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  家電リサイクル法等の基本原則 09.09.2007
     その2:制度設計と責任論



前回の問題意識。リサイクルの目的は何か。
そして結論は以下の通りだった。

廃家電・廃コンピュータなどの廃棄物・資源面などの課題

1.廃棄物の不適正処理による問題(健康被害と最終処分量)。
対応:日本における処理法が採用されれば、この問題は解決可能。
 しかし、国際的に日本のような処理法が採用されるには、かなり長期間を要する。

2.資源回収としての問題は、主原料と微量原料に分けて考える。
対応:主原料に対しては、日本における処理法でおおむね対応が取れている。しかし、世界的にみると、欧州の対応すら不十分。

3.微量原料については、世界中どこでも対応が不十分。しかし、資源枯渇の問題を真正面から取り上げるには、時期尚早。

4.資源採掘時における自然資源の移動量が自然破壊を招く大きな原因。エコロジカル・リュックサック的な視点も重要。


C先生:残る問題は何だ。中国への資源輸出をどう考えるかのが次か。

A君:まあ、それに加えて、ブラウン管テレビ問題ぐらいですか。

C先生:最後には、制度設計とメーカーの責任論の話に行くのが今回の最終の目的。特に、国内だけを考えても、まともな制度設計ができないことに対して、メーカーはどう対応をするのか。これが重要。

B君:中国やベトナムなどへの資源輸出の問題は、これも2つの視点があって、日本国内で処理されることを前提として作ったシステムが機能しなくなるという問題と、これは中国だけの話だが、中国が世界の工場になって日本は取り残されて良いのか、という問題ぐらい。根底には、日本と中国の競争関係をどう見るか。

A君:それは、日本という国を今後どのような国にしたいか、ということでもあって、まあ、大きい問題のような、そう大きな問題でもないような。

B君:今後の日本は、常に鉄の鎧兜を付けて戦闘力を高めるようなメンタリティーで生きる国なのか、そうではなくて、中規模国として、大量に消費財を使うような国ではなく、暮らしやすさのようなものを優先した国にするのか。

A君:国内法である家電リサイクル法を考える際には、極めて重要な問題ではありますね。

C先生:ということでやっと本題に入れそうだ。家電リサイクル法とパソコンのリサイクルは、今後どのような方向性を目指すべきなのか

A君:まず、日本の家電リサイクル法の方向性が、間違っていないということを世界的に主張するために、現在の枠組みの維持は必要でしょうね。

B君:欧州のWEEEは前払いシステムで、しかも、明示されたリサイクル料金というものが無いもので、メーカーとしては、できるだけ安くリサイクルしたいというメンタリティーしか持てない。リサイクル料金を明示した先払いリサイクルシステムは、自動車のように、登録制がしっかりしていれば実施可能だけど、家電製品やコンピュータでは実施不可能。

C先生:日本でもパソコンは先払いで、リサイクル料金が明示されていない。ただし、リサイクルが開始される以前にすでに使用中のパソコンは、当然リサイクルマークが無いので、そのリサイクルは有料。この場合には、後払いになって、料金は明示されている。ところが、この後払い料金の妥当性について、誰もきちんと評価をしていないように思える。企業の自由裁量ではあるのだが。

A君:アップルの場合です。

アップルでは、資源有効利用促進法(改正リサイクル法)に基づいて家庭向けパソコンのリサイクル制度が施行されることを受け、回収・リサイクルの料金を以下の通りと決定いたしました。

デスクトップパソコン 3,150円
ノートブックパソコン 3,150円
液晶ディスプレイ 3,150円
CRTディスプレイ 4,200円
液晶ディスプレイ一体型パソコン 3,150円
CRTディスプレイ一体型パソコン 4,200円
(各料金ともに税込)


B君:しかし、他のメーカーも同じ料金ようなのだけど、Webで探しても、なかなか具体的な料金が見つからないのが現実。

A君:パソコンの場合、実際には、リサイクル費用は無料でも実は見合うという噂も有りますねからね。余り費用を公開したくないのかもしれない。それに、下取りシステムなどを持っているメーカーもあって、本当のところが良く分からない。
 先払いシステムも同様。先払いで製品価格に含まれる形のリサイクル料金は、どうも、日本人的な感覚としては、その実体が分かり憎い。

C先生:大体、先払いをしたからといって、どのぐらいパソコンがリサイクルのために戻っているのか。その公表を待ちたいところだ。
 2003年10月に仕組みができて、4年ぐらい使ったパソコンは、そろそろ戻ってきても良い頃なのだが、有限責任中間法人 パソコン3R推進センター
http://www.pc3r.jp/index.html
にも、まだまだ実績がでそうな気配がない。

B君:家電リサイクル法としては、後払いシステムがやはり面白いし、世界中で、日本ぐらいしか成立しないシステムを持っていることが貴重なのではないだろうか。

C先生:後払いの良いところは、もう少々使おうか、という気持ちになること。欠点は不法投棄が出ること。
 最近は、中国への資源の輸出の勢いで、事業者による不法投棄が減っている。むしろ、個人の不法投棄が増えている。これを自治体の責任で収集せよというのも厳しい話なので、不法投棄を厳罰にすると同時に、リサイクル料金の中から、実績に応じて、自治体に対して不法投棄補償金を払うことが必要だろう。

A君:海外に流れることはどうしますかね。これは止められない

B君:先方での経済活力になるという現実もあって、否定しにくい。ベトナムなどの例を見るとそんな感じで、フィリピンの反応はいささか違うようだ。ゴミを持ち込まれることは、プライドが許さないという感じがある。

C先生:健康被害については、基本的には、現地の責任であるとしか言いようが無い。製造者である機器メーカーの責任とは言いがたい。もしも鉛が健康被害の中心的存在であるのなら、RoHS規制のように、有害物の使用禁止も有効。しかし、被害の実態で、より深刻なのは、使用材料そのものの有害性ではなくて、金の回収などにシアン系の化合物が使われるといったことなのではないだろうか。

A君:ただし、パソコンの場合ですが、製品を最初に使ったユーザがリサイクル料金を負担する、という先払いシステムの仕組みは、使用者責任として考えても良いことかもしれない。もしも、これを実施するとなると、金額明示型の先払いシステムを導入するということが必要なのかもしれない。そして、輸出された廃家電の統計量を基礎にして、未使用のリサイクル料金を海外で使い、良好なリサイクル業者にのみ発注をするという方法論が良いのかもしれない。

C先生:全部「かもしれない」つきだった。

B君:日本で集めたリサイクル料金を海外に持ち出すのは、現在の日本の法律では不可能だろう。となると、金額不明示のまま、メーカーがリサイクル料金を徴収する。そして、市民側としては、「責任があるから、海外でもリサイクルを適正に実施せよ」、という言い方が通りが良いかもしれない。

A君:しかし、それが本当に責任があるのだろうか。

B君:メーカーはリサイクル料金を上積みして消費者から代金を受け取った。その製品が海外に、例えば、ベトナムに中古品として流れて戻って来なければ、リサイクルを実施するための費用がメーカーに残ってしまう。これは儲けすぎと言わざるを得ない。

A君:メーカーとしては、その製品をベトナムから持ってきてくれれば、リサイクルします、と答えるのでは。

B君:それはそうなのだ。しかし、「それをユーザに負担せよと主張するようなメーカーは信用できない」、という若干ずれた対応で戦うことが消費者にはできる。

A君:なるほど、しかも現地でかなり程度の悪いリサイクルが行われている写真か何かが取られて、そのパソコンにリサイクルマークが残っていたりしたら、その写真にはある種のメディア的な価値があるかもしれない。

B君:その通り。メーカーにとっては、先払いで料金をとると、こんな弱みが生ずるのだ。少なくとも、明示的にリサイクル料金を取る訳にはいかない。不透明なシステムにせざるをえない。

C先生:いずれにしても、この問題は、国連大学のStEPプロジェクトというもので検討中で、なんとも難しいのだ。

A君:なるほど。家電リサイクル法に戻りますね。いずれにしても、世界の見本として、家電リサイクル法の現在の後払いシステムをしばらく継続する。ブラウン管テレビは、そろそろリサイクル率などを変える必要がある。その代わりといっては問題かもしれないが、薄型テレビが入るのは当然の帰結
 そして、先払い方式の例として、中古コンピュータの海外への輸出されているのかどうか、そして、それが現地でどう処理されているのか、しっかりと見張ることが重要だということかもしれない。

B君:パソコンは、特に、ノートパソコンは、後払いシステムは無理なのだ。もともと持ち運ぶことを前提としているので、不法投棄をしてくれ、といったものなので。すでに使用されているノートパソコンの台数ぐらいなら許容できるのかもしれないが。

A君:日本以外だったら正にその通りでしょう。資源面からのまとめはどうなりますかね。

C先生:資源回収の問題だが、主原料、すなわち、鉄、アルミ、銅、プラスチック、は今のやり方でやるしかない。ガラスは、これは問題。ブラウン管ガラスがどうしてもブラウン管にならないのなら、透水性舗装レンガなどの原料にするのが良さそうだが。

A君:ブラウン管問題は、2011年の廃テレビ大洪水問題の中心的課題でしょうね。

B君:微量成分のリサイクル、レアメタルのリサイクルなどは、現状では、打つ手が無いに等しいが、継続的にどうするか、を考える必要がある。まだ時期的に早いように思うが、「備蓄後リサイクル」という方法もそのうち、真剣に考慮する必要がある。

C先生:となると、現状でなんらかの準備をしておいた方が良いかもしれない。それは、「製品の最適リサイクル情報は製品に聞くと分かる」というシステムの構築準備だろう。家電リサイクル法を拡張して、(1)物質・元素含有量、(2)プリント配線板は、ICの型番その実装位置、などを書き込んだICタグ(μチップ)を乗せることを義務化するのはどうだろう。

A君:自動分解ロボットを作れば、ICなども再利用が可能になる可能性もある。金は、相変わらずICの配線用などに使われている。長寿命製品は当然として、長寿命パーツのリユースという産業も、途上国なら可能性あり。

B君:高額商品として、薄型テレビに、まずそんな義務を課すことが妥当なのでは。

C先生:リサイクルという行為は、経済行為のような環境保全行為のような、微妙なものだけに、周辺の状況の影響を受けやすい。世界でもっとも意欲的なリサイクル法である家電リサイクル法は、いささかやりすぎかという懸念はあるものの、しばらく維持することに意義がありそう。
 一方類似した製品だが、パソコンのリサイクルは、先払いであることで、全く性格が違う。このやり方は世界標準に近いので、中古品の国際的流通を踏まえたメーカー責任の取り方を議論するための好素材だろう。実際、パソコンのリサイクル費用はユーザによって先払いされているが、どのような費用の使用状況になっているのか、すなわち、どれぐらいの台数が日本国内に留まってリサイクルされ、どのぐらいが中古品として世界に流出しているのか。これは先払いされた料金がどのぐらいメーカーの手元に残っているか、ということを意味するデータだ。リサイクル用だということで受け取った費用なので、公的機関が報告を受けて、それを一般市民に向けて公開する責任がある。