-------

    日経記事も「脱炭素」支持 
       気候変動は、経済を壊しかねない 02.28.2021



 
 日経新聞の朝刊に掲載された、地球環境問題に関する記事をチェックして来ましたが、2月23日の経済面に、中西宏明経団連会長が「脱炭素を優先」というメッセージが掲載されました。やはり、化石燃料というものに依存するということは、大気中のCOを増加させ、気候の状況を恐竜時代の地球に戻す行為であるのは事実ですので、いくら、化石燃料が便利であり、コスト面でのメリットがあるからと言って、それに100%依存する訳にはいきません。なぜなら、地球全体の気温が上昇することで、気候が大きく荒れる方向に変化することは事実ですから。例えば、集中豪雨、超大型台風などをはじめとする異常気象によって、経済的な損害が莫大になり、保険業も成立しないような状況になりかねません。
 23日の記事以後、どうも日経に関連する記事が増えたような気がします。どんな記事が掲載されたのか、ちょっとチェックしてみたいと思います。



C先生:いよいよ、気候変動が経済活動にもネガティブな影響を与えることが十二分に意識され始めたようだ。これまで、なんとなく、「気候変動に対応することは、経済的活動にとってネガティブな効果を生む」という潜在的意識があって、できれば、気候変動という言葉を遠ざけるのが無難だという経済界の本音が見えていたのだけれど、これ以上、気候変動の影響が大きくなると、それはそれで経済活動が困難にもなりかねないという感覚が出てきたということなのだろう。

A君:特に、海上輸送などで事故が増大するとか、台風やハリケーンの勢力が強大化して被害が大きくなる、とか言った影響はすでに見え始めているとも言えますね。

B君:米国南部のテキサス州というと、これまでなら大型ハリケーンが発生して被害が出るというパターンだったのだけれど、バイデン大統領が2月20日に非常事態宣言を出した原因は、なんと「厳しい寒波の影響」だった。これも異常気象の一つなのでは。

A君:バイデン大統領は、テキサス州のヒューストン、オースティン、ダラスなどの主要都市の市長と連絡をとったとのこと。

B君:今回の寒波は、全米での影響があったけれど、テキサスでは、60人近くが寒波の影響で死亡したとのこと。それは、厳しい寒波には慣れていない南部だからで、寒さが原因で電力需要が急増して停電になり、また、水道管が凍結で断水したというようなことが起きた。

A君:テキサス州では、気温が0℃以下に下がったけれど、これは、30年ぶりの事態とのこと。

B君:南部としては、考えられないような事態が起きていたらしい。ヒューストンの幹線道路沿いで、男性2名が凍死しているのが発見されたり、暖房の無いトレーラーホームで11歳の男の子が死亡したり、その他、トラック車内や駐車場、あるいは、自宅で死亡者が見つかることが相次いだ。

A君:その原因が、330万世帯に電力が届かなかったこと。

B君:27日土曜日の日本時間10時にダラスの週間気温をチェックしてみると、最低でも11℃ある。20日頃には恐らくマイナス3℃ぐらいだったのだと思うから、異常気象は解消したようだ。

A君:ダラスに住むようになった女性の記録が見つかりました。気温予報が、最高気温がマイナス5℃、最低気温がマイナス11℃だったそうです。なんともすごい気温。
https://dallazum.com/winter-in-dallas


B君:ダラスの寒波が、気候変動のためなのか、と言われると、誰も証明はできないのかもしれない。気候変動とは普通は温暖化、しかし、温暖化と同時に、変動幅が広がるとはされているけれど、どのぐらい広がるのかは、地域の状況によって違うのだろうと思える。

A君:日本のような海洋国家は、海水の熱容量が大きいためもあって、気温が比較的平準化されるというメリットはありますね。もっとも海で成長した台風が来るということは有るのですが。

B君:テキサスは、陸で成長したトロネードが襲ってくるから、大変だよね。家には地下室が必ずあるらしい。米国としては、カリフォルニア州が、比較的気候が恵まれているようには思うけれど、それでも夏の乾燥期には、山火事が発生して大変なことになる。世界中の気候で快適なところはどこかといえば、まあ、中南部のヨーロッパの気候が穏やかで良いことは、事実かもしれないけど、同じヨーロッパでも北部に行けば、やはり寒いし暗い。

A君:完璧な地域などは無いという結論ですね。そして、どこも、気候変動の影響を受けることになる。

B君:日本の話に戻ろう。同じ23日の第5面にやや小さくだけれど、政府が脱炭素2兆円基金、という新方針が公表された。それは、開発目標の達成度合いに応じて、企業への拠出金を増額し、もし取り組みが不十分な場合には、資金の返還も求めるというもの。

A君:拠出の対象になり得るのが、昨年末に、政府が示した「グリーン成長戦略」に掲げた重点14分野とするとのこと。企業に関しては、達成に向けた経営トップの積極的な関与や開発体制の整備が求められるとのこと。なお、支援機関は10年間。

B君:その重点14分野のリストは?

A君:政府の発表は分量が多いので、電気新聞の記事をさらに簡素化してご紹介。
https://www.denkishimbun.com/sp/101403
 項目だけですが、目標には数値が付いていますので、まあまあの情報だと思います。
(1)洋上風力:2040年3000万〜4500万キロワット導入
(2)燃料アンモニア:2030年に向けて20%混焼の実証と日本の調達量を2050年で1億トン。
(3)水素:2030年で最大300万トン導入。50年には2000万トンへ。水素コストを20円/N立法メートル程度以下。
(4)原子力:小型(SMR)の国際典型プロジェクトに日本企業が主要プレイヤーとして参画。高温ガス炉で日本の規格基準普及へ他国関連機関と協力。
(5)自動車・蓄電池:遅くとも2030年代半ばまでに乗用車新車販売が100%電動車。2030年までのできるだけ早期に、電気自動車とガソリン車の経済性が同等となる車載用電池パックの価格1万円/kW時以下。
(6)半導体・情報通信:データセンター使用電力の一部再生可能エネ化義務付けを検討。2040年に半導体・情報通信産業のカーボンニュートラルを目指す。
(7)船舶:LNG燃料船の高効率化として、低速航行や風力推進システム併用で、CO2排出削減率86%達成。再生メタン活用により実質ゼロエミ化を推進。
(8)物流・人流・土木インフラ:海外からの次世代エネルギー資源獲得に港湾整備。
(9)食料・農林水産業:地産地消型エネルギー史sツエムの構築に向けた規制見直し。
(10)航空機:2035年以降に水素航空機の本格投入を見据え、水素供給に関するインフラ・サプライチェーン検討。
(11)カーボンリサイクル:2050年の世界のCO2分離回収市場で年間10兆円のうち、シェア3割。約25億トンのCO2に相当する。
(12)住宅・建築物/次世代型太陽電池:住宅トップランナー基準はZEH相当。ペロブスカイトなどの有望技術の実証。ビル壁面など新市場獲得。
(13)資源循環関係:廃棄物発電において、こみの質が低下しても高効率なエネルギー回収を確保。
(14)ライフスタイル関連:J−クレジット精度などで、申請手続きの電子化、モニタリングやクレジット認証手続きの簡素化・自動化。


B君:開発プロジェクトの規模は、従来の研究事業の平均規模を上回るとのことで、200億円以上とするとのこと。拠出金の交付事務を行うのはNEDO。4月以降に公募を実施するとのこと。

A君:それでは次の話題へ。翌日の2月24日の日経朝刊をチェックします。一面で目に付くのが、『佐川、EVで宅配』というもの。軽自動車約7000台を電気自動車に置き換えるということ。営業車両の2割強。これで、CO排出量が1割強減るらしいです。

B君:自動車を使う物流は当然ながらCO排出量が多い。現状では、佐川も年間28万トンのCOを排出しているという計算になるとのこと。

A君:あのトランプ大統領が方針を決めた米国ですら、機関投資家のESG投資(環境・社会・企業統治:Environment, Society, Governance)への意識が高まっている。ひょっとすると、日本が米国の後追いをしている状況かもしれない。

B君:機関投資家の意識に関しては、日本が後追いしたというのは事実なのでは。

A君:まあ、そうでしょうね。少なくとも、CO排出量が気になるという人は誰か、という疑問の答えは、やはり、パリ協定の精神を非常によく理解している人ということになるでしょうね。

B君:すなわち、パリ協定の”Climate Justice”という言葉がすんなりと理解できるかどうか。確かに、Justiceという言葉は、恐らく日本人以外でも難しい問題を孕むと思うけれど、日本人の場合には、「特に」、難しい。「特に」が付く理由は、Justiceを”正義”と訳したとたんに発生する何か特異な響きによるのかも。

C先生:そろそろ、次の新聞記事に行こう。2月25日ではどうだ。

A君:5面の経済の大見出しが、『脱炭素へ原発、「国が前面に」』だった。

B君:経済界は、総合エネルギー調査会の分科会において、「新増設へ環境整備」を政府に要請したとのこと。

A君:たしかに、発電量に関して、日本国の30年目標では、原発の比率を20〜22%としているけれど、現状では6%しかない。それには再稼働が進むことが必要。

B君:東日本大震災後は、再稼働したのは9基のみ。

A君:原発の寿命は、運転時間が原則40年がリミット。それを特例で60年に延長が認められる。そして、2060年になると、60年運転延長の場合でも、8基に減る

B君:日本人の感覚がやはり影響していると理解すべき。しばしば議論しているように、日本において、「七転び八起」と言う言葉があるけれど、これは本当なのか。多分、日本人の本音は、少なくとも原発の福島事故のような大々的な被害をもたらした場合には、「一転びアウト」なのだと思う。なかなか許して貰えない。

A君:再稼働はもしできれば、経済的に有利だと思うけれど、むしろ、全く新しいシステムであるスモール・モデュラータイプの原発で置き換えるという発想の方が、受け入れられやすいようにも思えますね。事故の発生確率が遥かに低いと思われるので。

B君:勿論、そうなのだけれど、やはり、新設するとなると、手続きなどをまさに、1からやらなければならないこと、必要となる費用に関して言えば、既存の原発を再整備する方が圧倒的に安価なのだろう。

A君:日本の電力は、まず絶対と言っても良いぐらい停電しませんよね。だから、多くの日本人は電気はあるのが当たり前、と思ってしまうのではないですか。ところが、発電設備には寿命もあるし、火力発電であれば、COという環境面での大問題があるのですが、それをどこまで市民は理解しているのか。

B君:そう言えば、C先生が、冗談でよく言っていたよね。電気事業法の第0条に、「電気事業者は、5分程度の停電を年間数回、意図的に実施しなければならない」という項目を入れないと、日本人には停電しなために、どのぐらい電力会社が努力しているか、その実態が理解できないのではないかって。

A君:それも良いアイディアなのだけど、そもそも電力がどのように発電され、そこから家庭までどのよう送電されてくるのか、そのような授業を小学校から行う。同時に、地球温暖化ガスであるCOに関する講義も小学校から始める

B君:小学校5,6年用の教材と思われる資料がダウンロードできた。福岡県地球温暖化対策ワークブックというものだけど。
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/108767.pdf

A君:全部で29ページもある。小学生にとっては、むしろ十分以上の分量ですね。

B君:そうなんだ。先日C先生が名古屋のさる大学で講演をしたとき、質問を受けようとしたら、「地球温暖化は事実ではない」と主張する教授らしき声が響いた、というすごい話があるから、大人向けの誰でも分かる教科書が必要なのかもね。

A君:その教授らしき人は、新聞などを購読していないのだろうか。あるいは、経済などに全く関心がないのか。

B君:あるいは、すでに何回もご紹介している三井誠氏の著書、「ルポ 人は科学が苦手」に出てくる地球は平板状であると主張するフラット・アーサーズと呼ばれる人々のように、自分の目で確認しないと信用しないという人が多いということなのでは

C先生:そろそろ、新聞記事でまだ紹介していないいくつかの記事に行こう。

A君:了解です。次が、2月26日(金)版ですね。

B君:1面トップが、国内最大級の水素設備、伊藤忠、フランス大手と。という記事だった。

A君:実は、17ページに関連記事があって、水素価格は、「欧州は日本の1/4、日本勢、劣る価格競争力」というもの。

B君:その理由は、まずは、年間販売量が全く違う。日本国内では、岩谷産業が最大手。年間販売量は1億立方メートル。それに対して世界3強である、フランスのエア・リキード、独のリンデ、米のエアープロダクツ・アンド・ケミカルズの年間生産量は、合計で140億立方メートルなんと140倍

A君:しかも、米のエアープロダクツは、サウジアラビアで現地企業と組んで、5000億円を投じて、大型の水素製造設備を建設計画を持っているとのこと。

B君:そもそも、水素をどうやって作るのか。もっとも一般的な方法は、天然ガスに含まれる炭化水素を水素と二酸化炭素に分離する手法。この方法で生産する日本の水素は1kgあたり1000〜1500円。しかし、欧州では200〜400円。

A君:この差はどこから来るのか、と言えば、原料となる天然ガスの価格日本だと100万BTUあたり、8.53ドル。それが、欧州だと3.24ドルと半分以下

B君:欧州では再エネのコストも安い。20年に再生エネ由来が全体の38%となり、化石燃料を初めて上回った。

A君:最初にご紹介した、同じ新聞の1面に掲載されていた伊藤忠商事の話ですが、コークスの製造過程で副産物として発生する水素(副生水素)を船舶燃料として供給する取り組みを吸収において、23年度から開始するとのこと。その際、水素価格を現状の1/3に抑えることを目標とする。

B君:日本コークス工業の役員は、「副生水素は、価格競争力をもっている」と主張

A君:しかし、相当頑張らないと、日本はまたまた競争に勝てないですね。

B君:関西電力の森本社長が、水素生産の検討を始めたという記事も隣に掲載されている。水素は、火力発電の燃料として使用するということ。

A君:水素ならCO発生量ゼロと主張できますからね。これからの地球環境問題において、正義のキーワードが『COゼロ』ですからね。

C先生:そろそろ終わりにしよう。このような情報を読むと、エネルギー関連の日本の企業が、どうやって今後生存していくことを目指すのか、あるいは、すでに目指しているのか、良く分からないね。もっと、明確なポリシーを決める必要があるのではないか。例外として自動車産業だけは、比較的世界の先頭に近いところを走っているので、なんとかなると思う。しかし、テスラのような、プレミアムブランドにはなっていない。テスラは、自動車以外でも常に挑戦的で、他のメーカーとは格が違うことをアッピールしている。技術レベルで言えば、電気自動車は非常に簡単だ。日本のハイブリッド技術のように面倒なものは、欧州のメーカーは作らない。あるいは作れない。なぜなら、ユーザの特性が違う。欧州では、アクセルと加速の比例関係が重要で、グイと踏み込めばガーと加速するのが条件。電気自動車だと、まあ、そんな感じになる。日本人だとハイブリッド車を上手にコントロールして、最高の燃費を出すといったチャレンジを好むけど、欧州人には燃費にチャレンジといった趣味を持つ人は少ない。ドイツのアウトバーンを走ったことがあれば、日本と欧州の価値観・趣味の違いよく分かると思うけど。今後、欧州向けに、トヨタがどのような対応を示すか、それに興味ありだね。