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  プリウススキー 03.07.2004



今月の環境でご報告したように、新プリウスにて恒例行事の研究室解体旅行のために、尾瀬岩鞍に出かけた。その燃費は、すでに報告したように、メーター上のデータとしては、

  行き:4名乗車、荷物かなり多い。気温14度ぐらいの晴れで暖か。 21.0km/L
  帰り:3名乗車、荷物かなり多い。気温5〜7度、曇りから東京は雪。23.1km/L

このメーターはかなり甘いが。

 これまでの総燃費などを含めて、色々と検討。その結論は、「暖房」には相当のガソリンが必要である。


C先生:前回報告した旧プリウスのデータを見ると、そのような装置がなかったから仕方が無いのだが、区間燃費などが十分にない。
http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/priuski.htm

A君:新プリウスには、いつでもリセットが可能な総燃費表示がありますが、これは、旧プリウスには無かった。

C先生:今回、かなり細かい解析が可能になったのも、実は、その総平均燃費表示とでも呼ぶべき機能のお陰だ。実際には、次のような表示だが、ここでは、平均燃費14.7km/L、距離73kmと出ているが。これがいつでもリセット可能。

A君:走行しないでも、停車状態でも燃費が変わるのですか。

C先生:そういうこと。エンジンが動いていると、この平均燃費の値がどんどんと下がる。

A君:ということは、アイドリング時にもガソリンの消費量が分かるということになりますね。

C先生:だからこそ、こんな記事が書ける。さて、どこから行くか。「今月の環境」のデータの解析の前に、新車時からこれまでの総燃費を示そうか。

日時    ODDメータ    給油   燃費   走行キロ
H15.09.20    34      0          納車
H15.10.11   507     24.02   19.7    473.0
H15.11.03   1086     26.5    21.8   579.0
H15.12.27   1675     34.1   17.3    589.0
H16.01.28   2230     33.9    16.4    555.0
H16.02.24   2676     24.83   18.0    446.0
H16.03.07   3293     31.2   19.8    617.0

給油は、大体500km以上走行ごとに行えば良くて、通常の車に比べれば、航続距離は非常に長い。満タン45リットルなので、無給油1000kmも可能と思われる。

A君:燃費は最良で21.8km/L、最悪が16.4km/L。これは、遠出の量が原因ですか。

C先生:最良のものは確かにその通りで、全走行579kmのうちの400kmぐらいが下部温泉まで行ったときのもの。この間の燃費がメーター上では、25.4km/L。このメーターは、すでに報告しているように、約7%甘い。

A君:大体の燃費はどんな感じなのですか。

C先生:高速道路は速く走ったら、20km/Lは出ない。100kmの順法運転で22km/Lぐらいか。普通の道路で、混雑も信号も余り無い状況だと、25〜27km/L。市街地も、渋滞が無ければ20km/L以上。ただし、これ以外に、始動時にはガソリンが50ml程度、さらに、外気温にもよるが、ヒーターによって最初に暖めるために、30〜100mlのガソリンが必要。

A君:走行時の燃費に関してですが、自宅付近は坂だらけですよね。

C先生:その通りで、自宅付近は17km/Lぐらいが良いところ。

A君:しかし、平均燃費が16.4km/Lというもっと悪いのがありますね。

C先生:この最大の理由は、恐らく「山」だ。このとき伊香保に行っているが、登りには、10km/L以下といった燃費が普通だが、登り下りがある道だと、次の下りで発電してエネルギーを取り戻す。しかし、伊香保のように長い下りだと、電池の容量が限られているから、エネルギーを貯めることができず、発電してそして電気を捨てることになる。「山地」という条件は、車重の重いプリウスにとっては、大いに苦手なのだ。

A君:ハイブリッドは万能ではない、ということ。

C先生:むしろ都市向きの技術だ。それが典型的に出ている例がある。米国のデータだ。

A君:US−EPAの米国におけるGreenCarに関するHPを見ると、
http://www.epa.gov/greenvehicles/index.htm
燃費は、こんなデータになっています。燃費競争では、トヨタ、ホンダのハイブリッド車の独壇場。

トヨタプリウス(CVT):       City 60 mpg Hwy 51 mpg
ホンダシビックハイブリッド(CVT):City 47 mpg Hwy 48 mpg
ホンダインサイト(CVT):     City 57 mpg Hwy 56 mpg
ホンダインサイト(Manual):    City 60 mpg Hwy 66 mpg

B君:そろそろ参加するか。1mpgは、0.421km/Lに相当。だから、
トヨタプリウス(CVT):       City 25.3km/L Hwy 21.5 km/L
ホンダシビックハイブリッド(CVT):City 19.8km/L  Hwy 20.2km/L
ホンダインサイト(CVT):     City 24km/L   Hwy 23.6km/L
ホンダインサイト(Manual):    City 25.3km/L Hwy 27.8km/L

A君:CityとHwyの説明をしないと。英文ではこうなっています。

City represents urban driving, in which a vehicle is started in the morning (after being parked all night) and driven in stop and go rush hour traffic.

市内モードとは、都市内のドライブで、一晩パーキングした車を朝スタートして、ラッシュアワーのストップ&ゴーを繰り返すようなモードである。

Highway represents a mixture of rural and interstate highway driving in warmed-up vehicles, typical of longer trips in freeflowing traffic.

ハイウェイモードとは、田舎道と高速道路との混合モードで、ウォームアップのすんだ車を、スムースに流れる交通状況の中で長い距離に渡ってドライブするモード。

B君:CityモードがHwyモードよりも良い車は、普通なら存在しない。例外中の例外だ。前のプリウスもそうだったが、新プリウスもそうだ。

C先生:高速走行モードだと、やはり軽量な車が一番。インサイトは、全アルミボディーという特殊な車。日本では全く売れていないが、米国では結構売れた。インテリ女性の車としてのようだが。

B君:日本人の車を見る目は、余りにも古いからな。インサイトの評価は、日本ではかなり低い。ほとんど無視という感じだろう。日本の自動車評論家なるものの意識が古典的だからだろう。

A君:EPAのCityモードは、さすがに日本の渋滞モードとは比べ物にならないぐらい流れるモードなんでしょうね。しかし、プリウスの25.3km/Lは、余りにも良すぎますね。

B君:郊外モードが逆に悪すぎる。ということは、米国のHwyモードは最近、55マイル制限ではなくて、65マイル制限を標準にしているということなのだろうか。

A君:最近は65マイル制限のところの方が多いのでは。しかし、それでも時速105km相当ですよ。

C先生:ちょっと納得のいかないデータだ。

A君:日本のe−燃費では、1月分としてインサイトが20.0km/L、プリウスが19.1km/Lになっています。
http://response.jp/e-nenpi/

B君:モードの記述がない、というよりも、e−燃費は、ユーザからの報告がベース。

C先生:我が家のプリウスは、近所の坂道の走行が多いこと。さらに、遠出が少ないことを考えれば、今回のデータは、e−燃費より多少悪い程度で、e-燃費のデータは信頼できるような気がする。

A君:11月度のe−燃費ですと、プリウスが22.3km/Lで、インサイトは22.1km/L。ちなみに、シビックハイブリッド(CVT)が16.4km/Lで、燃費は余り良くない。

B君:1月のデータだと、プリウスは3km/Lもデータが落ちている。インサイトも多少落ちているが、2km/L程度。

A君:多少燃費の悪い車の場合ですが、カローラフィールダー1500ccMT車。1月が14.5km/L。11月だと14.7km/Lと、余り変わりませんね。

C先生:そうなんだ。プリウスは冬になると燃費がガクッと落ちるのだ。このことの解析をしよう。それには、km/Lという単位ではどうも十分ではない。むしろ、逆に、何ml消費したか、という議論の方が、その消費の実態を明らかにすることができる。

A君:どんなデータがあるんですか。

C先生:一つはつくばの往復データだ。
行きは、11時頃スタートで、気温14℃ぐらい。太陽さんさんの暖かな状態。87kmを走るのに、1時間30分掛かって、消費ガソリン量が3.39L(燃費25.7km/L)だった。
帰りは、できるだけ行きと同じモードで走ったつもりだったが、気温が9℃で夜だったので太陽なし。使用ガソリン量が3.75L(燃費23.2km/L)。
両者を比較すると、帰りにはガソリン約335mlが余分に使用された。10分間あたりにすると、約36ml/10分のガソリンを余分に使用。この余分な使用をどう考えるか。

A君:エンジンの効率低下と暖房用。

B君:いずれにしても、ガソリンの10%近くが暖房用に使用されると考えるのか。

A君:つくば往復のような平均時速が60kmといった状況でも、そうなのだろうか。

B君:それは大きな疑問だが。もっと状況が悪いとき、すなわち、渋滞につかまって、しかもアイドリングストップをする状況だとほんとんどのガソリンが暖房のために使用されることになるだろうから、この条件でのガソリンの余分の使用分は、最善の状況だと考えるべきではないか。

A君:そうかもしれないですね。となると?

B君:しかし、暖房のためとは言っても、エンジンが回れば、発電して蓄電するのでは。

C先生:どうもそういう設定になっていないようだ。暖房のためにエンジンが回っている場合には、発電していない。

A君:となると、例えば、10km走るとして、平均時速40kmなら15分で到着。余分に使用するガソリンは最低でも50mlぐらい。平均時速10kmまで落ちると、到着まで60分掛かって、暖房用のガソリン使用が200ml。

B君:走行だけなら20km/Lだとすると、10kmの走行には500ml必要だ。

A君:となると、時間が掛かるほど、暖房にガソリンが必要になるため、平均時速40kmなら18.2km/Lまで落ちて、平均時速10kmだと14.3km/Lと燃費がた落ち。

C先生:平均時速10kmだと、実際のところ、もっと落ちるような感触だ。多分10〜12kmぐらいまで落ちるのではないか。

A君:だとすると、最悪の状況だと暖房用と走行用が最悪1:1という勘定になりますね。

B君:10分あたりの暖房用ガソリンが、120ml。まあ多少甘めに推定するとして、1分あたり10mlの暖房用ガソリンを使用するのでしょうか。

C先生:外気温が0℃程度といったときにはそんな感じなのではないか。最近は、気温が高いので、もう少々マシだが。

A君:発熱量にしてみると、ガソリン消費が10ml/分だということは、計算してみると6kW以上の発熱量。全部が全部暖房に使われる訳ではないでしょうから、まあ、半分の3kW。6畳用のエアコンが2.2kWぐらいだから、車としたは、こんなものでは。

B君:冷房能力が2.2kWのエアコンだと、暖房能力は大体3.2kWだ。だからまあまあなのではないか。

A君:断熱が悪く、ガラス面積が広い車は、大体6畳と同じ熱負荷だといういうことでしょうかね。

C先生:推論が正しいかどうか、どこかで確認をしよう。

A君:インターネットをちょっと調べたのですが、こんな記事が見つかりました。
http://www.shiojiri.ne.jp/~side8/board.html
清水浩氏の著書『電気自動車のすべて』によると
・断熱を徹底する。(二重ガラスの使用など)
・電気自動車向けに効率の良いエアコンを使う。
などの対策で気温差20度、乗員1名の条件で暖房用電力を120w程度に抑えることが理論上可能とされています。
#試算の詳しい点については上記の本をご覧ください。

40km定速走行時の消費電力は2.1kwと試算されているのでほぼ無視できる程度だと思われます。なお、同書によると冷房の方が厄介なのだそうで、上記の対策のほかに
・操縦が不便にならない程度に遮光を行う。
・太陽電池と組み合わせた換気ファンにより
駐車時に車内温度が外気温より高くなるのを抑える。などの対策をほどこしても最低350w程度の電力を必要とするそうです。#外気温35度、湿度80%、車内温度25度、湿度60%、乗員4名

B君:電気自動車用のエアコンが、エネルギー使用効率、要するに、電気消費量の何倍の熱を供給できるかという係数COPが6だとして、0.7kWの暖房能力で行ける? これだと、6畳用エアコンの暖房能力の1/4だということになる。

A君:断熱を完璧にすれば、ということなのでは。

B君:確かに、一般家屋の熱損失はガラスやサッシが多いと言われるが、普通のガラスを二重ガラスにしたところで、熱貫流率は半分にしかならない。真空断熱ガラスにしてやっと1/4だ。

A君:天井やドアの断熱にしても、家屋のように厚さで稼ぐ訳には行かないから。

C先生:結局、結論は出ないが、いずれにしても、車の省エネにとって、冷暖房がなかなか問題であることが分かるだろう。だから、という訳で、プリウスの燃費メーターが改善されることを期待したい。それは、サービス別の燃費表示。
すなわち、こんなことだが。
 本日の走行キロ数  60.0km
 平均燃費       15.0km/L
 使用燃料   
   2.5リットル 走行用
   0.5リットル アイドリング
   1.0リットル 暖房用

A君:最新日経エコロジー4月号のエコミシュランの題材が乾燥洗濯機。乾燥機と洗濯機が一体化して何が起きたか。なんと乾燥時にも水を使うようになった。そして、しかも、洗濯時に使用する水よりも、乾燥時に使用する水の方が多い機種もある。

B君:乾燥洗濯機のナゾ。日経エコロジーをご覧下さい! か。売り込みも上手くなった。

A君:乾燥時に水を使う、といってもそもそも何に使うのか。是非、ナゾを解いてください。

B君:節水機構が付いているといってもそれは洗濯時のみ。乾燥時にも水を使うなどということは、カタログを良く良く読まないと分からない。

C先生:ということを踏まえると、最近の電気機器には液晶表示ぐらい付いているのだから、次のような表示がでてもおかしくは無い。

本日の乾燥洗濯機の環境負荷
 二酸化炭素放出量 
  洗濯時  20g
  乾燥時 200g
 水使用量
  洗濯時  70L
  乾燥時  80L

A君:もっと光熱費も含めた情報開示が必要なのでは。水を温水にするヒーターを持っている機種もあるし。

B君:そのあたりは、情報家電になって、テレビを付けると、その家の全環境負荷が分かるといった時代になることが究極の形だ。

C先生:またプリウスに話を戻すが、夏になって、プリウスの電動エアコンがどんな状況なるのか、今後もデータを取り続けたい。