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  原発なしで2050年まで? その1 
 08.05.2011
      ipccのSRRENも若干紹介




 今週は5日金曜日から夏休みで、能登・白山・三方五湖・琵琶湖あたりを6日間ほど、プリウスでフラフラしている予定です。

 さすがに旅先からHPのアップができるとは思えないので、早めに準備をしました。

 話題は原発なしで2007年からの日本政府の公約、「2050年温室効果ガス80%削減」を実現する方法はあるのか。今回は、前編です。

 どうも、「真夏の夜の夢」になりそうな気がしますが、一方で、「お金さえ掛ければできるさ」、ということも事の真理の一端ではないかと思います。

 同時に、ipccが出した再生可能エネルギーに関するレポートの内容を少々ご紹介します。今回も何やらスキャンダルになるという噂のある報告書でもあるようです。



C先生:8月2日から、これまで「中長期ロードマップ小委員会」と呼んでいた委員会が再開された。正確に言えば再開ではなく、全く新しい枠組で再度行われることになった。正式な名称は、「2013年以降の対策・施策小委員会」。
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=14068
小委員会であるということは、これまでと同様に、環境省の地球環境部会の下に置かれていることを意味する。

A君:昨年度、相当の回数が開催せれたのが中長期ロードマップ小委員会で、2010年12月6日が第19回だった。

B君:こんなに多数回開催される会議は珍しい。しかも、いくつものワーキンググループが並行して開催されてきた。

C先生:その中で、エネルギーWGというものがあったが、その結論が、3.11ショックで、全く通用しないものになってしまった。原発増設シナリオだったからだ。
 個人的には、エネルギーWGの結果を参照して、2050年の社会像を描くというマクロフレームWGに関わってきたが、当然のことながら、こちらもシナリオを全部書き直す必要があるかもしれない、という事態になっている。

A君:若干周辺状況を見渡した上で、本論に入りたいと思います。まず、周辺状況ですが、IPCCが再生可能エネルギーについて、SRRENというレポートをまとめました。

B君:いつものように、2本のレポートからなる。
政策者向け概要
http://srren.ipcc-wg3.de/report/IPCC_SRREN_SPM 約1MB
フルレポート
http://srren.ipcc-wg3.de/report/IPCC_SRREN_Full_Report 約28MB

A君:どうも英文字羅列の訳の分からない記号をどうにかしろ、という感触なのですが、SRRENは、Special Report on Renewable Energy Sources and Climate Change Mitigationの略らしいです。SRREまでは分かるのですが、次のNは?

B君:Energyのnではないか。いい加減な命名なのかもしれない。

A君:もうひとつ。日本人のLead Authorがゼロというのは?

B君:座長がドイツ、キューバ、エチオピア、米国。著者達は、ドイツが10人ぐらいと多いか。米国が7〜8名などなど。

C先生:日本で再生可能エネルギーの研究をやっている人々の科学的な地位が低いということだろう。どうも日本の再生可能エネルギーでは、NPO的な活動が多くて、学問としてやっている人は極めて限られている。もっとも、SRRENのレポートそのものも、それほどプロを感じさせるものではない。

A君:このレポートは、大体2つの部分からできていて、前半が再生可能エネルギーの各論、そして、後半が現在もしくは未来のエネルギーシステムに、どのように再生可能エネルギーを組み込むか、という議論。その他に、国連的な途上国の持続可能な発展への再生可能エネルギーの貢献のような話もありますが。

B君:電力網と再生可能エネルギーの話は、不安定さがどのぐらい増すか、ということが話の本質なのだが、その本当のところがどうもよく分からない。これまで、ここ20年ぐらいは、九電力と関連重電企業、東芝・日立・三菱が技術を独占してきたため、情報が共有されていない、と言えるのだろう。大学などにも強電と呼ばれる研究室が昔はあったのだろうが、今は、無くなったのではないだろうか。

C先生:SRRENの概要版をざっと読んだ限りでは、何か新しい観点から議論を進めなければならないというものでもないように思った。
 理由はいくつかあるが、世界全体のポテンシャルなどが日本の場合に参考にはならない。再生可能エネルギーの特徴などを記述しているが、まあ、初級程度の情報で、詳細を知るべきとも思えない。
 何か、これは絶対という情報があれば、ここで確認して、どう取り扱うかを決めたい。

A君:ひとつだけ。もしもいくつかの図について、その日本語訳が欲しければ、環境省が公開していることです。
http://www.env.go.jp/council/06earth/y060-93/ref02.pdf
 ただし、まだ暫定版ということです。しかし、このPPTの資料の方が余分な情報量が少なくて良いかもしれません。

B君:すでに日本語になっているので、見ていただきたいが、いくつかの図が面白い。その環境省資料で言えば、p41。これは、様々なCO2排出削減のシナリオを分析したもので、図中に青い十字でマークされているのが、現状。それに対して、ほぼすべてのシナリオで、再生可能エネルギーの導入量が増える。もしもその十字よりも左側に行きたければ、すなわち、二酸化炭素排出量を減らしたければ、再生可能エネルギーの導入は大幅に増えるとしている。
 この資料は、ページをそのまま引用すれば使えるということになっているので、大々的に縮小してしまいましたので、本物は、ダウンロードしてみていただきたい。


図 環境省のSRREN資料のp41

A君:再生可能エネルギーの導入は大幅に増えるということですが、それって当たり前ではないですか。エネルギーには、現時点で、化石燃料、原子力、そして、再生可能エネルギーと3種類しかないのですから。そして化石燃料は価格的に、大量消費は徐々に難しくなる。原子力は、そのシナリオスタディーで福島原発の事故が考慮されている訳はないけれど、使用済み核燃料の処理などの問題を考えれば、それほど増やすこともできない。もしも高速増殖炉を開発しなければ、資源量も非常に限られたものに過ぎない。

B君:まあそれはそうなんだが、現在の再生可能エネルギーの使用量が2050年には、最大で8〜9倍になるという。この最高のケースだと、2050年には、全エネルギーに対する再生可能エネルギー量は、77%を占めているという。

A君:77%ですか。不安定型自然エネルギーの導入量が20%を超すことは、通常の電力網では考えられない。それは、かなりの割合で、熱として導入しているのではないですかね。

B君:それはそれぞれのシナリオを当たらなければならない。シナリオは、増えるケースばかりではない。最低のケースでは、今よりも減るが、それは、2050年という遠い将来には、森林が減少し、バイオマスエネルギーの資源量が減って、当然ながら使用量可能量が減る可能性があるからではないだろうか。それとも、水不足で水力発電が減るからだろうか。

A君:そのあたりの細かいところの議論になると、概要版=SPMではよく分からないので、本文を読むことになるのでは。いやいや、シナリオの解説だと本文にも出ていない。答えは、「分からない」のようで。

B君:p44のどの国で再生可能エネルギーの供給量が増えるか、という図では、当たり前ながら、最終的には、途上国で増えるのだが、2030年までだと、風力に関しては、先進国で増えることになっているのが面白い。


図 環境省のSRREN資料のp44

A君:英国の意欲などを見ていると、そうかもしれない。しかし、その詳しい解説も、よく分からないとしか言いようがない。

C先生:結局のところ、SRRENが直接役に立つというものでも無さそうだ。ざっくりと見たところ、これまで考えてきたこととそれほど整合性が悪くはないので、まずは、こちら側の考え方の基本的検討に入ろう。

A君:本日の検討での基本的な考え方をもう一度提示しましょう。すでに、このHPで提示したいくつかのPageの内容をまとめたものになります。
http://www.yasuienv.net/EneSup311.htm
http://www.yasuienv.net/Ene2Aft311.htm
http://www.yasuienv.net/Ene3A311.htm
http://www.yasuienv.net/Ene4A311.htm
http://www.yasuienv.net/EneBirdsEye.htm

本日の基本的スタンス
◆1:「日本国民が自国内でのエネルギー供給をこのようにしたいという要請に応じつつ、2050年における国内からの二酸化炭素排出量を80%削減するという目標を実現できるシナリオを書いてみる」。
◆2:「ただし、使いたいだけ使えて、コスト的には極めて安価で、しかも、停電も絶対にしない、といったことを要望しても、それは絵空事である」。
◆3:「国民の現時点での判断として、原発は使用年数の多いものから順次停止すること、新設もほぼ容認できない、という傾向が続く、と考える(確率90%?)」。
◆4:「コストの多少の増加は現時点では許容されるものの、そのうち、コストの上昇が現実のものとなると、コスト低減に対する要求は厳しくなる。そのため、投資金額をできるだけ少なくすることを追求する」。
◆5:「ある設備を導入することによって、それ以後の選択の自由度が失われるような事態(Lock-in)が起きないように配慮する」。
◆6:「エネルギーという無形のものへの要求は、リスク(安全性、供給不足)、コストなどとのトレードオフ関係によって決まる傾向が非常に強いことを理解する」。
◆7:「何々をすべきでない、といった哲学的(宗教的?)主張によって、ものごとを決定しない」。

B君:最後の◆7の哲学的主張というものは、色々あり得る。例えば、「化石燃料・核燃料は枯渇性資源であり持続可能ではないから、使うべきでない」。これは、”枯渇性資源であり”、までは正しいが、まだしばらく枯渇する訳では無いので、使うべきでないかどうか、それは、その人の哲学による。

A君:もう一例。「原子力は危険であり、使うべきではない」。確かに、BWRマーク1のような古い原子炉が危険であることは事実でしょう。最新のモデルでも、テロ対策はできていない。しかも、使用済み核燃料の処理方法が未開発である。
 だからといって、未来永劫危険であるかどうか、それは分からない。それを危険だと言い切ることは、その人の哲学あるいは宗教に基づくものである。
 例えば、化石燃料を使い始めた当初、蒸気機関の破裂など、事故が多発したのは歴史的事実。中国の新幹線だって、現在は危険であろうが、未来永劫危険かどうか、それは分からない。

B君:◆6のエネルギーの選択は、リスクとコストとのトレードオフは、次のようなことを考えることにする。
(1)エネルギー供給不足リスク 
(2)エネルギー価格の高騰リスク
(3)電力供給不足リスク 
(4)電力料金高騰のリスク
(5)想定外の停電のリスク
(6)使用済み核燃料の対応未定のリスク
(7)現存の、特に古い原発のリスク
(8)低い自給率による供給変動のリスク

A君:そして、これまで余り指摘されていないことだと思いますが、今後、送電用の設備コストに余り投資はできない可能性が高いのでは。

B君:それはその通り。ただし、太陽光発電のように投資を誘導すれば、投資をするのは市民であるという場合、あるいは、地熱のように、投資を誘導すれば、投資をするのはエネルギー生産業であるという場合は、投資が行われる可能性が高い。
 しかし、送電用の設備については、できるだけ余分な投資をしないですむようなアプローチをしないと、非現実的なシナリオになる可能性が高い。

A君:そう考えると、送電用設備は、
(あ)最終的には、直流幹線をもった電力網になる。
(い)しかし、それ以前に、不安定性を軽減するために小さな電力網に分散。
(う)その前に、オフラインのローカル第二送電網を作ることを許可する。
(え)その前に、ガス供給網と連携する。
(お)その前に、省エネ・高効率化を徹底的に行って、電力網への負荷を下げることを最優先する。

B君:多分、そんな方針が送電用設備への投資を下げる順番だろう。

A君:さて、具体的な検討に入りますか。妙なことに、(お)から(あ)に逆向きで行くことになります。

B君:これまでのシナリオでは、原発が増えることに依存していたが、それがダメなら原発以外の燃料を増やす必要がある。それが天然ガスになることはほぼ確実。しかし、最高効率を実現しつつ増やさなければならない。
A君:まずは、省エネを徹底的に進める。毎度おなじみ、新こたつ文明、スーパーこたつ文明などを活用。

B君:化石燃料を使うなら、絶対的な高効率で。発電効率は特に重要。

A君:現状でも、燃料電池による電熱同時供給もそう悪くはないですが、まもなく出現する固体酸化物型(SOFC)の燃料電池は、効率も高いし、場合によれば、お湯以外の熱の供給も可能なので、これを家庭用に普及することになれば、天然ガスをコンバインドサイクル(ガスタービンを回し、予熱でボイラーを加熱し蒸気タービンを回す)で発電に使って、その後、送電ロスを覚悟して送電するよりも効率が高いかもしれない。

B君:(お)の高効率化という観点からみても、SOFCを使った電熱同時供給システムは悪くはない。これが、(え)の具体的内容を同時に実現していることになる。しかも、比較的早く実現できる可能性が高い。

A君:さて、次ですが、中長期ロードマップの検討をしていたときに、仮定されていたことが、原子力の増設でした。しかし、今回の検討では、それはほぼ無理であるどころか、2050年には、動いている原発はゼロになるという仮定にしなければならない。
 となると、乗用車や近距離輸送は、電気を動力として使うと考えていたが、これが消滅する。

B君:電気自動車が本当に普及するのは、もう少々掛かる。風力発電が本当に普及するのも、もう少々時間が掛かる。これを同時に実現すれば、何か良い方法はあるだろうか。

C先生:関連して、再生可能エネルギーの特徴をもう一度確認したい。
 私見では、再生可能エネルギーを3種類に分類するのが良いと考えている。
(▲1)安定型再生可能エネルギー=水力、地熱、バイオマス、太陽熱利用(温水)、
(▲2)不安定型予測不能型再生可能エネルギー、風力、太陽光発電(特に、メガソーラー)、
(▲3)不安定型予測可能型再生可能エネルギー、潮力、海流。家庭用の太陽光発電は徐々にこちらになる。

A君:(▲1)のタイプの再生可能エネルギーは、いくら導入しても、電力網になんら悪影響は与えない。バイオマス、水力、地熱、太陽熱。これらの普及をまず最初にすべきだということ。

B君:それは当然だ。ただし、バイオマスも、日本の現状から言えば、すぐに拡大するのは難しいかもしれない。森林の管理を行うにしても、所有者が分からないような状態なので。となると、中小水力と地熱を拡充すること。さらに、太陽熱利用=昔ながらの温水器をできるだけ普及することが正しい。

A君:しかし、バイオマスを含めて、日本の現状では、それほどの導入量が期待できない。やはり、風力、太陽光の活用が必要となる。しかし、これを大量導入すると、電力網への影響が大きくなる。
 そこで、(う)のオフラインのローカル第二送電網を作ること。この送電網には、風力や太陽光発電がぶら下がる。基本的には直流送電網であって、電気自動車やプラグインハイブリッド車の充電専用に使う。

B君:もしも、電力網の安定度を多少下げることができて、ときどき停電するけど大事には至らないといった状態が実現されれば、家庭に、電池が存在していて、その充電にもこのオフラインのローカル第二送電網が使えるかもしれない。

A君:しかし、誰がその資金を出すのか。それには、やはり新規参入の事業者が資金をだしやすい環境を作るしか無いのでは。

B君:果たして事業性はあるのだろうか。それに現状の電気事業法では不可能。

A君:それが実現すれば、風力、メガソーラーなどがいくらあっても、困らない。したがって、長期的にはやるべきなのでは。

B君:同じ太陽光でも、家庭の屋根に載せるぐらいのものであれば、スマートメータの設置によって、数分後の発電量を未来予測ができるようになるので、余り問題ではない。
 投資をしやすくする環境がどのように整備されるかが問題なだけ。

C先生:これで、(う)まで実現できた、としよう。その次の(い)だが、これをどうやるのか、よく分からない。しかし、部分的に直流幹線を作ることと同義であるようにも思えるのだ。

A君:となると、(い)は、(あ)の最初の段階だということになりますか。

B君:そして、最終的には(あ)が完成すれば、これまでオフラインのローカル第二送電網だったものが、直流幹線の一部として有効活用されるかもしれないので、無駄にはならないはずなのだが、本当にそうなるのだろうか。

C先生:ここまで考えてきて、何が抜けているのか、といえば、それは、現在すでに大きな発電容量をもっている揚水発電をどう使うか。揚水用のポンプをオフラインのローカル第二送電網で駆動できるようになれば、それはそれで巨大な蓄電装置なので、相当有効に使えることになる。

A君:それが、どのような段階で実現できるものなのか。それが全く分からない。

B君:揚水発電用のポンプも、現在時点では、交流で駆動されている、というよりも、発電機に交流を流して逆方向に回している。オフラインのローカル第二送電網は直流なので、ポンプを駆動するには、交流にしなければならない。

A君:なんだ。結局、直交変換の素子をかませば良いので、電圧を制御すればできそうではないですか。

B君:そう思えるが、このあたりが実現可能なのかどうか、電力網を研究している誰かに聞きたいところ。

A君:もしそれが可能なら、当初オフラインのローカル第二送電網として構築された電力網も、最終的には、直流幹線の一部として使われることになると結論して良いのではないでしょうか。

C先生:ということで、このような道筋で考えて、それが本当に実現可能なら、2050年の送電網も順番に構築できることになって、無駄が無い。すなわち、送電網への投資総額が少なくて済むのではないだろうか。
 大分、マニアックな話だが、これが本当かどうかは分からない。
 しかし、この程度のシナリオを作った上で、最適のスピードで風力なりメガソーラーなりの導入を行うようなプランを作る必要があるのではないか、という提案とさせていただきたい。
 今回、文章量が限界を越したので、次回以降、このような方向で、本当に温室効果ガスの80%が果たして可能になっているのかどうか、その検討を行ってみたい。