が高い方が良い。

B君:それを表の形にしてみると、プラスチックのリサイクル一般論は、大体、以下の順位で優先すべきである。しかし、リサイクルループの大きさ、生み出すリサイクル製品の価値などを考慮すべきであり、そのためかなりの例外がありうるが。
(1)製品のリユースが最良。
(2)製品に戻る水平マテリアルリサイクル。
(3)製品に戻るケミカルリサイクル。
(4)カスケード型マテリアルリサイクル。
(5)カスケード型ケミカルリサイクル。
(6)燃焼力利用型(熱利用効率の高いもの。30%以上。)
(7)還元力利用型。
(8)燃焼力利用型(熱利用効率の低いもの)
(9)単純焼却

ただし、これらの順番が確定している訳ではない。しかも、カスケード型リサイクルに限っても、一般的によく言われるマテリアル、ケミカル、サーマルといった優先順位がいつでも成立するという訳ではないことだろう。何を作るかによって、そのリサイクルの価値が決まる。

A君:燃焼力利用のところですが、高効率燃焼用の燃料として使えるか、あるいは、焼却炉程度の低効率燃焼とせざるを得ないか、それは、主として、塩素分が決めることになりますね。

B君:廃プラスチックを高発熱量の燃料にしようとすると、塩素の含有量はゼロが理想。なぜならば、もしも塩素が含まれている場合に排出されるHClがボイラーの腐食を招く。

C先生:そういうことだ。となると、塩素を含む一般廃棄物系廃プラは、清掃工場の焼却炉にできるだけ入るような分別方法を考える必要があることになる。

A君:勿論、全体の効率が高く、上記の優先順位が守られるような分別方法ですね。

B君:プラスチック焼却処理を許容するということは、分別が不必要ということではない。却って、より精緻な分別が必要になるということを意味する。それはなぜか、と行きたいが、次回ということか。

C先生:そうしよう。今回の結論もまだまだ仮のものだ。より精緻な理論化が必要なことは論を待たない。