オゾンの有害性評価     03.06.2011  





 先週のニュースでは、日経新聞の3月4日の掲載された中皮腫の治療法が開発されているという記事がインパクトがあった。付録へ。

 実は、もっとインパクトがあったのが、朝日新聞が掲載した国際宇宙ステーションが太陽を横切っている写真。
http://www.asahi.com/science/update/0303/TKY201103030558.html
 ネットを調べてみたら、他にも同様の写真が撮影されていたことが分かった。



 さて、本日は、オゾンの有害性評価、健康影響を復習してみたい。

 先日来、空気清浄機の解析を行なったが、XXイオン発生装置といった付属装置を備える機種が大部分であることを記述した。

 これらのいくつかは、どうもオゾンを発生していると考えるべきであるように思える。

 オゾンは有害物質であり、環境基準よりも緩いのが一般的な労働環境基準は、米国産業衛生専門家会議による許容濃度では、肉体作業かどうかなどの作業条件によるが、0.05ppm〜0.20ppmと決められている。

 一方、日本の環境基準値は、光化学スモッグが各種被害をもたらしたため、1973年に「1時間値として0.06ppm」(任意の1時間の平均値)と決められている。言葉としては「オキシダント」というものが使われることもあるが、有害性については、その主な成分はオゾンである。他の国にも環境基準値はあるが、8時間の平均値であり、日本の値はかなり厳しいと言える。

 さて、今回の検討課題はいくつかに分かれる。

(1)そもそもオゾンの健康影響とは、どのような基準で判断されているのだろうか。

(2)空気清浄機などからのオゾンは安全だと断言できるのだろうか。

(3)最近、大気中のオゾン濃度が増加傾向である。東京の空などを見ても、大気はキレイになっているのに、なぜオゾン濃度だけが高まるのだろうか。




C先生:通常、健康影響あるいはリスクを議論するとき、エンドポイントというものが使われる。例えば、アスベストの場合であれば、肺がんあるいは中皮腫がエンドポイント。要するに、ある物質が引き起こす病気や障害などで、もっとも重大な影響のことだ。オゾンの場合に、「それは何か」、と言われると、多くの人は悩むのではないだろうか。

A君:オゾンは殺菌効果がありますから、どのような細胞に対しても、なんらかの悪影響を及ぼすと考えて良いのでしょう。気体ですから、肺への影響が大きいのではないか、と想像はできますけど、その影響が肺がんを引き起こすのか、それとも炎症などの別の影響なのか、と言われると、詳しいことは知りません。復習が必要ですね。

B君:オゾンは、以前、健康に良いとされていたこともある。それは、太陽光の中の紫外線でオゾンは発生するので、「日当たりの良い自然の豊かな場所を散策すると健康に良い」というイメージがオゾンと結びついたとも言えるのではないだろうか。

A君:太陽光に対する信仰だったのではないですか。昔は、日焼けは健康の象徴。現時点だと、日焼けは皮膚がんのもと。そのころは、植物から出る有機物(天然VOC)がないとオゾンは発生しないなどということは、知られていなかったでしょうから。
 そして、オゾンが決定的な悪者になったのは、一つは光化学スモッグのオキシダントの主成分がオゾンだとされたから。

B君:オキシダントが本当にオゾンだけだったのかどうか、その点については、アルデヒド類とか、他の物質も関係していたのではないだろうか。

A君:ペルオキシアセチルナイトレート(PAN)などという物質も関与していたとされていますね。
http://en.wikipedia.org/wiki/Peroxyacetyl_nitrate
オゾンよりも寿命が長いので、オキシダントが長距離に渡って輸送されるときは、この形を取っているとか。

B君:スモッグなのだから。もしも純粋の気体であるオゾンだけが関係しているとすると、大気に不透明感は出ないように思う。他の物質の関与は確実のように思う。

C先生:そろそろ本論に行こう。先ほど、(1)から(3)の検討課題を示したけれど、考えてみると、(0)大気中などでオゾンはどうやって生成するのか、を検討する必要がありそうだ。

A君:ほぼすべての情報が書かれているのが、「詳細リスク評価書」(丸善)ですね。オゾンは第24巻。出版されたのが2009年7月。著者は、中西準子、篠崎裕哉、井上和也の産総研の各氏。3150円という価格の専門書。


(0)大気中などでオゾンはどうやって生成するのか

A君:「詳細リスク書オゾン版」によれば、大気中といっても、対流圏だと、二酸化窒素NO2が光分解して原子状の酸素ができて、それが酸素分子と結合するという機構でオゾンが生ずる。

B君:大気中でどのように消滅するか、というと、これまた窒素酸化物が関係している。一酸化窒素、NOとオゾンが反応して、NO2と酸素に戻る。この反応の速度は大きいので、結果的に、大気中に高濃度のオゾンが残ることは無い。

A君:ところが実際には、大気中に様々な物質が存在している。その代表がVOC(揮発性の炭化水素で、メタンを除く)である。すでに記述した植物起源の天然のVOCもかなり多い。VOCが存在すると、オゾンの消失反応が競合するような反応が起きて、結果として消失速度が遅くなる。すなわち、ある濃度のオゾンが生成される。

C先生:要するに、NOxが存在しなければ、オゾンは生成しないし、VOCが存在しなければ、生成したオゾンが高濃度で大気中に存在することは無い。

A君:そう結論して良いのですが、さらに難しい問題があるようです。それは、(3)すなわち、大気がキレイになるとオゾンの発生量が増えることに関連することなので、後ほどということにします。

C先生:了解。それなら、最初の課題からとりかかろう。


(1)そもそもオゾンの健康影響とは、どのような基準で判断されているのだろうか。

A君:環境中のオゾンは、オキシダントと総称され、光化学スモッグの主成分だとされてきた。1時間濃度で0.06ppm以下であることが環境庁告示第25号で1973年に決められ、それが現在まで続いているという状況です。1時間濃度を採用していることは、世界的に特異。

B君:光化学スモッグの注意報が出るのは、目安としてオキシダント濃度が0.12ppmになったとき、光化学スモッグの警報の目安になっているのが、0.24ppm。

A君:光化学スモッグが人に与える症状というものは、目がチカチカする、涙がでる、喉の痛み、咳、めまい、頭痛、呼吸が苦しい、手足のしびれ、発熱、嘔吐などがあるとされています。要するに、ほぼ全身症状になるようです。

B君:オゾンは、酸化剤なので炎症性の症状がでる。場所としては呼吸器がもっとも可能性が高いというのは妥当な考え方。

A君:しかし、「オゾン0.08ppmを健常人、喘息患者に3時間吸入曝露した場合には、肺には影響は出なかった」との報告や、「0.1ppmの2時間の曝露でも、健康男性ボランディアには有害影響はない」との報告がある。さらに、「健常人に0.25ppmというかなり高い濃度で2時間の吸入曝露を行なった場合でも、呼吸機能に対する影響はなかった」という報告もあるようです。

B君:通常の状況で光化学スモッグの影響を受けるときは、学校の体操の時間で何人かの生徒に症状が出るというようなことが多く、2〜3時間といった比較的長時間曝露を受けていた結果ということは考えにくい。となると、原因物質はオゾンだけではないと考えるべきかもしれない。さらに化学物質だけでなく、気温とか、脱水症状とか、別の要素も考慮すべきなのかもしれない。

A君:有害成分をオゾンに限れば、「詳細リスク書オゾン版」では、0.08ppm2時間という条件を呼吸器系へ、悪影響の無い濃度だと判定する、という記述になっています。他の物質については、残念ながら記述がない。

B君:オゾンの発がん性などは「ない」との結論。マウスの実験だと疑わしいが、ラットを使った実験ではなさそうという結果。一般論として、マウスでヒトの発がん性を評価するのは信頼性が低いと言われているので、当然の結論だろうか。

A君:遺伝毒性もなさそう。

B君:「詳細リスク書オゾン版」では、呼吸器系への影響だけでなく、「日死亡率の増加」を、もう一つのエンドポイントとしている。すなわち、オゾン濃度が高い日には、他の日に比べて、死亡率が高まるということだ。

A君:もちろん、日死亡率といっても、怪我とか事故などによる死亡は除外している訳です。なんらかの病気とか環境影響などによる死亡だけを統計的に取り扱っている。

B君:例を一つ示そう。
 欧州23都市での統計では、対象人口は5000万人以上。4月から9月の温かい期間に、オゾン濃度の1時間値は、0.022〜0.109ppmだった。要するに、低い日もやや高い日もあったが、日本の基準で言えば注意報に相当するような日は無かった日が対象。こんな条件でも、日死亡率を計算してみると、オゾン濃度が0.005ppm上がると、その日の死亡率は、全死亡率で0.33%増加(統計的な有意差なし)、心血管系疾患による死亡率は0.45%、呼吸器系疾患による死亡率は1.13%増加したと結論できた。寒い時期にはオゾン濃度と日死亡率に相関は見られなかった。

A君:同様な例がかなり多数存在している。オゾン以外の要素だと、PM10(10μ以下の粒子状物質)、SO2と日死亡率に相関は無いことが分かっている。

B君:だからといって、これでオゾン濃度と日死亡率の因果関係が深いという結論に行くことは単純過ぎる。

A君:「詳細リスク書オゾン版」の見解は、なかなか複雑で理解が難しい。
 要約すると、「気温の高い日にはオゾン濃度が高いという事実がある。しかも、気温の低い冬季には、オゾン濃度と日死亡率の間には相関はないため、気温が重要な要素である。そのため、気温が第一の要素であるとは認めながらも、夏期には、屋外での活動が長くなるといった事実もあって、これまで多数報告されている、日死亡率とオゾン濃度の関係を否定できるだけの根拠は無い」。
 こんな感じでしょうか。

B君:完全否定は無理だ。だから、オゾン濃度の増加と日死亡率の上昇には関連性があると判断するという表現になるだろうか。

A君:そのような結論に基づいてなのか、日死亡率という言葉を「余命短縮リスク」という言葉に変え、エンドポイントの一つに加えている。

B君:「余命短縮リスク」の大きさは、8時間値のオゾン濃度が0.010ppm上昇すると、0.2〜0.33%の死亡率増加といった程度。濃度の絶対は、環境規制値あるいは、無作用量以下の場合を含む。しかし、影響はあると考える。

A君:なかなか難しい判断基準ですね。

C先生:オゾンの毒性のエンドポイントは、こんなもので議論されていたということだ。それでは、次の話題に行こう。


(2)空気清浄機などからのオゾンは安全だと断言できるのだろうか。

A君:余命短縮効果の場合には、必ずしも0.08ppmを超えていたという濃度ではなくて、より低い濃度、例えば、0.022〜0.109ppmといった範囲での解析などが基礎になっている。
 これと、無影響量だと考えられている0.08ppm2時間との関係が、実のところよく分からない。要するに、0.08ppm以下であって、呼吸器などへの急性の影響はないと想定される低濃度の場合であっても、わずか0.005ppmの濃度の増加があれば、余命短縮リスクはあるということを意味するのではないか、と推測します。

B君:「詳細リスク書オゾン版」のp144付近に、関東地方の過剰死亡件数を推測している部分があって、東京都練馬区付近などでは、過剰死亡件数が3.5件/年よりも多い。

A君:ただ、件/年という単位のままで、他の条件下でのリスクと比較することは難しい。室内にオゾン源がある場合のリスクなどの推定も極めて難しい。

B君:もともと室内でのオゾンへの曝露の危険性はそれほど大きくはない、という判断もあるようですが、2006年時で販売されている空気清浄機によるオゾンの発生によるリスクの増加を検討しているが(p117付近)、余命短縮リスクが増大したという結論にはなっていない。統計的に不可能だった、というのが真の答かもしれませんが。

A君:「詳細リスク書オゾン版」で空気清浄機の使用によるリスクの増加を検討しているということは、濃度によっては、そう簡単に無害だとは言い切れないという可能性に着目していたということでしょう。

B君:2006年時点での空気清浄機と2011年モデルとの差が重要で、もしも最新機種のオゾン発生量が多少でも増えているとしたら、余命短縮リスクが無いと判定するのは難しいことのように思える。

A君:また、最近だと使い方が変わっているのではないでしょうか。しかも、台数は増えている。このような状況を考慮したすると、すべての空気清浄機のメーカーは、製品仕様として、オゾン発生量を明示すべきだということになるのではないでしょうか。

B君:室内のリスクは本当に低いのかを検証すべきだということだ。例え0.08ppm以下という濃度のオゾンを発生する空気清浄機であっても、たしかに急性リスクが発現するような濃度にはならないだろうが、僅かな量でもオゾンを発生すれば、「余命短縮リスク」への影響は、明らかに無視しにくい。

C先生:ただし、太陽光の無い室内の話なので、この検討を行った著者達に、リスク評価を、特に、「余命短縮リスク」をもう一度やり直してもらうことになりそうだ。
 それでは、次に行こう。


(3)最近、大気中のオゾン濃度が増加傾向である。東京の空などを見ても、大気はキレイになっているのに、なぜオゾン濃度が高まるのだろうか。


A君:まず、事実ですが、環境省のHPからダウンロードしたものですが、再度、光化学スモッグの被害がやや増えつつある。
http://www.env.go.jp/chemi/entaku/kaigi10/shiryo/seki/seki1_08.pdf

B君:一方、PRTR制度などがあって、当然のことながら、VOC、NOxの発生量は、順調に削減されている。

A君:しかし、現実には、光化学スモッグの被害が増えている。

B君:その理由だが、「NOxが減りすぎたから」、と表現することが良いように思える。それは、(0)で説明した、いくつかの反応式へのVOCとNOxの濃度の影響を調べると、理論的に解析できるとのこと。

A君:その結果は、「VOC濃度を一定だとすると、NOxの濃度を下げると、オゾンの濃度が上昇する」。

B君:一方、「NOxの濃度を一定にしたまま、VOCの濃度を下げる場合には、オゾン濃度も低下する」、という結論がでる。

C先生:それなら、VOCの濃度をさらに下げれば良いではないか、という簡単な結論を出すのが妥当なのか。
 この話は、ちょっと置いておいて、これ以外に、最近の光化学スモッグの被害が増えているという理由を説明できる他の要素は無いのか。

A君:例えば、中国からオゾンがかなり侵入している影響だということがあるか、ですか。

B君:確かに。かなりの中国産オゾンに無断侵入されてしまっていることは事実なので、可能性がある。
 それならそれが光化学スモッグの原因になっているのか、と言われると、それはかなり難しい。なぜならば、光化学スモッグは夏に深刻になる。ところが、夏の風向きは、南風が主なものだと考えられる。この風向きだと中国からオゾンが大量に侵入する可能性は低い。かなり上空に一旦上がって、それが降りてくるようなメカニズムを考えないとならない。

A君:それでは次。都庁の職員の話ですが、最近、東京都庁の最上階から東京の空を観測すると、石原都知事がディーゼル車規制をはじめてから、ほぼ都庁と同じ高さにあった黒い空気の層が消えてしまっている。ということは、太陽の光が強くなったと言えるのではないか。そのために、オゾン生成反応が進んだと言えるのではないか。

B君:そのような解釈も実は難しいようだ。なぜならば、光の強度がちょっと変わったぐらいでは、光によるNOxの分解が変化するというものでもない、とのこと。

A君:結局、NOx濃度が下がったことが、光化学スモッグの被害が増えたという原因になっていると結論せざるをえない。

C先生:さてそうなると、今後、さらにVOCの排出規制を強化することが妥当かどうか、という議論になる。

A君:「詳細リスク書オゾン版」では、事業所におけるVOC削減の費用対効果についての評価をおこなって、結論を出している。
 ポイントはいくつかあって、
(a)VOC1トンを削減する費用は23万円ぐらい。
(b)その効果は、8時間平均値で、濃度が0.001ppm減少する程度と予測され、それによる「余命短縮リスク」の削減による「余命獲得件数」は74件/年。
(c)余命獲得に要する費用は、2〜5億円/件と算出される。この値は、発がんによる死亡や自動車事故による死亡の防止を行う費用とほぼ同等である。
(d)しかし、「余命短縮リスク」の削減による「余命獲得」ということが、何を意味するのか、本当のところはかなり難しい。


B君:もっとも効果的な方法は、NOx対策を保留する。実は、NOxそのものの人体影響はそれほど大きくはない。むしろオゾンやPMに関係するので、その二次生成物の影響でNOxの許容濃度は決められている。

A君:PMも、ディーゼル規制以来、問題があるという認識は消えつつある。

B君:しかし、NOxの許容値を上げるということは、行政にとっては極めて難しい。NOxの削減は、日本の大気汚染防止行政の中核だったから、自らの歴史の妥当性を書きなおすことになりかねないからだ。

A君:欧州のディーゼル規制は、PMの削減を中心課題として進行したが、日本は、NOx削減だけを考えて進めていた時代がある。

C先生:さきほどのリストの(d)は、本当に何を意味するのか、非常に難しい話なのだ。話を少し戻すようだが、オゾン濃度が僅かに高い日に死亡する人は多い、これが基礎データになって、オゾンのリスクは評価されてきた。しかし、このような日に死亡した人がどのような人だったのか、ということは誰も分からないのだ。
 分かる例として、がんや交通事故で死んだ人が居たとする。もしもがんに掛からなかったら、あるいは、交通事故で死ななかったら、その人はどのような生活ができただろうか、ということを推測することは比較的容易だ。
 環境省のオゾンの影響調査では、高齢者を中心に調査を進めたという実績があるが、欧州などの調査は、年齢を記述しないで行っているようだ。オゾンの影響を受けた人の実態はといえば、恐らく高齢者が多いものと推測するが。
 要するに、オゾン濃度が高い日には、死亡する人が多いという統計データがあったとしても、どの死亡者が、その日のやや高い濃度のオゾンのために死亡したのか、これを特定することは不可能なのだ。
 これから先は、誰もが想像しているが、誰も明確に書かないことをあえて書くことになる。
 呼吸器系の疾患がある人がいて、少々の呼吸困難で死亡する可能性があるとする。もし、その年の最初のオゾン濃度が少々高い日に死亡しなかったとしても、次にオゾン濃度が高まれば、死亡する可能性があり、それは数日後かもしれないのだ。しかも、オゾン濃度が高い日は気温も高い日なので、エアコンの整備がほとんどされていない欧州では、高い気温による肉体的なストレスは、日本などよりもはるかに大きい。
 オゾンのリスク評価が、このような特性をもった数値である「日死亡率」が基礎になっているということを、良く良く考えなければならない。
 日本の大気汚染の現状を考えると、VOCの規制を強化するぐらいなら、空気清浄機からのオゾン発生量を厳密に規制する方が、「日死亡率」を下げるのに有効なのかもしれない。



付録:アスベストと中皮腫

 中皮腫は、アスベストを吸入してから20〜50年後に発症する時限爆弾のような特性であるため、過去の暴露の実態から、今後の患者の発生数については、2020〜2030年頃にピークに達するという予測を支持する図が出ている。

 たしかに、このところ、中皮腫の発症数は直線的に増加している。



 予測は未来のことだけに、本当のことは誰も分からないのだが、この図は、非常に重要な事実を無視している、ということだけは確実である。

 それは、アスベストといっても、実は一種類ではないことである。本HPの記事では、をご覧いただきたい。
http://www.yasuienv.net/AsbestosKubota.htm

 アスベストの中では、青石綿が他の石綿よりも500倍(?)も毒性が高いとされており、石綿の使用量のグラフは、この観点から言えば、青石綿の使用量を別途考えるか、あるいは、毒性の差を考慮して一つにまとめるべきである。

 青石綿の使用量は、1975年ぐらいまでにかなり減っていて、それ以後の使用は白石綿に移行した。となれば、20〜50年という潜伏期の真ん中である35年後が発症のピークになると仮定すれば、1975+35=2010年がピークになるという予測の方が、妥当性が高いように思える。

 ということは、ここ数年間の動向を精査すれば、中皮腫の今後の発症数がどうなるのかという未来予測がより確実に分かるのかもしれない。