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  環境問題の虚実・表裏・損得  01.20.2008
     その1:古紙配合率偽装問題



 これまで本HPでご紹介してきた様々な環境問題であるが、環境問題は虚構ばかりであるという見方も不適当ならば、すべてが実像であるという見方も不適当である。すなわち、どうも、様々な事象には「虚と実」「表と裏」があり、しかも、環境保全を主張する動機はいつでも正義だとは限らない。実は、「損得」が動機である場合が多いことが、最近の偽装問題などに見られる。



C先生:このような題目でHPを記述をしてみたいと思ったことには、いくつかの動機がある。まず、最近の大事件、製紙業界が係わる偽装問題だ。さらには、ガソリンの暫定税率の延長に関すること。そして、温暖化問題で福田首相がダボス会議で何かを言うはずだが、それにEUなどの本音は何かなどだ。
 とはいえ、本日は、やはり製紙業界の環境偽装問題を取り扱いたい。

A君:この問題に対する議論の枠組みですが、どのような原理を中心に据えてやりますか。

B君:偽装問題だと、「社会的責任」という言葉ではないだろうか。不思議なことに、偽装問題が起きると、日本では、「企業の危機管理の問題」として捉えられる。これはおかしい。危機管理という言葉には、しっかり管理してバレなければ良いというニュアンスを含みうるからだ。本当は、社会的責任という枠組みで捉えるべきで、そのような認識が欠落したときに、企業は危機に陥るのだろうから。

A君:今回の話題ではないですが、ガソリン等の暫定税率廃止の件は、やはり政治家のポピュリズムによる自己都合的発想。週刊誌にそんな記事があったような。

C先生:我々の心配は、日本は温室効果ガスの排出権取引で一方的にムシラレル可能性があること。だから、暫定税率は、そのために準備金(環境税?)として考えるべきだ、というもの。もちろんベストの対応は、払わないで、30%割増で次の約束期間に送ることだが。

B君:そして、温暖化問題だと、やはり国際問題における虚実・表裏・損得。

C先生:この問題、EUがどうして、Cap&Tradeにこだわるのか。そして、日本はどうして、セクターアプローチを主張すべきだと考えているか。

A君:となると、全体としての議論の軸になりそうな原理は、社会的責任、ポピュリズム、国の損得と温暖化対策、といったところですか。

C先生:よかろう。まずは、古紙偽装問題だ。論点は、社会的責任で行く。
 最近、企業の社会的責任、いわゆるCSR(Corporate Social Responcibility)は話題になっているが、現在、ISOの26000という任意規格を作ろうという動きがある。これは、企業だけにとどまらず、他の団体はおろか、個人レベルでも社会的責任というものがあるという主張だ。
 そして、その責任を果たす対象として、つぎのような4つの項目があるとされている。
*組織的ガバナンス・公正な商慣行
*消費者問題・コミュニティー参画
*人権・労働慣行
*環境

A君:最初の項目が組織的なガバナンスが行われないと、公正な商慣行が守られない。しかし、ミートホープにしても、また、船場吉兆にしても、また今回の製紙業界にしても、企業トップが主導した偽装のようだから、ガバナンスというよりも、個人のモラルの問題。

B君:次が消費者問題。これは、なかなか含蓄のある言葉で、消費者に対して適正な情報を伝達する必要があるということではあるが、さらに深い意味があると思うので、それは次回以降でまた機会があれば。

A君:人権・労働慣行は、重要なのだけれど、現在の日本という国では、むしろ格差問題であるとか、派遣社員の問題とかが大きい。幸いにして、人種差別という問題は、無いとは決して言えないのだが、比較的少ない。

B君:そして最後の項目が環境だ。個人、企業、団体、地方自治体、国、すべからく、環境を保全する社会的責任を背負う時代になった。

C先生:その最後の環境のことだが、「すべての個人は環境を保全する社会的責任を背負っている」といった表現は、一部の人には相当嫌われている。特に、米国においてそうだった。その理由なども、次回以降どこかで議論できると良いが。

A君:本日の本題、次々と明らかになりつつある古紙偽装の問題ですが、現時点で、日本製紙、王子製紙、大王製紙、三菱製紙、北越製紙(以上1月18日)、中越パルプ(1月20日の新聞報道)が偽装を認めた。最初に問題になった年賀はがきだけでなく、コピー用紙などでも偽装が行われていた。

B君:どうやら、トップまで完全に知っていたようだ。日本製紙の社長の言い訳によれば、「当社に技術では、古紙配合率を増やすと、品質の維持ができない。また、古紙の価格が高くなっただけでなく、入荷量も減ったため、配合率を増やすことが不可能だった」

A君:これをどう読むのか。これが「実」なのか。多分違う。「実」は「もっと古紙パルプの精製装置に投資をすれば、古紙配合率を増やすことが可能だけど、古紙配合率の高い紙をユーザが高く買ってくれる訳ではない。だから投資は損得を考えると見合わない」、ですかね。

B君:コストの問題だということを否定したようだが、そんな訳は無い。これに追加をすれば、「もしも古紙配合率の高い紙を消費者が高く買ってくれれば、中国に行ってしまうはずの古紙を買い戻すことができるのだが」、だろうか。

C先生:表裏の「裏」だが、「当社の技術では、古紙配合率を増やすと、品質の維持ができない」ことが分かっているのに、なぜ、不可能な配合率の紙の注文を受けたのか。この説明が無いの最大の問題点。この「裏」には、どんなメンタリティーが潜んでいるのか。

A君:そういえば、ブログの方で、「かみつうさん」なる紙のプロが、なぜR100などという規格ができたのか、という疑問を呈していたのですが、これは色々な意味でナゾですね。

B君:かみつう氏のナゾは、R100が良いと誰が言い出したか、ということであって、それは確かにナゾだ。本HPのスタンスは、LCA的に見ても、R100が優位だという根拠は薄弱。ただし、オール新パルプの紙があるので、古紙をかなり高配合、例えば、80%にした紙が無いと、紙の繊維の性能を十分に使い切ることができない。だからといって、100%古紙である必要はない、というもの。

C先生:なぜ、R100だけがグリーン購入法の対象になったかについては、それほど大きなナゾではない。日本人の「○か×か」、「0か100か」のメンタリティーに対応する「象徴」として重要だったからだ。グリーン購入法の対象になるためには、まず、エコマークなどをパスした商品があることが前提となる。エコマークの手続きは、規格を検討する委員会があって、そこで、まず、R100とはどのようなものか、それを製造することは技術的に可能なのか、などといった議論が行われるのが普通だ。そのとき、メーカーからも委員が参加しているので、「それは技術的に無理だ」、と言えば、そのような規格ができることはない。ということは、エコマークの委員会で、どこかのメーカーに属する委員が、「わが社では可能です」と答えたから、R100規格ができた。勿論、R100が環境に良いかどうかなどは、全く別の話だ。「象徴」として重要かどうかが問題だったのだ。グリーン購入法がR100だけを認めたとなると、R100は確実に国には売れる。確実な市場が出来上がるのだ。

A君:となると自社の技術では、R100を作るのは無理だとしても、他社が商売にするというのなら、できることにして、受注せざるをえない。これが「裏」の本音。

B君:いずれにしても、製紙業界が参画していたからこそR100ができた、という結論か。すなわち損得と虚実の交差が原点か。

C先生:日本という国の特徴の一つだが、この狭い国に企業の数が多すぎるのだ。そこで、白兵戦をやるのはつらい。毎回、言っているが、携帯電話を何社が作っているのか。今は、9社か? そして、この9社は、世界市場では勝負にならない。そして、世界では、4社ぐらいが独占状況。

A君:シャープ、富士通、パナ、東芝、三菱、ソニー、京セラ、カシオ、NEC、これで9社。三洋は京セラになるので外したけど、他は無いのだろうか。世界では、Nokia、Motorola、Samsung、LG。加えてソニーエリクソンが少々。

B君:企業の数が多すぎても、かつては恐らく談合類似の行為をやって、激烈すぎる競争の回避ができていた。現時点でのDocomoの新型競争も一斉スタート一斉ゴールだから、談合類似の行為に見える。自由競争によるコストの低下を絶対的な前提とする社会では、談合はとんでもないことだが、過当競争を避けて、共存共栄を良しとする社会ならば、適正に行われる談合というものも一つの形態ではあるのだ。

A君:だから、今回の偽装の「裏」には、「古紙を配合した質の悪い紙をわざわざ欲しがるユーザがいるが、製紙業としては質の良い紙を偽装して供給しているのだから、罪は無い。却って良いことをしている」、とどこかで口裏を合わせた気配もありますね。

C先生:さて、話を戻す。複数社の製紙業のうち、恐らく最低1社は、少量ならR100を本当に作ることができた。そこがどこかは不明だが、最初にR100を作ったのは、恐らく王子製紙のようなので、日本製紙ではないのだろう。そこが、R100を作ると言い出したもので、他社は、自らの技術力ではできないということを分かっていながら、「できる」と称して受注した。これが「実」だということか。

A君:政府は、どうやら単なる偽装ということだけでなくて、法律違反として処罰をする可能性を探り始めたようですね。

B君:単純に言えば詐欺罪。例えば、車の場合、エンジンの馬力を測定したら、そのカタログ値の半分も出ていなかったとなったら、詐欺罪で訴えることは可能だろうか。

C先生:日本の場合、死者が出ないと警察は動かないという伝説がある。今回、実害を受けた被害者は居ないので、難しいかもしれない。いずれにしても、製紙業界は、責任をどこまで感じているのだろうか

A君:社長が交代しないぐらいですからね。このことをメディアがどのぐらい突っつくかでは。

B君:先日、あるテレビのディレクターと話をしていたら、意外なことに、製紙業界に同情的だった。例の「あるある捏造事件」があったからかもしれないが。

A君:これまでの議論をもう一度整理したいのですが、「環境が商売になる」ことを推進したのは、一部の環境至上主義者だという意見があります。確かにそのような実体はあったという「伝説・逸話」はありますね。R100を推奨している市民団体などのメンバーは、「紙の繊維は何回でも使える」と思い込んでいたとか。上質紙だと3回まで、それから、少年マンガ雑誌用のひどい品質の紙に1回、そして、最後はペーパーモールド、というのが現実的なところなのだ、という説明をしたら、顔色が変わったという逸話があるので。

B君:ここで、A君が本当に言いたいのは、「環境が商売になる」を推進したのは、実は企業だったということだろう。確かにその通りだと思う。環境を配慮した事業を展開しているという印象を与えることが、企業活動にとってプラスだ、となると、本心は全く違うところにあっても、「環境優良企業ぶりっ子」を演じる企業も多かった。

C先生:それは事実だ。しかし、環境が商売になることが、「虚」ではなく「実」だということが分かり、本心から環境指向を強めて言った企業群がある。ところが、紙の場合、どうしても「古紙は色が悪い」。しかも、日本の消費者の態度として、リサイクルをするのは好きなのだが、リサイクル製品を買うのは嫌いだという時代が長く続いたこともある。しかも、古紙100%の紙(本当は?)はコスト高だった。ということで、苦しかった。

A君:それにしても、製紙業界の過去のデータを全部作り直して欲しいですね。

B君:日本製紙連合会のHPを見ると、
http://www.jpa.gr.jp/env/recycle/used-paper/index.html
に「高まる古紙利用の重要性」といったページがありますね。

B君:そこにある2005年のデータは、古紙回収率が70.9%、利用率が60.4%となっている。これは本物か? もしも、違うのならば、このような数値は引っ込めるべきなのではないか。

A君:利用率では、韓国(79.5%)とドイツ(63.2%)に負けているのですが、その理由、今となっては言い訳としか思えないのですが、「韓国は自国で木材からの製品が余り作られず、古紙利用製品の生産が主体のため数値が高い」、「ドイツは古紙利用製品の輸出を行っているため高い」、といった記述があって、日本の数値が通常の国としては最高水準であるということを主張しています。

B君:http://www.jpa.gr.jp/env/recycle/aim/index.html には、「紙リサイクルの国、日本」が目指すリサイクル62%、という記述があって、古紙利用率の目標は2010年までに62%ということになっている

C先生:そのページのグラフにあるように、回収率は上がっているのは「実」なのだろう。ところが、古紙利用率は「虚」だった。この62%という目標値も、そろそろ撤回して、早急に、新たな目標値を再設定して欲しい。

A君:これからどうするのでしょうか。環境省はR100をR70+新パルプ30に移行することをしばらく見送るようですが、となるとR100を作ることができる企業は、本当にあるのでしょうか。国はグリーン購入法を遵守しようとすると、コピー用紙を買うことができない、という超椿事がおきることになる。

B君:このような状況に対して、最低言いたいことは、これまで流通していた偽装OA紙を引き取って燃やすといった馬鹿なことだけはやらないで欲しい。

A君:燃やすのは論外としても、引き取ってパルプとして再生しますというのでも、無駄中の無駄

C先生:未開封の偽装OA紙であれば、代金は返却します、しかし、紙はそのままお使い下さい、といった対応が必要なのではないだろうか。偽装をすると、製品の性能が変わらない場合でも企業の存続に係わる、という実例ができることが必要なのが日本という社会だな。残念ながらだが。

A君:本日の日経に、この偽装事件は、事務用品などに使われる再生プラスチックにも波及するかもしれない、という記事が出ていた。

B君:ということは、記者はすでに何かを把握していると考えた方が良い。

C先生:昨年、某マスコミの取材を受けたとき、担当者がよく分からないことを言っていたことが、実は、本日の事態を示唆していたのではないか、と今になって思う。

B君:業界すべてということか。これは談合だろう。ブログの方で、年賀はがきの偽装再生紙(まだOA紙偽装は明らかになっていなかったとき)にコメントを求められ、かみつう氏が最後に言い残した言葉が以下のようなものだった。
「理不尽な似非環境主義者に対して怒っているかみつうの意見
 様々なトレードオフ関係があるという業界の意見にミミを貸さずに古紙配合率が高いほうが環境のためによいと一方的に要求するユーザーに対して、郵便番号を機械で読みとるために汚れを嫌う葉書という「一枚50円または55円の金券」の品質に対応するため古紙品質悪化と限られた納期の板ばさみの被害に会った気の毒な企業です。
 しばらくここには来ません。みなさんさようなら。」

C先生:「理不尽な似非環境主義者」と書いたときに去来した顔の所属先は、恐らく環境省と国に対してしか遵守義務のないグリーン購入法を守るユーザ企業(含む日本郵政)なのではないか。市民団体も入っていた可能性もあるが。
 しかし、それにしても、「気の毒な企業」という表現は、余りにも不適切だが、これが本音なのだろう。恐らく、「良い品質の製品を提供したのに、何が悪い」、という考えに同感だということなのだろう。製紙業界が「商売最優先」の体質を改善するには、「損得」で相当のダメージを受けないと駄目だろう。加えて、偽装というものの罪深さを認識する必要がある。偽装をするような企業の株を誰が買うのか。いずれにしても相当の年月がかかりそうだ。
 最後のかみつう氏の言葉から判断すると、彼は、恐らく、はがきだけでなく、OA紙の偽装も問題になることを十分に予知していたように思える。



余分:あらら氏が本HPの紙関係の記事
http://www.yasuienv.net/R100PaperLCA.htm
に対して、「企業の実名を挙げるのなら広報などにコンタクトして裏を取れ」と噛み付いてきたが、ひょっとすると、彼も製紙業界関係者だったのだろうか。いやいやそんな訳は無い。もし関係者だったら、その時点で、今回の事件が起きることを知っていただろうから。 (こういうことを書くと、またブログが荒れる??)