|
環境と経済の好循環 企業編 05.29.2004 ![]() |
|
環境省から、「環境と経済の好循環ビジョン」なるものが出た。 C先生:「環境と経済の好循環」というのは、ある種の理想形である。これまで、環境は経済の足を引っ張ると思われてきたからだ。資本市場などの一部には、まだまだそんな考え方がある。この言わば基本的な課題を今後どう考えるか、これが本日の主題。 A君:環境省から報告書が出ていますね。19ページほどのものですから、簡単にダウンロードできます。 B君:やはり、多少歴史的な経緯が必要ではないか。 A君:実は、その次に経緯なる記述があるのですが、そこには、この委員会の設立などに関する経緯のみが書かれていて、歴史的な背景などは全く記述されていません。 B君:となると、やはり環境問題の変質を軸とした説明と、企業の対応の段階的な記述。さらに、今後、このような考え方が主流になることが必要という分かりやすい主張が必要になる。 A君:はっきり言えば、ターゲットは、資本市場でしょう。製造業にしても、非製造業にしても、企業活動をグリーン化することによって、商品の社会への受容性が拡大する時代になったことは、十分以上に認識している。 B君:ただ、とは言うものの、本音でそれをやっている企業は、それほど多くない。 A君:エコファンドなどに組み込まれている企業というものがあって、その企業がどういう手順で評価されているのか、ということを考えてみると、環境影響を最小化しようとする努力が評価のための第一条件では決して無いですね。やはり、エコファンドの値段が下がってしまっては、顧客に対する責任を果たせないから、まずは、健全な経営体質をもっていることが最大のポイント。 B君:そして、その中で、環境経営的な視野のある企業がエコファンド用に選択されている。 C先生:最近、証券アナリストの考え方がどうなったのか、その調査をしたいぐらいだが、以前は、企業が多大な環境投資をしていないか、ということを判断基準にしていて、過大な環境投資をしていると見なされると、それは×だった。まあ当然でもあるが。 A君:ただ、社会の価値観はかなり変化しますからね。社会の環境観が進化すると、その環境観にフォローできない企業は、やはり証券アナリストにとっても減点対象でしかない。 B君:企業の環境経営方針なるものがしっかりしていることが、最大のポイントだ。 C先生:それには、環境報告書を読むと多少分かる。以前も、過去、某企業の悪口を言ったことがあるが、ちょっと2〜3社、気になる企業を調べてみるか。
ソニーでは、環境ビジョンを制定し、環境効率の改善を柱として、持続可能な社会の実現をめざしています。グループとしての方針に沿った環境マネジメントが実行され、環境中期目標Green Management 2005を達成できるように、さまざまな仕組みを整備しています。 環境効率は、ビジネス規模と環境負荷の比率によって表される数値です。ソニーでは、ソニーのビジネス活動にかかわりの深い地球環境問題について5つの指標を設定し、環境効率を高めることを目標としています。 ソニーは、ビジネス活動のライフサイクルを考慮し、自社で把握、改善に向けた努力が可能な項目を元に、左のような独自の環境指標を設定しています。この環境指標は、環境負荷を定量的に表すもので、数値が低いほど環境負荷が低いことを意味します。5つの指標それぞれについて、環境効率を計算することが可能です。(2002年度までの結果は、こちらをご覧ください。) A君:ソニーの記述は、不思議でして、環境ビジョンを決めていると書いてあるのですが、どうも、図示してあるだけで文章が無い。探し方が悪いのかもしれませんが。要するに、文章だけだと、ソニーなる会社が何を考えているのか、良く分からない。 B君:ただ、環境指標を定めて、その目標に向かって進むということは、具体性があって良い。
HOYAグループ環境理念 環境基本原則
A君:書くだけなら簡単。実行が伴うかどうか。これはどこでも問題ですが。
中村社長の談話として、 (水の話に続いて、) 具体的な行動として、 環境ビジョン 目標と実績 3R:(Reduce、Reuse、Recycle) C先生:松下の省エネ商品の開発努力には敬意を表しながらも、鉛フリーハンダ、塩ビ使用回避といった無毒化への傾斜の強さを批判してきたが、鉛フリーハンダは、欧州のRoHS規制対応として、外圧になってしまったので、まあ仕方が無い状況。塩ビ使用回避については、まだまだ計画中ではあるが、2006年3月までに塩ビコードを使わない製品にするとのこと。これで、松下製の電気製品の信頼性が落ちることを懸念。環境を配慮する余り、人命を軽視してしまう可能性がある。 B君:塩ビは、欧州などでも使用量を増やしている。松下の規制は、自主規制だということだが、グリーンピースなど環境保護団体の悪影響だと言えそうだ。後述の「環境魔女対応」の段階は早く脱却すべきだ。 A君:環境を配慮するなら、有害物質を管理することによって実現が可能。ただし、有害物質を管理するには、コストが掛かる。 B君:塩ビについて言えば、日本では電線の塩ビ被覆は燃やして除去するのが普通なので、リサイクルの阻害になるとされているが、中国では、被覆は手で剥く。人力だ。これだと、全く問題にならないどころか、塩ビのリサイクルも可能になる。 C先生:日本は人件費が高いから手剥きは不可能、と断定し、よって塩ビを使用しないことにする、という考え方が余りにも短絡的だと批判している。 A君:材料はこれまでも代替材料の開発で勝負してきましたから、いくらでも代替が可能だと思っているのでしょうね。 B君:そうはいかないレベルまで、材料科学が進化してしまった。やはりある目的のためには、もっとも適した素材がある、その素材を環境適応型と言えるように管理法を考えるというのが、本当の意味で、地球適合型と言えるだろう。 A君:それにしても、松下電器のHPの環境情報は実に充実していて、さすがと言えますね。 B君:特に、最近問題になっているサプライチェーンマネージメントへの対応が良く分かる構造になっている。 C先生:ところで、ここ2年間ぐらいで、製造業の環境対応はかなり進歩したように思う。少なくとも、表面上は、ほぼ完璧に近い企業が多くなってきた。問題は、それが本心からなのか、それとも、建前だけなのか、それが重要。 A君:企業の環境対応の変質を考えてみると、やはり発展段階で見ることが重要に思えます。 B君:企業の環境対応の発展段階なるものを作ってみよう。段階1:公害防止段階。現在では、排出基準を守ること、すなわち法令の遵守であたり前になった。もしも、守れなければ、それは大問題だ。 段階2:廃棄物削減段階。他の環境負荷の延長線上に、廃棄物を位置づける。ゼロエミッションが典型である。ゼロを愛しすぎると、環境負荷が増える。商品のリサイクル対応表明も、ここに入る。この最終段階がリサイクルシステムの完成。 段階3:環境魔女対応段階。環境魔女として、様々なものがあるが、その代表例がダイオキシン。この段階は、環境天使対応も行われる。その代表が、環境報告書への大豆インク使用、生分解性プラスチックの無意味な採用。植物物語などという商品もこの延長線上。市民団体の石鹸も同じか。 段階4:天然再生可能資源への負荷削減段階。特に、森林に関わるような資源の削減を主張。100%再生紙。ケナフ紙も同一起源。節水という概念もこのあたり。この延長線上に、自然保護対応があるが、重要なので、別項目へ。 段階5:自然保護段階。自然保護活動への貢献を語る段階。 段階6:省エネルギー段階。自社の省エネルギー、製品の省エネルギーを主張。二酸化炭素放出量、温暖化ガス放出量の削減も、この段階に入れるべき。 段階7:LCA的段階。自社製品の環境優位性をLCAで表現する段階。特に、環境ラベルとして、LCAの結果を使う段階が、この段階の最終形。JAMEIのエコリーフへの登録がその具体例。http://www.jemai.or.jp/CACHE/ecoleaf_news.cfm 段階8:サプライチェーンマネジメント段階。欧州の有害物質規制によって出現した段階。これはすべての企業が対応しなければならない訳ではないが、規制物質が含まれていないことをいかに管理するか。 段階9:環境効率指標段階。様々な環境効率指標を設定し、それに向けた努力を表示。特に、効率指標とは、分子、分母に適切な項目を選択することによって、環境効率を定義するもの。 段階10:拡大製造者責任実現段階。すべての自社製品を自主回収する段階。ただし、法律的に規制されていないもの。まだ、ここまで行った企業はいない。むしろ後ろ向きの企業が多い。 段階11:脱物質・脱エネルギー段階。環境指標を推し進めて、サービス提供に特化する段階。サービス化段階とも言える。まだ試行段階と言えるか。 B君:本当にここまで行けば、経済と環境が好循環していると言えるだろう。ただし、そのうちこうなるものではない。法制、市民の環境観など、社会的な状況が進展しないと、このような状況にまで行くとは思えない。 A君:特に、拡大製造者責任の完全実施は難しいですね。 B君:段階11のサービス化も、完全なものと見かけ上のものがある。この成功例として、松下電器の「あかり安心サービス」は、蛍光灯の販売でなく、照明をサービスするもの。社内で強い反対論があったという。こんなシステムを作ると、拡大製造者責任の枠組みに対する社会的要請が増えるのではないか、というものだったらしい。 A君:この「あかり」サービスの評価ですが、考え方としては間違いはない。となると、どのように実施されるかが問題。特に、顧客に見えない使用済みの蛍光灯の処理とリサイクルの程度がどの程度のものか、これがポイントなんですが。 B君:そこがまだ明確に見えてこない。このサービスを採用した企業が、2年間で160社に達したという。 A君:採用した企業にとっては、余り関心の無いことかもしれませんが、その情報開示がどこまであるのか。 C先生:環境省の「経済と環境の好循環ビジョン」にも「あかりサービス」の話はでてくるのだが、ここまで突っ込んだ議論が無い。もっと基本的な価値観の変更を一般社会に対して求めているという性格のものだ。 A君:まあ、その目的だけを考えると、良くできている報告書だと言えるでしょう。残りの部分の目次をご紹介しますか? C先生:まあ、長くなりすぎたから止めよう。いずれにしても、お役所文書としては画期的な文体だから、是非お読みいただきたい。 |
|
|