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  事務機・情報機器編  04.20.2003
    「当面の課題」続き



これが4回目である。これまで、(1)概要の説明(2)自動車・家電、そして、(3)再度の説明、と3回の記事を掲載してきた。

本日は、事務機・情報機器編である。半導体産業なども、ここで議論することになりそうだ。


C先生:事務機、すなわち、OA機器業界は、環境関係では最優等生であるとされている。それだけに、行き過ぎや、魔女狩り的な体質ももっている。

A君:キヤノン、リコー、ゼロックスの3大メーカーだけでなく、エプソン、コニカなどもがんばっている状況ですね。

B君:OA機器は企業などが購入するものが多い。政府調達は当然グリーン購入だし、自治体でもかなりグリーン購入をするところが増えた。加えて、先進的な企業は、グリーン購入をしたいという意識がある。企業も大々的な設備投資などには後ろ向きだが、OA機器更新程度なら払う金が無い訳でもない。ということで、このところ、これらの業界の状況は悪くは無い。

C先生:景気が落ち目の企業では、マインドもどんどんと後ろ向きになるのだが、これらの企業はまず元気だ。

A君:3大OA企業ですが、非常に良く似ているのですが、それでも企業風土に多少の違いがあるようで、キヤノンの無害化路線、リコーのリサイクル路線、ゼロックスの再利用路線といったところが当初の特徴でしょうか。勿論、3社ともすべて実施中なのですが。

B君:キヤノンは、鉛フリーとか塩ビ削減とかに早くから取り組んできた。リコーは、プラスチック部品のコード化による材質表示と再利用がすごかった。ゼロックスは全方位型に近いものの、それでも部品の再利用に特徴があるのかもしれない。

C先生:まもなく完成する拙著、「リサイクル−回るカラクリ、止まる理由(ワケ)」なる本(日本評論社から6月までには刊行予定)には、以下のように記述させてもらった。

 リコーは、プラスチック部品のリサイクルを目指し、すでに九三年三月、プラスチック部品の名称表示を始めた。すでに述べたとおり、同種のプラスチックでも重合度や添加物が違うから、ただPS(ポリスチレン)と表示してもあまり意味がないのだ。マテリアル・リサイクルをするには、さらに細かい性質を知る必要があるため、コード番号を含めて材質を表示する。そのおかげでプラスチック部品がリサイクルできるようになり、九九年にはゴミ・ゼロを達成した。
http://www.ricoh.co.jp/ecology/history/Past.html
 ゼロックスもプラスチックのリサイクルに務め、最近の進歩としては、塗料の改良によるプラスチック成形材のリサイクル性向上がある。新しい塗装法をゼロックスはこう紹介している。
http://www.suzukafx.co.jp/Jpn/CUSTOM/recycle.html

「この方法ではプラスチック成形品に塗装するため、使用済みプラスチックを素材に戻す際に色別に仕分けしたり、リサイクルプラスチックを生産する工程で色を補ったり調整して色合わせする必要がありません。
 この塗料を用いたプラスチックリサイクル材の成形加工性、塗装適性は、新品の素材を使った場合と同じです」。
 また同社は、部品のリユース設計についてこう述べる。

http://www.fujixerox.co.jp/arm/index3.html
「当社では、一九九五年以来、部品をリユースするためのリユース設計法の開発に取り組んでいます。長寿命設計、分離設計、強度設計、分解設計などの設計指針に基づいた設計法を開発、リユース設計のさらなる向上に向けて取り組んでいます」。
 キャノンもリユース部品を積極的に使い、次のような主張をしている。

http://canon.jp/ecology/recycle/index.html
「複写機リマニュファクチャリングは、オフィスで活用された複写機を回収することからはじまります。使用済みの複写機は、リサイクルセンターで分解され、各種部品は入念に洗浄されます。その中で新部品と同じ厳密な品質基準に合格したものは、生産ラインに投入され、新しい部品のみで生産された複写機と同じ検査ラインを通ります。ここで新製品と同様の高い品質が保証され後、新たな商品に生まれ変わるのです。また、基準をクリアできなかったものも、材料として再利用しています。このように再製造された複写機は、リサイクルパーツを五○%以上使用(重量比)しており、使用できなかった部品は全て資源として有効に活用されています」。

A君:いずれにしても、最優等生なのですが、それは、これらの商品がリースという形態をとっていること。これが大きな要因です。手の込んだ部品を使っても、必ず製造者の手元に戻るから、割が合う。

B君:確かにその通り。3世代設計といったような長寿命部品をつかっても、廃棄されてしまったり、誰か別の企業に収集されて、その部品を再使用されてしまっては、何にもならない。

C先生:これらの製品が比較的高額であること、さらに、機能というサービスを提供すること、特に、故障した場合の迅速な対応が求められることといった商品特性から、リースが最適な機器だ。

A君:となると、考えられることはもうある程度実施されていて、今後やることは無いとか。

B君:かなりそれに近いかもしれない。

C先生:これも家電・自動車のところですでに述べたように、リースという業態は、有害物質の管理もやりやすい営業形態なのだから、極限までの省エネルギー化を推し進め、そのために必要なら、有害物も躊躇しないで使うといったコンセプトの方が望ましいのではないだろうか。勿論、使用時に有害物が出るようでは駄目だが。

A君:問題は、そんなものがあるかどうか。

B君:最低限、塩ビはありそうな気がする。鉛フリー半田も半田付け温度のことを考え、また、資源の有限性を考慮すれば、良いかもしれない。

C先生:非塩ビという対応が、環境面で何かメリットがあるのか、というとほぼ無くなった。フタル酸エステルが有毒物であるということは事実だが、毒性も低く、かつ、蓄積性も高くは無いため、どんなリスクがあるのか考えにくい。環境ホルモン性があるということは、否定された。

B君:LD50で比較するのは乱暴だが、30g/kg。命にかかわるかどうかなら、数字上は食塩の10倍安全???

A君:塩ビ製の手袋を調理用に使用することが禁止されましたが、その理由は、その手袋でコロッケを掴むと、コロッケの油分で手袋からフタル酸エステルが溶け出す可能性があるからでした。

B君:赤ちゃんが使うおしゃぶりに塩ビを使うことが禁止になったが、これは、まあ口に入れるものだから。

C先生:この8月から6歳未満が使う玩具からフタル酸エステル(DEHP)が締め出されるとのこと。こんな措置を決めたのは厚生労働省だが、EUですら規制しないで見送っていることを良くやってくれる。予防的原則を採用したのだと、威張りたい気持ちも分からない訳ではないが、無用な規制は誰のメリットにもならない。日本だけが突出しても、輸入品などの問題があるので、効果的ではない。

A君:それで思い出すのが、首相官邸に非塩ビのエコ電線を使ったこと。当時の建設省の役人が、何かエコなこと(あるいはエコに見えること)をやりたかったから、という動機と、電線業界にとって見れば、価格が抑えられていて儲けが期待できない塩ビ電線よりも、非塩ビの電線が高く売れるという動機がマッチしたのでしょう。

B君:火災の延焼などを考えると、非塩ビの電線の方がトータルのリスクは高くなりそうだ。

C先生:非塩ビの電線といったところで、なんらかの難燃剤を入れざるを得ない。昔は、臭素系難燃剤なるものを入れたのだが、それでは何がなんだか分からないものを作ることになる。そこで、最近は、水酸化マグネシウムなる水和物を難燃剤に使うようだが、これが大変な代物で、ゴワゴワの電線しかできない。下手に施工するとポキポキ折れる可能性もある。安全からは程遠い。

A君:OA業界も、下手をすると、非塩ビ電線を使いたがる業界でしょうね。電機で言えば、松下とかソニーのようなタイプ。

B君:そこを我慢して、適材適所によるトータルリスクのミニマム化のために、塩ビを適正使用します、とでも言えれば、それは大進歩。

C先生:鉛フリーの半田使用も、リースで戻ってくるのだから、ほとんど問題はない。まあ、鉛フリーにした方が、寿命が長くなるという話も無い訳ではなくて、数世代設計の部品を作るとしたら、どちらが良いか。

A君:そのあたりも、どのように説明するかが勝負でしょう。

B君:OA業界のように、全産業の対環境対応型商品という意味では、リーダー的存在なのだから、より本質的な思想なり哲学なりを作って、それで勝負ができるようになれば、見上げたもの、ということになるだろう。

C先生:OA業界は、現在の一般的企業の環境観に対応するといった方針で商売をやっているようだ。したがって、先鋭的な取り組みが可能になる。しかし、いつでも客のニーズを先取りするのが正しい対応だとしたら、これから先は難しい時代になったと言える。やはり相当しっかりした哲学が必要だろう。

A君:これから先は、複数の異なった方向性をもった多次元ベクトルを最適化するといった時代になるでしょうから。

B君:これまでのような、無害化、ゼロエミッション化のような単純な条件では議論ができなくて、トレードオフという妥協点を探す作業が必要になる。

C先生:その通りなのだが、日本人は、どうもその妥協点を正しく見出すことが苦手のようだ。標語がはっきりしないと、動けない体質なのだろうか。

A君:このOA業界ですが、製品寿命が短いので、余り問題にならないのでしょうが、電機・自動車のところで本来議論すべきだったのですが、顧客に満足を与える商品というものが何なのか。この議論は重要です。

B君:例の話だな。自動車だと長いと10年間使う。買う時点での顧客満足を与えればよいのか、それとも、中間地点の5年後ぐらいで本当に満足できる商品を売るのが正しいのか。

C先生:そのあたり、今後の重要な問題として、各業界に考えてもらおう。

A君:それでは、課題をまとめます。
OA機器メーカー
(1)製品寿命を長くすること、
(2)塩ビ、鉛のような魔女を作らないで

こんなものでしょうか。

B君:まあ、優等生だから。

C先生:トレードオフという考え方を取り込んだ製品開発を課題を(3)として上げておく。
(3)リスクのトレードオフという考え方を取り込んだ製品開発

A君:OA業界を終わりにして、情報機器メーカーに行きます。ここでの情報機器には、パソコン・他の情報機器だけでなく、ICといった製品を作っているメーカーも含まれます。家電業界と重なる部分もあるのですが。

B君:半導体業界は、今後なかなか大変のようだ。一つは、シリコンウェハーが8インチになったこと。ウェハーが大型になると、製品価格は低下するのは事実なのだが、一度に大量に製品ができてしまうので、大量生産ができるメーカーしか生き残れない。

C先生:年商1兆円を超すかどうか、これが生き残りの条件だそうだ。最大のメーカーは勿論インテル。2兆円産業。日本だと東芝。それに日立と三菱の半導体部門が合体してこの4月にできたルネサステクノロジが候補か。NECは結構苦しくて、富士通はどうもかなり危ない。

A君:苦しい両者は社長が問題だという批判が結構ありますね。

B君:大方針を決めるのは確かに社長だからな。

A君:IBMのような規模でコンピュータを製造していれば、内製用の半導体でも生きることが可能かもしれないですが。日本のメーカーでは難しい。

C先生:東芝が元気になりつつあるのも、プレイステーション用の半導体が大きいのだから、日本という国は、妙な国でもある。

B君:それに、今後情報家電という日本がもっとも得意としそうな商品分野での勝負になる可能性が高いが、そうなると富士通は苦しい。富士通ゼネラルなのだが。

C先生:となると、この半導体関係の産業は、環境などを考えている暇は無いというのが現状なのだろうか。しかし考えざるを得ないというのも実情だろうが。

A君:半導体は、エネルギー多消費産業の最たるものですし、温暖化ガスの放出量もエッチング用のフロン類で結構多い。こんな対応はしっかりとやってもらうことが必要ですね。

B君:パソコンリサイクルが始まるから、パソコンに関しては鉛フリー半田にする必要は無いのだが、どうもそういう方向性でもなさそう。富士通が熱心にやっている。

C先生:そろそろまとめに行くが、パソコンはまだまだ未完成商品だと思う。その理由は、ハードウェアの寿命まで使えることがほとんど無いからだ。どうしても、ソフト面・機能面で不満が出て買い換える。

A君:その意味から言えば、機能が飽和してから、環境対策が本物になるということでしょうか。

C先生:WindowsもXPになってから、メモリーさえ大量に搭載しておけば、相当長く使えるようになったと思うのだが、多分HDDが必ず壊れるだろう。もっとヘビーデューティーの長寿命商品を開発してもらいたい。

A君:情報産業の当面の課題としては、こんな風にまとめましょう。
(1)長寿命化、これは、ソフト面、ハード面の両面で、
(2)消費電力も、やはり下げて欲しい、
(3)リサイクル面は、本来リサイクル材料を使った製品が欲しいと言いたいところですが、まあ、期待薄なので、これは次の段階で
(4)製造段階での負荷の低減、
(5)歩留まり向上による環境負荷の低減と収益性の改善。

B君:こんなところを狙えば、結果として総合的な環境負荷の削減と、資源生産性の向上、廃棄物の削減につながる。

C先生:やはり日本の飯の種なのだから、頑張ってもらわないと。ソフト面では、情報家電用OSとしてのTRONやLinuxに期待。