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  NHK低線量被曝番組の間違い
   01.15.2012




 5日から9日までアンコール遺跡に遊びに行っておりました。

 本日の話題は、NHKが放映した低線量被曝の番組についてですが、放送は見逃してしまい、その後、年末年始と家内の実家に出かけ、そしてアンコールへ旅立ってしまったため、いささか対応が遅れてしまいました。

 Webを色々と調べてみたら、この放送への批判の記事がいくつか見つかります。ということでここに書く必要もなかったのですが、調べるより先に書きだしてしまったもので、場所ふさぎで無駄かもしれませんが、記事の質も重要ですが、数も重要ということで、一応、掲載するものです。

 なお、英語の発言を聞きとったものも掲載しておりますが、かなり聞きにくい、というかまともな英語で話していないものなので、buvery氏のブログを参照させて貰いながら、作りました。まあ、こんなところかという程度のものです。buvery氏の方が耳が良いようですので。




 昨年12月28日(水)夜10時55分〜11時23分に、NHKは、追跡!真相ファイルという番組で、「低線量被曝 揺らぐ国際基準」という番組を放映した。

 今回の記事の意図は、この番組がどのようなものであったかを紹介すると同時に、この番組の何が間違いであったかを若干検証することである。

 この番組は、次のURLで視聴可能となっている。このdailymotionとは、フランスの動画共有サイトのようで、歴史としては、YouTubeに並ぶもののようだ。2006年に、日本語版ができている。

 恐らく、著作権上違法となるアップであると思われるので、ご覧になるのなら、今のうちである。

http://www.dailymotion.com/video/xnb9h8_yyyyyy-yyyyyyy-yy-yyyyyy_news



C先生:この番組の主たる意図だが、ICRPという放射線防護の権威ある団体から、その権威を奪うことを意図しているように思える。なぜNHKがそのような意図を持っているのかは謎ではあるが、ひょっとすると、今、日本政府の中で起きている厚生労働省の食品安全委員会による食品暫定基準の強化の動きと、それを非科学的であると断定している文部科学省の放射線審議会との確執を反映している可能性が無いとは言えないのではないか。

A君:なるほど。とりあえず両委員会・審議会の情報から見てみましょうか。
 まず、食品安全委員会の情報です。
 概要:http://www.fsc.go.jp/iinkai/index.html
 残念ながら、放射線関係の専門家はいないですね。

 次に、放射線審議会の情報です。
 概要:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/gaiyou/1283235.htm
 委員名簿:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/meibo/1304491.htm
 日本における放射線医学・防護・管理の専門家集団と言えそうですね。

B君:今回行われた内閣改造で大臣が変わった文部科学省側で何か変わるか。要注目だと思う。

A君:放射線の被害をどう見るかは、今や、科学ではなく、政治的イシューですから。

C先生:その両省の確執については、しばらく注目しておきたいということにして、まずは、番組をもう一度見てみよう。本当に上記の確執が関係しているかどうか、感覚的に何かを感じることができるかもしれないので。

A君:追跡サポータは室井佑月。時間は、番組開始以来の大体の目安です。それでは、以下のようにまとめて見ることにします。 ちなみに、★★で後ほど検討する疑問点を示すことにします。

スタート

0分:鎌田、室井で、柏のホットスポットの測定。0.55μS/h。

1分:食品に含まれる放射線を測定している民間施設。人々の反応。

室井:「やっぱり根拠なんですよ。根拠がないので一層不安」。

2分:国が根拠としているのは、ICRPの定める基準。

アナ:100mSv以下の低線量の被曝のリスクは極めて小さく、ほとんど影響はないとしている。本当にそうなのか。

2分20秒:ここからがビデオ冒頭の目次のような部分。
 まず、スウェーデンへ。チェルノブイリの影響が余り大きくなかったこの地域でも、がんが増えていました。食べ物を通して、被害が広がったと考えられています。
 その次に、ICRP名誉委員へのインタビューで、低線量のリスクがどう評価されたかを語らせる。科学的根拠は無かった。我々の判断で決めたのだ。

 知られざる低線量被曝の実態とは。追跡が始まる。
 追跡キャップ:鎌田靖、
 追跡サポータ:室井佑月
 追跡チーム:涌井洋、西脇順一郎

4分:スウェーデン・サーメ人居住地へ

住民:最近がんが増えている。放射能が原因ではないか、と疑っている」。当時の放射線レベルは、年間0.2mSv。がんになる住民が事故の前と比較すると34%増加している。事故直後、食べ物に含まれる放射線の規制値は、住民がよく食べるトナカイの肉で1kgあたり300Bq。サーメの人々は食べる肉の量を減らした。

6分30秒:マーティン・トンデル博士(有名人らしい)へのインタービュー。その地域に居住する110万人すべてのデータを解析した。その結果、すべての住民の被曝量(多分外部被曝量)は、事故後10年間の積算で、すべての人が10mSv以下であった。

トンデル:「がんが増えているのは、外部被曝だけでなく、食料からの内部被曝の影響である」。

★★1:サーメ人(昔はラップ人と呼んでいた)に本当にがんが増えているのか。

★★2:トンデル博士も、100mSv以下での発がんがあると考えている訳ではないものと思う。内部被曝によって、100mSvを超える総被曝量となったと主張している。常識的な解釈をすれば、1kgあたり300Bqという値がもっと高かったのではないか、という結論になるはず。

7分30秒:イリノイへ。

アナ:子供たちに深刻な影響が起きていた。3つの原発が集中している。原発からの排水には微量のトリチウムが含まれている。しかし、近くの町では、子どもたちががんなどの難病で死亡していた。6年前に死亡した100人の子どものための慰霊碑が立てられている。子どもたちは、井戸の水を飲んでいた。その後、シカゴから水を取り寄せた。小児科医の解析によれば、1200万人がどのようなデータに罹ったかを解析したところ、原発周辺だけが脳腫瘍・白血病が30%増加。(示されている紙によれば、イリノイ州全体では0.7%の減少に対して、BraidwoodとDresdenで30.2%増加)なかでも小児がんは2倍に増えていた。アメリカ政府は井戸水からの被曝量は年間1μSvだから影響はないと回答。

★★3:脳腫瘍の原因はそもそも放射線だと断定できるのか。当然そうではない。

室井:今のVTRはショックだった。基準値内だとリスクは低いという表現をするが、がんに罹ってしまう人はいるわけで、リスクが低いということは逆に言えば、リスクを背負い込む人が確実にいるということなんだ。

西脇:脳腫瘍になった少女セーラさんが、実際どれぐらい被曝したかはわかっていない。政府や電力会社は調査をしていない。
 100mSvで0.5%。これよりも低い場合には。感受性の高い子どもがどうなるかが問題。さらに、少しずつ浴びた場合についての影響については意見が分かれている。
 ICRP自身が、このような場合を修正すべきかどうか、検討をしていることが分かった。

15分:ICRPの会議。音声だけで一部が公開された。音声:低線量率での被曝の影響There's a severe and serious question about the applicability of the ICRP for low dose rate exposures.... 画面の日本語字幕では、「ICRPの低線量リスクがこのままでいいのか大きな疑問が持ち上がっている」と誤訳をしている(重要な単語であるrateが無視されていることに注目)。

16分:カナダのオタワのICRP本部。
科学事務局長クレメント氏は作業部会を作ったという話に加えて、驚くべき事実を語った。

クレメント氏:One is the question of DDREF and one is the question of extrapolation. So, we have..the dose in this direction...

★★4:NHKの放送では、DDREF(dose and dose-rate effectiveness factor)=線量線量率効果係数という言葉が出てこない。先に西脇氏が「少しずつ浴びた場合」という言葉で、これを表現しているようだ。

アナ:これまでICRPでは、低線量のリスクは低いとみなし、半分に留めてきたというのです。

クレメント氏:…do know that we are looking not just at the numerical value of DDREF, but also at the whole concept of whether or not it really still applies....

★★5:NHKは低線量のリスクを問題にしているが、クレメント氏はDDREFについて説明をしている。このすれ違い状態は何を意味するの。

アナ:低線量を巡る議論は、1980年代後半から始まっていた。広島長崎のデータの解釈が修正された。それまでの基準は1000mSvの被曝をした人の場合、がん死亡のリスクが5%高まるとされてきた。しかし、日米の合同調査で、実は、500mSvしか被曝していないことが分かった。リスクは2倍だということを意味した。しかし、ICRPは100mSvの低線量では基準値を引き上げなかった。

★★6:低線量の部分では規準を引き上げなかった、ということだが、1977年の勧告での発がん死亡リスクが1000mSvあたり125/10000であったものが、1990年勧告では、500/10000と4倍にリスクが強化されている。これは何?

★★7:データの解釈の変更は、空気中の湿度による中性子線の吸収を考慮したもののようだ。まあ当然の補正がなされたと言える。しかし、広島・長崎のデータでは、内部被曝量は無視されているのではないだろうか。原爆の中性子線によって、瞬間的に放射化した元素を含む食材や、原爆後の雨に濡れた食材を必ず食べているはずだと思うのだが。もしそうなら、実際の被曝量はもっと多かったという結論になるのではないか。

クレメント氏:I think this question has been raised many times and continuously looking at it.

通訳:なぜPublication60で低線量のリスクを引き上げなかったのか。
クレメント氏:知らない。私がICRPに関わる以前の話だから。

19分:

アナ:調べてみるとある事実がわかった。当時の主要メンバーは17人、そのうち13人が核開発などの関係者だった。チャールズ・マインホールド氏もアメリカエネルギー省で核関連施設での安全対策に当たっていた人だった。やっと取材に応じた。1970年代から1990年代半ばまでICRPの基準の作成に関わった。
アナ:原発や核関連施設は、産業界では、基準を甘くして欲しいと考える傾向があった。

マインホールド氏:That's one of my problems. People work in this industry tend to want to keep the limit high. That when they decided to put out their document, oh 1990 about then, which the department could, you know, have decided they wanted. They had to be careful, because all things I said earlier, you got to be able to do the work.

字幕:労働者の基準を甘くしてほしいと訴えていた。その立場はエネルギー省も同じだった。

アナ:エネルギー省の内部文書。もしも低線量の基準が引き上げられれば、対策に大きなコストが掛かる。マインホールド氏は他のアメリカの委員と協力し、基準の引き上げに抵抗した。

マインホールド氏:Lawrence Claire and Michael Fry, who are both again they are ...they are... they said it should be two to four. And why...the reason was that epidemiologists who just kind of used really the guesswork to come down from the Japanese survivor's.....

アナ:その後、ICRPは原子力施設での労働者のために特別の基準を作った。半分のままに留められた低線量被曝のリスクをさらに20%下げて、労働者がより被曝を受けられるようにした。

マインホールド氏:Then we said that the workers could haveor would have a lower risk, just because they did not have children and older people's life. We weren't suggesting any difference between those. But that's a way we approached, 'cause we didn't have that data.

★★8:マインホールド氏のこの発言は意味不明。1990年勧告では、原発従事者は18〜65歳まで被曝するという仮定、公衆は0〜一生涯に渡って被曝するという仮定に基づいて、死亡率の計算がなされている。そんな意味なのだろうか。要するに、従事者は、子どものときにも、引退した後にも被曝しないから、という意味か?

22分:テネシー州
アナ:核関連施設で働いていた人が次々とがんになっている。女性たちは核燃料の再処理施設で長年清掃の仕事をしていた。体に異変が出たのは、仕事をやめてしばらく経ってからだった。健康への被害は無いと信じて働いてきた。国に補償を求める訴えを起こしている。「我々はモルモットだった」。

23分30秒:スタジオ

室井:ICRPの基準に根拠が無い。だから半分に減らしても構わない。「根拠が無い」ことを初めて知って驚いた。

★★9:「根拠が無い」のではなく、2007年勧告の表現を使えば、「吸収線量が約 100mGy の線量域まででは臨床的に意味のある機能障害を示すとは判断されない」、となっているが、もっと端的に言えば、悪い影響を見つけようとしても見つからなかった。低線量域のリスクをどのぐらい減らすかを示す係数DDREFは、2〜10ぐらいと当初言われていたようで、ICRPはもっとも安全サイドの選択をして2としたのではないだろうか。

西脇:ICRPは各国の寄付で成り立っている。日本も原子力開発機構が45000ドル出している。

室井:ICRPはそもそも原発推進の人々が作っている組織である。安全な基準値を決めるのだから、それではいけない。

★★10:原発従事者にしても、もしも低線量の放射線にリスクがあれば、自分たちが危険なのだから、安全を担保したいに決まっている。自らの身に危険があるのだから、原発従事者が全員原発推進派という訳でもない。 ただし、原発従事者は、厳しい健康管理をされているため、被曝量が多めであっても、平均寿命は一般に長いようだ。もっとも、広島・長崎の被爆者の寿命も長いようだが。

西脇:日本では科学的な情報を与える機関だと思われているICRPだが、ICRP自体も言っ自分たちは政治的な判断をする組織と言っている。

★★11:政治的な判断というと、科学的事実を無視することを意味しかねないので、誤解を招く。こう表現すべきだろう。放射線曝露による犠牲者を出さないためには、放射線の管理をいかに行うべきかに関して、現実的・実際的な判断を行い、各国の規制行政に反映させることを目的とする組織。

室井:結局、国民は自分で判断していく以外に無い。自分で安全を確保するか。

鎌田:低線量でもどれぐらい被害がでているのか、ということをこれまで見てきた。彼らは、こういうことだということを全く知らなかった。基準自体も曖昧だ、基準に沿っていれば良いということではない、これを彼らは知らなかった。それに対して、我々は、これを知っているのだから、国に対してこういうことを求めたいということがあれば、どうですか。

室井:正しく怖がるには、やはりある程度情報公開してくれないと、知らないのが怖い、と思う。知ったらそれを元に考えることができる。情報を上げてこないことが良くない。それを政府に求めたい。

★★12:残念ながら、室井さんの思い込みとは全く違って、ICRPが何か情報を隠しているという状況ではない。もはや、すべて明らかになっていて、隠すような情報が無いのが実態。ICRPの評価は、年々、過大評価の度合いを強めている。これは、EUのRoHS規制などに見られるように、安全な社会が実現すると、さらに安全な社会を求めるのがどこの国でも国民の意志であるので、ICRPと言えども、それに対応していると考えるのが妥当である。

26分:再びイリノイのセーラさん。脳腫瘍の治療で、右手が麻痺。被曝から健康を守る基準があるのに、自分のような例が後を絶たないことにやりきれない思いを語る。

27分:日本の食品安全委員会は、厳しい基準を4月から適用しようとしています。セーラさんの言葉を重く受け止め、放射線のリスクに立ち向かっていかなければならないのです。

★★13:ECRR(緑の党の下部組織、反原発を実現するための組織)のように最初から意図があれば、それに適合するように、内部被曝を過大評価する方法、特に、β崩壊、α崩壊をするプルトニウム、ストロンチウムによる汚染が重大なチェルノブイリを対象とした理屈を作ってきたが、福島の場合のようにβ崩壊しγ崩壊するCsが主な汚染源である場合には、理屈を作るのが難しいらしい。

以上で放送終わり



C先生:さて、とにかく疑問だらけの番組なのだが、どこが疑問なのか。まずは、それを明らかににしたい。

A君:★★で示した疑問点に対して、かなり解説を加えてしまったので、余りやることは残っていないのですが。

B君:それでもいくつかは追加をする必要があるだろう。
 まず★★1:サーメ人の発がん。こんな論文がある。
http://download.journals.elsevierhealth.com/pdfs/journals/0146-6453/PIIS0146645309000360.pdf
http://www.icrp.info/article/S0146-6453(09)00036-0/abstract
 スウェーデンではなくて、ノルウェーのサーメ人の発がんを対象としているが、特に発がんは増えていないようだ。
 もっとも、発がんの要素として食品の影響は大きい。Webで「がんを防ぐ食事」を検索してみると、相当数のページがヒットする。例えば、大阪がん予防検診センター
http://www.gan-osaka.or.jp/gannituite/food.html
のものを見ても、「赤身で脂肪の多い肉類は控えめに」「野菜や果物をたくさん食べよう!」「動物性油は控えましょう」といった項目が見つかる。
 当然、トナカイは赤身で脂肪が多い。北極圏に近いところなので、緑の野菜はぜいたく品。動物性油の変わりに植物性脂肪を摂ることも難しい。
 それにしてもチェルノブイリ(1986年)以後、がんの発症が34%増加しているとのこと。大変なことだ、と思うだろう。
 実は、日本の場合を示すと、次の図のようである。2009年のがん(=悪性新生物)による死亡者総数は34万4千人、1986年では19万2千人。1.79倍にもなっている。


図1:日本のがんによる死亡者数の推移

B君:この原因を原爆実験などによる放射線の影響だとしているWebページがあるので笑ってしまうが、実は、日本のがんの死亡者は増えていないのが実態なのだ。
 1.79倍にもなって増えていないとは何ごとだ、と言われそうだが、発がん死という現象は加齢によって増加する。その理由は、一つは遺伝子の異常が蓄積されること、もう一つは免疫機能の低下でがんに対する戦闘力が弱くなるから。
 すなわち、高齢者ががんになるから発がん死の総数は増えているのだが、それは、がんになる年齢まで長生きをするようになったからだと言うことができる。言い換えれば、図1の結核を見れば分かるように、がんと循環器系以外の病気では死ななくなっているのが現状なのだ。発がん年齢に到達する前なら、大体60歳ぐらい以下かと思うが、中年層までの発がん死は減っている。
 スウェーデンやノルウェーでも状況はそれほど違わないものと思われる。

A君:★★2:脳腫瘍の原因。これですが、やはりなんらかの遺伝子の異常だと考えられています。白血病も同じですが。
 遺伝子に異常ができるのは、遺伝的な要因、外部的な要因と分けることができますが、やはり食品からの影響は大きいですね。
 小児がんは、どうもカビ毒であるアフラトキシンの影響があるのではないか、と言われています。
 米国という国は、自国のピーナッツやその製品などを輸出するために、アフラトキシンの規制値が緩く20ppb。日本も余り厳しくできないらしくてすべての食材に対して10ppb。一方、EUは、加工用落花生8ppb、穀類は2ppbとかなり厳しい。米国の穀倉地帯であるイリノイだと、アメリカ産の穀物、ピーナッツの摂取量はかなり多いのでは。
 NHKの放送を見て、井戸水を気にする人がまたまた増える可能性があるけれど、アメリカ人の子どもが大好きなピーナツバターを食べ過ぎているとしたら、それで脳腫瘍などを増やしている可能性が無いとは言えない。

C先生:最後に、他のWebPageを読んでいただきたい。例えば、
◆田崎晴明教授のページ
学習院大学理学部物理学教室
http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/details/cancerRisk.html
http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/d/1112.html#29
◆ブベリー氏のページ
http://d.hatena.ne.jp/buvery/20120105
◆全く反対の主張をしている記事だが、こんなものも参考まで。読者とのやり取りが面白いので。
http://the-news.jp/archives/7535

A君:最近、アマゾンを調べてみたら、放射線関係の新刊書が非常に増えていますよね。

B君:そう言えば、中川恵一氏が最近本を出したが、アマゾンでの読者評が完全に二分されている。
 ついでに色々と調べてみたら、近藤宗平氏の本が半々の評価。その割には、舘野之男氏の本は評価が高いまま。
 その理由は多分こうだ。近藤宗平氏の本「人は放射線になぜ弱いか」という題名なので、自分主張と同じであると思って買ってみたら、実は、「人は放射線に強い」という内容だったので、文句を言っている人が多いということなのだろう。

C先生:この記事の最初に書いたように、食品安全委員会がこの4月を目処に設定するとされている新基準値は、科学的に見れば、誠に妙なものなのだが、それを厚生労働省がごり押しをしている理由は何か。
 やはり第一に政治的な状況があるのだろう。誰が民主党を支持しているかという話だ。そして、第二に食品に対する信頼度を回復しなければ、という思いがあるのかもしれない。

A君:しかし、それなら、農水省が何か言うのでは。

B君:そうとは限らない。農業関係者には、何か言うべきだ、という人と、何も言わない方が良いという人とが混在しているのではないだろうか。それは、福島の農業はしばらく諦めて貰って、補償金を取れば良い、という主張の人がいると思う。それに対して、福島の農業を守ることが重要だという主張の人もいるだろう。さて、農水省の主な意見はどちらなのだろうか。

C先生:放射線のリスクの本当のところを知ってもらいたいが、それが難しい。
 アマゾンの本の読者評を見ても、自分の主張に有った本を探して、それを読み、それ以外の本は買わないという人が多いことが分かる。放射線が怖いと思っている人は、NHKの番組を見て、ICRPは何か隠しているという情報を自分に摺り込んで、決して何かを信用することはしなくなってしまう。そのような意味で、NHKの番組は犯罪的なものであったと言える。
 そのような人は、反原発派から見れば、便利な人々なのだろう。しかし、そのために神経症になってしまう可能性があって、そのような人々を不幸にしてしまう。すなわち、人に対してやさしい対応であるとは言えない。
 強固な反原発派以外の意見は、実は、様々で、反原発的な考え方であっても、福島の現状の放射線に対しては、それほど神経質になる必要はないと主張している人も多いように見える。このような中立的な人の主張を正しく見極めることが必要なのだと思うが、リスクに対して理性的な対応というものを行うには、ある種の覚悟が必要なので、難しい場合も多いということなのだろう。