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  ペットボトルの現況 10.09.2004



  容器包装リサイクル法の検討の一環。どうも、ペットボトルだけが非難の対象になっている感がある。確かに、ペットボトル導入の歴史の中では、妙なことが行われたこともある。しかし、ペットボトルの実態を語るとき、絶対的な真実として考慮すべきこと、それは、「消費者がペットボトルを求めた」ことである。
 すべての容器で真実であるが、いかなる業界にも自らの容器を過剰に正当化する部分がある。ペットボトルもその通り。
 現在、ペットボトルはどんな状態にあるのか、そのまとめをしてみたい。


C先生:容器包装リサイクル法を考えるにあたって、どうしても問題になることが2つある。一つは、「ペットボトル問題」、もう一つが「リターナブルボトル問題」である。本日は、ペットボトル問題を総括して見たい。個人的には、ペットボトルに限らないが、できるだけ、「水」「お茶」のような商品の消費は少ない方が良いと、相変わらず信じているが、まあ、そうとだけ言っている訳にもいかない。

A君:何を議論するんでしょうね。まあ、(1)このところのペットボトルのリサイクルの状況、でしょうか。

B君:それは必要だ。先日の新聞でも、ペットボトルの回収率が60%を超した、という報道があったばかり。

A君:(2)ペットボトルのリサイクルの方法論について、でしょうか。

B君:最近、ケミカルリサイクルが導入されて、かなり環境負荷が下がっているという主張とともに、資源採取量の減少にも貢献しているという主張がなされ始めた。この検討は十二分に行う必要がある。

A君:(3)ペットボトルの新容器。アサヒビールが発売しようとして断念したペットのビール。それに、すでに存在しているホットペットボトル。

B君:それが何を意味するか。特に、リサイクルが行われている、しかも、様々な方法があるリサイクルの現状にとって、何を意味するか。

A君:(4)ペットボトルそのものの変質もでしょうか。

B君:昔のペットボトルは、様々な部品が付いていたが、最近は、単純かつ軽量になった。これが何を意味するか。

A君:(5)ペットボトルの回収費用は、本当に高いのか。

B君:この問題は、なかなか微妙。いくつかのデータをチェックすべきだろう。

C先生:最後に、(6)なぜペットボトルは、一部市民団体から嫌われているか。

A君:そんなところで開始します。再度リストをまとめますと、
(1)このところのペットボトルのリサイクルの状況
(2)ペットボトルのリサイクルの方法論について 
(3)ペットボトルの新容器
(4)ペットボトルそのものの変質
(5)ペットボトルの回収費用は、本当に高いか
(6)なぜペットボトルは、一部市民団体から嫌われているか。

(1)このところのペットボトルのリサイクルの状況
C先生:それでは開始しよう。最初のデータは、先日新聞に掲載されていた。9月30日のことだ。それによれば、2003年度の回収率は6割に到達。

A君:そのグラフが出ていますね。エクセルにデータを落として、ちょっと再現してみます。


図1:ペットボトルの生産量と回収量

B君:2002年になって、はじめて容器包装リサイクル法の効果がでて、ゴミになるペットボトルの量が減った。2003年はさらに改善された。

C先生:容器包装リサイクル法がもしも無かったとしたらどうなっていたのか。これは、想像をするしかないのだが、ペットボトルの大部分は、ゴミになっていただろう。そして、多くの場合には、焼却されていただろう。 

A君:PET樹脂なるものは、発熱量が低いので、焼却炉を傷めない、とか言われて全部焼却だったでしょう。しかし、本当のことを言えば、PET合成までのプロセスエネルギーが全く無駄。どうせなら、発熱量の高い樹脂を作って、それを燃やし、エネルギー回収という方がまし。

B君:ポリエチレンPEとかポリプロピレンPPのような樹脂がエネルギー回収には適している。ポリスチレンPSになると、炭素:水素比が炭素よりになって、燃やすのが難しい。

C先生:アルミ缶、スチール缶のいずれもが、80%以上のリサイクル率であると主張している。しかし、定義がはっきりしない部分があるので、どこまで信用してよいかは別。リサイクル率は、本来、生産量が分母で、リサイクルされた量が分子であるべきもの。有効利用率でもなく、勿論、回収量とも違うはず。今回のペットボトルの場合には、回収率と表現しているから正しいが、一般に、リサイクル率というものはどうも色々な種類があって、簡単に信用はできない。

A君:しかし、ペットボトルも、実は複合製品。蓋、ラベルは別の樹脂。蓋は、ポリエチレンなど、ラベルはポリスチレンでは。最近のボトルには、フルフェースなるものまであって、本来のPET樹脂の透明な部分が全く無いものがある。これでは、回収率は高くなったと言えても、蓋もラベルも恐らく焼却されているので、歩留まりはかなり悪いでしょう。

B君:ペットボトルの生産量と言ったとき、透明なPET樹脂の部分のみの重さなのか、それとも、蓋やラベルの重さまで含むのか。そのあたりもはっきりしない。

C先生:そのあたり検討をしてみるか。日本PETボトルリサイクル推進協議会のHPでも眺めて。

A君:http://www.petbottle-rec.gr.jp/top.html にあります。そこの回収率60%突破、というページを見ると、このようなデータになっています。

HPにある表1によれば2003年で
回収率   61%
生産量  437千トン

同じく表2によれば2003年で
樹脂生産量 437千トン

とういことは分母は樹脂生産量ですね。

B君:となると分子はPET樹脂分のみの重さであるべき。しかし、実態はベールの重さになっているだろう。市町村分別の場合には、ラベルと蓋は取ることになっているが、蓋のリングはボトルに残る。さらに、多少の水分が残っている場合もある。これをどう評価しているか不明。事業系の場合には、ラベルなどの処理を含め全く不明。

C先生:ということは、このペットボトルの回収率も、100%を超すことが可能な定義のようだ。それほど大きく超すとは思えないが。

A君:また文句が付いた。このように色々と文句は言われても、実は、諸外国に比べたら日本のリサイクルは偉いのです。ペットボトルの回収率は以下のようです。

2003年実績 千トン   %
       生産量   回収量
日本     437   61.0
米国    1949   19.6
欧州    2040   30.0


B君:米国の回収率は、なぜか1997年当時には25%ぐらいあったものが、現在は、20%を切った。欧州の回収率は、1997年の10%強から現在は30%になった。

A君:それに比べれば、日本の回収率の伸びは著しい。1997年の10%から2003年には60%になった。

C先生:こんなところで、次に行こう。
(2)ペットボトルのリサイクルの方法論について。

A君:もともとのリサイクル方法は、マテリアルリサイクル。PET樹脂というものは、繊維になればポリエステル繊維、テープ状になればマイラーフィルムと呼ばれ、VHSやカセットテープのベース材料になる。そして、容器になるとPETボトルあるいはペットボトルと呼ばれる。シート状の材料は、ブリスターパックという包装材料に使用されています。

B君:ということは、繊維になったり、シート状になったり、様々な用途がある材料だけに、リサイクルは有効。

A君:プラスチックは、同じものだけが収集できれば、どれもこれも有用。工場から排出された身元の確かな廃材は、有用な資源。

B君:ペットボトルは、使っている樹脂が同じものなので、繊維やシート状材料にはなる。なぜならば、ボトルグレードというものは、かなり高品位なものらしいから。

C先生:繊維になったり、あるいはシート状の素材になったりすることをマテリアルリサイクルと呼ぶが、残念ながら、ペットボトルには戻らない。という表現は、どうも正確ではなくて、全くペットボトルにならない訳ではないのだが、最近のペットボトルは、非常に品質が高いものが多くて、現在の品質を維持できるような原材料にはならない。

A君:極限まで薄くしたボトル、ピカピカに光ったようなボトル、などなど、技術の粋を使っているのが現在のペットボトルなので。

B君:マテリアルリサイクルだと、どうしても、多少の不純物が入ることは仕方が無い。そんな樹脂だと、極限まで薄くしたようなペットボトルを歩留まり良く作ることが難しい。

C先生:ということで、これまでペットボトルは、カスケードリサイクルが行われてきた。ところが、それだと、アルミ缶やガラスなどにかなわないので、どうしても水平リサイクルがやりたかった。それを実現したのが、ケミカルリサイクル。

A君:ケミカルリサイクルとは、樹脂を化学的に分解して、原料に戻す。現在、類似した2種類のケミカルリサイクルがあって、帝人ファイバー方式と、ペットリバースという企業で使用されているアイエス方式があります。

B君:帝人方式は大体こんな方式。
 ペットボトルから回収した廃PET樹脂をエチレングリコール(EG)というPET樹脂の原料の一種に溶かし、ビス2ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)にする。

  PET+2EG −> BHET

メチルアルコール(MA)を用いて、エステル交換反応によって、ジメチルテレフタレート(DMT)を合成する。

  BHET+2MA −> DMT+2EG

DMTを加水分解して、PET樹脂の原料であるp−テレフタール酸(PTA)を作る。

  DMT + H2O −> PTA + 2MA

このPTAとEGからPET樹脂を合成する。

A君:アイエス方式は、かなり似ていて、
 ペットボトルから回収した廃PET樹脂をエチレングリコール(EG)というPET樹脂の原料の一種に溶かし、ビス2ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)にする。ここまでは同じ。

  PET+2EG −> BHET

 これとPTAとで重合して、PET樹脂にする。どうも、DMTを経由しないようです。

B君:ちなみに、ナフサなどからPET樹脂が作られるプロセスは、p−キシレンを酸化してPTAを作り、EGと重合するという比較的単純な方式。重合過程は、EG二分子とPTA一分子を反応させて、BHETを合成し、EG分子を取り除きながら重合する。ペットグレードだと、さらに固相(塊状)重合が行われる。
 昔は、DMTを経由する方法が取られていたのかもしれないが、現在は直接法とでもいえるような方法。

C先生:それでは、それらの方法について、どのようなLCAデータが出ているかを整理しよう。

A君:まず、マテリアルリサイクルですが、廃ペットボトルからカスケード用途用のPET樹脂ペレットを作るまでに必要なエネルギーは、石油を原料としてPET樹脂ペレットを作る場合の30%ぐらいのようですね。余りちゃんとしたデータが無いのが残念ですが。

B君:いささか古いが、NEDOの報告書によれば、以下のような記述がある。

PETボトル  −−>  PETフレーク
300kg        291kg
        水2t
       電力55kWh

A君:そんなのがあるのですね。となると、LCAで有名な英国のブーステッド氏のデータによれば、1kgのPETの製造プロセスに要するエネルギーは、78MJ/kg。プラスチックになる原料部分(フィードストック)を含む。

B君:エネルギーだけで比較すると、1kgあたりにすると、1MJ/kg未満だ。1%ぐらいのエネルギーでフレークまでは行けるということになりそう。

C先生:いずれにしても、簡単なプロセスだけに、エネルギー的にも二酸化炭素排出量にしても、マテリアルの優位性は変わらないことになる。さて、ケミカルリサイクルのLCAはどうなのだろうか。

A君:帝人ファイバーの発表では、次のようになっています。
 これは、帝人株式会社代表取締役副社長の長島徳明氏が環境省のある審議会で発表したものです。http://www.env.go.jp/council/02policy/y024-04/mat_05.pdf

ポリエステル原料リサイクルの評価
(1)省資源(資源枯渇抑制: ナフサ削減△1.6t/PET1.0t
(PET1.0t でユニフォーム1,000着相当)
(2)物質循環(化学物質制御):循環理論収率約100%(現状95%弱)
(3)温暖化抑制:
CO2排出削減△77%(△3.2t/PET1.0t)
(PET1.0tで杉の木23万本の植林効果(年間)に相当)
エネルギー消費削減△84%(△6万MJ/PET1.0t)
(PET1.0t で家庭1軒/年のエネルギー消費量に相当)
(3)は経済産業省繊維製品3R推進会議の「繊維製品のLCA調査報告書」より

B君:細かいデータは全く無しだな。どの部分のLCAをやったのか、全く分からない。

A君:「ポリエステル原料リサイクルの評価」というだけでは、全く分からないですよね。発表した本人もどこまで分かっていたのやら。

B君:調べは付いているのか?

A君:もちろん。比較は、こんな風に行われているようです。

リサイクル:ポリエステルの繊維を回収するところから、これを原料として、DMTを合成するところまで。
比較となるバージン原料:原油からDMTを合成するところまで。
結論:この両者を比較すると、後者は84%の削減になっている。

B君:エネルギー消費削減84%ということだが、これはすごいことだ。具体的には、6万MJ/PET1トンの削減だそうだが。

A君:6万MJ/PET1トンの削減が84%に相当するということは、バージン原料からDMTを合成するまでのプロセスと、恐らく原料用の原油を加えたものでしょうが、それが、7.15万MJ/PET1トン。通常の表記にすれば、71.5MJ/kgPETとなります。

B君:この値は重要。後出のアイエス値が、62.7MJ/kgだ。帝人によるデータでは、DMTの合成までで、すでにその値よりも多い。

A君:DMTまでだとまだまだ大量のエネルギーが必要ですね。すなわち、これに加えてEGの合成エネルギーが必要で、さらに、これらを反応させてBHETを合成し、そして重合、さらにボトルグレードにするには、固相での重合とまだまだ大変なエネルギーが必要ですから、帝人方式はもともと効率が悪いことになりますね。

B君:それはそうだろう。最近の方法だと、すでに記述したように、PTAとEGからBHETを合成し、これを原料にする方法が一般的で、DMTを経由すると効率が下がるのではないか。

C先生:恐らく、次に述べるアイエス法との直接的比較を避けたのではないか。あちらはかなり分かりやすい表記法になっているから。優劣が一目瞭然になるのを避けた?

A君:話がでたからアイエス法ですが、LCAのエネルギー関係のデータを出します。
 結論は比較的分かりやすくて、こんな風です。

バージン原料のケース
 原油採掘−石油精製−PET樹脂素原料製造(PTA、EG)−輸送 27.9MJ/kg
 このほかに原料として 34.8MJ/kg
 合計して62.7MJ/kg

リサイクルペットボトルが原料のケース
 市町村回収−ベール輸送−解重合−精製−PET樹脂  28.3MJ/kg

 リサイクルペットボトルの負荷はゼロだと仮定すれば、合計28.3MJ/kgでPET樹脂ができる。すなわち、非常に大雑把に言えば、原料として使われる石油分だけは、確実に節約できる。

C先生:極めて分かりやすい。そんなものではないか、と思われるデータだ。結論的には、マテリアルリサイクルの環境負荷の低さは、やはり魅力だ。精製度を多少上げてでも、マテリアルでよい部分はこれで行きたい。マテリアルリサイクルしたPET樹脂でもできるペットボトルの技術開発も必要なのではないか。ケミカルリサイクルによるPET樹脂を使ったボトルtoボトルだが、超軽量ボトルなどには必要かもしれないが、もともと、現在のペットボトルは過剰品質の部分があるので。

A君:残りの部分は、次回に。