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  環境超長期ビジョンとは  02.24.2008
      その1 日本の人口と環境対策



 Googleで、”環境省 超長期ビジョン 本文”と検索していただくと、こんなページにぶつかる。
http://www.env.go.jp/policy/info/ult_vision/
 このページの下の方に、本文というものがあって、それが、まさに超長期ビジョンの報告書である。
 この文書を作成するにあたって、1年半という時間が必要だったが、その内容は、余り先鋭的だとは言えない。かなり、他省庁に気を使った文章になっている。
 それはそれとして、現在、さらに細かい部分の検討を個人的に続けている。今回のHPは、そのご紹介の第一弾で、日本の人口と環境対策。


C先生:この超長期ビジョンだが、検討をしていた1年半の間に、世界の環境の事情が、例によって温暖化の影響をもろに受けて、相当に変わってしまった。

A君:平成18年6月29日に第一回が開催されていますが、この年、2006年の秋には、スターンレビューがでて、その後、アル・ゴアの「不都合な真実」、そして、IPCCの報告書のサマリーが2007年には次々と出た。

B君:そして、当時の安倍首相が、2007年5月24日に「アジアの未来」なる会議で、「美しい地球50」という演説をぶつ。これが、安倍首相が検討を要請した「環境立国戦略」(2007年6月1日)にも含まれることになった。

C先生:そんな荒波に揉まれた割には、余り先鋭的なことを書くと、また、他省庁からのバッシングに嵐になるということで、比較的穏やかな表現になっているのが、この報告書の特徴なのだ。

A君:しかし、この報告書が採用した方法論は、そんなに悪いとは思えないですね。
 社会・経済の情勢から検討をはじめて、長期的に視点から、環境をとりまくリスクの記述を行い、そして、2050年に目指すべき日本と世界の環境像を描く。そして、その環境像に到達するためへの航路を、バックキャスティング的に描く。

B君:そもそも2050年などという遠い未来を取り上げたのだから、現状からの延長線上にある訳も無い。しかも、この21世紀というものの意味は、20世紀の100年間とは全く違う。地球限界と人間活動をどうやって整合性を取るか。様々な地球レベルでのリスクが降りかかってくるなかで、人類はどのような戦略を取るべきか、という世紀なのだ。20世紀は、経済的な発展を最大限に目指しつつも、環境への目配りを行う必要があるという世紀だった。

C先生:このところよく言うのだが、「経済と環境」が20世紀型なら、「環境と経済」が21世紀型

A君:21世紀は、地球限界という名前の環境制約のもとで、それと整合する経済的な発展をどこまで目指すことができるか、という世紀で、多くのものが右肩下がりになる。

B君:世界全体でも、21世紀の中期には、人口は減り始めると予測できる。

C先生:国連の人口予測では、2050年には、90億人というのが中位推計値になっているが、この値は余りにも多い。2000年のミレニアムサミットで合意されたミレニアム開発計画が旨く行けば、世界の貧困や教育の状況、さらには、乳幼児死亡率なども改善されて、出生率はかなり低下するものと思われる。

A君:それが下位予測値である2045年に78億人を目指す人口の動向。実際のところ世界の経済発展、特に、中国とインドの経済が好調なものだから、これらの国の人口がまずまずの時期にピークを迎えそうですね。中国だと2020年がピークで、それから先は、例の一人っ子政策のために、高齢化のスピードが相当に速い。そして、世界最大の人口をもつ国というポジションはインドに奪われるのが2030年ごろ。そのインドでも2040年にはピークになって、それから先は人口減。

B君:人口は勿論減るのだが、消費量、例えば、基礎素材である鉄の消費量などは、残念ながらその後も増え続ける。とは言え、21世紀の末に、世界の人口が70億人になるとしたら、世界の鉄の備蓄量は700億トンあたりで収まるのではないだろうか。

C先生:人類が20世紀に生産した鉄の総量が、恐らく400億トン前後ではないか。そのうち、現在残っている鉄の蓄積量が半分だとして、200億トン。となると、まだ500億トンぐらい足らない

A君:現在粗鋼の生産量が世界全体で13億トン程度だとしたら、このペースで40年以上生産を続けても、世界に充分な鉄が行き渡るかどうか。

B君:鉄鋼の生産量がいつピークを迎えるのか、いずれにしても、資源的な問題もあるので、21世紀中にはピークになるのだろう。

A君:21世紀は、ストックの時代。ストックが行き渡れば、消費量もその後は、減少する。

B君:エネルギーはどうだ。一人2トン(石油換算)あたりが抑えどころ。日本は、現在4トン。韓国は4.5トン。米国は8トンといったところだが。80億人が生存するためには、年間、160億トン(石油換算)のエネルギーが必要ということになる。

A君:日本人は、世界の5%ぐらいのエネルギーを消費している。日本で、一人4トンで、人口を1億2千万とすると、日本全体の消費量は約5億トン。世界のエネルギー消費量は、現在、100億トンといったところ。

B君:いかに、途上国の一人当たりのエネルギー消費量が少ないかということが分かる。実際のところ、ベトナムあたりでも0.2〜0.3トン/人。

C先生:資源・エネルギー消費が、21世紀においてどうなるのか、その検討は後日またやることにして、本日は、まず検討のもっとも基礎となる人口の問題。世界人口はすでに述べたような状況だが、日本の人口は、ご存知のようにすでに右肩下がりの社会になっている。この右肩下がりという現実を踏まえつつ、どのようなメンタリティーを維持するのか、大げさに言えば、右肩下がりをどのように克服するのか、という大きな問題を抱えてしまった。

A君:右肩下がりを克服するには、やはりなにか上昇するものが必要なのか。もしも、そんな目標が必要ならば、「質的な価値」しかありえない。

B君:人口が減るのは、良いことだ、というメンタリティーを持つことも、「質的な価値」の一つ。

A君:しかし、日本の人口の動向も、都道府県による違いが非常に大きい。余りにも人口が減りすぎると、「質的な価値」を見出すことが難しい。

B君:まあ、その通りだ。東京のように混んでいるところだと、人口が減るのは価値になるが、もともと過疎地だと、人口が減ることが「質的な価値」にはなりにくい。

A君:まずは、日本の都道府県別の人口の推移を知ることが先決ということですか。

B君:人口問題研究所というところがある。http://www.ipss.go.jp/
 ここから、日本の人口予測が発表されている。表紙からリンクをたどると、「日本の都道府県別将来推計人口」平成19年5月、という報告書を見つけることができるだろう。

A君:そこにエクセルの表などもあるので、様々な人口関係の情報を得ることができる。

B君:まずは、都道府県別の人口指数の推移予測。2005年の人口を100としたときの相対的な変化。2035年までの予測データ。



図1:2035年までの人口指数の推移予測 人口問題研究所による。


A君:もっとも減らないのが、なんと沖縄県なんですね。そして、次が東京都。東京都は、2020年がピークで、それからは減少の見込み。神奈川、滋賀、愛知がそれに続く。

B君:いずれも2020年前後がピークで、その後人口減少。これは、中国の状況と似ている。日本の都市部は、その気になれば、中国程度のメンタリティーを保てるということだろうか。

C先生:その次のグループが、千葉、埼玉、福岡、ということで、大都市でも、大阪の落ち込みが飛び抜けて激しいことが分かる。新しい府知事ができたのだが、5兆円と言われる借金があったり、大阪に本社があった企業が東京との両本社制にしたり、どうにも落ち込みが激しい。

A君:大阪ぐらいの人口があれば、多少の人口減であれば、様々なメリットがあるはず。この提案を後ほど行いますか。

B君:結論は見えているな。利潤優先型の関西流のビジネスが、世界的に見るとそろそろ成り立たくなっている、という自覚がまずは必要なのではないか。

A君:だからといって、東京型のビジネスモデルだって、アメリカ流であれば沈むだけ。ドルとユーロ、それに円の為替レートの動きを見れば、沈み行く大陸であるアメリカ、それにつられて沈没する日本、という構図が明らか。ただ、ヨーロッパ流のビジネスというものも、どうも本物には見えないのですが。

B君:関西地域には、商人の心意気を示すいくつかの実例があった。近江商人、堺、ナニワなどなど。

C先生:少しでも安ければよい、というメンタリティーからいかに離脱することができるか。何が価値なのか、何が地域というものの目指すべきものなのか、公共財とは何かといった哲学的な議論が新大阪府知事にできるのか。これが大阪の未来を決めるだろう。まあ、公共的な利益を目指すことに大阪人が合意するか、といった問題かもしれない。

A君:知事といえば宮崎県の東国原知事。宮崎県の2035年の人口指数は、大阪よりも下の79%程度と予測されている。何を最終目的として、県政を動かすのか、知名度が上がればそれで良いということではない。

B君:日本全体の人口指数の平均値が2035年で86.6だ。京都府でも85.9なので、平均以下の予測となっている。図1には上位数県の名称を示しているが、福岡県の次が栃木県で、86.5とほぼ平均値。

A君:このような記述をしていると、人口が減ると駄目なのだ、という基本思想のように思われてしまう。

B君:確かに人口の大小は余り大きな問題ではない。むしろ、人口密度の問題が大きい。都市のようなところは、人口密度が適当に高いことが輸送に必要なエネルギーなどの観点から省エネであり、また、管理がしやすいことにもつながる。

A君:むしろ、非都市圏は、人口密度を低く保ち、高付加価値農業生産、あるいは、再生可能エネルギーの生産、を目的とするか、あるいは、生態系を維持することによって、地域の付加価値とするか、こんな考え方以外に無いのではないか。

B君:生産は経済活動だから良いが、生態系維持は、なんらかな価値を生み出すメカニズムと合体しないと。

C先生:人口密度の変化のデータはあるのか。

A君:作りました。2005年と2035年の比較だけですが。2005年の北海道の人口密度に、岩手県とか秋田県は、2040年ぐらいにはなってしまいそう。



図2 人口密度の将来予測 人口問題研究所のデータを加工

B君:土地さえあれば、農業はより大規模に、森林があれば、バイオマス発電によってカーボンニュートラルの電力を販売するとか。

C先生:ドイツのように、放牧地に太陽光発電を設置して、高い金額でそれを売るとかが可能になれば、人口密度の低さは、それなりに武器になりうる。

A君:言ってみれば、温暖化対策をしっかりやれば、地方の活性化につながる

B君:ドイツの太陽光発電の伸びの急激なことは、世界中で知られた事実。その方法は、1kWhあたりの価格を日本における買取価格の3倍程度に設定し、そのための電力会社の支出増を一般電力代をわずかに値上げすることによって、まかなうという方法論。

A君:再生可能エネルギーを導入することが、経済的なメリットにつながる。当面は、温室効果ガス削減を行うことによって、世界経済が破滅的に落ち込むことを防止できるから。そして、温暖化とは裏表の関係にある化石燃料の価格高騰対策にもなって、産業競争力を担保することができる。

B君:そういえば、本日の日経の記事を見ていたら、3面に編集委員の菅野幹雄氏の「けいざい解読」記事があって、「エコな国」の戦略不在、と題して、バイオマス発電をはじめた埼玉県秩父市のバイオマス発電所の話が出ている。スウェーデンの県などからも見学者が訪れている。問題は、電力会社が安価でしか買ってくれないこと。

A君:「自然エネルギーの普及を後押しする公的なサポートがない。努力が目に見える形で報われる仕組みが必要。。。。」という秩父市バイオマス・環境総合研究所の大野輝尚所長の談話が掲載されいた。

B君:EUは、2020年までに全電力消費量に占める自然エネルギーを現在の8.5%から20%に高めるという方針を発表している。電力会社は、覚悟を決めないと。

C先生:しかし、現状で電力会社ばかりを責めてもどうにもならないのだ。2月8日に環境省と経済産業省の合同審議会が公表した報告書は、自然エネルギー優遇策の意見を羅列して、「総合的な検討が必要」としているだけ
 現在、さるところに、ほぼ全戸が太陽電池を搭載した住宅団地を作ろうと企画しているが、100戸程度のすべてに太陽電池を載せようとしたら、電力会社から、それは無理だ、17%までしかできません、とストップが掛かった。これは、電力を使う工場などが近くにないからということが理由のようだ。しかし、それなら牧草地に太陽電池を作るドイツはどうなっているのだ。牧場の太陽電池を置いて、電力をどこが使っているのだ。

A君:本日の話題は、人口の動向から、地域の活性化などを考えたときに、やはり、自然エネルギーを日本全体で支える仕組みが無いと、日本という国はますます中央のみが栄えるだけになって、全体的な活力は減る、という話。

B君:それには、やはり、道路ばかりではない。地域を活性化するには、環境立国が、非常に重要な戦略であるということを理解しなければならない。

C先生:過去10年間程度の一人当たりの県民所得指数の推移を図3に示そう。



図3:一人当たりの県民所得指数推移

C先生:これを見ると、鹿児島県、沖縄県、大分県、福井県などが頑張っている一方で、兵庫県、大阪府などの低下が目立つ。阪神淡路大震災の影響が残っているのであれば気の毒なのだが。

A君:青森県、鳥取県、愛媛県なども減少傾向。

B君:大都会の中にも、格差があるのだが、東京を例外として、大都会のある県は、余り延びていない。これは、ワーキングプアなどを反映しているのだろうか。企業が給料を払いたがらない。メンタリティーがますます落ち込む。

C先生:これまでの産業構造を維持するなど、既存の利権構造を保存しようとする日本の産業界も、また、そこから政治資金を得ている政治家も、このままでは駄目であることは分かっている。しかし、どうしても目前の利益には引きずられる。自分を多少犠牲にしても、日本全体が浮き上がることを目標にできない。このわびしい精神状態が、日本全体を沈み行く国にしていることを日本人全員が再確認することだろう。

A君:あの沈み行く国アメリカも、オバマの”change”がなんとかするかもしれない。

B君:日本は本当に変わりようが無いのか。野党にも、そんな大きなシナリオがない。ガソリン値下げのポピュリズムだけだ。

C先生:この閉塞感を何とかしたい。動く方向は、方向はどちらでも良い。まず、現状打破が絶対に必要。

A君:それでは、このあたりで雑談を打ち切って、問題を再度整理します。
 日本の人口の予測を見ると、一つは、大都市、もうひとつは過疎地の問題。大都市では、大阪・神戸をどうするか、これが最大の問題。人口が減少するところでも、和歌山県や山口県のように、県民所得がそれほど減らず、まずまずの活力を維持できそうなところが余り問題はない。となると、やはり寒冷地である青森県などが問題。人口密度で見ても、秋田県、岩手県などが過疎になる。ここをどうするか。

B君:なるほど、一つの問題が大阪・兵庫、そして、もう一つが、青森、秋田、岩手などか。

A君:大阪・兵庫は、大都会でありながら、人口減が激しいので、かなり面積的にも余裕がでる。これは、面白いことができるようになるのでは。

B君:交通か。我々の主張である電気自動車による都市交通の改造は、大阪が第一候補かもしれない。

A君:電気自動車は、現在、自動車メーカーが作っているような200kmも走ることができるものは、電池代が高くて、非現実的。むしろ、30kmしか走れない電気自動車を公共財にしたカーシェアリングか、電池を公共財にしたバッテリーシェアリングが現実的。

B君:駐車場に充電設備を設けて、もしも電気がなくなったら、車そのものを乗り換えるか、あるいは、バッテリーを交換するスタンドに乗り付けるか。

A君:公共財であるという意識をしっかりもった地域に大阪がなれるか。これが大きな鍵ということですか。

C先生:環境対応をしようとすると、何につけても、公共財といった概念が付きまとう。すなわち、完全に自由な資本主義社会とは違ったコンセプトを持ち込むことになる。これは、現在の市場の価値観から言うと、いささか左翼的に見える。

A君:そもそも環境は公共財ですからね。

B君:古い日本人のメンタリティーは、環境は公共財であるという考え方に近かった。

C先生:大阪が公共財を使った環境対応都市になることによって、再生できるというのはなかなか面白い提案だ。

A君:岩手、秋田、青森などは、再生可能エネルギーの供給県とする。加えて、高付加価値農業。秋田なら秋田コマチ、青森ならリンゴ。これを中国の富裕層向けに生産して輸出。

B君:中国のように信頼のできない社会だと、安心できる国への買い物ツアーに出る富裕層も多くなる。日本の生きる道は、そんなところか。

C先生:再生可能エネルギーだと、岩手県がすでにやりはじめているバイオマスエネルギー。山形県庄内の風力発電。いずれにしても、電力会社が極めて強力な電力網を作らない限り、これは実現できない。

A君:ドイツ式に、カーボンニュートラルな再生可能エネルギーは、高価で買い入れる。電気の使用者が電力料金をわずかに大目に払って、その費用を負担する。もちろん、強力な電力網の設備費投資も消費者が薄く負担する。これは、将来の化石燃料枯渇やその前の価格暴騰に対する準備にもなるので、国益にもかなう。まさに、公共財的な考え方。

B君:しかし、現在の産業界、政治家、役人の利益とは同一ではない。したがって、現在の日本は、このような方向性を持ち得ない。

C先生:本当だ。毎回毎回、どうも、ぼやきが結論になる。
 今の日本は、川の流れに浮かんでいる樽の中で生きているようなもの。この川の下流に落差の大きな滝があることは、全員、良く知っている。そのうち、全員が滝から落ちて死亡ということになることもよく知っている。さあ、どうする。