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       名古屋で2日連続の講演
          
市民向け、大学向け 10.18.2020



 最初からいささか突飛な記述になってしまうのですが、余りにもショックを受けたので、本記事に使わせていただきたいと思います。
 
先週、名古屋で水曜・木曜の2日で2件の講演と、土曜日は、上智大学で社会人講座の講義を行いました。名古屋は中部電力の関係組織からのご依頼でした。1件目の講演は、かなりレベルの高い一般市民向けの方法が採用されておりました。すなわち、講演時間はかなり短くし、本当に必要な要素だけを語りました。その後は、用意されていた質問に答えるという形で進行しました。この形式は、やや上級向けですが、本当の理解に到達するには極めて有効な方法です。真剣に質問を考えることによって、問題意識を持つことが極めて重要だと信じている次第です。
 
2日目の会場は某大学でした。大学のある方の教授室から講演を行いましたが、それがリモートで多くの部屋に配信されていたようです。大学人と学生が対象ですから、多くの質問に答える形式が良いだろうと判断し、30分以上の時間を質疑応答に配分しました。そこで、衝撃的な質問がありました。「地球温暖化は、科学的に本物なのか? インチキではないのか?」声から判断すると、恐らく教員からの質問でした。講演の最初の話題として、化石燃料を燃焼させることで大量放出されたCOによって、温暖化が起きるメカニズムを極めて簡単に説明したのですが、最初から否定的に判断していたようです。このように、日本にも、米国よりは少ないと思いますが、未だに何%かの温暖化否定論者が居るのも事実です。その有名人としては、武田邦彦を上げることができます。名古屋の関係者ですので、今回の質問者も影響を受けていた可能性もあるようにも思えました。


C先生:本日、
10月18日の日経新聞のトップ記事が、『脱炭素、企業価値に直結』というものだった。副見出しが2つあって、『排出削減、マネー呼ぶ』、『日本、世界に見劣り』

A君:
記事に三つの図があるのですが、一つ目が『株式市場で「脱炭素」に熱心な企業の評価が高まっている』というもの。二つ目が『同業種内でも脱炭素が進む企業の時価総額が優位に』三つ目が『主要企業のCO2入種削減で日本は見劣り』

B君:一つ目と三つ目の図が相当に刺激的。同じ図が、日経のWebサイトにも出ているのだけれど、著作権に触れることが確実なので、引用できないのが残念。もし、見ることが可能な方は、有料会員に限られるものと思われますが、是非。

A君:せめての努力として、文章で表現してみますか。
 まず、
図1は、『株式市場で「脱炭素」に熱心な企業の評価が高まっている』

B君:
横軸は、年代です。2014年から2020年まで。縦軸は2017年の末の時価総額を100とした企業の評価を、脱炭素に熱心な企業として、CO削減量が上位30社を定義し、その株価を合計して表示。逆に、無頓着な企業としてCO増加量が上位30社と定義し、その株価合計を比較したもの。その結果だけけれど、株価の動きは2017年末ぐらいまでは、それほど変わらない。すなわち、「脱炭素」は株価にほとんど影響していなかった。しかし、その後、差が出はじめて、現時点だと、熱心な企業の指数が115ぐらいに対して、不熱心な企業の指数は88ぐらい。27ポイントぐらいの差が付いてしまった。

B君:次は図のタイトルです。
「主要企業のCO2排出量削減で日本は見劣り」です。この図も引用はできません。その内容は、国際比較で2014年を100とした2018年のCO排出削減量を比較したもの。

A君:その結果、
多くのCO排出量を削減した国をリストアップしています。ドイツがトップで75ぐらい。すなわち、25%ぐらい削減されている。続いて、フランス、ブラジル、英国、米国、イタリア、世界全体(数値は95ぐらい)、スペイン、オーストラリア、そして、日本(数値は99ぐらい)、ルクセンブルグが丁度100、すなわち、削減していない。その後、韓国は105ぐらいに増加、そして、カナダ、スイス、香港、インド(123ぐらい)

B君:そうか、
日本のCO削減量は、世界全体の平均値よりも少ないということだ。

A君:そうなんですよ。
削減を頑張った国の第一位がドイツ、次がフランス、は当然として、その次がブラジルというのが驚きなのです。しかし、繰り返しになりますが、このデータは2018年の排出量の比較をしているのです。一方、ボルソナロ大統領が着任したのは、2019年の1月1日。今後、ブラジルのCO2排出量は、絶対に増えるでしょうね。

B君:そろそろ、未来を若干議論する必要があると思う。個人的な予想としては、
もはや、企業が自社の株価を上げようとしたら、CO排出量を減らさなければならないというのは確実に言えるのでは。

C先生:この記事が出たのが、18日(本日)だったのが非常に残念だ。
先週の木曜日の講演に、このようなデータを入れたかった。そうすれば、地球温暖化はインチキ科学だなどという発言を抑えることができたと思う。

A君:確かに、このデータを示せば、「地球温暖化は、科学的に本物なのか?」といった質問は出なかったでしょうね。そのような発言をする人は、自分の感覚だけで判断をして質問をしていますね。

B君:
日本人の一つの欠陥、それは、世界の状況を把握し、日本現状との比較をしようというマインドを持っている人が少ないということではないか。

A君:確かにそうですね。やはり、「英語力の問題だ」と言えませんか。勿論、何語でも良くて、英語に限ることはないのですけど。

B君:海外の企業に限らないけれど、
このところの気候のように、過去とは全く違うという状況が、様々な被害をもたらしている。例えば、今年のカリフォルニア州の山火事。焼損した家屋は、当然、保険に入っていただろう。となると、保険業は、相当の支払いをすることになってしまう

A君:フランスの保険業であるアクサグループなど、
20兆ドル(2100兆円)の資産を運用している世界137の機関投資家が、次のように述べたようです。
 「
企業が温暖化問題に対応しなければ、社会から淘汰され、投資家も損失を被る。強い危機感からCO2排出量の多い世界1800社に集団で書簡を送り、5〜15年先の排出目標の設定を働きかけた」。

B君:さらに色々な現象が起きている。
米国カリフォルニア州職員退職年金基金、これはカルパースと呼ばれる組織だが、投資先全体の排出量をゼロにするという試みが行われているとのことだ。

A君:加えて、もしも、
ある企業の対応が鈍ければ、株主総会で取締役選任などに反対票を投じるという動きだということ。

B君:この記事は、さらに同業種の比較をしているね。これもなかなかに刺激的。例えば、
ドイツのシーメンスと、日本の日立が比較されている。シーメンスは、過去4年間でCOを37%削減したが、一方、日立のCOは1%増加。2017年末の時価総額を100とすると、現時点(2020年10月)でシーメンスの時価総額が93ぐらい、日立が80ぐらい。かなりの差が付いてしまった。勿論、COだけがすべてを決めているとは言えないけれど。

A君:名古屋の某大学での講演会で発言した恐らく教官の場合だと、そもそも、地球温暖化がウソだと思っている。これってどういうことなのでしょうね。

B君:名古屋か。現時点で、
武田邦彦は、名古屋に居住しているのではないか。

A君:調べてみましょう。確かに、某大学の教授のようですね。

B君:武田邦彦は、なぜか、名古屋で大人気だったらしいけど、名古屋の文化のどこかに訴えるものがあったのだろうね。

A君:テレビタレントとして、名古屋で大活躍でしからね。

B君:まずは、今世紀末までに海面上昇がどのぐらい起きるか、という予測について、数値を再度チェックすることを行おう。

A君:
米国科学アカデミー紀要(PNAS)に発表されたデータ(2019年5月)では、今世紀末までに世界の海面が2メートル上昇し、2億人近くが家を失う可能性が指摘されています。

B君:実は、海面上昇の予測は、なかなか難しい。気候変動の学者の集団である
IPCCは、今世紀末で、海面上昇が1メートルになると予測しているようだ。

A君:確かに、未来予測は確かになかなか難しいですからね。

B君:それは、それとして。武田邦彦が気候変動問題について、どのような意見を持っていたのか、それを少々解説をしたい。
武田邦彦による地球温暖化問題に対する主張は、「武田邦彦−Wikipedia」でも知ることができる。そこで述べていることが正しい見解か、と言われれば正しいものは正しいが、実は、影響が非常に重大である項目が、恐らく意図的に除外されている。例えば、グリーンランドなどの陸氷の溶解による海面上昇と、その副作用としての地球温暖化の加速される可能性などなどだ。これらが、無視されているのは、大問題だ。もっとも、今世紀終わりまででも、海面が10cm上昇するという低い推定値もある。まあ、確かに、しっかりした信頼できる数値が出るまでには時間が掛かるのだけど。

A君:海面上昇は長期的な問題ですが、現実を見てみると、
すでに、温暖化の影響は出ています。今年も、熊本などを集中豪雨が襲いましたが、その原因は、中国の黄河から流出する水の温度によって黄海の海水温が低いこと、日本の南の海域の海水表面温度が30℃を超していること、そして、その境界における海水温度の差の影響で、不連続線が長時間停滞し、集中的に降雨が続く現象が起きている。個人的な見解ですが、わずかな気候変動であっても、集中豪雨への影響は大きい。

B君:いずれにしても、
その質問者のように、「地球温暖化は、科学的に本物なのか? インチキではないのか?」という日本人がまだ存在していることは、日本と言う国の重大な恥だと思う。

C先生:そろそろ終わりにしよう。妙な人間の名前がでてきたので、個人的に拒否反応が出てきたから。気候変動を正しく理解することが、
日本人にとって難しいのは、やはり、パリ協定の基本中の基本に「気候正義」という言葉があることだろうか。この正義という言葉は、明らかに、世界の宗教の60%程度を占める一神教信者(キリスト教、ユダヤ教、イスラム教)に対して発信されたものだ。例えば、仏教において正義とは何か。これに答えるのは不可能だ。多分、正義の定義は仏教においてはなされていない。そもそも、日本で「正義」を強く主張する人には、近づかないことが正解かもしれないのだ。一橋大学の学長を務められた阿部謹也先生(1935〜2006)は、「日本では、正義は世間が決める」と喝破されていたが、これが事実なのだろう