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  大飯原発が心配で眠れない
   07.08.2012
         京都府、滋賀県の方々のために




 大飯原発が発電を開始した。福島原発事故が再発する可能性がゼロでは無くなった。大飯原発から50km以内の住民の方々の中には、眠れないほど心配をしておられるかもしれない。ちなみに、50km圏というと、琵琶湖の中心付近までということになる。

 原発のメカニズムについては、当然ながら、このWebサイトの筆者も素人の域を出ないが、リスク・マネジメントという観点からなら何か言える。そこで、ストレステストの報告書を検討してみた。

 その結果、対策が十二分に取られているとは言えないが、現時点までに、緊急安全対策と呼ばれる対応が行われたは事実。その結果、どのぐらい安全性が向上したのか。これを知ることによって、多少なりとも熟睡しやすくなる効果はあるのではないか、と思える程度の対策が存在していた。

 Webサイトを探しても、関係者以外が作成した情報が余りない。

 勿論、関西電力による説明資料は、ここにある。
http://www.kepco.co.jp/pressre/2012/pdf/0409_1j_01.pdf
 しかし、事業者の言うことなど信頼できないと言われるかもしれない。

 また、この資料を見ても、どのようにして安全性を評価して、そして結論に至ったのか、それが見えないから、信頼できないと言われても、まあ当然だとも言える。

 安全性評価プロセス(=1次ストレステスト)を見ることができるのは、関西電力が作った説明資料としては、
http://www.kepco.co.jp/pressre/2012/pdf/0127_1j_03.pdf
である。どのような評価作業が行われたのか、雰囲気が分かるので、かなりマシではあるが、読み解くにはやはり専門的知識が必要である。

 もっと詳しいものが見たいということであれば、
http://www.meti.go.jp/press/2011/02/20120213001/20120213001-3.pdf
を読むことになる。これも関係者が作成した文書ではある。しかし、文章があるので、その気になれば、かなり理解が可能かもしれないが、専門用語と略号でめげるかもしれない。最低限、熱機関や核分裂についての常識的知識は必要であろう。

 今回の結論であるが、少なくとも、1000年に1度程度の地震とそれによる津波が同時に大飯原発を襲ったとしても、炉心溶融が発生する確率は、福島に比べれば圧倒的に低くなったように思われる。

 このぐらいのことを考え、それを実行することは、実は、それほど難しくはないこれらのことを福島原発がやっていれば、あんなことにはならなかったのに、と残念でならない。掛る費用など、知れているのに。

 だからといっても、1万年に1度の天災にもOKなのか、と言われれば、それは分からないと答えるしかない。そもそも、人類が天災を歴史に残せるようになってから、3000年程度しか経過していないのだから。



C先生:ストレステスト一次評価が正式名称のようだが、どのようなことが行われたのかを知っている人は、国民の何%いるのだろうか。ブログなどをみると、表面的に反応している人が多少いる程度のようだ。

A君:なぜストレステストをやることになったのか。
 福島原発事故を受けて、津波による全交流電源喪失が起こり、原子炉そのものは停止したものの、冷却に失敗して炉心溶融が起きてしまいました。使用済燃料貯蔵プールに保存されていた燃料も、冷却機能が失われ、危機一髪状態でした。

B君:7月5日に発表された国会事故調の報告書は、「事故は自然災害ではなく明らかに人災」と結論し、「必要な対策が先送りされていなければ事故を防げた可能性がある」と指摘した。合意できる結論だ。

A君:それはまさにその通り。

B君:さらに「現場の運転上の問題としては、東電が過酷事故に対する十分な準備、知識、訓練などを実施しておらず、「組織的な問題」があった」

A君:これも恐るべきことに、その通り。

C先生:以前の東電の経営陣は、恐らくリスクというものを全く理解できない人々によって構成されていたのではないか、と思う。

B君:さらに、「歴代の規制当局と東電との関係において、規制する立場とされる立場の逆転関係が起き、規制当局は電気事業者の虜となっていた。その結果、原子力安全についての監視・監督機能が崩壊していた」とし、政府、規制当局、東電を批判した。

A君:これも全く同感。

C先生:全報告書をまだ入手していないので(7日になって、ダウンロードサイトが増設されたので落とせたが、未読)これが記述されているかどうかは分からないけど、米国のUSNRC(United States Nuclear Regulatory Commission)は、スリーマイル島の事故の後、かなり徹底的な安全対策を行った。そして、日本政府にも、同様の対策を取るべきだと進言したが、具体的な対策は取られなかった。推測だが、そのころから、上述の指摘の事態が起きていたのではないだろうか。
 今回の事故について、欧米などの多くの国は、「危機管理の不備による拡大防止に失敗」「日本のシビアアクシデントマネジメントの不十分さ」があった、と指摘しており、NRCの前委員長は、「今回の事故で、米国に当てはまる教訓は驚くほど少ない」と述べているとのこと。
(日本原子力学会誌、54巻1号2012年よりhttp://www.aesj.or.jp/atomos/tachiyomi/2012-01mokuji.pdf )


A君:全く情けないですね。
 このブログには、いわゆる「ベント」の新設について、
http://blogs.yahoo.co.jp/success0965/11404964.html (今回見つけた偉いブログNo.1)
1989年の日経の夕刊の記事が引用されています。

【引用】
 【ワシントン五日=滝記者】米原子力規制委員会は五日、米国内で運転中の「マーク1型」原子炉について格納容器に圧力緩和用の緊急通気弁を取り付けることを承認した。炉心溶融などの重大事故で容器内の圧力が高まった場合、放射性ガスを外に出すための装置。「マーク1型」は米ゼネラル・エレクトリック社製の沸騰水型原子炉で、日本にも同型の炉がある。
 同委員会によると対象となる原子炉は米国に二十四基ある。一律に設置を定めるのではなく個々の原発の事情を考慮して電力会社が設置するかどうか判断する。設置が認められた弁は事故により大量のガスが炉内で発生し圧力容器を破壊する恐れが出てきた場合、ガスを外に逃し容器を守るのが目的。
 ガスを出せば環境汚染は免れないが、容器が壊れてチェルノブイリ原発のような惨事を起こすよりはよいとの判断から設置する。「マーク1型」は比較的初期の沸騰水型原子炉で日本国内にも十基あるため米国の決定により日本の規制当局も何らかの判断を迫られそうだ。

内田秀雄原子力安全委員会委員長の話 
 炉心溶融など重大事故に対する一つの対策として格納容器に圧力通気弁を付ける方法は一九七九年の米スリーマイル島での事故以来、日本でも検討している。しかし事故が起こる確率から考えた必要性と、まちがって弁を開いてしまう危険性などをよく比較検討する必要がある。対策には他の方法も考えられており、立地条件や管理体制からみて、日本の同型の原子炉ですぐに米国と同じ対策を講じる必要はないと思う。
【引用終】



B君:その後、ベントは日本の原発にも作られた。
 ここまで引っ張ってきたが、「なぜストレステストか」に答えていなかった。
 ストレステストを行うことは、西欧では、シビアアクシデントのマネジメントのために必須のことだと考えられるのだ。それを行って来なかったのが、日本という国だった。
 まず、福島原発事故がどのようなことだったのか、その復習からやるか。これをやらないと、大飯の場合との比較が不可能だから。

A君:それは当然。技術的なことが記述されているということだと、大前研一氏の個人的なレポートがあって、信憑性が高いような気がします。ただし、それが専門家によって合意されているかどうかは、不明ですが。ここを見ていただきたい。
http://pr.bbt757.com/2011/1028.html
 ビデオもあるようですので、見ていただくのもよし。報告書はここです。
http://pr.bbt757.com/pdf/interimrepo_111028.pdf

B君:こんな順で、福島事故が起きた。簡単に図示すると次のようになる。


図 福島事故の簡単な経緯

A君:地震で制御棒は自動的に挿入されて、核分裂は停止。いわゆるスクラムという状況になった。しかし、燃料棒は余熱で高温のままだし、非常に不安定な分裂核種が大量に入っているのでその崩壊熱で発熱して、冷却しなければ燃料棒は極めて高温になる。

B君:とにかく冷やさなければ。しかし、地震で電源のすべてが失われたと、大前報告書では結論されている。しかし、非常用のディーゼル発電機が起動し、非常用復水器などによって冷却は始まった。津波がなければ、これでなんとか収まったはずだった。

A君:その津波のパンチ力が余りにもすごくて、ディーゼル発電機ですが海水を冷却用に使うタイプのものは一瞬で全滅。空冷の1台は生き残ったが、皮肉にも、離れた場所にある定期検査中の6号機用だった。

B君:結果的に、1〜4号機は全電源を喪失した。せめて、1〜4号機に空冷の非常用発電機を1基ずつでも増設していれば。。。。

A君:実は、津波が来ることも、ある程度考慮されていた。平成14年の見直しによって、海抜+5.7mの津波までは想定れていたが、1〜4号機のある主要エリアの海側を襲った津波の高さは、海抜+11.5〜15.5mであった。
 5.7mという津波の予測は、平成14年に土木学会が刊行した「原子力発電所の津波評価技術」に基づくもので、一部には過小評価であるという意見もあった。

B君:津波は、想定高をなんと5.8〜9.8mもオーバー。敷地の高さは海側が10mあったのだが、タービン建屋が浸水した。それだけでなく、がれきによって、移動・運搬すら難しくなった。

A君:冷却水の注水機能が失われ、原子炉内の水位が低下し、燃料が露出される。こうなると、燃料棒の温度は1200℃を超す温度になって、容器であるジルコニウムが水と反応して水素を発生。圧力容器内には、揮発性の高い核分裂生成物で満たされた状態になる。

B君:地震発生が11日の14時46分。その4時間後には、1号機で炉心損傷が始まっていたものと推測されている。大量の水素が建屋に溜まって、12日の15時36分に水素爆発。炉心溶融からわずか丸1日後。

A君:そのとき、2号機は、生き残った電源車を接続して緊急用炉心冷却装置を使って冷却していたが、1号機の水素爆発で電源車が損傷した。そのため、消防車によって注水をして冷却をすることになった。

B君:3号機は、直流バッテリーが生き残ったので、やはり炉心冷却装置を使って冷却していたが、一部停止などのトラブルがあった。そして、バッテリーの電気を使いきって、13日の朝には炉心損傷開始。そして、14日の11時01分に水素爆発。この爆発によって2号機の消防車が損傷。

A君:これで、2号機は冷却の方法が無くなった。14日の19時48分ごろから炉心損傷開始。水素が大量に発生。恐らく、格納容器が損傷したのでは、と推定されている。

B君:3号機で発生した水素は停止中だった4号機にも侵入して、15日の6時12分に水素爆発。これはそれこそ想定外のことだった。

C先生:原発の運転は、制御棒によって核分裂が停止しても本当の停止ではない。その後の冷却が大変なのだ。それにしても、水素のすごい破壊力だ。結果的にセシウム、ヨウ素のような蒸発しやすい元素が主たる成分だったが、大量の放射性物質が放出され、日本の国土の一部が失われたと同然の状況になっている。海洋の汚染もすごい状況だ。

A君:大飯原発でこんなことが再現してしまったら、とんでもないことです。もし再現させるようなことがあったら、それこそ大馬鹿者。そのために、現時点で緊急安全対策というものが行われたのですが、それでどのぐらいの安全性が確保されたと言えるのでしょうか。

B君:福島の例からも分かるように、地震によって交流電源のほとんどすべてを喪失し、その後の津波によって、非常用電源のほとんどを喪失。この事実から考えても、地震と津波の連続パンチを評価しなければならないのが当然だ。しかし、これまでは、考えられていなかった。これも信じられないことだ。

A君:若狭湾には断層がある。今回考慮された断層は、この図に示されているもの。大飯原発のすぐそばにFO-A断層がある。

図 地震のために考慮された活断層。津波のためには、別の断層が考慮されている。

B君:基準地震動Ssを700ガルとしているが、700ガルのガルとは、加速度の単位。重力加速度が980ガル。だから1000ガルの加速度が掛かるということは、もしも垂直方向であれば、自分の体重が倍になることを意味する。

A君:震度とガルの関係は、余り簡単ではないのですが、気象庁のこのページ
http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/kyoshin/kaisetsu/comp.htm
によれば、このような図で表現されるとのこと。地震の周期によって、加速度との関係が違うということが一つ。もう一つは、この図は地震動が数秒間継続した場合という条件つき。


図 震度とガルの関係

B君:ざっくりいえば、もしも地震動の周期が1.5秒ぐらいであれば、500ガルで震度7。
 震度はもともと体感で決まっていたが、被害との相関があったので、よく使われている。ところがガルと被害との関係は必ずしも明確ではなくて、地震動の周期や建物の固有振動数と関係があるのかもしれない。

A君:それに関しては、恐らく、建築物のプロではないか、と思われる人が、こんなノートを書いています。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n82979

B君:なるほど。確かに、プロの知識だ。例としてあがっているのは、

【引用】
例1:東日本大震災での最大値は宮城県栗原市築館の2933ガルですが、この観測点の被災状況を確認した資料によると、周辺での被害は軽微だった。

例2:岩手・宮城内陸地震では岩手県一関市の観測点で4022ガルを記録してギネス記録にもなっています。観測点では祭畤温泉などの周辺施設で天井や床や土台が破損しましたが、建物全体では目立つ崩れはありませんでした。
【引用終】


B君:その理屈は、以下の通り。

【引用】
 例えば3千ガルの場合、0.2秒周期の振動(0.1秒ごとに逆方向の加速度が発生)だと揺れ幅は数センチにしかなりませんが、2秒周期なら揺れ幅は数メートルにもなり、運動エネルギーで100倍の差があります。言い換えれば、短かい周期だから非常に大きなガル値が計測されたと言えます。
【引用終】

A君:この人がすごいのは、この次に、大飯の格納容器の構造を示していること。

【引用】
「大飯原発の格納容器は筒とドームの部分(厚さ1.3m)が2.9万トン、内部のコンクリートが1.7万トン、周辺建屋が8.8万トン、そして基礎部分が19.3万トン」

「周期0.1〜0.3秒で、水平4000ガル、上下2700ガルでも設計値を下回る」。
【引用終】


B君:内部情報に詳しいので、当事者かもしれない。
 しかし、他にも同様の解説記事はいくらでもあって、これも有用かもしれない。
http://www.kozosoft.co.jp/gijyutu/s04.html

A君:滋賀県、京都府の皆さん、大飯は700ガルを基準震度として考えていて、震災だけならその1.8倍まで耐えるとしています。1260ガルです。震度にすれば9ぐらいでしょうか(そんな震度は無いのですが)。
 2400ガルの地震が大飯原発を襲うなどと主張している人がいたら、低線量被爆が危ないと言っている人と同類で、人々を脅かすことを目的としていますので、妄信されると損をします。

B君:ちょっと検索すると、そんな記述がいくらでも見つかる。駄目サイトの例。
http://keibadameningen.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-018b.html
http://www.asyura2.com/11/senkyo121/msg/394.html
http://d.hatena.ne.jp/skymouse/20120324/1332515071
http://d.hatena.ne.jp/skymouse/20120622/1340306877
http://blog.goo.ne.jp/junsky/e/9b3926f61ac6d850c8fb44866628be09

A君:もっとも、原発の地震被害は、格納容器が壊れるということではないですね。福島の場合には、送電設備が壊れた。受電設備の耐震性能は必ずしも高くない。海水ポンプもそれほどの耐震性能があるわけではない。もっとも重大なのは、接続に使われているパイプの破断。

B君:だから、これらの設備が破損するとしたら、震度との関係で、どこから壊れるかを解析して、その対策を考えることがストレステストというものの中身だ。

A君:その解析は、一般には、Event Tree Analysisと呼ばれていて、その図を示しますと、こんな感じです。


図 Event Tree Analysisの例

B君:こうなったらこうする。しかし、それが駄目だったら、こうする。さらに駄目だったらこうやる。こんな感じ。

A君:そして、地震と津波が重畳する場合にどのぐらいの余裕度があるかを検証して、基準震度が1.63倍、津波高さが約4倍までであれば、なんらかの冷却対策が成功して、炉心溶融には至らない、との結論になっています。

C先生:今回の解析は一次なので、ここまでしか行われていない。だから怪しからんという主張には正当性がある。ただし、この1.63倍、4倍という余裕度を越した天災が来た場合に、すぐに福島と同様の状況になるのか、と言うと、必ずしもそうではない。

A君:そのようですね。全交流電源喪失および最終ヒートシンク喪失の場合について、というのがその記述のようで、そうなったとしても、空冷式の非常用発電装置を新たに設置、その運転のための重油タンクを新設。また、冷却水が不足した場合には、海水を消防用ポンプで送って補給することによって、外部からの支援なしに、原子炉の冷却を31日間継続できるようになった、と記述されています。

B君:外部からの支援とは、主として、燃料の補給で、タンクローリー、ヘリコプター、トラックによる経路を確保することになっている。31日間継続できれば、そのころには、極めて寿命が短い不安定核種はすでに崩壊しているので、発熱量は下がってきている。そのため、冷却も多少楽になっているはず。

A君:テロのような場合にどうなるか、それは、テロを支援するようなものですから、どこにも公開されていない。

C先生:先日、元自衛隊の人に聞いた話だと、「原発に何かあれば、最優先で防衛することになっている。福島事故のときにも自衛隊が原発サイトに来ていた」とのこと。「それほど、丸腰でもないですよ」、ということだった。実態は知らないが。

A君:さて、安全性には100%とか完璧ということは無いのですが、今後、安全性はさらに高度化することになっています。

B君:細かいものも含めて、水密扉への取替え、予備変圧器防油提のかさ上げ、防波堤のかさ上げ、非常用蓄電池の追加、恒久的な非常用発電機の設置、77kV線路への接続、などなどを行う予定。

A君:さらに、炉心溶融が発生した場合でも、大規模な放射線事故にならないような、フィルター付きのベントなども考えられている。

B君:その完成には3年ほどが掛かる。しかし、その前に、静的触媒式水素再結合装置というものが設置される。これは、水素を空気と徐々に反応させて水にする装置。実は、格納容器は、福島第一のマーク1と呼ばれているものはかなり小さい。

A君:比較図を示します。


図 マーク1の図

図 大飯の格納容器と原子炉容器

B君:マーク1は小さいため、格納容器に水素が出ると、すぐに外に出さなければならなくなる。放出された水素は建屋の上部に溜まって、水素爆発を起こした。
 大飯の原発は、加圧水型で方式が違うから、格納容器は極めて大きい。そのため、水素爆発を起こす水素の濃度、これを爆発限界と呼ぶが、空気に約4%の水素が混じった状態だ。大飯では、この濃度にはならないのではないか、と思われる。

A君:最後に、もしも、炉心溶融を起こしたら、溶けた燃料の塊が再臨界になるか。すなわち、核分裂を継続的に起こすような事態になることはありうるのか。

B君:最近は、さすがにそんなことを言う人もいなくなったが、昨年の夏ごろまでは、そう考えている人もいたようだ。

A君:それも無理は無くて、核分裂が中性子によって連鎖的に起きるということまでは知っている人はいても、その中性子線が熱中性子線と呼ばれるゆっくり飛んでいる中性子でなければ、核分裂は起こすことができない、ということまで理解している人は少ないでしょうから。

B君:熱中性子はゆっくり飛んでいて、それがウラン235の原子核にまとわり付くと、核分裂を起こすが、高速中性子だと、ウラン235の原子核の脇をスーッと通り抜けてしまうので、核分裂は起きない、といったイメージか。

C先生:大体、記述は終わったか。大飯原発が再稼動されたからといって、福島の事故がかなりの確率で再現されると考える必要はない。1000年に1度程度の天災であれば、様々なバックアップ体制ができているので、無事に冷温停止すると考えてよいだろう。勿論、だからといって絶対安全などという状態はありえない。1万年に1度の天災が起きた場合には、駄目だという可能性がある。
 そこで問題は、1万年に1度という天災に対して、人生が100年程度の人類がどこまで真剣に対策を考えるべきか、ということなのだ。

A君:これがリスク対応というもののもっとも基本的な議論になりますね。答えは無いことが確実なのですが。

B君:1000年に一度の場合だって、答えがあるような無いような。三陸海岸の津波の場合、高さ15mの津波に耐える防潮堤を建設したとしても、それが次に起きるのは、まあ1000年後だ。コンクリート構造物の寿命は、ダムのような特殊なものを除けば、最長でも200年ぐらいだと考えれば、現時点で、15mの防潮堤を建設することに意味は無い。
 となると、それこそ、このWebサイトの主張である津波受け流し型対応というものを考えるのが賢い選択なのではないか、と思われる。

A君:原発の場合にはどうでしょう。現在、エネルギー・環境会議の3つの選択肢が提示されていますが、古い原発を停止するのは、まず正しい。比較的新しい原発に、どこまで対策コストを掛けて運転をするのか。これは難しい問題で、余りコストを掛けることになるのだったら、当然、停止すべきことになる。

B君:残念ながら、原発そのものの地盤をかさ上げするのは不可能なので、もともと敷地の高さが低い原発から停止するというのもありうるかもしれない。

A君:リスク対策のベネフィット論から言えば、当然でしょう。ただし、三陸に同規模の津波が来るのは、1000年後だとしたら、女川などはそれを配慮して、活かすのもありうる。

B君:女川2号機が1995年運転開始、3号機が2002年なので、まあ、手を入れる価値があるかもしれない。

A君:そう考えれば、柏崎刈羽も中越沖地震の洗礼を受けているので、しばらくは大規模地震は来ない可能性が高い。新しい数機は、リスクが低いと考えれば、再稼動の候補になるかもしれないですね。

C先生:再稼動のリスクの科学とは、このように実に多種多様なことを考慮した上で、決めるべきだと主張することだと思う。
 大飯の再稼動は極めて危険だ、と思うのは勝手だとも言えるが、こればかりクヨクヨと考え続けるのは、精神的ストレスによって、心身にあらゆる悪影響を受けることになるので、お勧めしがたい。
 なぜなら、リスクを考えるということは、結果的に、すべてのことに万全などということは決してないことを証明することになるからだ。いずれにしても、今回の大飯の場合は、福島事故前の福島の状況とは比較のしようもない程、安全度が確保されているように見える。
 さて、この文書を、最後まで読んでいただいたのであれば、今回のこの記事で引用したすべての文書を、誰かからか、じっくりと納得できるまで説明を聞く機会を得ることをお勧めしたい。
 そのような機会を持てるということは、選挙民としての権利ではないだろうかと考えている。職業的原発反対派が会場を混乱させる可能性が高いが、そのような可能性を排除しながら、サイレントマジョリティーである県民・府民に対して中立的解説を聞いてもらう機会を提供することが、滋賀県知事、京都府知事の重要な役割なのではないか。