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 高効率エアコンはエコか     06.06.2010 
     



この一週間

 5月末の土日、黒部第四地下発電所を見学させて貰った。その帰途で、同行者との雑談の中で、鳩山さんは辞めるのではないか、との話題になって、政権最大の課題が参議院選挙であると思うのなら、辞める。そうでなければ、辞めない。これが参加者の共通の認識だった。結果は、その通りだった。

 iPadは5月28日の夜に配達されてから、家内用のインターネットアクセス用ガジェットとして活用されている。レベルとして丁度良いようだ。

 旅行アルバムを作ろうとしたが、カメラロールと呼ばれる画像庫用フォルダーを管理するソフトが見つからない。結局、画像庫に写真を入れて、それを別のアプリケーションで整理するという考え方以外では使えないような気がしてきた。

 ジョブスの個人的な趣味・思想に共感できない人間にとっては、「なんだこれは」という機能設計である。ジョブスのすごさを認めない訳ではない。ニッチにかなり大きなマーケットを作る能力がすごいところなのだが。。。

 結論的に、iPadでないとできない、ということは何もない。重すぎて毎日持ち歩くものではない。左手にもって本を読もうとしても、すぐに左手が疲れる。

 AppStoreからいくつかのソフトをダウンロードしてみたが、使ってみるまで品質が分からない。有料ソフトが多いので、買って試すまで質が分からないのは問題だ。Androidマーケットにあるソフトに対しては、厳しい評価記事があるのだが、どうもAppStoreのソフトへの批判的記事が少ないように思える。無料ソフトに関しては、どうも、Android用の方が質が高そうな感触。iPad/iPhoneの閉鎖性がそうさせるのではないか。


今週の記事

 この記事は、5月31日にアラタニスに掲載された記事のフルバージョンである。アラタニスはそう長く書けない。やはり4000字を超すのは非常識だからである。

 5月24日に朝日新聞の朝刊に、新型エアコンは、実は、コスト的にお得でもない可能性がある上に、環境負荷も高い可能性があるという記事が出た。

 読み方によっては、またまた「環境問題にはウソが多い」という理解をされてしまう可能性が高いので、ここで個人的な解釈を述べておきたい。



朝日新聞の記事の概要

 朝日新聞の記事を要約すれば、以下の通りである。

 「日本工業規格(JIS)に決められている標準的な運転時間は、東京の家庭は冷房を1日約13時間、暖房は約17時間、年間計9ヶ月使用するとなっている。カタログにある年間の電気代は、この基準値をもとに計算されている。
 ところが、調査結果によると、1日の利用時間(全国)は冷暖房ともおよそ5時間、使用期間は5.5ヶ月であった。産総研が関東地域の調査結果とJISの基準値を比べたところ、年間の利用時間は8分の1ほどだった。
 実際の年間電気代は、カタログ値よりもぐっと安いことになり、買い替えによる節約効果は小さくなる。消費者は誤ったメッセージを受け取り続けてきた」。


標準的な運転時間が長すぎる

 論点は、まず、運転時間である。どうもJIS規格が悪いようにも読める。JISは任意規格ではあるものの、主務大臣が決めるいわば国家規格であるので、これは不思議だ、と思って、チェックしてみた。

 やはり、朝日の記者は誤解をしていた。JISにユーザが使う運転時間に標準値などはなくて、あくまでも、機器設計上の公平と思われる運転期間の記述がある。

 この規格(JIS C9612附属書3)は、2006年に改正されたものだ。導入当初、冷房用と考えられてきたエアコンだが、このところ暖房用として使われる時間が長くなってきた。以前、機器の効率は、冷房のCOP(効率係数)と暖房のCOPとの平均値で評価されてきたが、暖房時の性能の重み付けを増やすために、実際の使用時間を考え、その際の外気温の変化を考慮した指標であるAPF(通年エネルギー消費効率)で示すことになった。なぜならば、エアコンの効率は、室内温度と室外温度の差によって影響を受け、この差が大きい方が効率が悪いからである。

 まず、どの期間を対象にするか決める必要がある。外気温が22℃以上になる3回目の日から22℃以下になる3回目の日の期間を冷房期間とし、同じく、14℃以下になる期間を暖房期間として定義している。

 「3回目の日」とは奇妙な表現だし、あまりにも厳密すぎておかしいぐらいの設定である。要するに、暑くなっても、最初の1日目は冷房を入れない。2日目も入れない。しかし、3日目になると、耐えきれず冷房を入れるのが普通だということだと思われる(本当か?)。

 東京をモデルとすれば、冷房は6月2日から9月21日までの112日間となるが、これらの期間で気温が24℃を超えるときには、エアコンが運転される可能性があるとしており、東京だとその総時間が1430時間である。1日平均にすると約13時間であり、記事にある数値と一致するが、もともと平均に意味があるようなものではない。

 暖房は10月28日から4月14日までの169日間となり、この期間内に16℃を下回る2889時間が対象となる時間だとしている。朝日の記者の記述のように、暖房は平均17時間といっても、意味不明であるが、これならよく意味が分かる。

 この規格で標準使用時間とは、その目的から言って、ユーザが実際に使用する時間を念頭に置いたものではなくて、エアコンの冷房性能と暖房性能を総合的に表現するAFP(通年エネルギー消費効率)という指標をできるだけ公平に定義するために定められた時間である。

 JISはやはり工業標準なのであって、消費者基準ではないのである。


標準運転時間はこれだ

 それでは、家庭用のエアコンの標準運転期間は誰がどう決めているのか。その答えは、(社)日本冷凍空調工業会規格(JRA4046-2004)である。冷房期間は、6月2日から9月21日の3.6ヶ月、暖房期間は、10月28日から4月14日の5.5ヶ月。使用時間は、6:00〜24:00の18時間となっている。
http://www.jraia.or.jp/frameset_p_airconh.html

 標準運転時間の合計は、冷房で1944時間、暖房は2970時間となり、JIS規格よりも長い。

 東京にある通常の家庭が、エアコンをこれほど使うのか、といえば、これほどは使わない。これは相当に過大な時間設定だと言える。

 まあ、業界の都合なので、理由を考察しても分かる訳ではないのだが、冷房時間はどうにも長すぎるのではないだろうか。短くすれば、消費電力量が下がって、省エネに見えるのに、などと思ってしまう。


運転時間と消費電力の関係

 実際の使用状況を考えると、運転時間が増えれば、それに正比例して消費電力は増えるのか、といえば、必ずしもそうではない。

 エアコンの消費電力は、実に、様々な要因によって影響を受ける。まず、外気温と室内温度の差、家の断熱性能、通夜運転の有無などである。

 エアコンは、室外気温と室内温度の差が少ない方が効率が高い。最高の効率を実現できるのは、室外機がゆっくりと回っている状態である。エアコンの能力があり過ぎると、ON-OFFを繰り返すことになって、かえって効率は下がることもある。

 そのために、4月に暖房を使っても、また、6月に冷房を使っても、室外気温と室内温度の差が少ないため、使用する電力はそれほど多くはない。ON-OFF制御を繰り返すような機器だと、消費電力が増えるが、実のところ、そのような機器は、日本製ではすでに消滅しつつある。一方、米国などでは、ほぼ100%がそのような機器である。

 産総研などの調査によれば、実際の運転時間は、JRAの標準時間の1/8に過ぎなかったということである。それなら肝心の消費電力の総量はどうなのだ、となると、当然、1/8にはならないことは確実だが、まずは1/2以下程度だったろうと推測している。

 ただし、使用条件によっては、標準時間がさらに短く、同時に、消費電力も1/8以下になる場合もありそうだ。それは、在宅時間が極端に短い場合である。共稼ぎの夫婦の場合のように、そもそも在宅時間が少なければ、当然、エアコンの運転時間も短い。特に、冷房が必要な日中には在宅していないから、土日以外に冷房運転はなされず、冷房用電力は非常に少ないものと考えられる。

 暖房の使用時間もかなり短いという統計結果だったが、東京近郊であっても、エアコン以外の暖房を使っている家庭が調査対象になったどうかが鍵であり、状況を知りたいところである。

 暖房は、以前であれば、灯油やガスなどを使った直接燃焼方式がコスト的に優れているとされてきた。しかし、最近では、高効率のエアコンがコスト的にも優秀だということが常識となった。このことは、当然のことながら、二酸化炭素排出量からみても、エアコン暖房が環境負荷が低いということになる。

 コスト的にいくら優れていても、快適さが不十分では受け入れられない。エアコンの効率が高くなると同時に、吹き出す温風の温度の上限も上昇したため、暖房の快適さが向上した。要するに、暖かいと感じることができるようになったのである。

 そのため、これまで燃料を灯油などの暖房を使っていた家庭が、エアコンによる暖房に切り替える例が増えている。特に、東京程度の冬の気温であれば、暖房ももはやエアコンの時代になったとも言える。

 家の高断熱化も、最近変化したもう一つの要素である。東京でも新築住宅を中心に、断熱を強化した家が増えている。断熱は、その投資に見合うほどの経済的な見返りは無いとされているが、高断熱の家は、エアコンが消費するエネルギー費用が下がるだけでなく、住み心地が全く違うことが認識されているからである。

 このような検討を行って見ると、確かに、メーカー団体が定めた標準運転時間は長すぎるのは事実だが、だからといって、消費電力がそれに比例して多くなるとは言えない。

 それぞれの家庭の家族構成などによって、エアコン、特に、冷房の使い方は全く違うので、標準運転時間を使って計算された標準的な年間消費電力が参考にもならない場合が多いことは、確実であるが、一方、それは、消費者にとって、自分の暮らし方を考えれば、分かっていることだとも言える。全く、情報が開示されていないと非難するほどのものではないかもしれない。


エアコンの選択は難しい

 いずれにしても、エアコンの選択は、確かに、なかなか難しい。どのような使い方をするのか、よくよく考えた上で、機器のコスト、電力のコストなどを十二分に計算した上で、機種の選択をすべきである。

 しかも、2〜3年で、常識が変わる。このところ状況の変化が激しいからである。しばらく前まで、高効率エアコンは高価だった。ところが、このところ、価格が低いエアコンでも、効率が高い製品が多くなった。すなわち、価格が変わっても、効率の差、すなわち、消費電力の差による年間の電気料金はほとんど変わらない。

 製品価格の違いは、むしろ、フィルターを自動で掃除してくれるかどうか、といった付加されている機能の違いが理由になっているので、好みの機能をもつ製品を選択すれば良いことになる。

 ただ、価格の違いで性能的な違いが無いわけではない。同じ定格冷暖房能力をもっているエアコンでも、最大能力が大きいものは高価である。外から戻ったときに、速く気温を調節したいという状況では、製品価格の高い高級機種の方が最大冷暖房能力が高く、速く設定温度に到達するので、快適性が高いことになる。


朝日新聞の論点その2:冷媒の量

 最大能力を上げるためには、当然のことながら、冷媒の量も、低価格品よりも多く充填されていることになる。

 冷媒の量が、朝日新聞の記事の2つ目の論点であった。高級品は普及品よりも冷媒の量が多いのだから、冷媒であるフロン(HFC)が漏れれば大変だ。その温暖化係数は二酸化炭素の2000倍もあるから、もしも1kgのHFCが漏れたら、2トンのCO2を出したことになる。

 一般に、エアコンには、1〜3kgぐらいのフロン類が入っている。フロン類も、時代の変遷が激しい。特定フロン、代替フロン、HFCなど、呼び方も様々である。

 特定フロンは、モントリオール議定書で使用が禁止されたもので、オゾン層を破壊する効果を持っている。

 最近のフロン類であるHFCは、温室効果はあるが、オゾン層を破壊することはない。
 塩素を含むものの、オゾン層を破壊する作用の低い代替フロンは、日本では、2010年までに全廃することになっている。

 エアコン中のフロン類は、解体しリサイクルされる過程で回収はされるのだが、もちろん100%回収できる訳ではない。多少漏れ出るのが普通である。

 すなわち、高級品は充填量が多く、したがって、漏れるフロンの量が多いので、エコではない。それは、そうとも言えるだろう。なぜならば、高級機種は、「すぐに暖まる」といった快適性を追求するために存在しているのであって、高効率を狙って存在している訳ではないからである。

 エアコンの選択をするとき、余裕をもつ方が良いと考えて、大型のものを選択してしまうことが多いと思う。しかし、実際には、一クラス下の高級品を買う方が良い場合もある。小型の方が、一般に、効率が良いのである。

 単純に大型の製品を選択したり、また、快適性を追求すれば、製品は高価になり、かつ、エコとは逆方向に向かう。これは、車だろうが、家電だろうが、同じことである。

 繰り返しになるが、低価格品であっても、効率自体はもはやそれほど違わないのが現実である。だから、現在の高効率エアコンは低価格品にもあるので、エコになりうる。すなわち、過去の低効率エアコンによりも確実にエコである。

 現在の商品構成から言えば、「高価格エアコンはエコとは言えない」は一面の真実であるが、一クラス下のエアコンで高価格品を選択することは、エコかもしれない。

 「高価格エアコン」と「高効率エアコン」は全く違った意味であるが、選択のやり方によっては、「高価格品」でも「エコにもなりうる」が正しい表現であると思う。

 このように、エアコンの選択は難しい。いろいろと考えてエアコンを買うような場合には、確かに、現在のカタログでは分からない様々な要素があるようだ。

 もしも冷媒の量を問題にする人が多いのであれば、その量が公表されているべきだが、残念ながら、冷媒量は通常のカタログでは分からない。


使用者にある誤解も解かなければ

 これ以外の点で、エアコンに関する情報の開示は十分だと言えるのだろうか。実は、まだまだ不十分だと考えている。それは、消費者側にも問題がある。いくつかの誤解があるからである。


(1)暖房と冷房の負荷

 誤解をいくつか説明してみたい。まず、冷房の方が暖房よりも電気代が掛かると思っている人がいまだに多い。どこかのアンケートでそのような結果になっていた。場合によると、冷房は贅沢という心理的な影響が残っているためかもしれない。

 実際には全く逆である。暖房の方がエネルギー消費量は大きい。エアコンが暖房にも使えるようになった頃、すなわち1960年代には、ヒートポンプの性能が不十分で、電気ヒーターが組み込まれていて、当時、暖房にエアコンを使うと電気代がとんでもなく高くなった。

 最近になって、暖房運転の効率が劇的に改善されたので、暖房の電気代は下がってきたが、暖房は、そもそも年間の運転時間が長い上に、室外気温と室内気温の差が大きいので、消費電力が大きくなる。

 もっとも、最近の機種では、暖房の効率向上を主な狙いにして設計をしているようで、冷房よりもCOPは高くなっている。

 しかし、他の暖房機器、特に、直接燃焼する灯油やガスと比べればどうなるのか。もしも、灯油やガスなどを使っていたら、極端に寒い地域でないかぎり、エアコンを使うのがコスト的に有利である。

 スウェーデンのように寒い国でも、水力とバイオマスで電力を供給し、エアコンで暖房できれば、国としての二酸化炭素排出量が極端に下げることができるということから、地中熱利用などを絡めて、エアコンの導入に極めて熱心な国もある。

 日本のやや寒冷な地域でも、もしも高級機種を買い込めば、快適な暖房を経験し、おそらく他の燃料の使用や電気ヒーターなどの使用を控えることになって、結果的には、温室効果ガスの発生の削減につながる可能性もある。となると、「高級機はエコではない」、とも言えない場合があるのかもしれない。


(2)急いで冷やす、温める

 誤解のもう一つを指摘したい。外から帰ってきて、急激に冷暖房を利かせたい場合がある。そのとき、設定温度を低めや高めに変える人がいるが、それは間違いである。

 変えるべき量は風量である。風量が多くなれば、エアコンは冷暖房能力を最大限に発揮するからである。風量を変えなければ、いくら温度設定を変えても、能力は変わらない。

(3)除湿運転の消費電力は冷房の3倍?

 最後の指摘である。一般的な誤解が、除湿運転にもある。梅雨時に、気温があまり高くないのに、ジメジメして不快なことがある。このときに、エアコンを除湿モードで使うことは有効である。

 しかし、夏になって気温が上がってきたとき、それほど温度を下げる必要はないと考えて、高めの温度に設定し、冷房ではなくて、除湿運転を行うという人がいる。それは消費電力が減ると思っているからのようである。しかし、それは間違いである。

 除湿は、空気の温度を下げて水分を液化して除去するので、空気の温度が必然的に下がる。そのため、エアコンの設定温度が高い場合には、巧妙な仕組みを用いて、空気を再度加熱をしている。

 これを再熱除湿方式と呼ぶが、さすがに効率が悪く、この機構が搭載されている機種の除湿運転は、通常の冷房運転の3倍の電力を消費する場合もある。ところが、困ったことには、メーカーによっては、別の方式のものものもあって、どのエアコンがどの方式なのか、よく分からないのが現状である。
http://www.jie.or.jp/life/seminar/seminar1/Kitahara.PDF

 このように、エアコンには、買い方が難しいだけでなく、使い方にも誤解があって、正しく使うのは極めて困難な家電製品である。

情報提供で解決可能か 見える化で行きたい

 これを解消する仕組みが必要だが、通常の情報提供では、そのすべてを理解してもらうのは無理がある。そこで、個人的には、「ダイレクト見える化」という方法を採用するのが良いと考えている。

 といっても簡単な話で、エアコンのリモコンなどに、現在の消費電力を表示するだけである。

 現時点で、いくつかのメーカーがこれに取り組んでいる。消費者が、エアコンのより賢い使い方に関心をもつことによって、ますます、エアコンだけでなく、テレビや冷蔵庫などにも「ダイレクト見える化」が進むことを期待している。