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  オバマ勝利で日本の環境政策は?   11.10.2008
     



 11.09.2008

 様々な私的イベントがあったもので、今回もチェックが不十分。ご勘弁を。

 米国の大統領選挙は、若干の不確実性はあったものの予想通り、オバマ候補の勝利で終わった。かなり世界が変わり始めることだろう。となると、変わることができない日本の政治がどうなるか、大変に心配である。

 本HPで検討すべきことは、やはり環境政策である。オバマ氏の環境公約を再度確認しつつ、若干の議論を行いたい。



C先生:実のところ、マケイン候補も、個人的には、環境に対しては極めて積極的な意見の持ち主だったと思う。しかし、さすがに共和党候補者として、保守色を出さざるを得なかったのだろう、公約ということになると、オバマ候補との違いが出た。特に、ペイリン副大統領候補を保守派対策として取り入れたのが、いささか奇をてらった行為で、選挙戦といった観点からは、最大の失敗だったのかもしれない。同時に、ペイリン候補のようなキリスト教保守派には、温暖化懐疑論者も多いので、具体的な政策を決めるときには、かなり保守的にならざるを得なかったものと思う。
 一方、オバマ候補の温暖化対応策は、かなり意欲的なものではあるけれど、あの米国の産業界が唯々諾々と従うとも思いにくい。最後の方で議論になると思うが。2020年までの中期目標に関しては、結局のところ、マケイン候補が勝った場合と比較して、オバマ候補の独自ラインを出せるとも思えないのだ。すなわち、この二人では、それほど変化が出るということでもないのではないか、と直感的には思っていた。
 今回、再度検討して、日本としての対策をどのようにすべきか、具体的に考えてみたい。

A君:選挙が終わってしまってから公約を検討するとるというのも、いささかボケた話ではあるのですが、マケイン候補の公約を含めて、環境政策に関する違いを検討してみますか。

 概要であれば、
http://www.eco.goo.ne.jp/topics/toyako/news/detail.html?gooeditor-20080910-02
に良くまとめてあります。この比較表は、演説などをもとにまとめたものだそうです。以下、このHPからの引用です。


オバマ候補の環境政策

外国石油への依存をなくすため、国内天然ガス資源を開発し、石炭のクリーンな利用技術(クリーン・コール・テクノロジー)を確立し、原子力発電の安全な利用法を開発する・低燃費車を米国内で製造できるよう自動車会社を支援し、米国民がこうした低燃費車を購入しやすくする

再生可能で低価格の新エネルギー(風力・太陽光・バイオ燃料など)のため、次の10年間にわたり1500億ドルを投資する。この投資を通じて、新規産業が立ち上がり、外国にアウトソースできない500万もの新規雇用が創出される

温室効果ガス排出量を科学者たちの推奨レベルへ引き下げるまで、米国全体の排出量を制限し、排出枠取引を推進

非化石燃料の利用を推進。温暖化対策技術の開発と途上国への技術移転を推奨。

国際的な森林管理を推奨

二酸化炭素排出量を2050年までに1990年比80%削減することを目指す



マケイン候補の環境政策

外国石油への依存をなくすため、国内の産油量を拡大。このため、アラスカ自然保護区をふくむ米領海内の油田を採掘する。

市場原理を通じて、原子力発電を含む、非化石燃料・新エネルギーの利用拡大と、排出枠取引の拡大によって、米国の温室効果ガス排出量を大幅に削減する

外国産エネルギーへの依存を減らす

二酸化炭素排出量を2050年までに2000年比30%削減するとした法案を共同提案




A君:この比較表を読む限り、まず絶対的に違うことが、まずは長さ。オバマ候補の公約が368字、マケイン候補の公約が182字。日本語の文字数で比較するのも変なものですが、2倍というのは有意差があると言えるでしょう。

B君:念のため、原文があるかどうか、調査してみた。さすがに、米国の大統領選挙だ。公約などがしっかりしている。日本の政党も、このぐらい書き込めば良いのに。その結果だが、どうも、2倍という有意差は無いような気がする。

 以下に、リンクなどを紹介する。


オバマ−バイデンの環境プラン原文へ

http://my.barackobama.com/page/content/newenergy

*個別の項目については、以下を参照。
(1)The Obama-Biden environmental plan 環境プラン
http://www.barackobama.com/pdf/issues/EnvironmentFactSheet.pdf

(2)The Obama-Biden plan to crack down on excessive energy speculation 過剰なエネルギー投機対策
http://www.barackobama.com/2008/06/22/obama_announces_plan_to_fully.php

(3)The Obama-Biden Wildfire Prevention Plan 山火事対策
http://www.barackobama.com/pdf/issues/Fact_Sheet_Wildfire.pdf


マケイン−ペイリンの各種問題への対応
http://www.johnmccain.com/Informing/Issues/

マケイン−ペイリンのエネルギー対策プラン
http://www.johnmccain.com/Informing/News/PressReleases/f1a7b94c-5df9-4635-9b06-5618454bb82d.htm

マケインーペイリンの気候変動対策プラン
http://www.johnmccain.com/Informing/Issues/da151a1c-733a-4dc1-9cd3-f9ca5caba1de.htm


A君:やはり原文をみても、量的な差は有意だと思いますね。

B君:量でなくて、内容がかなり違う。原文(上掲の(1)の文書)を読むと、オバマ候補は、温暖化・エネルギー以外にも、大気汚染や水質汚濁防止、さらには自然保護、都市形態などに関しても、かなりもっともだと思われる公約を作っているが、これは、gooのものには出ていない。マケインの方だが、いくらさがしても、温暖化・エネルギー関係以外の公約は、見つからない。

A君:そこが量的にも違う。ということになると、両者の比較をするとなると、温暖化/エネルギー分野だけが比較可能で、それ以外の環境問題については、一方的になる。

B君:gooは、そう考えて、温暖化対策に関してのみ対照表を作ったのだろう。大気汚染などについては、終わった話だという解釈も、それほど間違っているとは言えないのだが、常に意識をしておくことは重要。

A君:日本の場合、これまで考えていたよりも光化学スモッグのような大気汚染原因が中国にあるということが徐々に分かるようになるようにも思うので、いつでも注意をしておくことは必要不可欠。

B君:マケイン候補よりは、オバマ候補の方がより実務的な配慮があるということにはなる。

C先生:しかし、オバマ候補の公約をみても、米国のもう一つの問題であるゴミ問題については、さすがに何も述べていない。すべての廃棄物を埋め立てるという根本的な方針はなんら変わらない。日本のリサイクル政策は、確かに日本という国の廃棄物政策の中では重要な位置付なのだが、アメリカではどうか、と言われると、確かにこのまま採用されることは「あり得ない」が結論にはなるので、取りあえず向こう4年間の大統領任期をにらんでの話であれば、妥当とも言えるが。
A君:さて、それでは、温暖化対策についての検討を行いますか。マケイン候補との比較であれば、gooのサマリーでも十分とも言えるので、これを使いましょう。

B君:議論しやすいように、対応するグループに分けよう。


エネルギーの外国依存

(オバマ候補)
外国石油への依存をなくすため、国内天然ガス資源を開発し、石炭のクリーンな利用技術(クリーン・コール・テクノロジー)を確立し、原子力発電の安全な利用法を開発する。

(マケイン候補)
外国産エネルギーへの依存を減らす。外国石油への依存をなくすため、国内の産油量を拡大。このため、アラスカ自然保護区をふくむ米領海内の油田を採掘する。市場原理を通じて、原子力発電を拡大。


A君:両候補とも、どうやら、環境対策というよりも、エネルギー安全保障を重視し、その延長線上で温暖化対策も並行して行うという感じが読み取れますね。

B君:それが当たり前なのだ。日本という国だけは、例外的に、温暖化対策だと真剣になるが、エネルギー安全保障だと、あまり熱心にはなれない。エネルギーなどは買うことができると思っている。

C先生:やはり日本人は、「安全と水はタダだと思っている」という表現がよくフィットする国民性のように思う。大学生などに講義してみると、いかに自分達の生活がエネルギー依存しているか、ということすら知らないような気がするので、教育が悪いのかもしれない。

A君:小学校での環境教育というと、自然保護になるのが日本の現状。

B君:自然保護も重要ではあるが、それを先行させて教育するのは、どうもぐらいなものなのではないだろうか。

C先生:それは一度調査してみよう。エネルギー教育は、やはり概念が難しいところがあって、いくら諸外国でも小学校ではやっていないような気もするので。

A君:エネルギーという言葉を小学校の先生で教えるのは難しいのかもしれないですね。
C先生:かつて、文部省の時代に、課長級のセミナーなどに出たことがある。そこで、小学校でも省エネの重要性について、教育をすべきだ、といったら、省エネなどは思想的教育だ、とでも理解できそうな意見がでてきて、驚いたことを思い出した。当時は、まだ、消費は美徳といった時代だったので、まあ、ある程度理解もできるのだが。

A君:オバマ候補は、別途自然保護の公約をしていますが、マケイン候補は、ペイリン・アラスカ州知事を担いだもので、アラスカ州の石油開発を推進するつもりのようです。「アラスカ自然保護区をふくむ」という表現を使って、自然保護派を牽制していますね。

B君:明らかにペイリン副大統領候補を意識しているのだろう。アラスカ州にとっては、自然保護と資源開発の適切な妥協点を探るのが恐らく正しいアプローチだとは思うが、マケイン候補が大統領になった場合に、もっとも変わったかもしれないのが、アラスカの自然だったかも。

A君:今のうちに、アラスカ自然を満喫しておいた方が良いかもしれない。

C先生:アラスカは、ドライブを手段として使っても、そう簡単に自然を満喫することもできないぐらい未開発だ。アラスカを満喫するなら、徒歩、カヌーといった移動手段を主要手段だとに考える必要がある。


温室効果ガス削減の大方針

(オバマ候補)
温室効果ガス排出量を科学者たちの推奨レベルへ引き下げるまで、米国全体の排出量を制限し、排出枠取引を推進する。

再生可能で低価格の新エネルギー(風力・太陽光・バイオ燃料など)のため、次の10年間にわたり1500億ドルを投資する。この投資を通じて、新規産業が立ち上がり、外国にアウトソースできない500万もの新規雇用が創出される

非化石燃料の利用を推進。温暖化対策技術の開発と途上国への技術移転を推奨。

国際的な森林管理を推奨

(マケイン候補)
市場原理を通じて、原子力発電を含む、非化石燃料・新エネルギーの利用拡大と、排出枠取引の拡大によって、米国の温室効果ガス排出量を大幅に削減する


C先生:両候補とも、米国の温室効果ガス排出量を大幅に削減することを意図していて、特に、オバマ候補は、科学者の推奨レベルまで引き下げるということを表明し、事実上、IPCCの主張を受け入れる方向性なのか、と解釈できる。

A君:マケイン候補は、原子力・再生可能エネルギーを対応技術として重視しているようですね。

B君:オバマ候補の再生可能エネルギーに対する投資は具体的に何をやるのだろうか。太陽エネルギーは、米国にはほぼ無し。風力は相当量がすでに投資されている。バイオ燃料については、エタノールは御存じの通り。当面は、トウモロコシで行く以外にないと思われるのだが、それ以後は、セルロース起源のエタノールへの転換が行われる。その技術だと、米国が現状、世界をリードしているという評価。

C先生:太陽光は、米国のようにコストというか、ペイバックタイムが最優先される国では、難しいのではないか。日本も本来、そうあるべきなのだが、残念ながら、風力の場合には、風向きが気まぐれ、バイオだと面積が足らない、といった状況があって、結局、太陽電池ということになっているのが現状。エコキュートに付属品として付ける太陽温水器が最良ではないか、と個人的には考えているのだが、イメージが悪いらしくて、メーカーにどうも取り組んで貰えない。

A君:オバマ候補は、gooの要約だと分からないのですが、原文を見ると、もっとも重要な対応方法は、省エネだと考えていることが分かります。もしも1500億ドルの投資を省エネ分野に投入されるとなると、これは、日本にとっては、結構やっかいな対抗馬が米国国内に出現することを覚悟しなければいけないのかもしれないですね。

C先生:ただし、米国のエネルギーコストは安いことも考慮しなければならないだろう。省エネで経済的に有利という状況を作るには、やはりなんらかの優遇税制とかがまずできないと駄目だろう。

A君:それでも日本もかなり気合を入れて省エネ技術にも取り組まないとダメな状態になりそうですね。

B君:オバマ陣営のもっとも具体的な省エネ対応策が、特別に記述をしている自動車ではないか。


低燃費自動車

(オバマ候補)
低燃費車を米国内で製造できるよう自動車会社を支援し、米国民がこうした低燃費車を購入しやすくする。

(マケイン候補)
アルコールベースの車が将来性がある。現在の燃費基準を支持する。


C先生:オバマ候補の演説を聴いていると、この件については、具体的に、"Not in Japan, not in Korea, but here in the United States" と言っている。日本と韓国に対抗して、明らかにハイブリッド車などを米国国内で生産するという主張だ。

A君:米国内の日本メーカーは、どうも、このところ米国の雇用を支えているという理解だったのですが、これがほぼ貿易的な流れにならなければ良いのですがね。

B君:まずは、GM、フォードを元気にすることが目的だと考えた方が良いのではないか。クライスラーはすでに切られている可能性が高いが

A君:ヨーロッパのクリーンディーゼル車は、恐らく米国への適合性も高いと考えられるのですけどね。メルセデス、BMW、VWを入れる気がそれほどあるとも思えない。ビッグ3が自製を目指す以外はダメだけど。

B君:料供給の構造がガソリン中心になっていること。マケインが主張しているように、トウモロコシからのバイオエタノールを国家の方針としてすでに決めてしまったこと、などをオバマ候補も無視はできなかった。

A君:オバマ候補としてもさすがに中西部の農家に反発を買うことは避けた。まあ、当然でしょうけど。

B君:バイオディーゼルとなると、どうしても、パーム油などが実質的。となると、東南アジアが対象になる。アフリカのジャトロファの可能性も皆無ではないが。いずれにしても、アメリカの農家対策にはならない。

C先生:それでは、具体的な削減目標がどうなっているか。


温室効果ガス削減の具体的目標

(オバマ候補)
二酸化炭素排出量を2050年までに1990年比80%削減することを目指す

A君:これに加えて、こんな記述があります。
They will start reducing emissions immediately in his administration by
establishing strong annual reduction targets, and they will also implement a mandate of reducing emissions to
1990 levels by 2020.

2020年には、1990年レベルにする。

(マケイン候補)
二酸化炭素排出量を2050年までに2000年比30%削減するとした法案を共同提案

A君:マケイン候補の公約には、この表現は見つからなかったのです。
 実はこうなっています。

2012: Return Emissions To 2005 Levels (18 Percent Above 1990 Levels)

2020: Return Emissions To 1990 Levels (15 Percent Below 2005 Levels)

2030: 22 Percent Below 1990 Levels (34 Percent Below 2005 Levels)

2050: 60 Percent Below 1990 Levels (66 Percent Below 2005 Levels)

B君:2020年については、オバマ候補のものと同じ。しかし、2012年という直近の目標が示されている点では、マケイン候補の方が、思い切った方向性を出している。

C先生:オバマ候補も、マケイン候補も、キャップ&トレードを導入するとしている。この点に関しては、ほぼ同様。2020年についての記述もほぼ同じ。

A君:この米国の対応が、来年COP15で決めるポスト京都の枠組みにどのような影響を与えるか。EUなどは、2020年には1990年比で20%の削減といったレベルの主張を行う。一方、米国は、2020年に、やっと1990年レベルに戻る、といったことがこの両者の公約。

B君:ブッシュ大統領の主張であった「経済に悪影響を与える」という理由でなんでも押し切ることは、オバマ候補の場合にはやらないかもしれない。

C先生:今回、エネルギー投機に対する姿勢で厳しいものが示されるとしたら、それが経済発展にしても同様のメッセージがでるかどうか、それを注目することが重要だろう。
 そろそろ結論にしよう。

A君:ポイントは、オバマ候補は、ブッシュ大統領とは全く違って、省エネ・再生可能エネルギーや燃費の良い自動車などの開発に国家的な援助をする可能性が高い。これに対して、研究開発で走り始めているのは、セルロースからのバイオエタノールで、オバマ候補もこれを押しそう気配。この面では、米国はトップを走るかもしれない。それ以外には、風力ではないだろうか。太陽光よりは、太陽光を集光して熱利用してタービンを回す発電、場合によっては、超効率光発電などの方向になるのでは。日本には適用できない技術開発を行うのではないだろうか。

B君:米国が環境・エネルギー技術に投資を行うとなると、日本もサンシャイン2ぐらいをやらないと駄目かもしれない。

C先生:実際には、日本でも結構多種多様なプロジェクトが走り出している。現在の日本は、すべての領域を均等に支援するわけにはいかないので、将来像をしっかり描いて、もっとも効果的な研究費の供給を行う必要がある。

A君:キャップ&トレードは、共通して導入するとしている。これは、日本だけが世界から遅れて行くことをますます予感させるもの。

B君:日本では、排出量取引を導入すればよいといった考え方があるようだが、排出量取引は、実は、単なる緩和機能でしかなくて、もっとも重要なことは、いかに適正なCapを掛けるかということなのだ。

A君:Capがそれぞれの事業所に掛ったとして、もしもその事業所が発展をするとしたら、なんらかの緩和機構がなければ、物理的に不可能という場合もある。あるいは、非常に高価な省エネ設備を導入する必要に迫られるかもしれない。そこで、排出量取引を導入して、多少なりとも安価な対応を認めようというのが本当の解釈。

C先生:キャップ制度が基本であるということの認識にいつ日本が切り替わるか。これが、もっとも緊急を要する対応かもしれない。

A君:2020年までのポスト京都対応。これは、米国の目標値は低すぎるので、これがCOP15でどのように扱われるか、その見極めが必要。

B君:日本は、日本なりの独特の削減手段を提案すべきだ。

C先生:日本ができることは、東南アジアなどに知的所有権を提供して、そのかわりにその技術がその国全体で削減するCO2の排出権は交換条件として貰うという、CDMの拡張形を主張すべきだろう。国が交渉の主体になる可能性が高いが、それには、国が知的所有権を所有する必要がある。ロシアやハンガリーから国家間取引で排出権を買うのは、単なる免罪符にしかならないから、それは止めて、日本の企業がもっている省エネ技術の海外特許の途上国での実施権を国が買い上げるといった思い切った対策を打つべきではないか。