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  ムーンライト計画時代と今後の省エネ技術 
 09.25.2011




 本HPでは、2050年の温室効果ガスの削減目標である80%削減を実現しようとすれば、もっとも重要な技術は、省エネ技術であることだと考えている。

 2050年における日本のエネルギー消費が、現在の半分程度にならないかぎり、温室効果ガスの削減も難しい。

 ところで、省エネ技術の研究は、日本でも相当前から行われている。

 それは、後でやや詳細に述べるように、1973年の石油ショックに対応するために、自然エネルギーの利用などを検討するサンシャイン計画が国家プロジェクトとして1974年から走りだした。

 その後、1978年からムーンライト計画が走った。これは、省エネ技術・未利用エネ技術の開発プロジェクトであると言っても良いだろう。

 ムーンライト計画で、どのぐらいの省エネ技術が生まれたのか、と言われるとそれは難しい問題である。そこで、今回は、1978年にスタートしたムーンライト計画を振り返って、何が行われたかを検証すると同時に、今後、どのような省エネ技術を、どのようにして開発すべきかを探ってみたい。



C先生:なんとなく懐かしい名前であるサンシャイン計画、ムーンライト計画、さらには、地球環境技術開発が1989年から行われ、それが統合して1993年からニューサンシャイン計画が走り、2000年まで継続した。
 研究費の総額は、
◆サンシャイン計画 4400億円
◆ムーンライト計画 1400億円
◆地球環境技術開発  150億円


A君:サンシャイン計画の主な成果は、ここにまとまっています。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/01/01050201/01.gif
 テーマだけ示せば、
△1:全国地熱資源総合調査
△2:深層熱水供給システム
△3:褐炭液化
△4:石炭利用水素製造
△5:石炭ガス化複合サイクル発電
△6:高カロリーガス化
△7:水素製造技術
△8:水素利用技術
△9:高性能分離膜複合メタンガス製造


B君:現時点で実用になっているものがあるか、と言われるとまだない。石炭ガス化複合サイクル発電が中国などを相手にして商売になりそうだけれど、その他のものについては、まだまだ。場合によると、今後も休眠という可能性が高いものも多い。

A君:例えば、地熱の資源マップもこのプロジェクトでできたのですが、その後の日本は原子力開発に一直線。地熱のようにコストが高いエネルギーは、ほとんど見向きがされなかった。しかし、今回、やっと休眠から覚めて、実用化されるのではないですかね。

B君:この主な成果には書かれてないが、四国の塩田の跡地に作られた集光型の太陽熱発電の開発事業は、今でも極めて評判が悪い。作られたのに想定される発電量を大幅に下回ったため、すぐに解体されたらしい。何が悪かったのか、詳細は分からないが、それ以後、日本では太陽熱発電は無いということになっている。多分、その結論自体は正しいのではないだろうか。勉強代としては高すぎたということで評判が悪いのだろうか。

C先生:サンシャイン計画が行われた1974年頃からというのは、日本のエネルギーの大部分が石油で賄われていた。それ以外には、多少の水力発電があり、若干は国産の石炭があるという状態だった。今から見れば、技術も全くない状態からの研究のスタートだったので、色々と無駄もあったとは思う。
 しかし、日本という国はまだ成長期の真っ只中にあって、研究プロジェクトの最大の効果は、人材の育成だったのではないか。

B君:そういう意味では、サンシャイン計画やムーンライト計画には、かなりの数の企業の研究者も参加していて、人材の育成には相当貢献したのは事実だろう。

A君:この時代に、水素をやろうというのは、ある意味で先進的だった。水素吸蔵合金が見つかったのがきっかけなのでしょう。アルカリ電解による水素製造技術も、かなり完成形に近い形になっていたようですが、水素そのものが実用にならないと思われるので、将来、何か新技術が生まれて、水素が実用化されるまで、やはり休眠なのでは。

C先生:しかし、水素吸蔵合金のお陰で、ニッケル水素二次電池が生まれた。NEDOの研究となれば、その目的の達成が求められるのだが、副次的な効果も相当に大きい。

A君:確かに、ただし、NEDOプロは、扱うものが本当に大きい。しかし、実効が出るのは、むしろ、細かい製品。大艦巨砲主義だと余り上手くいかない。

B君:高性能分離膜の研究は、メタンガスの製造が目的。日本だとこのような形の研究形態、要するに洗練されていて高度に科学的なものになるが、諸外国だともっと簡単で単純な方法が採用される。むしろ途上国の知恵をもっと入れた方法があるのではと思うので、今後、状況によっては、国内での実用化が全くの別の技術で行われる可能性も無い訳ではない。

A君:自然エネルギーを効果的に使うということは、日本の技術の弱点を補うような発想を持つことだとも言えるので、今後は、途上国的な発想も導入するのが必要なのかもしれないですね。例えば、バイオガスにしても、使えるときには使うが、使えなくなったら別の燃料で行くといった柔軟な発想というか、自然の恵みとして受け入れるといった発想が必要なのかもしれないですから。

C先生:そろそろ、ムーンライト計画の内容に行こう。

A君:ムーンライト計画は、サンシャイン計画よりは予算的に小ぶりですが、それでも総額1400億円を投下しています。
 その成果は、次の2枚の表にまとめられています。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/01/01050206/01.gif
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/01/01050206/02.gif

B君:リストアップするか。
◇1:廃熱利用技術システム(1976-1981)
◇2:電磁流体MHD発電(1976-1983)
◇3:高効率ガスタービン(1978-1987)
◇4:汎用スターリングエンジン(1982-1987)
◇5:新型電池電力貯蔵システム(-1991)
◇6:スーパーヒートポンプエネルギー集積システム(1984-1992)
◇7:燃料電池発電技術(1981-2000)
◇8:超電導電力応用技術(1988-1999)
◇9:セラミックガスタービン(1988-1998)
◇10:分散型電池電力貯蔵技術(1992-2001)


C先生:本日のメインの議題は、2011年になって、3.11を経験した日本では、再度省エネ技術を全面的に見直すことが必要になったと理解すべきだ。現時点で、どのようなアイディアをもってこの永遠の課題に取り組むべきか、必要な検討を行うこと。

A君:それでは、それぞれの技術について、若干の説明を。まず、◇1:廃熱利用技術システム(1976-1981)ですが、どうやら吸収式のヒートポンプの開発を中心に行ったようですね。

B君:廃熱利用の最近の傾向は、バイナリー発電。すなわち、カリーナサイクル発電、ランキンサイクル発電といった冷媒を使った発電システムと、もしも材料開発が可能であれば熱電発電も候補になるが。

A君:九州電力の八丁原には、地熱バイナリー発電がある。2000mから湧き出る130℃ぐらいの温泉を熱源に使って、ペンタンなどの熱媒体を加熱して蒸発させ、その体積膨張を使って、タービンを回す。ペンタンであれば、36℃が沸点なので、60℃ぐらいの温度でも若干の発電が可能になる。130℃の温泉であれば、発電コストは6〜7円/kWhと競争力がある。

B君:しかし、八丁原のバイナリー発電用には、イスラエル製の装置が使われているはず。日本の企業にも技術はあるが、どうも海外の大型案件に注力していて、小型の装置に関心が低い。

A君:サンシャインもムーンライトも、どうも大型の機器開発ばかりを狙っていたという印象が強いですね。もっと小型で分散型のエネルギーを開発することが必要なのでは。

B君:バイナリーであれば、使った後のお湯を温泉にも回すことができる。八丁原のお湯は、筋湯温泉に供給されているようだ。温泉旅館の反対というのも地熱の一つの問題点だが、それが解決できるのではないだろうか。温泉の温度は、そもそも入浴に適した温度まで下げなければならないのだし。

A君:その可能性が強い。ポテンシャルは、http://www.asahi.com/business/topics/economy/TKY201003070322.html
によれば、経産省の「地熱に関する研究会」が53〜120℃の地熱資源が合計833万キロワット分あると発表したらしい。通常の地熱の有望資源と合わせて1258万キロワットだという。

B君:大型原発の10基分。一体、何箇所で発電所を作ることになるのか、という感じはするが、分散型として有用な資源のようには思うが。

A君:833万キロワットという数値が出ている資料は、どうもこれのようですね。
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g90312a04j.pdf

B君:「廃熱利用技術は、今後は地熱に向かう」、ということで良いだろうか。

A君:熱電発電は? 

C先生:なかなか良い材料がなくて、昔から使われているBi-Te系の材料を上回ることができないのが現実。現在、CREST研究の一つのチームで、新材料のデバイス化に取り組んでいる。

A君:ということならば、次は◇2:電磁流体MHD発電(1976-1983)ですか。

B君:これはご存じない方も多いのでは。高温の燃料ガスにカリウムなどのアルカリ金属を混ぜてイオン化した流体にして、これを磁場の間を流すと電圧を生ずるので、それを電極で集める。

A君:問題点は、カリウムなどを使うものだから、高温でこのようなアルカリ金属が存在している状態だと、すべての材料が侵食されてしまう。

C先生:結局、材料ができなかった。というよりも、元々そんな材料など無かった。炭素などであればアルカリ金属に触れてももつと思って始めたのかもしれないが、酸化雰囲気なので、所詮無理だった。

B君:材料開発が必須なプロジェクトというのは、失敗に終わる危険性が高い。これは真理だと思う。

A君:次ですが、◇3:高効率ガスタービン(1978-1987)。これは、通常の耐熱合金を使ったプロジェクトが主力で、当時総合熱効率51.7%という世界最高データを出したとのこと。また、試験装置では、タービン入口温度1400℃を達成したらしいです。

B君:いずれにしても、やはり発電所用などの大型設備だな。

A君:その次はちょっと変わっていて、◇4:汎用スターリングエンジン(1982-1987)。民生向けの3kW〜30kWの冷房用のガスエンジンを考えていたようですが、最終的には、産業向けの30kWのエンジンを作って、熱効率37%を達成したとのこと。

B君:スターリングエンジンは、外燃式のエンジン。カルノーサイクルを実現する方法として知られていて、理論的には優れた効率が得られる。

A君:しかし、通常の自動車用エンジンのように、出力を変えたりすることができないので、となると、用途が限られる。冷房用のガスエンジンでも出力変化が求められる。

B君:どうも、ムーンライト計画では実用にはならなかったようだ。一定トルクで動くような用途、例えば、特殊な発電機などならありうるが。また、高温熱源は太陽熱を集光すれば得られるし、低温源は空冷で良さそう。となれば、自然エネルギーで回る発電機というものができてもおかしくはない。

A君:どうも、動作気体にはヘリウムが使われるようですが、それが漏れやすいのが問題のようで、結局、装置の価格が高くて、高効率による燃料代の節約分では補えない。

B君:もし自然エネルギーで駆動するとしたら、太陽熱での発電なのだから、太陽電池との競合になってしまう。価格的には難しいのかもじれない。

A君:となるとやはり廃熱ですか。しかし、最近、廃熱の温度が低い。スターリングエンジンを動かすには500℃ぐらいの高温源が必要のようですが、このぐらいの熱だと、有効活用されていて、廃熱にはならない。やはり、バイナリー発電のように、100℃前後まで下がった熱を使えるようでないと。

B君:そうなると、どうもダメかも知れない。とにかく、産総研のHPに動画があるので、見てください。
http://www.aist.go.jp/aist_j/science_town/environment/environment_12/environment_12_02.html

A君:次が◇5:新型電池電力貯蔵システム(-1991)。これは1991年に終わっているのですが、その後、ナトリウム−硫黄電池は、日本ガイシがNAS電池として商品化し、現時点でもっとも蓄電コストの低い電池として有名になっています。このところときに火災事故が起きているようですが。

B君:他の電池は、そこそこ動作したようだ。リチウムイオン電池の発明が、吉野彰氏らによって1983年だった。商品化が旭化成やソニーなどによって1991年。

A君:ということで、二次電池と言えば、リチウムイオン電池になったので、他の電池の商品化は、しばらく先になったという理解で良いのでは。

B君:次が◇6:スーパーヒートポンプエネルギー集積システム(1984-1992)。高性能圧縮式ヒートポンプおよびケミカル蓄熱装置の開発を行ったらしい。

A君:これも大型で1000kW級の試作運転を行った。3万kW級の実規模概念設計が行われたようで。いずれにしても、大々的なシステムで、熱を使ってエネルギー貯蓄用として有効活用しようということらしい。

B君:次が◇7:燃料電池発電技術(1981-2000)で、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型、固体高分子型(表1−2ではミスプリ)、アルカリ型の燃料電池を試作している。

A君:ほぼすべての燃料電池が実用になりかかっている。これがムーンライト計画の成果なのかどうか、それは難しいところ。

C先生:それにしても、燃料電池には新型が無いということなのだろうか。希望的には今年中に固体電解質型の燃料電池が商品化されたとき、メディアなどがどのぐらい騒ぐか。それとも全く意味不明という態度で冷静か。に注目をしたい。

A君:次が、◇8:超電導電力応用技術(1988-1999)。このあたりになると、1988年スタートなので、1976年スタートのプロジェクトとはちょっと違うかもしれません。

B君:高温超伝導体の発見が、ベドノルツとミューラーによって1986年。このプロジェクトは、それを受けてのこと。住友電工のビスマス系超電導体は、米国のニューヨーク州オルバニーで実用になっているが、長さはわずか350m。高温超伝導とは言っても、それまでの超電導体が液体ヘリウムを使って冷却していたのに比べれば高温、ということなので、実際の温度は液体窒素温度である77K、マイナス196℃。液体窒素で冷やし続けなければならない。
http://www.sei.co.jp/products/energy/topics/001/index.html

C先生:将来この技術がどのぐらい使われるようになるのか。住友電工がそれでどのぐらいの利益を上げるようになるのか、全く分からないのが実情。

A君:まずは、通常の直流送電。それが充分に普及してからということになるのでしょう。

B君:やはり、サハラ砂漠で太陽熱発電といったことが必要になるのかどうか。

A君:欧州の状況を考えると、そんなに電力を必要としそうには思えない。

B君:欧州経済の先行きは全く不透明。結果的に、電力消費量は増えないのではないだろうか。

A君:むしろ中国がタクラマカン砂漠で電力をという方が早いかもしれない。超電導送電もヒョッとすると必要になるかもしれない。

B君:次が、◇9:セラミックガスタービン(1988-1998)で、これはいささか地味なものだった。セラミックスといっても窒化ケイ素もしくは炭化ケイ素だが、タービン入口温度1350℃のガスタービンを回し、熱効率38.6%だったという。

A君:そのぐらいの効率であれば、通常の耐熱合金でも行けることが、ムーンライト計画の◇3のプロジェクトで実証済み。むしろ、セラミックスタービンを使う理由は、別のところに意味がある。

B君:構造用セラミックスということが大変な注目を集めたのが1980年ごろだった。セラミックスは焼き物なので、複雑形状のものを作るのが大変なのだが、しかも高強度のものを作るのは非常に難しかった。しかし、実用品として、セラミックスターボチャージャーができた。窒化ケイ素だと、耐熱合金よりも軽いので、セラミックスターボを積んだ日産スカイラインなどは、ターボラグが少なくて、気持ちよく加速したようだ。

A君:日産の国内発のターボチャージャー搭載の車は、耐熱合金製の羽を使用していたが、それが1979年に発売されている。それを窒化ケイ素製の羽にすると、軽いものだからレスポンスが良かった。
http://www.ceramic.or.jp/museum/contents/pdf/2007_9_03.pdf

B君:その頃のターボ車は、ガソリンを液体のまま燃焼室に吸い込んで、ピストンヘッドを液冷するといった類の車だった。要するに、燃費は最悪。そして、時代の流れによって消滅した。

A君:ところが、最近になって、フォルクスワーゲン社は、小型エンジンにターボとスーパーチャージャーを付けるという方法で燃費が上がることを示してきた。いわゆるTSIと呼ばれるエンジン。

B君:どうやら低回転域ではスーパーチャージャーを使い、高回転域になるとスーパーチャージャーでは駆動ロスがでるので、ターボチャージャーを動かすというコンセプト。

A君:それだと、ターボラグは問題にならないのかもしれない。

B君:いやいや、最近のものでは、スーパーチャージャーを搭載しないでターボチャージャーのみのエンジンもTSIという名称で売られているようだ。

A君:セラミックス製のタービン翼が復活するのだろうか。

B君:技術によるエンジンの省エネ化については、TSIのように、小型化したエンジンに過給をすることで、効率は数%高くできる。今後、日本車も燃費のためのターボを復活させることもありうるだろう。しかし、コストが最大の問題になっているのが日本車なので、実際にはどうなのだろう。

A君:マツダのスカイアクティブなどは、燃費が良いようですが、コストはどのぐらい上がるのだろう。

B君:最後が、◇10:分散型電池電力貯蔵技術(1992-2001)。やはり大型の数kWh級の電池の開発を目指している。高性能で低価格な新しい正極、負極、電解質の研究を行っていた。その後、自動車用リチウム電池の正極が大問題になったのだが、きちんと開発できた企業は少ないところを見ると、どのような電池を対象に研究開発をしたのだろうか。

A君:最終評価書が見つかりましたが、
http://www.nedo.go.jp/content/100089468.pdf
どうやらリチウム電池もやったようです。そこでは、このような記述があります。
 「一方で、これらの成果が電気自動車およびハイブリッド電気自動車へ本格的に適用
できる段階とはなっておらず、大型化へ向けた材料の安定性、低コスト化の面でまだ
開発を継続すべき項目は多い」。

B君:2001年という時代だと、鉄リン系などといった発想はまだなかったのだろうから、仕方がないか。コバルトは高価だから避けるとして、ニッケルを選択して失敗するなどといった事態は、基礎研究を同時に行っておけば避けられたのではないだろうか。

C先生:これで1976年から2001年まで行われたムーンライト計画の全貌が大体明らかになった。さて、この成果を見たとき、今後の省エネ研究戦略はどのようになるかを議論したい。

A君:研究項目としては、似たようなものになる可能性が高いですね。やはり、全く新しいアイディアというものはそう出てこないので。

B君:そうでもないのではないか。例えば、自動車の超軽量化のような開発研究課題があるのではないだろうか。

A君:ボーイングの787のような高価な製品だとカーボンファイバーもありうるでしょうが、自動車はアルミでも可能性が低い。

B君:2050年頃になれば分からない。なんらかの分散強化用素材もできるかもしれない。

A君:新しい素材ができると、何かが進化するというのは、ムーンライト計画を見ていても明らかですね。例えば、水素吸蔵合金ができてニッケル水素電池ができた。リチウムイオン電池も、炭素にリチウムを入れ込むというやり方、ある種の酸化物がリチウムイオンを吸い込むということを発見することで、電池ができた。

B君:高温超伝導材料も同じかもしれない。まだまだ実用段階では無いかもしれないけど。

C先生:ということは、最近発見された材料を使うことを考えるというのが一つの選択だということになるが、それは可能性が高い。最近といってもいささか古くなったが、新しい炭素であるフラーレンあるいはカーボンナノチューブ、ノーベル賞の対象になった炭素グラフェンとか、このような材料を使うことで、なんらかの新しい省エネ材料が出来上がるという確率が多少ある。

A君:その他は、やはり、組み合わせ技術ではないですか。1976年というと、パソコンはまだ8ビットですよ。情報処理技術の進化はやはり非常に大きい。だから、情報を上手くハンドリングすることによって、省エネを実現するという方向性は正しいでしょう。

B君:C先生の新こたつ文明機器は、情報機器との組み合わせを目指すものが多いと思う。

C先生:新こたつ文明は、センサー技術、IT技術を組み合わせて、とりわけ、未来を読む技術を開発し、省エネ化をするのが本道だと考えている。

A君:それから、昔だったら重電と呼ばれる鉄と銅の工業製品を使っていたものが、大電流を制御できる半導体ができたもので、今では全く様変わり。大電流を制御する半導体として、GaN、SiC、それにタイアモンドがありうるので、これらの実用化が進めば、新しい省エネが実現できる可能性があると思います。

C先生:これらの半導体による省エネといっても、シリコンの場合の損失が多少少なくなる程度。しかし、これからは、半導体で大電流を制御する時代なので、僅かな損失の削減でもトータルには大きなものになる。

B君:全く新しいものとして、バイオ電池のようなものはどうなのだろうか。

A君:ソニーがデモをやっている糖分と酵素で発電するというもの。

B君:このぐらいの出力では、むしろ微弱電力を色々なところから取り出して電池に充電するという方法の方が良さそうに思う。温度差とか、振動とか体重移動とか。どうせ人間は動いているのだから。

A君:微弱電力は微弱電力でしかないですが、バイオ電池なら大きささえ稼げば、かなりの出力になる可能性がある。

B君:しかし、砂糖というエネルギー源を使っている限りにおいては、二酸化炭素の発生抑制にはならないので、余り可能性を感じない。

A君:まあこの議論は止めにして、二酸化炭素を吸収する植物機能を上手く使うことで、省エネではないが、二酸化炭素吸収機能を作るとおいうのは無いですかね。

B君:まあ人工光合成だろうが、水の光触媒による分解や、ある種の有機物で酸素を捉えて、水素を出すという発想を持っている限りはダメのように思う。

A君:これは我々の信条でもありますが、光合成の本質とは、水を光で分解して無用な酸素を外に捨てることである。これを再現できないものは人工光合成とは呼べない。

B君:他に何かあるだろうか。

C先生:それそろ話題が無くなったか。それなら、また時間を掛けて考える機会を作るが、本日は、まとめに入りたい。
 新しい材料が見つかると、確実に省エネ技術は進化するようだから、新しい材料を研究の中心に据えることは、悪いことではない。ただ、多少長期的な目でモノを見ないと、すぐに何かができるというものでもない。
 新しい材料の開発が必要だというプロジェクトは、かなり失敗する危険性が高い。なんらかの代替策を考えておくべきだ。
 研究の本質は、やはり常時意識するのが当然で、省エネは本当の意味で、エネルギーを節約できなければダメだし、二酸化炭素排出抑制技術と言えば、二酸化炭素を確実に吸収するか、あるいは、発生量を確実に減らす技術でなければならない。単に、エネルギー源の形態を変えるような研究は、省エネ研究とは呼ばない。
 ただし、蓄積しにくい電力を貯蔵する方法を開発すると、様々な可能性がでてきて、結果的に省エネシステムを構築することが出来る場合が多い。そのため、二次電池の開発や、他の蓄電の方法を開発することには意味がある。
 蓄熱もエネルギー蓄積の一種。もし上手く行けば、省エネにつながる可能性がある。断熱についても同様。
 小型化・軽量化は、それが輸送に関わるものであれば、確実に省エネ技術になる。現状、残念ながら炭素繊維強化を超える提案がなかなか無い。新しい提案が欲しいところ。カーボンナノファイバーは可能性があるのだろうか。
 というようなところで終わりにしたいが、ムーンライト計画は、非常に大型の機器を作り出すことが目的の研究が多かったが、今後の省エネ技術は、もっと細かいところに気を配って、エネルギー無駄は、一滴足りともしないという考え方を徹底したものにする必要があるだろう。
 本当に必要な技術とは何かを再検討し、必要のないことは省くのが省エネ技術の本質だと言い換えても良いかもしれない。
 人間で言えば、まずはダイエットがスタート。贅肉を落とすことから始めることが省エネの本質なのではないか。