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  (続)ペットボトルの現況 10.23.2004



   先日、ペットボトルのLCAが中途半端なところで終わっている。それは、本年出版された「PETボトルのインベントリ分析」PETボトル協議会、(有)産業情報研究センター、2004年8月なる報告書が手に入ったのだが、これがなかなか理解しがたいのである。

 これを多少でも噛み砕いて、本記事を記述してみたい。しかしどこまでできるか。これが今回の目標。


C先生:産業環境管理協会のLCAデータのとりまとめを行った(有)産業情報研究センターの林廣和氏がこの分析も担当している。

A君:結論としては、p7にある表5でしょうか。

表1:表5 各製品1トンの生産に係る累積LCIデータ

B君:いくつか分からん。まず、同じ耐熱用、あるいは、炭酸用のペットボトルを作る場合に、どうして資源エネルギーが異なるのだ。各製品1トンあたりのはずなので、耐熱用350ml、500ml、2000ml用で、異なる樹脂を使っているということなのだろうか。サイズで樹脂の仕様が違うのか。

A君:分かりませんね。

B君:工程エネルギーが、小さなボトルほど多いのは、分かるような気がする。それは、成形のためのエネルギーが利くのだろう。しかし、工程エネルギーと一括して書いてあって、樹脂生産までの工程と、その後のブローのプロセスの工程でどのぐらいのエネルギー消費があるのか、分からない。

A君:確かに分かりません。ちなみに耐熱用というのは、紅茶やコーヒーのように高温の飲料を注入できるペットボトルで、口のところが変形しないように、白く結晶化させてあるもの。炭酸用は、まさに炭酸用で、内圧に耐える構造。耐熱用だと口の大きさが違うから、そこに違う種類の樹脂が使われる。だから資源エネルギーが違うとか。

B君:ところで樹脂加工段階のLCIデータは、別に報告書がある。2000年1月に、社団法人プラスチック処理促進協会が出版した報告書「樹脂加工におけるインベントリデータ調査報告書 −汎用樹脂加工製品を中心として−」だ。

A君:p48に図があって、1000kgのBPET(ボトルグレードのPET樹脂)をブロー成形するのに、2157kcal分の消費電力を要するとのこと。そして、成形品容器をラベリングして包装する工程のために、2387kcalの消費電力が必要。

B君:待てよ。これは何だ。ブロー加工のエネルギーが2157kcal。これをMJに直すと、9.03MJ。しかし、これは消費電力だな。となると、これを3倍ぐらいしないと、エネルギーにならない。27MJ/トンぐらいか。

A君:資源エネルギーが35MJ/ぐらいですから、ざっと言って、同じぐらいですか。表5の工程エネルギーが70MJ/ぐらいですが、27MJ/トンがブロー用とすれば、残り43MJ/トンがそれ以外の工程エネルギー。表5の工程エネルギーには、原料合成工程、樹脂合成工程、成形(ブロー用)工程、ラベル・包装工程があるはず。原料合成工程+樹脂合成工程までで、前回のHPで議論したアイエスのデータによれば、28MJ/トン。となると、残りが15MJ/トン。これがラベル・包装工程+輸送用エネルギーということになります。ただ、これは全くの推測。

C先生:2004年の報告書には、このような内訳が全く書かれていない。そこまで秘密にすることは無いものと思われるが。

A君:そうですね。2000年のプラ処理協の樹脂加工のLCIでは、ラベリング・包装工程のエネルギーが電力換算で2387kcalとなっていまして、これをエネルギーに換算すると30MJ/トンぐらいになって、かなり合わないのですね。推測が間違っているのでしょう。

B君:ペットボトルの形態が変わったのは、もっと前。昔は、ペットボトルの底は丸かったもので、自立させるために、鞘が付いていた。その重さを考えると、ラベリングなどに相当のエネルギーを要したとも考えられる。もっとも2000年には軽量化がすでに始まっていたと思うが。

C先生:ラベリングということに何が含まれるか分からないが、もしも、キャップ、ラベル、輸送包材、輸送については、2004年の報告書にデータがある。例えば、350mlの耐熱用の場合だと、
       エネルギー計kJ
ボトル本体   2628
キャップ      288
ラベル       184
輸送包材     327
輸送       100

となっていて、本体以外の割合は、2628:899=3:1となっている。プラ処理協の2000年報告書とは合わない感じだ。

A君:内訳は別にして、全体としての二酸化炭素の発生量だけを見れば、我々の容器間比較のLCIの推定値では、500mlのペットボトル製造までで、二酸化炭素排出量が110gとしてありました。今回の報告書の値が112gですから、かなり推測値が正しかったのではないでしょうか。

C先生:まあ、そうかもしれない。当時、31.87gという重さを仮定していたが、今回の報告書では、33.86gになっている。どうも、我々の推測値が軽すぎたとも言えるが。もっとも炭酸用だと、今回の報告書で29.9gだから、丁度中間値だったとも言えるが。

A君:結論に行きますと、色々と食い違いがあって余りよく分からないが、非常に荒い近似でペットボトルを作るときのエネルギーの内訳を考えると、大体こんなところでしょうか。

資源エネルギー分         1
PET樹脂合成分          1
ブロー工程分            1
ラベル・包装・輸送(収集を含む) 1

B君:ブロー分やラベル・包装・輸送なども多い。結局のところ、マテリアルリサイクルをやっても総エネルギーの1/2近くは捨てていることになるのではないか。残るのは1/2。しかも、材質の劣化を考えたら、「リサイクルで残った価値が1/3と言えるか」、ぐらいなものだ。

A君:ただし、マテリアルリサイクルに必要なエネルギー量は、余り多くないと仮定しての話。そのデータも2004年の報告書に出ています。



表2:表7 マテリアルリサイクルに必要なエネルギー。PET樹脂をバージンで合成する場合の1/10以下。

A君:前回の推測値ほどではないですが、マテリアルリサイクルの工程エネルギーは少ない。

B君:だから、ペットボトルはマテリアルリサイクルが商売になるのだろう。残る価値が少なくても、やるべきなんだろう。

C先生:ケミカルリサイクルのデータも出ているようだ。

A君:帝人ファイバーのデータのようですね。帝人が示したデータがそのまま出ているようですが。



表3:表8ケミカルリサイクルのLCIデータ

B君:自家発電ベースだと30.6MJ/kgという工程エネルギーで樹脂まで出来る。アイエスのデータよりも僅かに多いぐらい。アイエスの値が公共電力ベースだとしたら、ほぼ同じ。いずれにしても、ケミカルリサイクルだと、あたり前かもしれないが、リサイクルのための工程エネルギーが大きい。そのため、最終的にリサイクルで取り戻せるのは、資源エネルギー分だけ。すなわち、最大でも1/4まで。

C先生:この結論は、前回の結論とほぼ同じ。まあデータが同じなのだからあたり前だが。

A君:ケミカルリサイクルは、したがって、価格的にも苦しいでしょうね。処理委託費をかなり貰わないと商売にならないのではないでしょうか。

B君:マテリアルリサイクルでも、上手にやると、バージン樹脂の7割程度の価格で売れるようなものが出来る。マテリアルリサイクルのために必要なエネルギーの5倍量を新たに投入して、10割の価値のものを作ることが「リサイクル効率」として高いと言えるのか。すなわち、水平リサイクルの効用をどこまで認めるか。

C先生:「リサイクル効率」なるものをきちんと評価して、その効率の関数として処理委託費を決めるようにしないと、リサイクルシステム全体のバランスを崩すことになりかねない。ケミカルリサイクルの場合、バージンペットボトルに含まれていた価値の最大でも1/4を残すための行為だと言えそうだ。となると、マテリアルの方が効率が高いリサイクルかもしれない。

B君:となると、ペットボトルの場合には、マテリアルを優先するような入札方式を取るべきか?

A君:その他プラの場合には、マテリアルリサイクルの効率はかなり低そうですね。

B君:となると、その他プラの場合には、ガス化のようなケミカルリサイクルの手法を優先すべきかもしれない。未検討につき不明。

A君:こんなところで、リサイクルのLCAデータがカバーできたというところでしょうか。

C先生:次に論点のリストを出すが、(1)と(2)が終了。残る話題は、(3)から後ろ。
(1)このところのペットボトルのリサイクルの状況
(2)ペットボトルのリサイクルの方法論について 

(3)ペットボトルの新容器
(4)ペットボトルそのものの変質
(5)ペットボトルの回収費用は、本当に高いか
(6)なぜペットボトルは、一部市民団体から嫌われているか

A君:(3)ペットボトルの新容器ですが、これは、ホット飲料用のペットボトル。それに、アサヒビールが導入しようとして当面諦めたビール用容器。

B君:これから冬になるとホット飲料用のペットボトルがまた出てくるだろう。

A君:PETはもともと耐熱性がかなりあって、250℃が融点らしいですが、それでも、高温の飲料を充填するときに変形しがち。そのため、耐熱用ペットというものでは、口の部分を結晶化させている。ホット飲料用となると、さらに高温に耐える必要がある。PETだけではもたないのでは。何か(ナイロン系?)を張り合わせているというものなのでは。いずれにしても、材質面での情報の開示が非常に少ない。見た目で、オレンジ色のキャップは非常によく分かるのですが。

B君:アサヒビールが導入しようとしたビール用のペットボトルは、シリカをコーティングすることによって、ガスバリアー性を高めたものだったようだ。

A君:そのコーティングは、リサイクル時には、もちろん樹脂に混じりますね。こんなペットばかりになると、マテリアルリサイクルで得た再生樹脂の品質が下がりそうですね。

B君:そのあたりも余り情報を開示していない。

A君:そのあたりが本当の意味で拡大生産者責任(EPR)なのではないでしょうか。現在のマテリアルリサイクルシステムとの整合性を十分以上に説明し、どのような素材をどのように使っているのかを明らかにする。

B君:容器はかなり単純な商品だから、一般にはEPRなどというものは発生しないと考えても良いぐらいだ。

A君:EPRというものには多種類の定義がありますからね。最終的にリサイクル・廃棄に関わるシステム整備の費用負担を事業者が行うべし、というものから、製品のリサイクル・廃棄に関わる情報を伝達すれば、それでよいといった軽いレベルまで。

C先生:たしかにリターナブル瓶というものは、EPRの理想系に近い。だからといって、企業にはEPRがある。だからリターナブル瓶を導入すべきだ、と言っても、余り説得力はない。EPRとは何かの議論に持ち込まれるだけだ。もともと、自治体にはゴミを収集する義務があったのだし。

A君:EPRのもう一つの関連語句が「デポジット」。「事業者のEPRを実現するために、デポジット制を強制しよう」、というようなタイプ。

B君:これもEPRの定義の議論に巻き込まれて、余り有効な戦略とは言えない。

C先生:ペットボトルの新型導入や改善については、リサイクル業者との十分な連携を取るべき、といったところまでは、EPRの一部だと言っても良いだろう。

A君:(4)に行きますか。(4)ペットボトルそのもののの変質。といってもペットボトルの新容器の話ではなくて、軽量化などの話。

B君:極限まで軽量化されたペットボトルがミネラルウォータ用などには出てきている。例えば、キリンビバレッジのアルカリイオンの水の容器は、ペコロジーボトルとかいう名前で、これまでの2/3にまで軽量化したらしい。

C先生:ミネラルウォータのペットボトルは、実に軽くなっている。大塚製薬のクリスタルガイサーのペットボトルは、日本で作って米国に運んで水を詰めているとかいう噂を聞いたが、本当なんだろうか。日本でないと、あそこまで薄いボトルはできないとか。

A君:フランス製のボトルは薄いですが、アメリカだとあんなに薄いボトルはできないのかもしれませんね。

B君:という訳で、結論は、ペットボトルも様々に変質しているが、その中でも注目は軽量化されたということ。

C先生:(5)に行こう。(5)ペットボトルの回収費用は本当に高いのか

A君:それには、平成15年度に廃棄物学会が行った「容器LCC調査結果報告書」[暫定版]なるものがありますね。平成16年5月に発行されていますが。

B君:長い報告書なので、どこを読むべきか、なかなか難しい。例えば、p23にある表3−20には、直営の場合の収集平均単価が出ている。PETボトルが26.5万円/トン、ガラスびんの8.7万円/トン。

A君:ガラスびんの3倍と書いてありますね。しかし、500mlのボトルで比較すると、ペットボトルだと33g、ガラスびんだと190gぐらいでしょうから。6倍。となると、一本あたりにすると、ペットボトルの方が半額ということになりますね。一本あたりにすると、1トンのペットボトルは3万本相当。となると、一本あたり8円強ぐらい。

B君:それが委託収集平均単価になると、PETボトルが10.6万円/トン、ガラスびん3.9万円/トン。全部を混合した収集だと、2.8万円/トン。

A君:PETボトル1本で3〜4円。混合なら、、、、これは良く分からない。

C先生:全部を混ぜると、品質が下がりすぎる。同じトラックに別々の箱を用意して別々に集めるといった方法が妥当なのではないか。

A君:いずれにしても、PETボトルを集めると20円/本も掛かるという話はどうも神話のようですね。

C先生:東京都のように、店頭回収をしているところに平ボディーのトラックで乗り付けて回収すると、搭載率が1/10といったようなことになりかねない。2トン車に150kgですでに一杯といった状況だ。空気を運ぶことになる。

B君:となると一本あたりの単価も跳ね上がる。

A君:いずれにしても、どうやって収集するかによって、相当な差が出るのですが、少なくとも、ペットボトルだけを集めるのは得策ではなさそう。

C先生:いよいよ最後だ。(6)なぜペットボトルは一部市民に嫌われ、一部自治体にも嫌われてきたか

A君:それは歴史でしょうか。

C先生:まあ正しい認識だろう。東京都の店頭回収についても、こんな歴史がある。

http://plaza25.mbn.or.jp/~gomizeronet/000412.htm より引用(多少修正)。
あまりにも使い捨てに過ぎるからとペットボトル業界は500mLの小型PET容器については96年4月まで自主規制していた。ところが輸入の小型PETが氾濫する中、お菓子メーカーのブルボンが自主規制を知らずに(厚生省に何度も日参して)小型PETを売りはじめてしまい、(内心期待していた?)飲料メーカーも自主規制を解いてしまった。当初売らないと市民団体に言っていたスーパーも売り始め、CMも解禁。そして、今や300mLペットの時代?!

A君:この自主規制について、東京都は、「困る」と飲料業界と交渉したが、押し切られた。そのため、東京都は、ペットボトルを行政が関与して収集する方式を少々変えて、店頭回収ということになったのでしたね。

B君:このあたり、小型ペットの出だしが、いささか無法者だった。だから、いまだに印象が悪い。

A君:それに、昔から石油起源の製品は嫌いな市民活動家が多いですね。例えば石鹸。

B君:石鹸と言えば、「界面活性剤は体に悪いから石鹸を使っています」、という言葉を聴いた。石鹸こそ界面活性剤の代表例なのに。

C先生:このあたりの感覚に加え、「プラスチックを燃やすとダイオキシン」という時代もあったので、印象が悪い。

A君:しかし、最後の最後には燃やすことができるという特性は、やはり得がたい特性。

B君:ガラスにしても、鉄にしても、燃やすわけにはいかない。どうしてもゴミになる。

C先生:環境省もとうとう、プラスチックは燃やすことを容認する方向になってきた。使い捨てを助長しかねないので、全面的にこれが良いとは言わないが、いざとなったら燃やせるという特性は貴重。

A君:固定観念に囚われず、何がもっとも合理的か。

B君:何が合理的も重要だが、鳥瞰的な見方をすれば、今の日本の消費社会の最大のものは、やはりエネルギー。石油に換算すると、一人当たり4トンもの消費量だ。全部で5億トンにもなる。ペットボトルは、44万トン。将来でも多分60万トン。1000倍も違うのだ。

C先生:やはり環境問題は、鳥瞰的な見方をときどきはする必要があるだろう。エネルギー問題も温暖化も重要課題ではあるが、すべてがエネルギーや温暖化だけという訳ではない。バランスの良い対策とは何かを常に意識する必要がある。世界全体を見回すことも非常に重要だ。日本の生活が、「いささか行き過ぎ。便利になりすぎ。消費者は我侭。事業者は消費者の我侭を利用して商売」、ということは無いのか、といった考え方をもつことも重要だ。