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    惑星の写真は腕前よりお天気次第   
        木星、土星、火星(新規追加) 08.18.2018 08.23追加

               




 今回は、夏休みバージョンです。ひょっとしたら、私と同じようなことを考えておられるほぼ同年代読者がいないとも限らない、と思って書いています。

 現在のところ、様々な状況変化によって、かなり自由時間が不足気味ではありますが、こんな状況が何年も続く訳はない。自分だけの時間ばかりになったら、その時間をどのように使うのか。それが問題になるに違いない。そのためには、自分の趣味を深めておこうと思って、2つの領域をより高度化することにしました。こんな意思を固めたのは、今年の1月のことでした。

 第一の領域は、「良いオーディオ装置で良い音楽を聴くこと」。こちらについては、特に、腕前などが必要となるところではないので、元々技術屋であるためか、それほと面白くは無いのです。高価な装置を買えば、ある程度は上質な音になりますが、単にそれだけ。実は、部屋自体が最大の再生装置なのですが、それをいじる訳にはいかないのが普通です。そこで、いかに安価なスピーカーで良い音を出すかにもチャレンジすることにしました。まだ完成しておりませんが、スピーカーと箱(切断済みの板)をキットで購入し、たった8cmのスピーカーでどんな音がでるのか、これをこの夏休みの課題にしたのですが、どうも組み立てる時間が不足のようです。いつ完成することやら。多分、正月休みのことになりそうです。

 第二の領域は、これまでの旅行先の風景中心でやってきました写真撮影ですが、海外旅行もそろそろ限界で、ドライブ旅行としては、最後のアイルランド行きを今月末から敢行する予定なので、これでほぼ終了です。そこで、「写真関係ではもっとも技術的に難しい領域だと言われている天体、特に、惑星の写真を取ることにチャレンジしよう」と決めました。惑星なら、居住地である東京・目黒区からでもなんとか写真になるので。実は、それ以外にも、後述のように普通ではないカメラを組み立てて、鳥写真も撮影しています。

 考えてみると、中学生のころから、兄の影響か、写真小僧でした。自分で引き伸ばしなどをやっていました。しかし、さらに考えてみると、大学院生時代、修士1年のときに、日立製の透過型電子顕微鏡が研究室に入ってきて、日立の那珂工場に研修に行かせてもらい、かなり多様な写真を撮影し、電子線回折像の解析などに熱中しました。また、米国の留学から帰ってきた後に、共通機器でしたが、高分解能の走査型電子顕微鏡が導入され、その管理者になったもので、4万倍ぐらいの倍率で美しい写真を取ることにチャレンジして、なんとかできるようになりました。走査型電顕は、他の光学系でも同じですが、やはり軸合わせが鍵であることを悟りました。

 天体写真をなんとか上手に撮影できるようになりたい、と思ったのは、今年の1月31日の皆既月食の写真が、Canon 6Dと400mmの望遠レンズ+エクステンダーx1.4の組み合わせでは、ほとんど撮影出来なかったからです。

 写真家の遠藤湖舟さんとは、東工大の社会人コースで講師を勤めたことがキッカケで知り合いになりました。遠藤さんの撮る月の写真に比べて、分解能が全く悪い写真しか撮れないので、どうしたら良いかを相談して見ました。

 その答えには驚愕しました。「カメラのレンズは分解能が悪いから、望遠鏡に変えるべきだ」。さらに追い打ちがありました。「いまさらフルサイズの一眼が最高だと思っていたら、大間違い」。持ち歩きが容易な望遠カメラが欲しければ、Nikon1にアダプターを付けて、Nikkorの望遠レンズを付ければ、超小型超望遠カメラができる。

 遠藤さんのお薦め通り、Nikon 1の中古品を2台も買い込み、アダプターは新品、レンズはNikkorのAPS用のズーム70〜300mmも中古で購入。全部で6万円弱で、810mm相当の超望遠カメラを作りました。

 これは、現在、鳥用のカメラの主力として活躍しております。このところ、あまり鳥の写真を撮影しません。夏は、鳥写真は不作なのです。

 さて天体ですが、すでに述べましたように、月の写真をシャープに取りたい、これが最大の動機でした。月は、天体写真の最初のターゲットであり、これは多くの場合に共通のようです。そして、最後はまたまた月で終わるという方もおられます。被写体として、それなりに複雑で魅力的なことが理由かもしれません。

 まあ、何はともあれ、望遠鏡というものを買ってみないと。2月3月は、鳥、特に、桜などの花に来るヒヨドリ、メジロなどが可愛いもので、そちらに夢中になっていて、しばらくは、時間が経過しました。そして、桜も間もなく終わる時期になった、と思って、色々とチェックしてみたところ、サイズと価格の割には、かなり良い分解能であるという定評があるCelestronのC90MAKを購入してみました。

 以下、購入記録に沿って、若干の感想です。

3月28日 Celestron C90MAKを購入 口径90mmですから、小さいです。

 この望遠鏡は、普通のカメラ用の三脚にも乗ります。月の写真がちゃんと撮れました。分解能も高く、月だけであれば、なかなかの性能です。カメラは、主として、Nikon1をつないで使っていました。センサーが小さいので、拡大率が大きいのですが、それでもちょっと不足気味。そこで、中華製の安物のバーローレンズを買い込みましたが、むしろ、接眼レンズを付けて、スマホを使ったコリメーション法で写真を撮るべきだったような気がします。

 しかし、口径が90mmしかない反射望遠鏡ですので、絶対的な性能は勿論大したことがないのですが、それでも、マクストフカセグレン方式なので、焦点距離は1250mmもある上に、分解能などの面で、かなり優秀な鏡体のようです。シュミットというお店のWebサイトでは、この鏡筒で、直焦点撮影で、土星の環のカッシーニ間隙が映っている写真が撮れることを示しています。カメラは半導体(スマホのカメラのセンサー)で、ビデオを撮影して、スタックするという方法を採用していますが。

 そこまで行くのは、付属品の価格ば馬鹿にならないので、なかなか大変でしょうが、月の写真をかなりの拡大率で撮影するのであれば、十分かと思います。2.5万円以下で買えますし、かなり極限的な写真が撮れるので、普通の望遠レンズを買うよりも面白いかもしれません。遠藤湖舟さんがおっしゃることはやはり正しいと思います。天体は、望遠鏡で撮影するべきです。

 この時点で使っていた天体用三脚は、昔から持っていたVixenのGP2という天文用のものでしたが、赤道儀としての機能は使えない状況だったもので、微動装置を買い込んで、使っていました。しかし、それが問題。機械的な強度が不足している部品なので、グラグラでした。

 この鏡筒は、現時点でも所有していまして、CanonのKissの古いものに付けて、動かない野鳥の顔写真などを撮影しています。

 ウミウのアップ写真 (大田野鳥公園にて)


4月27日 Celestron C8AL-XLTを購入

 本格的な趣味というには、どう考えてもC90MAKでは寂しい。ちょっと大きめの鏡筒を買ってみるか、ということで、やはり、CelestronのC8AL−XLTを発注しました。お値段は、税込み10万円をわずかに切るものでした。かなりお買い得だと思います

 到着してみると、まるで大型のバケツ。これなら、相当行けるだろう、と思ったのですが、実は、甘かったのです。

4月29日 ASI290MC 1/3インチ裏面照射センサー カラーカメラ購入

 最終目標は、やはり、木星、土星、それに、7月31日地球に大接近した火星の写真を撮ることですので、惑星用の道具を買い込まなければなりません。そもそも、目黒なる場所で天体写真を撮るのですから、光が強い惑星と月ぐらいしか、まともな写真になる訳はないのです。

 惑星の写真のとり方とは、実は、写真を撮るのではないのです。ビデオを撮影して、良く撮影できたコマを重ね合わせて、一つの画像を作るソフトを使うのです。

 それには、風で揺れるような三脚では不可能であることがすぐに証明されてしまいました。微動装置の強度が決定的に不足していることが明らかでした。風がちょっとあるとグラグラと揺れるのです。それに、惑星の写真の場合には、そうでなくても、惑星の像が風の影響で揺れる(実際には、風の影響で空気の屈折率が変化するため揺れる)ので、撮影ソフトを使ってパソコン画面で操作をするのですが、画面上で、惑星が右往左往するので、これに三脚の弱さによる揺れが加わると、「絶対不可能」という状況であることを悟りました。

 さて、それでも、もしも完全無風状態であれば、なんとかなるかもしれない、などとしばらく様子を見ることにしました。

 撮影方法を元に戻して、カメラで高速シャッターを切るという方法はどうだろう、などと試みてみましたが、5月13日にFacebookにアップした木星の写真が最良でした。実にお粗末。



 それでも、木星の縞と大赤斑と呼ばれる赤い部分はあるようですね。


5月14日 TeleVue パワーメイトx2.5

 それなら月の写真をさらに綺麗に撮ってみたいということで、これまで使っていた中華製のバーローレンズを、定評のあるTeleVueに変えたりしておりました。しかし、結果的には、それほど変わらない状況でした。やはり、赤道儀を大型のものにするしかない!


6月2日 赤道儀 Celestron ADVANCED-VX

 ということで、何を買うべきか、色々と検討したのですが、やはり、コストパフォーマンスを考えると、Celestron。いささか、評判は良くないのですが。

 発注して、しばらくして到着。さすがに重たい。バランス用重りを加えると、総重量25kg。

 始めて、使ってみると、評判が悪い理由が分かりました。英語が原本のマニュアルの日本語訳が完璧ではないのです、肝心な情報のかなりの部分がすっぽり抜けていて、訳されていないのです。加えて、言葉の定義でよく分からないものがあるのです。特殊な天文用語らしくて、よく分からない(とその当時は思ったのですが、まだ、望遠鏡の素人だったことの証明でした)。要するに、素人向けでは全くない、という製品でした。それでも英語のマニュアルと格闘をして、なんとか普通に動くようになりました。製品としては悪いとは思いませんので、もし、同じものをお買い担った際には、ご相談下さい。使用ノウハウを伝授いたしますので。

 製品付属のコントローラあたりは、ちょっと怪しいけど、国産だと2倍ぐらいするので、まあ、妥協するしかないのです。


6月10日 フリップミラー

 木星は、かなり明るいのでなんとかなるのですが、土星を視野に入れようとしても、渋谷方向にある北極星が見えないことが当たり前の物干し天文台では、望遠鏡の極軸合わせがかなり難しいことが分かりました。地球の自転と同じように望遠鏡を回すのですから、回転軸が正確に空の北極を向いていなければならないのですが、かなりしっかり調整したファインダーの真ん中に目的の星を入れても、軸合わせの精度が今ひとつなので、望遠鏡本体の視野に入って来るとは限らないのです。

 土星の写真が撮れるようになったのは、まだ少々先のことになりますが、ミラーで光を分岐して、接眼レンズで位置合わせができるようにフリップミラーなるものを買い込みました。

 多少、目的の惑星を視野に入れるのが楽になりました。


6月16日 ADC入手

 色々とWebを探ってみると、高品位な惑星写真を撮影するには、空気の屈折率を補正するADC(Atmospheric Dispersion Corrector)が必須であるとの記事がいくつも見つかりました

 空気は上空が薄く、下層が濃いので、その層を斜めに降りてくる光は、上層と下層の空気の屈折率の違いによって、プリズムを通したことと同様の状況になり、色が別れてしまうのです。その屈折率の違いを補正する機器がADCですが、たしかに、星の上と下が赤・青になっているのを補正することができます。ただ、それをやると、星の像も動いて視野から出てしまうので、暗い星の場合には、かなり難しい操作になりますが。

 そのお陰で、6月17日には、木星の写真がこの程度まで撮れるようになりました。



 実は、ここから先は、あまり進化がありません。6月25日にC8鏡筒ではじめての土星が撮影できました。この程度のものですが、土星の環を分けているカッシーニ間隙が撮影できれば、一つの目標だと思っていたので、感激した瞬間でした。



 土星の写真としては、7月2日にまあまあの像が撮れましたが、撮影ソフトの設定がよく分からない状況で、ノイズが乗っています。





 木星の写真は、7月8日に大赤斑が写りました。画像も若干進化しました。



 同じく、7月8日に撮影していたビデオが11本ほどあったのですが、そのうち、2本がかなりまともな画像になりました。





 画像の荒れが目立つのですが、多くの方々は、数枚の画像を重ねることによって、荒れを抑えるという技を使っておられます。まあ、そのうち、そうしないとダメそうですが、現時点では、まだ手を出しておりません。


7月18日 マイクロフォーカサー入手 実は、現在の鏡筒を変えようと思っていて、次の鏡筒だと必須と思われるので、先走りで入手。

 実は、ここから先は、あまり進化がありません。

 これはという火星の写真は、まだまだ未完のままで、7月19日の夜のこの画像が、今の所、最良のままです。これから、火星に集中して撮影をしたいところなのですが、果たして、これからまずますの状況が続く9月半ばすぎまでにどのような像が撮れるでしょうか。7月の火星は、非常にコントラストが悪かったのですが、このところかなり細かい模様が見えるようです。7月までは、火星を猛烈な砂嵐が襲っていたからだと言われています。そんなことがあることも、初めて知りました。



7月23日 Celestron HD800鏡筒に変更

 近い将来、恐らく、月の写真をかなり撮る状況になると思っていまして、現行機種のC8の欠陥がなんとなく気になってきました。それは、ピント合わせの際に、ミラーが動くのですが、どうも煽るような動きをするようなのです。これは、ミラーシフトと呼ばれている現象のようで、画面全体にフォーカスが合った状態にはならないようなのです。
 惑星は視野の真ん中だけですから、問題はないのですが、月を広範囲に撮影するのなら、ミラーシフトという欠陥の無い新たな鏡筒に変えておくのが良いのではないか。そう考えて、同じくCelestron製の8インチの高級品、HD800に買い換えることにしました。これまで3ヶ月使ったC8−XLTは、京都の友人に譲りました。より大きな鏡筒にすることも考えたのですが、10kgを超す鏡筒を持って階段で屋上に上がることも、今は良いとしても、そのうち大変になるだろう、と考えて、鏡筒のサイズは変えませんでした。

7月29日 土星の像が進化

 これまでの土星の像よりも、全体的にぼんやりしていますが、C環と思われる半透明でボンヤリしたもっとも内側の環が撮れているようです。これ以上の像が撮れるのは、もっぱら空気の状況次第でしょう。そのような好条件は、多分、1ヶ月に1日ぐらい出会えないでしょう。8インチでもこの程度。もしも、さらに大きな望遠鏡を使うと、広い範囲から光を集めることになるので、空気の屈折率の影響はさらに大きくなります。大きさ、価格、撮影可能日な数などを考慮も考慮して、やや分解能の高い8インチ反射望遠鏡を人生の友とすることにしました。



現状のまとめ

 要するに、惑星の写真を極めようとすると、何が必要なのか。それは「天気待ち」の達人になるしかないことが、5、6、7月の3ヶ月で学んだ最大のことでした。雨・曇がダメは当然。しかし、風がこれほどの敵だとは思いませんでした。一方、月の写真は、通常のカメラで撮影しますので、風の影響はほぼありません

 Windyと検索すると出てくるWebサイトに現時点での風向風速情報があります。良い惑星写真を撮るには、3000m上空の風速が10m以下であることが望ましいようです。今、8月18日の夜9時前ですが、なんと風速が10m以下です。望遠鏡を用意して、火星を撮るか!!!  昨日までは、北海道東方にある前線を伴った低気圧のために、東京の上空3000mでの風速は30m近い風速でした。これでは、惑星の外形がグニャグニャして、とても良い画像にはなりません。

 要するに、惑星写真は雨や曇でダメなのは当然として、いくら晴れても風が問題です。特に上空の風が強いと、ダメなのです。要するに「待ち」が重要なのマインドになります。これは環境を重視するという発想と似たところがあります。鳥の写真撮影もやはり、「待ち」の達人向けの趣味です。相手が、まさに環境の一部ですから、当たり前ですが。それだけに、両分野とも、良い写真が撮れると嬉しいのです。しかも、その快感が過去の良い写真を見るたびに蘇るので、天体写真や鳥写真を続けている人が多いような気がします。

 いずれにしても、長く楽しめる一つの趣味を見つけたと確実に言えると思います。技術的に難しいことにチャレンジするタイプの方に、特に、お薦めしたいところです。しかし、鏡筒と赤道儀以外の光学部品の出費が鏡筒、あるいは、赤道儀の単独の価格を上回りますので、ある程度の覚悟が必要です。ただし、光学系の部品の寿命は、電子機器類と違って、ほぼ永遠ですので、長く付き合える投資対象ではあります。寿命が数年程度である消耗品的部品は、恐らく、カメラだけでしょう。カメラと言っても、その実体は、スマホ用カメラのセンサーを使ったビデオ撮影機ですが。

追記:8月18日の夜、火星を狙ったのですが、薄雲がでていて、またまた星の外形がグニャグニャと動き、まるでダメでした。なかなか良い条件に巡り会えません。それに、このところの地球温暖化による異常気象で、天体写真はますます難しくなるような気がしています。


追加(08.23.2018)

 やっと火星のそれらしい絵が撮れました。これまで撮影できなかった理由は簡単でした。これまで付けていたUV/IRカットフィルターを外しただけです。というのは、どうも、火星の表面の模様は、どうやら赤外域の波長に依存するところが大きいらしい、という情報を得たからです。まさに、これまでの苦労はなんなーーんだ、という感じで、模様が出ました。