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マイナスイオン定点観測 09.19.2004 ![]() |
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昨日、岩手大学において行われた化学教育研究協議会に招かれ、「社会現象としてのマイナスイオン」なる講演を行った。水溶液中のイオン(陽イオン、陰イオン)の教育が、最近、中学から高校の課程に移った。これが果たして良いことなのか、という問題意識を持っておられる化学教育関係者が多い中、話題となったマイナスイオンの実態を説明せよとのことで、盛岡まで出かけた次第。 そこで、大変にショックを受けた。それは、「マイナスイオンについて調査せよ」、との課題を与えた高校の先生からの情報。ある生徒がインターネット上で本HPを発見し、マイナスイオンの記事を見て、最近、マイナスイオンへの攻撃がない。それは、このHPの筆者がマイナスイオン派に負けたからだ、というレポートを出してきたとのこと。 これはまずい。大変にまずい。できることは大体やったつもりで、負けたなどという意識は全く無い。 少なくとも大企業からのマイナスイオンの製品の増加は止まった。しかし、未だに、継続的な努力をしている大企業や、マイナーな商品を販売しているは企業が多数あるのが現状。 マイナーな商品も本来は消し去るべきだとは思うものの、それは危険な作業でもあるし(その理由は、本文でお読みください)、余りヒステリックになるのも大人気ないと思っているに過ぎない。 そこで、取りあえずマイナスイオンの定点観測を開始し、今後も継続的続け(多分1年に1回程度)、マイナスイオン商品の動向についてHPの記事にすることとした。 C先生:ということで、今回の岩手大学での講演は大変に貴重なものだった。今後ともマイナスイオンの追及を止めてはいけないようだ。 A君:大企業は、最近はシャープのプラズマクラスターイオンに乗っているメーカーは多いですが、それ以外のところは適当なところで取りやめているようですから。 B君:中小メーカーはまだまだ。特に、トルマリングッズのような最初から詐欺商品であることは分かっているはずなのに、それが消えない。やはりどこかに利益を得る構造が残っているのだ。 A君:中小メーカーというか零細メーカーというべきでしょうが、そこでは科学の常識を持たない人が開発している訳でから、いつまでたっても消えないのでは。 C先生:それが実に最大の問題。これまた自然科学を十分承知の方はご存知の通りだが、あることを100%否定することは、自然科学の世界では不可能だ。なぜならば、現在の科学は完全なものではないからだ。今後とも科学は進歩を続ける。これは、現在の科学では説明できない現象をわれわれは探し続け、その機構を解明することが科学を志すものの使命だ。ということは、常識的に有り得ないということは言えても、100%絶対にないということは、科学者として言うべきではない。 A君:本来であれば、それが100%真実であることは、100%否定することに比較すれば、かなり簡単に可能なことですから、商品を開発した側が証明するのが義務。 B君:この手の似非科学関連事項では、傍観者は当事者ではなく、あくまでも傍観者であって、しかも傍観者は当事者を批判をするのが義務だと考える。開発し販売する側は、本来利害関係の無い市民を巻き込むのだから、100%真実であることを証明するのが義務。それが正義というもの。 C先生:正義とかいう議論はまあ置いておいても、科学をご存じない開発者は、本当のところは50%も証明できていなくても、100%証明できたと思ってしまうのだ。 A君:例えば、「トルマリン入りの布団」ですか。これが効果があるということを医学的に、例えば、血液を検査することによってなんらかの結果を得たとしても、その方法論がどのぐらい正しく行われていたかを批判的に見ることができる人はほとんど居ない。ダブルブラインドの条件を満足する実験であったのかどうか。 B君:それがたとえダブルブラインドの条件を満足していたとしても、その効果がトルマリンのためであるということを証明するには、なかなか困難だろう。確率的な検証もきっちり行うことも必要。となると実験対象数にしたって100名ぐらいにはする必要がある。 C先生:しかも、万一の話だが、トルマリンを入れた布団によって疲労が回復するということが証明できたとしても、それならトルマリンの何が利いているのかを証明する必要がある。マイナスイオンなどというものが利いているのか、それとも、ある種のトルマリンが放出している微量放射線のためであるのか。万一なんらかの効果を出すトルマリン入り布団があったとしたら、どうも微量放射線の効果である可能性の方が高いだろう。 B君:しかし商品としては、微量放射線「布団」では売れない。 A君:このような議論をもう少々続けて、これまでのマイナスイオン商品を総まとめ。そして、現状調査に行きますか。 C先生:その前に、マイナーな商品を否定することは、科学を知らない人との宗教論争になる可能性が高い。そのため、いささかリスクが大きいのも事実。これだけ付け加えたい。B君:それなら、「マイナスイオンドライヤー」。 A君:マイナスイオンの50万〜100万倍量のオゾンを出しているドライヤー。名称は「オゾンドライヤー」であるべき。 B君:オゾン水のために、髪の毛の表面が溶け出して、そしてスベスベ感がでるのだろう、というのが我々の解釈。 A君:髪の毛を溶かすドライヤー。キューティクルがかわいそうなドライヤー。 C先生:もう一つ、「除菌イオン」。この除菌のテスト自体が怪しいのが救い。もしも本当に除菌されているとしたら、こんなエアコンの中で育った子供は、無菌化することになる。外に出た瞬間にあらゆる感染症の犠牲者になってしまう。これは害悪か犯罪でしかない。実際には、除菌能力はほとんど無いから、大丈夫だと思うが。 A君:人間が生きているのは、雑菌との共生が鍵であるという基本中の基本を知らない。 B君:それによって、免疫システムを鍛えて、様々な外敵からの攻撃に耐えられるようになる。 C先生:ある種の病気で、免疫システムが最初から機能しないあるいは機能が低い子供の場合、あるいは、院内感染しやすくなっている治療中の病人がいる病院のような場以外には不要。 A君:本当に除菌できていないのに、除菌イオンとうのも欺瞞ではありますが。 B君:このような実験は、もっと数箇所で科学的に行うべきなのだが、結構難しい。このシャープの除菌イオンの実験は、北里大環境科学研究所が行ったものだが、他の実験はあるのだろうか。 C先生:某ライバルメーカーから、再現が難しいという噂話を聞いた。だから、誰かがやったのではないか。 A君:いずれにしても、何段階もの問題をもった商品。 C先生:その他にも「静電気利用の掃除機」、「オゾンを出す冷蔵庫」「水破砕型の加湿器」などなどがあったが、これらもチェックすべきだろう。一方、一時期あった、「静電気利用の扇風機」のように、ほとんど名前だけのもの。これらはどうなったのか。 A君:実体別にリストを作りますと大体、こんな感じになります。 マイナスイオン商品の実体名リスト (1)トルマリングッズ(微量放射線型) (2)オゾン発生型の商品 (3)除菌イオン搭載商品 (4)静電気利用商品 B君:名前が、我々の命名したものになっているな。実体反映型の名称だが。 A君:これらをキーワードにして、インターネットを検索し、どのぐらいの数がヒットするか。これから行きます。その場合に使用するキーワードは、上のリストという訳には行かないので、まあ適当にやりました。 (1)トルマリン マイナスイオン 36、400件 (2)マイナスイオン発生器 26、400件 (2−6)マイナスイオン 放電 5、790件 (3)除菌イオン 11、100件 (4)マイナスイオン 静電気 10、300件 B君:どの企業がどの製品を作っているか。まあ、それが理想だが、調査が大変すぎる。 A君:その通りなんです。そこで、http://esp2003.hp.infoseek.co.jp/m_ion.html というサイトに、昨年の8月に調査した「恥ずかしい商品を製造販売する大手企業」なるページがあるので、そこにあるデータを本年版に拡張することをまずやりたいと思います。 調査その1: 各社ホームページ内を「マイナスイオン」、「除菌イオン」にて検索したヒット数(Google) B君:マイナスイオンをいまだに拡張しようとしている企業が松下系の三社。それに対して、すでにマイナスイオンを見切った会社が、ダイキンと富士通ゼネラル。トヨタも不思議なことに、減っていない。 A君:除菌イオンのシャープは、当分熱心でしょう。それにつられて、参入してきたものと思われるのが、日産自動車とデンソーの2社。 C先生:他の企業は、大体現状維持ということだが、これは、早晩減ることを意味しているだろう。大企業との戦いは、松下、シャープに絞ればよいようだ。 B君:マイナスイオンだけでなくて、ついでだが注目される似非科学商品なるものもリスト化しよう。 似非科学商品リスト 最近注目の似非科学商品と思われるもの (1)アクア(ソフト)チタンスポーツ用品 (2)抗酸化物質放出エアコン (3)活性水素水(日田の天領水)
(4)常温遠赤外線商品群 A君:それでは、適当にまたインターネットを検索してみます。 似非科学キーワードのヒット件数 (Google)(1)アクアチタン 1、910件 (1)ソフトチタン 347件 (2)抗酸化 エアコン 3、980件 (3)活性水素 60、300件 (4)遠赤外線効果 60、500件 (5)EM菌 61、400件 (6)波動調整 50、600件 (7)クラスター 活性 18、200件 B君:古豪はなかなか強力だ。最強豪はなんとEM菌であることが判明。 C先生:今年の定点観測はそんなところにするか。似非科学を普及したことを理由に表彰をするとしたら、 (1)シャープの除菌イオン 似非拡大賞 似非科学撲滅に向けた本物の表彰は、
マイナスイオンではなく、微量放射線商品を謳っているサイト。 ここも表彰の対象なのでは。 C先生:それでは、番外で「似非本質暴露賞」を授賞したい。 |
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