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     中止になった講演@名古屋への質問3  03.22.2019
           
日本の対応・世界の対応編
               



 パリ協定への対応は、2030年が取りあえずの目標時点ですが、実は、それから先が極めて難しいのだろ思います。2030年目標だって難しいのに、それから先などは考えられない、というご意見があります。「『それは間違い』、と断言できない」のは明白です。確かにその通りなのですが、一方、世界で120ヶ国が、2050年でのNet Zero Emissionを目指すと宣言しています。なぜ、「世界の対応が日本的な対応と違うのか」。それは、非常に簡単に言えば、「日本と世界とでは、マインドとカルチャーが違うから」、です。これは、日本人として、理解しておく必要があると思います。実は、すでに何回か説明をしてきた話なのですが、若干の繰り返しが入ります。
 それ以外にも、現時点でもまだ続いている問題をどう考えているか、原子力の問題、市民の理解の問題などにも若干の記述がされています。


C先生:これまでも、パリ協定に対して、日本の対応と世界の対応が違うという理由について、何回か、考察を続けてきた。非常に簡単に言えば、日本人と西欧系人種とでは、「やります!」という言葉の意味が違う。日本で「やります!」と言ったら、それは、初志貫徹の対象になってしまう。すなわち、「なんとしても、やらなければならないこと」という対象。西欧系であれば、「やります!」は、「当面、チャレンジする対象にすること」、であって、難しいことはやはりいくらチャレンジしてもできない場合もあることが、大前提であり、共通の理解

A君:これまで漢字と英語で表現してきたのですが今回は、『ひらがな』ですね。これまでの説明を繰り返します。「目標」という言葉を英語に直すとき、Targetと訳すか、Goalと訳すか、その違い。

B君:多分、マラソンのGoalにしても、日本人と外国人では、考え方が違うのかもしれない。日本人の場合だと、チャレンジしたのに、Goalできないのは、「大きな恥」になるけれど、西欧系だと、そのチャレンジした人のレベルを考えて、十分なチャレンジが行われたかどうか、が評価される。すなわち、その人が、個人的な実力を超えたチャレンジをやったのか、あるいは、実力を出し切らないでチャレンジに留まったのかが、大きな判定基準になる。

A君:ということで、以下、質問をいくつか選択して、検討してみますか。
 最初としては、これでしょうか。
質問:「2050年にCOをゼロにする、いわゆるNET ZERO EMISSION(=NZE2050)について各国が真剣に取り組もうとする具体的行動方針が出てくるのでしょうか?」

B君:これは、昨年の9月23日の国連におけるサミットの直後に、約70ヶ国が、NZE2050を自国の方針にすることを表明し、その後も、そのような国が増え続いてる状況で、現時点での正確ば数は良く分からないのが実体。

A君:どうも、120ヶ国ぐらいになったということのようですよ。一方で、米国のように、パリ協定の枠組みそのものから離脱する国もある。

B君:そして、ご質問への答えになると、今のところ、具体的行動方針を作るという段階にすぐに行く国は、極めて限定的だと思う。120ヶ国となると、かなりの国々が、経済発展途上にあって、現時点で何か確実なことを言うというよりも、「やると言ったのだから、経済的援助が欲しい」という国が半数以上だと思う。

A君:先進国で本当に取り組むのは、EUを中心とした国々。ただし、EUであっても、ポーランドのように、石炭資源が大量にあるものだから、経済的な状況を考えれば、必ずしも石炭離脱が可能だと思えない、という国もある。

B君:さて、このような背景を考えた上で、日本がどう発言をすべきなのか。しばらく前までであれば、省エネ技術が日本は優れているから、それで頑張るという言い方があり得たのだけれど、現時点で、経済的に成立する省エネというと、LEDぐらいになっていて、例えば、古いビルの窓ガラスの二重化となると、本来は是非ともやるべきなのだけれど、工事費が莫大になって、現実的ではない

A君:ビルの環境性能の認証スキームに関しては、米国の方が日本より遥かに進んでいます。ちょっと調べてみたら、なんと国土交通省がこのようなWeb記事を書いています。
*環境等新たな価値の不動産への取込み - 国土交通省
 https://www.mlit.go.jp/common/000042848.pdf

B君:この記事の形態はパワポのPDF化のようなのだけれど、最初の「1.現状」では、不動産投資家が不動産投資で重視している環境性能」という棒グラフがあって、そのコメントが、こんなもの。
 「建物の環境性能に関する不動産投資家の判断基準を調べたアンケート調査結果では、現在、不動産投資において、収益(家賃水準や入居率)に直接結びつくもの(メンテナンス等)や、社会的に問題になったもの(汚染物質、耐震性等)は重視されているが、省エネルギー・省資源のようなサステイナビリティの向上に重要な環境性能は重視されていない。

A君:重視されていない項目としては、*昼光利用、*照明制御、*断熱性能、*コージェネ等、*省エネ性能、*水資源配慮、*再生配慮、*ゴミ減量対策

C先生:それが発表されたのは、いつ?

A君:平成22年3月です。2010年ですね。

C先生:なんだ。結構昔から検討をしているのだ。なるほど、このような研究会で検討したのだ。『環境価値を重視した不動産市場のあり方研究会 平成22年3月』

B君:それにしても、現状を見ると、進化していないような。

A君:東京都関係の団体の方に話をうかがったのですが、ビルのLED化を行うときに、ビルのオーナーとテナントが、LED化の費用を適正に分担するという仕組みが作られたりはしているのですが、その団体が入っているビルのオーナーは、「そんなことはやれない」、という見解だと言っていました。多分、何もしないでも、顧客が入るからでしょうね。

B君:「米国ですら対応している」、などと書くと、実は米国に怒られる。といっても、全米レベルで怒られるという訳ではなくて、ニューヨークからワシントン、シカゴ、西海岸では怒られるのが現状になっている。

A君:トランプ大統領は、南部農業地帯と旧工業地帯&石炭産業の票を集めているに過ぎないので。C先生は、米国は4つの国に分けて考えるべきだと言っていますよね。東部ビジネス・政治国、北中部ビジネス国、西部3州国(場合によってはアリゾナ州も入れて4州か?)。それにそれ以外の四つ。

C先生:話を元に戻すが、もう一度、ご質問への答えをしっかりと述べてくれ。質問はこうだった。「2050年にCOをゼロにする、いわゆるNET ZERO EMISSION(=NZE2050)について各国が真剣に取り組もうとする具体的行動方針が出てくるのでしょうか?

A君:個人的な回答ですが、どこの国も具体的な回答が書けるほどの検討状態からは遠いと思います。あのドイツですら、褐炭から離脱するということが本当に実現できるのか、いささか心配。要するに、多くの国では、まだまだ具体的な検討は不十分。

B君:EUの中でも有利な国の例としては、ノルウェー。水力のポテンシャルが十二分にある。北海油田などは不要。

A君:アイスランドも同様で、地熱と思われるかもしれないけれど、実は、水力のポテンシャルが非常に高い。地熱は、設備の寿命、特に、パイプの寿命といった問題が無いとも言えない。もっとも、日本の地熱は、やはり、地震国なので、かなり気まぐれで、やはり信頼性は低いです。

B君:大分県の地熱発電用蒸気が、例の熊本地震で出なくなった、という有名な話がある。

C先生:そろそろ、次の質問へ回答を試みよう。

A君:そうですね。これはいかがですか。
質問:『・日本では原発はもはや作るどころか再稼働もできないのにCO2低減ならわかるのですが、ゼロは本当に可能でしょうか。』

B君:その通り。原発は、政治によって、完全に破壊されつつある。もっとも、「政治」と一言で言っても、実は、本当の姿は表現しきれない。

A君:最大の要因は、すでに、原発は穢れたのだ、という話はすでにやっていますね。日本人の行動パターンですが、大失策をした人・モノは、許容範囲の外に投げ捨てられる

B君:やはり福島第一の事故が決定的だった。そのため、原子力規制委員会も非常に慎重になっていて、絶対確実な安全性を求めている。そのために、その対策費が非常に高くなっているので、恐らく、ビジネスとしての原発はもはや非常に難しいと言えるのではないだろうか

A君:最近、原子力規制委員会が求めているのは、テロ対策。テロ対策といっても具体的に何を考えるか、色々とありうるのだけれど、普通に考えれば、アメリカの同時多発テロのような航空機による攻撃。しかし、もっとも危ないのは、どこかから飛んでくるミサイルかもしれない。

B君:それに対する構造的な対応を本当にできるのだろうか。現時点で求められているのは、恐らく、頑健な地下に作ったテロ対策棟から、リモートコントロールで、何があっても、確実に原発を止めること。

A君:現時点までで、規制委員会の基準を満足されるために、非常にコストが掛かったのが、防潮堤の高度化。これは、津波対策。

B君:米国などでは、原発は、内陸部にあるので、津波などは考えないでも良いね。ミサイルも、某国から米国の原発を狙うということが起きる確率は、技術的バリアを考えると、まだ低いでしょう。

A君:いずれにしても、福島第一の事故以後、真面目に対策をするので、原子力で利潤を得ることは非常に難しいという状況になったのは事実。

C先生:関連してこんな質問がある。
『CO2ゼロを目指すためには、火力発電所の割合を減らし、原子力発電と再エネの増加が不可欠なように思いますが、中学生にもわかるように日本の現状をどのようにお話をしていくとよいのでしょうか? あまり専門的でも難しいので、分かりやすい解説をお願いします』。

A君:現状を真面目に話す以外に方法論はないように思います。

B君:一つだけ方法が無いということではない。それは、カーボンプライシングを非常に高額なものにすること。となると、石炭発電などが致命的状況になるけれど、それとは反対に原子力発電が生き延びる可能性がでてくる。

A君:しかし、日本国内においては、カーボンプライシング、特に、環境税はなかなかの大問題。どこかの時点で導入する以外に方法は無いのは事実なのだけれど、それがいつなのか、どのような方式にするのか、などなど極めて政治的な問題。

B君:カーボンプライシングは、自然エネルギーの優遇と同義いうことになる。そこで必要な対策は、自然エネルギーのような本来不安定な電源からの電力の料金は、その安定度によって、その日の価格が変わるのが現実的。なぜなら、安定化してから供給することにならざるを得ないとなると、それにはかなりのコストが掛かるから。

A君:それはその通りですね。電池に投資ができる人は、不安定な電源でも、量的に十分であれば、価値があるからですね。こんなエネルギーの今後の姿を、政治家は、もっと国民に伝達するのが義務ですよね。確かに、原発の安定した発電が継続できるという特性は優位。

B君:しかし、現時点で政治家がこの優位性について、発言をすることもない小選挙区制になって以来、政治家は、ポピュリストになる以外に生存の方法が無いというのが現実だからなのでは。

A君:だから、日本をまともな国にするには、中選挙区制に戻す以外に方法はない。これが、中学生にも分かるように日本の現状を伝えるということなのではないですか。

C先生:今回の記事は、とんでもないところまで、議論が飛んで行った。しかし、2050年でのNZEを実現するということは、そのぐらい未来を変えなければならないのだけれど、そんな意識をもった政治家が、日本では、育っていない。それは、やはり、小選挙区制が一つの原因であることは確実なので、是非とも、中学生に対して、正しく、日本の現状を伝えるということが不可欠なのではないだろうか。まさしく、ゼロ炭素化されたエネルギーという未来像を伝達することが、学校教育でも十二分に行われるべきなのだけれど、まあ、実現するとも思えないね。
 読者の皆様、実は、この質問シリーズ、まだ、完結ということになっておりません。あと2件ぐらいが要回答なのではないか、と思っています。