________________


  マイナスイオンで非難された  07.08.2003



  ある方からの情報で、機能性イオン協会のHPにて、副会長の山田氏が筆者を個人的に非難をする文章を書いているとのこと。読んでみたら、全く倫理性の無い個人攻撃なので、多少腹を立てて、この文章を書くことにした。

 それに、若干の裏情報を追加。


 どうもかなり前から掲載されていたようだ。
http://www.japan-ion.jp/iken/yamada030120.html
をご覧いただきたい。このファイル名が正しければ、2003年1月20日だということになる。

 実は、その後の2003年3月6日のことになるのだが、「イオン情報センター」(訂正しました。以前は機能性イオン協会と書いてありました)から招かれて、「マイナスイオンに対して、なぜ反対意見を述べるか」、について1時間ほどの講演を行った。そこでは、様々なご意見をいただいたが、この山田氏のような的外れの意見は無かった。

 恐らく山田氏のような非常識な意見は、この機能性イオン協会の中でも、少数派なのだろうと思われる。大部分の関係者は、マイナスイオン商品のインチキ性を認識して居られるようだった。

 さて、山田氏の攻撃は、大体以下のようなものである。

(1)安井個人は、マイナスイオンの研究者でない。にもかかわらず、マイナスイオンについて傍観者的かつ否定的なコメントを出すことは、研究者の風上にも置けない。

(2)特に、自分自身でデータを出しもしないで、否定ばかりしているのは、まともな研究者ではない。
 山田氏「自己主張する時間が有ったならば、他人の仕事にケチをつけてまわらずに、何故自分自身で実際に問題を解決する努力、つまり自分の実験データーを示す努力をされないのかきわめて不思議です」。

(3)マイナスイオンの解明がなされない理由を述べるべきだ。
 山田氏「原子・分子などに外部エネルギーが作用し、電子の出入りによりネガテイブ イオン(negative ion)あるいはポジテイブイオン(positive ion)が生成されること、特に、空気中の水分子のイオン解離やこれらの生成イオンがその後(約0.01秒程度後)には周囲の中性分子と反応し、次々と形を変えるのでおのおのの分子の正確な同定が困難なこと、呼称的にはマイナスイオンやプラスイオンであるが、ネガテイブ イオン(negative ion)あるいはポジテイブイオン(positive ion)に相当し、極めて早い速度で変化する水和イオンが関連した複雑な化合物である可能性が大きいこと、おのおののイオンは負イオンあるいは正イオンとして大別できること、しかし、多くの研究者による努力のもかかわらず、今尚まだあまりにも早い変化を正確に追跡し、物質として正確にそれらの構造を技術的にかつ定量的に把握・同定できない実情を明確に述べるべきです」。

(4)放射線によるマイナスイオンを危険だと言っているのは無知蒙昧。
 山田氏「第3番目には、第2番目と同じ段の「放射線にいたってはごく微量でも被爆の危険性がある。とても健康にいいとは思えません。・・・」の部分で、安井氏が放射線ホルミシス効果について何も知らないことが明らかです」。

(5)マイナスイオンをまやかしだと言っている。
 山田氏「第4番目には、239ページの3段目「・・・ほとんどまやかしの世界です。・・・」の部分の表現は極めて重大であり、発言者は自分の言動に責任をどのように取るつもりなのか他人事ながら私は少し心配です」。

(6)東大教授の肩書きを悪用している。
 山田氏「彼は東大教授としての社会的背景を悪用して、主張内容の是非を検討せず、あるいは自己査定できないまま、社会全般に警鐘をもたらすとの美名(?)のもとで陶酔的に自己宣伝に大いに努力している人物であるといえます」。

 さて、ひとつひとつ反論しましょう。

(1)自分で研究を行なっていない課題に対して、コメントを言うのは悪いことなのか。
 これまでの大学関係の研究者は、どちらかと言えば、他人の研究に対してコメントを述べることを行なって来ませんでした。それが、ルールだと見なされている部分もあります。しかし、それは半分正しく、半分間違いです。独立性が保証され個人的な判断が許容されている大学教授とは言っても、国や社会から研究費をもらって研究をしているのであって、社会に対して大きな責任を持っています。単に役に立たない研究をやっているだけならば、将来ひょっとしたらという可能性があるので良いのですが、その研究が、社会的に害悪を流す可能性があれば、それは、如何に個人的に独立して行なっていても、批判されてしかるべきです。すなわち、大学教官と言えども、社会に対してもっと発言をすべきであり、その内容は、社会全体を対象とすべきであって、学会の内部も当然、対象とすべきことです。
 ただ、今回の件について言えば、安井個人として、マイナスイオンの研究に文句をつけたものは、人体影響の研究ぐらいのものです。マイナスイオンの同定、寿命の測定などの実体解明に関わる研究については、勿論容認どころか推奨しております。
 現在発表されている人体影響の研究については、ほとんどが怪しい感触です。他の要素、例えばオゾンの発生による影響や湿度の影響といった要素の影響を完全に排除しているのだろうか、通常求められるダブルブラインドの条件を満たしているのだろうか、そんな疑問があるぞ、と文句を付けただけです。
 いずれにしても、私のマイナスイオンに対する反対コメントの大部分は、「未科学」であるマイナスイオンを詐欺商法のネタに使用するといった行動によって、技術者としての誇りを失った大メーカー、それに便乗する中小メーカーが多数あるが、まず「未科学」であるということを社会に知らしめるべきだ、と言っているに過ぎません。

(2)自分でデータを出しもしないで反論ばかりしている、という非難も当らないと思います。
 研究で批判したのは、人体影響です。医学関係の研究には時に怪しいものがあります。以前に本HPで警告したものに、電磁波吸収器具の人体実験結果がありますが、なんと効果があったという結論になっています。その人は、今、本日の記事にも出てくる大学で化学物質過敏症に取り組んでいますが。
 自分でデータを出す価値があると思う研究題材と、そうでない題材があって、マイナスイオンの実体の解明は、まだ、科学の把握できる範囲のギリギリのところにあって、確実なデータを出すには相当の投資が必要だと思えるものの、その結果がでたところで、それほどの価値があるとは思っていませんので、取り組まないのです。これは個人の自由です。

(3)マイナスイオンが未科学である理由は、確かにその存在を確実に把握することが難しいからです。
 一つは、数の問題、一つは、寿命の問題です。それは、山田氏が指摘している通りだと思います。問題は、このような不確定な物質が人体に対して良い影響があるとどうして結論できるのでしょうか。健康食品の場合だって、「エイコサペンタエン酸」「ビタミンE」といった物質が特定される。マイナスイオンは、通称であって、実体の分かった物質名としては言えないのが現状。
 それに、「分子数」の議論が怪しい。これほど数が少ないものが、どうして生体にポジティブな効果が出せるのでしょうか。オゾンは0.01〜0.02ppmといった微量であって、健康に悪い影響はない、と主張しておられますが、その0.01ppmであっても、1立方cmあたりの分子数にしたら、2500億個はあるのです。しかもオゾンは生体との相互作用の強い物質です。そこに、寿命も短ければ、実体も不明な、恐らく微小な水滴が静電気を帯びているようなものであるマイナスイオンが、1立方cmあたりたったの1万個ぐらいあったとして、大量に存在するオゾンはなんら人体に影響を与えることなく、マイナスイオンだけが人体や生体にポジティブな効果を示すといったことがありえるでしょうか。なんといっても、オゾン分子の数は、マイナスイオンの2500万倍もあるのです。
 こんな単純な問いにすら答えられないのが、マイナスイオンの応用の現状です。「未科学」と一応表現していますが、それでも不十分かもしれません。

(4)放射線の話です。ホルミシス効果があるかもしれないということは良く知っております。
 微量放射線が健康に良い影響を与える可能性も否定しません。しかし、私が言っているのは、「このマイナスイオン商品は微量放射線を出しております」、と書くべきだと、商品の表示の問題を言っているに過ぎません。

(5)「マイナスイオンをまやかしだと言った」とのことですが、「マイナスイオン商品はまやかしが多い」、ということを言いました。
 そんな商品をまやかしと批判しないマイナスイオン関連の研究者もまやかしです。なぜならば、商品が有効であり、かつ悪影響が無いことを実証するのは、その商品を開発する側、あるいは、マイナスイオンなる現象を推進する側に責任があるのです。そして、その実証が不十分だと批判するのは、外部の人間です。その外部の人間の役割を果たしているに過ぎません。もし、私がマイナスイオンを批判をしたことが、社会的正義や科学の正しい発展などに対して何か重大な悪影響を及ぼしたのならば、いくらでも責任は取ります。具体的にご指摘いただきたい、と考えます。

(6)最後の項目ですが、このような非難をする資格のある方とは思えません。

 以上が反論です。


 ついでに、最近のマイナスイオンの状況について、概要をまとめてみます。

(1)マイナスイオンの効果を大々的に主張している商品は、少なくとも家電関係では減少したが、まだ存在はしている。特に、小物には数多く残っている。多少勢いが弱くなってきたのは、ご同慶。

(2)マイナスイオンと言いながら、湿度の制御、オゾンの効果、エチレンなどの分解、静電気の制御、といった実際には別の機構によって機能を出す製品が現れている。マイナスイオンだなどと言わないで、正確に機構を説明すればよいのだが、それだと、恐らく「インパクトが無い」、と量販店や営業関係に叩かれるのだろう。ただし、除菌効果は怪しい。もしも本当に効いているなら、逆に大問題なので、怪しいぐらいが罪の無いところなのかもしれない。

(3)そのシャープの除菌イオンは、マイナスイオンとプラスイオンの両方を出しているとのこと(プラスイオンは健康には悪いはずだったのだが)。この両イオンによって細菌・ウイルスの不活化が可能だという主張が行なわれている。
 しかし、この除菌イオンが本当に効果があるのかどうか、他の電機会社から、かなりの疑義が出されているようだが、シャープはどうも時間稼ぎのために、逃げ回っているらしい(この部分は伝聞情報なので、不確実)。
 公正取引委員会なども動いている。これは事実。シャープの出した室内の浮遊細菌が減るというデータについて、プラズマイオンを全く放出しない場合にも、当然落下して減るので、そのバックグラウンドデータを付け足すことになった。
 別のメーカーの追試によると、シャープのクラスターイオンを用いた場合も、バックグラウンドデータとほとんど重なっていて、除菌イオンの効果は認められないとのこと(これも伝聞情報)。
 シャープの主張を支える元データは、(財)石川県予防医学協会が出したようだが、この財団に問い合わせをしても、詳細は守秘義務があって出せないとのこと。財団法人などという公益法人が公益よりも私益を優先して良いのだろうか。

(3’)さらに、シャープの主張をバックアップしているのが、北里環境科学研究所。「ウイルスをやっつける」は、ここのデータ。しかし、実験装置の概要も明らかにされておらず、「どうやって測定したか分からないものをどうやって信用するのだ」、という議論があったらしい。その後、装置の図が公表されたが、こんなもので、どう考えても測定が出来る訳が無いという代物らしい。ウイルスを取り扱う測定機関が余りないもので、他に頼めば良いというものでもないらしい。

(3”)シャープの担当者達が、このプラズマクラスターイオンから逃れられないことには、やはりお家の事情があるようだ。すでに事業本部までできていて、代表取締役専務の熊谷祥彦氏が推進役をしており、社長も「これで行く」という宣言をしているようなので、いまさら、データがインチキでしたなどとはいえないのだろう。
 
(4)となると、シャープは、まだまだプラズマクラスターイオンで攻勢に出るのだろう。
 以下、無責任な予想である。クラスターイオンの次の段階の発展形は、多分、アレルギー対策ではないか。シャープのHPを探っているときに、英国アレルギー協会という文字を発見して、そんな気がした。すなわち、この秋口頃から、クラスターイオンで、「アレルゲンをやっつける」などと言い出しそうだ。
 実際に効く可能性はあるのか。これも、クラスターイオンでは決定的に数が足らないので、どうしても無理だと思うのだ。しかし、オゾンなら効きそうだ。やはりオゾンを相当に出す制御にしないと駄目だろう。
 そして、その次の次の予想だが、「インフルエンザウイルスをやっつける。SARSウイルスもやっつける」、になるだろう。これは今年の12月ぐらいからか。

(5)量販店(例えばヨドバシ)のエアコンのコマーシャルを見ると、エアコンは、まだ、「除菌イオン、酸素、マイナスイオン」が売り文句になっている。しかし、量販店もそろそろマイナスイオンは売り込みに不要だと思い始めたようだ。マイナスイオンも後1年ぐらいの命か。

(6)個人的予想では、3年間という寿命のマイナスイオン商品だったが、すでに、それに近い時間が経過した。思ったよりも長寿である。しかし、いずれにしても、消える運命。そんなものに、1万円もの余分な支払いをさせられた消費者が怒らないのはなぜなのだろう。

(7)この消費者がなぜ怒らないのかということだが、どうも、日本の消費者は、騙されることを期待しているのではないか、などと勘ぐってしまう。すなわち、気持ちよく騙されて、何か効く気になれば、それ良い。それがある種の癒しになる。それで良いのなら、別に誰も文句などを言うことはないが。
 ただ、多少気になることはある。それは、この騙されることを容認するという傾向には、やや反科学の臭いがあることだ。

(8)話題が突然変わって、マイナスイオンドライヤーだが、これは確かになんらかの効果がある、とこれまでも本HPで述べている。ただし、それはマイナスイオンのためではなく、オゾンが原因だろう。水に濡れた髪にオゾンを吹きかければ、オゾン水ができる。そのオゾン水が髪の毛の一部を溶かすなどといった変化があるのではないか、と想像している次第。多少のダメージぐらいあったって、キレイになれば良いのでは、というのが本HPの主張でもある。
 待てよ、髪の毛の一部を溶かすかどうか、これは実証が可能だ。誰か調べてみませんか。

以上。