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  日本の人口、史上初めて減少 12.25.2005
     



 厚生労働省が12月22日に公表した人口動態統計の年間推計で、05年に生まれる赤ちゃんの数が、死亡した人の数を下回り、日本の人口が自然減に転じる見通しであることが分かった。これは、1899年に今の形で統計を取り始めてから初めて。

 日本人だけだと1万人、日本に住む外国人の自然増減を含めても4000人の減少。少子化を背景に秒読み段階に入っていた人口減の開始が一年早まったのは、今春のインフルエンザの流行の影響だという。


C先生:来年だろうと思われていた人口減が2005年に始まった。今年の前半では、男性の減少は始まるものと予想していたが、全体でもとうとう人口減だ。

A君:現在人口は1億2800万人弱。05年生まれの赤ちゃんは前年比4万4千人減の106万7千人で、過去最低を更新。人口千人あたりの出生率も8.5と前年の8.8から落ち込んだ、ということのようです。

B君:一方、死亡者数の方だが、前年比4万8千人増の107万7千人と1947年についで多く、3年連続で100万人を超した。

A君:今春のインフルエンザで、約2万人が死亡したのが影響しているのだそうです。やはりインフルエンザですか。鳥インフルエンザも怖そう。ただし、人から人への感染が起きるようになったら。現在は、怖くない。

B君:死亡者が増えるのは仕方が無いのだ。今後団塊世代が90歳代に入る2040年ごろには、年間死者が170万人になるという。

A君:朝日新聞の解説のトーンは、「対策抜本的見直しを」。子どもが減れば、教育機関は今ほど必要なくなる。すでに各地の大学で淘汰が進んでいる。経済全体のパイは縮小するかもしれないが、生産性を高め、所得を伸ばせば、生活水準を維持できる。そのためには、技術革新や労働力の質を向上したり、高齢者や女性の就業率を高めることが不可欠。
 一方、社会保障分野では、給付減や負担増などのマイナスは避けられない。スウェーデンやフランスなみの合計特殊出生率を1.7〜1.8程度に上げられれば、人口減のペースは遅くなり、構造調整に時間を掛けられる。効果の乏しかったこれまでの少子化対策を抜本的に見直すことが不可欠。

B君:この「少子化対策抜本的見直しが必要」の部分は、我々の見方と多少違うな。

A君:コメントを寄せているのが、阿藤誠・早稲田大学人間科学学術大学院特任教授。「人口減を楽観視する人が居るが、せいぜい30年後のことしか考えていない。キャリアを積んだ女性が30代でも子どもを産みやすいように、保育所の整備などの環境づくりや、仕事と家庭のバランスを重視する社会的な合意を作り上げる必要がある」。

B君:経済成長をするには国力が必要で、国力の源泉は人口にあり。というのが伝統的人口増加論。現在の人口増加論は、社会保障分野が崩壊するから、人口を増加すべきだ。このいずれをも否定するのが我々の立場

A君:経済成長だけが問題ではない。暮らしやすい社会を実現すれば、それなりに子どもは増える。さらに、社会保障分野は、崩壊しても仕方が無い。なぜならば、これまでの政策は、人口をはじめとしてすべて右肩上がりの仮定で作られており、そんなことが成立しないことは、10年以上前から分かっていた。これまで政権が対応を取ってこなかったツケが回っているが、社会保障制度を維持するために人口増を狙うなど、ということは、本来の対応とは違う。多少人口を減らして、本当に暮らしやすい社会とはどんなものかという議論が必要。

B君:これまでの政府が、大きなトレンドを考えた対応をしないで、国債を大量に発行することに依存した政治をしてきて、それを国民が容認してしまったのだから、まあ、国民の責任か。

A君:ただ、そんな危機感をメディアは伝えて来なかった。国民レベルの正直な感想は、「そんなの知らないよ」。

C先生:小泉さんは、消費税を増税するのがどうしてもやりたくないようだが、国民の短期的な人気ばかり気にしているようにしか見えない。国家の長期的な展望を欠いている。隣国に対する態度も同様で、早く小泉政権が終わり、その後、優れた政権ができることを期待するしかない。

A君:最近の耐震偽装の事件への対応を見ていても、「自治体の審査力が不足しており、国の責任を果たしていない」、というメディアの取り扱いが多い。これが、小泉政権の目指す「小さな政府」と矛盾することであることをメディアはどこまで国民に伝えようとしているのでしょうか。

B君:我々の立場は、「日本という国に小さな政府は似合わない」。中規模政府が良いのではないか。なぜなら、隣の家が喧しいからといって警察に電話を掛けることは、大きな政府が必要なことだ、と誰も思っていない。究極的な小さな政府を目指すのであれば、「自分の弁護士に電話をして、隣家の弁護士に連絡してもらう」、ということが自然に思えるようでないと。しかし、そうなれば、これはこれで相当なお金が掛かるし、金持ちだけが有利な社会になってしまう。

C先生:今回の人口減であるが、世界的には、すでに人口減に入っている国も多い。さらに、今後、ほとんどすべての国が人口減になる。日本という国は、単に、中国に比べて20年、インドと比較して40年早いだけなのだ。日本の本当の問題点は、減少の速度が速すぎるということで、それは、現代日本が暮らし難いことを意味している。これを改善する必要があるだけなのだ。

A君:世界全体の人口減が起きるというカーブを示します。これは、国連の人口予測なのですが、これまでも、中位予測は当らないで、下位予測に近いところに落ち着いています。となると、2045年に77億5千万人というところをピークにして、それ以後は、世界の人口も減るものと思われます。




図1:国連による人口予測

B君:それぞれの国の人口の動向を見てみると、アフリカの人口増加が突出していることが分かる。ウガンダが例になっているが、本当にこんな速度で増加してしまったら、食糧の供給が不可能だと思われるが。



図2:各国の人口予測

A君:実際、そんな速度では人口は増えないのではないでしょうか。やはり、出生率の動向も見ないと。次の図が、各国の出生率の変化です。


図3:アフリカなどの出生率推移

B君:やはりウガンダの出生率は、余り低下していないようだ。同じアフリカでも、地下資源が豊富なボツワナは、かなり出生率の低下が見られる。

C先生:出生率は、途上国においては、まずは乳児死亡率と相関があり、そして経済発展が始まると、一人あたりのGDPと関係しているという個人的な感覚を持っているのだが、そのような情報は出せるか。

A君:それなら乳児死亡率の図を次ぎに出しましょう。出生数1000件に対して、1年未満で死亡する赤ちゃんの数です。日本でも、1900年頃には、200近い値だった。ウガンダの130に驚くことは無い。中国の1960年の値は、例の「大躍進」の悪影響、すなわち、飢饉の影響では無いかと思うのですが。


図4: アフリカなどの乳児死亡率

C先生:出世率が非常に高い国には、「子どもが多い方が生活が楽だから」という現実がある。例えば、エネルギー源である薪を探して採取してくるには、人力がものを言う。川に下りていって水を汲むのも同様。子どもにこんな仕事をやらさるとき、やはり子どもの労働力を当てにしている。となると、子どもに予備が必要だということにもなる。ところが、乳児死亡率が高いものだから、かなりの数の予備を必要とする。これが出生率の高さの理由。

A君:ウガンダの出生率が1990年あたりから多少下がっているものの、いまだに45ぐらい。この値は、日本の5倍。一方、乳児死亡率は、最新のデータでも80を超している。こちらは、日本の25倍ぐらい。

B君:偶然かもしれないが、乳児死亡率が100をきると、すなわち、10%を切ると、多少出生率が下がるという傾向があるのか。

C先生:10人に1人ね。まあ、そんなところかもしれない。20人の誕生で1名の死亡ぐらいになると、かなり確実に子どもを確保できる感じを持つだろうから。

A君:出生率の変化ですが、ボツワナの傾向は、非常に特異的ですね。一旦落ちた出生率が1990年を過ぎると急激に立ち上がっている。

B君:エイズだな。ボツワナという国は、1986年ぐらいからエイズのために急激に人口が減っている。それが乳児の死亡率にも影響しているのではないか。

C先生:乳児死亡率が40程度、すなわち、25人の誕生で1名死亡以下ぐらいになると、余程のことがない限り、再度上昇することは無いので、これは、余程のことが起きたのだろう。まあ、エイズだというが確実だ。

A君:ボツワナも1990年までの動向は、中国と同様だったので、エイズがなければ、恐らく中国と同様の経済発展ができたのではないでしょうか。

C先生:いやいや、ボツワナの1人当たりのGDPは、中国より上だ。しかも相当に。今、タイと競っている状態だ。

図5: 一人あたりのGDPの推移

A君:なるほど、地下資源は偉大だ。

B君:先ほど乳児死亡率が40程度というところがGDPでどのぐらいで起きるのか、ということだが、どうやら$2500〜5000といったところなのではないか。タイだと1985年ぐらい。中国は、いささか為替レートなどの統制が厳しい国なので、ずれてしまうが。

C先生:もしそうだとすると、平均余命が70歳になるのとほぼ同じ。エイズなどの影響が出た国は例外的になってしまうが。

A君:まず、発展途上国の一人あたりのGDPを$3000に上げよう、というアプローチが正しそうですね。そうなると、出生率もそれから10年程度で下がり始める。

B君:ウガンダもあと10年ぐらいでなんとかならないものだろうか。

A君:今のペースだとあと20年掛かるかもしれない。

C先生:さて、これが途上国の人口増大の問題の解決法。ところで、日本のような出生率が低下しすぎて困ったという国への処方箋は何かあるだろうか。

A君:次の図に先進国の出生率の変化を示します。フィンランド、スウェーデン、オランダ、アメリカなどを含みますが。

図6:先進国の出生率の推移

C先生:多少見にくい図ではあるが、1960年当時にもっとも出生率が低かった国が、この中ではスウェーデン。人口1000名あたりで15程度というところ(日本は昨年で8.8)。それが、1980年頃までに徐々に低下して11ぐらいまで下がってしまう。そこで、対策を強化して、一時的に15ぐらいまで出生率が復活するのだが、またまた出生率が低下してしまう。

A君:日本の状況は、1960年には17ぐらい。それから1973年ぐらいまで直線的に伸びて20弱に到達。それから、非常に急速に低下して、1990年には10に到達。そして、それから漸減状態だったのが、今年になって、また大きく減った。

B君:イタリアが同じような傾向を示している。若干緩やかではあるが。

A君:それに対して、アメリカは、高い出生率を保とうとしていることが分かる。

C先生:アメリカという国は特殊な国。人種が様々なことが一つ。もう一つは、移民が多いこと。貧富の差が大きいこと。

A君:さて、これからの日本はどうすべきか。子どもは、持てたら持とうと思うのかどうか。

B君:経済的な理由なのかどうか、という意味だな。

C先生:最近の若者は、目前の利益を優先するために、子どもを持たないという方向に向いているような気もする。

A君:だとすると、子どもを持つことの楽しさというか、人生の楽しみ方から教えなおさないと駄目ということですか。

B君:それはそうだろうが、そこは人生を楽しめるような社会になれば、自然に行われるのではないか。

C先生:高齢者、女性の力を活用して、より文化程度の高い社会を構築し、さらには、短期的な経済的利益を得たものに対する税制などを強化して、再びより平均的な社会を目指すことが重要なのではないか。女性の活力の高めるには、育児に対する考え方を変えると同時に、保育所などの社会的な制度を充実される必要がある。

A君:日本では教育費が高いというもの問題。スウェーデンなどでは、教育費は無料だったのでは。

B君:確かそうだ。これもなんとかしないと。それには、やはり国立大学などの授業料も下げないと。慶応出身の大臣が多いから無理か。

A君:ひとり親世帯への優遇制度にも大きな違いがありそうだ。

B君:日本人も離婚が増えているから、ひとり親世帯への社会的な支援体制を増やさなければならない。

C先生:米国のような差別や貧富の差のある国を実現すると、国内での貧民層の出生率が高くなるから、全体として人口は減らない。米国の経済は、少数の優れた人間が支えるという思想で作られている。実際のところ、ビル・ゲーツの所得はすごい。
 日本が米国のまねをしたとしても、日本の産業は、平均値の優れた中流が支えるということが最大の特徴なので、経済的な活力は下がるだけだ。むしろ、スウェーデン型をやや遠い時点での目標にすべきではないか。貧富の差の少ない社会を実現することが、日本のような国では、発展の原動力になりそうな気がする。

A君:結論は、小さな政府を目指すのは、ここ数年で全くの無駄を切ることも目的にして実行し、その後は、中規模の政府を目指すことが、人口減少の速度をやや遅らせることになるのでは

B君:ただ、日本の人口は、300年後には、3000万人で十分。世界の人口も300年後には、30億人以下にするのだ。

C先生:地球の能力を考えると、300年後の人口は、20億人台が良いだろう。化石燃料を使い切った人類が、平和に、かつ、文化的・知性的に生活をするには、そのぐらいの人口が良いだろうから。