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   COゼロ実現の常識3 01.21.2018
     
電力価格upの本当の理由を知ること
               



 「CO削減」というと、「それには省エネが重要ですね」と言われます。確かにそうでしたし(過去形)、今後も当然、省エネは必須です。しかし、「COゼロ」は、いや「COの大巾削減」でも、「省エネ」とは完全に次元の違う問題です。日本が現在持っている長期削減目標は、2050年で80%削減。要するに、1/5にすることです。このレベルだと、電力料金の支払額を下げる「省エネ」だけで実現できるという話にはないのです。しかも、今後、気候は暑くなる方向ですから、エアコンは必須。しかも運転時間も長くなる。いくら省エネマインドがあったとしても、それだけでは対応は不可能です。すべてを根本的に考え直さないと。

 という訳で、今回は、「COゼロ」に向かうためには、何をどう考えれば良いのか、市民にとっても是非知っておくべき常識、そして、最後に、電力価格がどうなるか、これを、もう一度、考察し直して見たいと思います。

 今回で3回シリーズの最終回です。


C先生:という訳で、「COゼロ」という問題を、一から考え直そうということの3回目だ。なぜ、そんなことになったのか、というと、そこには一応理由があって、一つは、「バックキャスト総合研究所」というものを産環境を退職された傘木氏が立ち上げて、個人的には特別顧問として参画し、企業からの参加者に対して、様々な視点で、できるだけ基礎から話をする必要に迫られたこと。
 もう一つは、1月20日に東北大学で留学生を対象にして、90分の講義を英語でしなければならないことになり、そして、昨日、無事に終了した。そこでも、留学生の専門分野が、いくら文系だという学生であっても、このぐらいのことは知らないと、今後、就職先で困るよ、という話をするつもりなのだ。やはり、話は、基礎からやることになる。特に、歴史的な記述を重視した。

A君:反応はどうでした。

C先生:日本人の学生を相手に話をするときは、90分の枠があれば、85分ぐらい講義をして、1〜2件の質問を受けて終わり。しかし、留学生が相手の場合だと、それでは終わらないことがこれまでの経験から明らか。今回は、70分で一応講義を終わり、20分間を質疑応答の時間とした。丁度良い時間配分だったと思うぐらい、しっかりと質問を受けた。

B君:そのあたり違い、なんなのでしょうね。日本人の院生も若干は居たけど質問しなかったのか、全く居なかったのか。

C先生:全く居なかった。完全に留学生用のコースを作って動いているということだ。アジア圏の留学生が多いのは当然なのだけれど、そのようなケースだと、やはり、まだ大気汚染とか水質汚濁、あるいは、廃棄物とかリサイクルとか、そう言った課題が重要である状況は余り変わっていない。しかし、中国がすでにCO削減を目指しているように、大気汚染の原因として石炭が相当な原因である以上、エネルギー転換が解になる。ということは知ってもらいたいと思っていた。

A君:パリ協定への対応の話をするときには、「COゼロ」というゴールを設定して、そこに向かう道筋を考える。できれば、過去からスタートするとより分かりやすい、という大方針でやはり行くことになるのでは。

B君:いきなり議論が始まったが、まあ、そういうことのようだ。2080年頃にNZE(Net Zero Emission)を世界全体で実現するとして、これをゴールとするか。そこに向かって、歴史的には、どのあたりから考察を始めるか、というとそれは当然、産業革命になる。人類が放出したCO量については、すでに過去からの推定値がある。

A君:この図ですね。


図1:CO2を排出し始めたのは、1750年頃から。石炭を活用する蒸気機関が排水ポンプなどに活用された。その後、石油の時代が20世紀から本格化。そして、1950年から先は、人口増加の影響が大きい。

A君:1950年から人口増加がすごい勢いになったのは、化学肥料の貢献。ハーバー・ボッシュ法によってアンモニアが空気中の窒素を原料にして製造できるようになって、資源限界がなくなりました。それまでは、硝石あるいはチリ硝石という鉱物から作る以外になかったのです。しかも、製造コストがかなり下がって、硫酸アンモニウムなどが安価な肥料用物質の製造にも使えるようになりました。そのため、単位面積での小麦の収量が7倍になった。ということは、それまでの7倍の人が養えるということになった、ということを意味します。そして、人口爆発が始まった

B君:今後共、現在の人口増加が継続するのかどうか。それは大変な問題だが、実は、地域的な問題でもある。アジアは、すでに出生率が大巾に低下し始めているのに対して、アフリカはまだまだ出生率が高止まりしている。アフリカの食料生産能力にどのような限界があるのか、それがいささか心配だ。アフリカのローカルな問題になった。

A君:いずれの化石燃料にしても、最初は恐らく直接燃焼が最初の使い方だった。次に、石炭を燃やして、蒸気機関になった。回転力を利用した発電も1880年頃から実用的な交流による電灯など用に使えるようになった。

B君:そして、液体燃料である石油が次の化石燃料。20世紀は自動車の時代。1908年に発売されたT型フォードは、1928年までになんと1500万台が生産されたというからすごい。

A君:最後に、天然ガスという気体燃料になった。天然ガスは、以前は、石油に随伴して産出するというものだったが、シェールガスという別種の天然ガスが大量に存在していて、過去はその採掘ができないと考えられていたのが、技術的な進化、高圧の水で岩を砕くという方法で、生産ができるようになった。これで、米国は世界一のエネルギーが富裕な国になった。

C先生:ということで現在に至るのだが、要するに、石炭から始まって、そして、石油と随伴する天然ガスへ、そして、安価なシェールガスという流れだった。天然ガスの大規模な実用が始まったのは、1940年代に米国での話だ。
 石炭・石油・天然ガス、これらが使われる前にも、人類は薪や炭をエネルギー源として使っていた。しかし、産業革命以前のCOの排出量はゼロだった。それはなぜか

A君:本質的なことは、「薪炭はバイオマスだ」ということですね。植物が太陽のエネルギーを借りて、大気中の二酸化炭素を原料として生育する。燃やせば、当然、二酸化炭素はでるけれど、それは、もともと大気中に存在したいたものが再度放出されるだけなので、差し引きゼロということ。これを、カーボンニュートラルと言います。

B君:かなり初歩的な話だけれど、今回は、一応基礎からということで、説明をしたということになるか。

A君:実は、化石燃料である石炭・石油・天然ガスも、元々のエネルギーは太陽エネルギーで、それが植物などによって固定されて、数億年間、石炭・石油・天然ガスとして地下に保存されていた。だから、化石燃料を燃やして二酸化炭素を出したとしても、元々は、大気中にあったのだから、同じだと思っては行けない。植物などが、数億年掛かって溜め込んだ二酸化炭素を、人類は、300年足らずで全部大気に戻す勢いだった。すなわち、100万倍ぐらい、スピードが早いのですね。

B君:大気中に出た二酸化炭素は、最終的には、地球に戻る。メカニズムは、ほぼ二種類。一つは、海洋に吸収されて、海中のカルシウムイオンと結合して、石灰岩になって、地底に蓄積する。もう一つは、大地中のカルシウム分と結合して、やはり石灰岩質になる。しかし、この速度は非常に遅くて、まさに量によるのだけれど、現時点程のスピードで大気中に戻した二酸化炭素が、地球に吸収されて、その量が半分になるまでの時間は、数万年というのが、シェルンフーバー博士の推定値

A君:数万年ということは、人類の歴史がまだ20万年程度しかないと考えれば、ほぼ無限大ということを意味するので、もう、人類は、大気中の二酸化炭素量が半分に減ることを、もはや体験しないのではないか、ということを意味します。

B君:ということは、氷河期はもう来ない可能性が高いということを意味することになる。氷河期になると、食料生産が大巾に制限されるので、人類にとってこれは悪いことではないけれど、その変わりに、海面上昇が起きてしまう。

A君:1万年後となると、海面上昇は10m程度になっているのではないですか。内訳は、グリーンランドの氷床の融解で7m,山岳氷河で数10cm、南極の周辺部の氷床の融解で3m。南極の極点付近の氷は、余りにも寒いことと、海水からの蒸発量が温暖化によって増え、結果的に南極点の降雪は増えるけれど、それほどの量ではない。

B君:当然、ツバルは無い。フィジーやトンガなどの火山島の島々は標高は高いけれど、サンゴ礁の島はすべて水没する。

A君:一応、海面上昇の被害を受ける国々を具体的に挙げますバングラデシュを筆頭として、インドネシア・フィリピンなど、それに、日本も当然影響を受けますが、深刻なのは、島嶼諸国。以下の国は、国土のほとんどが、あるいは、かなりの部分が消滅すると考えれています。
Solomon, Kiribati, Maldives, Seychelles, Tegua, Micronesia, Palau, Carteret, Tuvalu
ソロモン、キリバス、モルディブ、セイシェル、テグア(バヌアツ)、ミクロネシア、パラオ、カルテレット(パプアニューギニア)、ツバル


C先生:ということで、1000年程度の先を考え、グリーンランドの氷床が溶けないようにしたい。となると、温度上昇は、やはり2℃までに留めたい。となると化石燃料を燃やして排出することができる二酸化炭素の総量は、残り約1兆トンと言われている。世界全体での排出量は年330億トン程度(2014年)。となると、この調子で排出し続けると、30年で、すなわち、2050年には、その限界を超えてしまう

A君:12月23日の記事で、阿蘇カルデラが大爆発を起こすとどうなるか、という話を議論しましたが、このような大爆発が起きる確率は、1万年に1度。これと比較すると、CO排出による気候変動によって、1000年後には確実に海中に沈む国がある。さて、これらをどう考えるのか。実際には、考えようもないことだと思いますが。

B君:ということで、1兆トンのCOを排出するまでの時間をできるだけ稼ごうということが、パリ協定の国際的合意。そのためには、減らさなければならないのは、化石燃料。現在、人類は、化石燃料にほぼ依存しているので、これを如何にして二酸化炭素排出量を減らすか。

A君:そろそろ、本論ですね。本日の議論としては、石炭、石油、天然ガスで、同じカロリー数の熱を得るのに、どのぐらいのCOが出るかの比較が、最初に必要になりますね。

B君:現時点では、化石燃料は、電力に変換することが普通なので、kWhあたりに排出してしまうCO量を比較するか。
http://www.fepc.or.jp/nuclear/state/riyuu/co2/sw_index_01/

A君:このサイトによれば、1kWhの電力を発生するために、排出されるCO量(g)は、
 石炭火力  943g
 石油火力  738g
 LNG火力  599g
 LNG火力  475g(コンバインドサイクル)

B君:この排出量には、発電設備や運用上必要なエネルギー供給のために排出されるCO量まで含まれている。それに、石油火力はコスト高のため、ほとんど存在していない。

A君:いずれにしても、結果は明確で、LNGは石炭の半分の排出量です。

B君:結果の解釈だけれど、1kWhの電力というと、デスクトップパソコンを20時間程度動作させることが可能。しかし、暖房用オイルヒーターだと、1.5kWなどというものが普通だし、ダイソンの掃除機も1.5kW40分で1kWhの電力を使ってしまうことにある。

A君:石炭発電の電気の場合だと、COの943gは、約500リットルの体積があるので、オイルヒーターを一晩フル運転すると、500リットルの風船に入ったCOが、12個ぐらいできてしまう勘定になる。お風呂の水量が大体200リットルぐらいなので、そもそも500リットルの風船は相当大きい。それが12個分=6000リットルの風船となると、大迫力でよく分かる。

B君:6000リットルか。6立方メートル=2m×2m×1.5m。天井の高さは、2.3〜2.4mぐらいなので、2m×1.5mで高さがほぼ天井までという風船。これはでかい。COがもしも目に見えるようなものであれば、皆さんかなり気を使うのだけれど、なんといっても、見えないので、ほとんど気づかない。

A君:直径1mの風船が500リットル強。1kWhの石炭火力の電力を使うと、それが1個膨らむような仕組みを強制的に作ると、視覚的に理解できるのだけど、そういう訳にもいかない。

C先生:それでは、そろそろ化石燃料を現状のまま使い続けて、それでNZEを実現しようとすると、どのようなことになるか、その最終的な姿を想像してみよう。

A君:了解です。まず、日本全体の電力使用量ですが、このところ、若干減り気味です。このデータは、電気事業連合会の数値なので、これ以外に、企業が行っている自家発電が別途あります。

B君:ざっくり言うと、電力事業者が発電している電気量が、2015年で、8850億kWh。実は、2007年が最大の発電量で、このときには、1兆kWhを超していた。

A君:そして自家発電については、設備の容量しか分かっていないのですが、経済産業省のデータによれば、6084万kW(2015年9月)。1年間8760時間の内、半分強が動いていたとすると、2700億kWhぐらい発電していたのかもしれませんね。となると、総発電量が、1.15兆kWhとなりますが、どうせ、ざっとした話ですので、1兆kWhとしますか。

B君:その精度でいくのなら、CO発生量として、
 石炭発電   1kg/kWh
 天然ガス発電 0.5kg/kWh
 水力発電など 0kg/kWh
で充分だ。
 割合を石炭0.35:天然ガス0.50:水力など0.15とするか。1kWhの平均的なCO排出量が、0.35+0.25+0=0.6kg/kWh
 水力発電などには、原子力も含まれるとする。0.6という数値は、ちょっと多目の数値かもしれないが。

A君:1.15兆kWhの電気を起こすのに、3.6億トンぐらいのCOを出しているということになりますが、電力関係でCO発生量の30〜35%ぐらい責任があるというのが常識的な数値ですから、それほど間違っていないのでは。

B君:原子力の発電量が以前として、元に戻っていないことが、やはり決定的な影響力を持っているというのが結論か。

A君:話を本道に戻して、出てしまったCOだから仕方ない、ということが許されないとすると、CCS(Carbon Capture and Storage:液化して地下に貯留する)にしなければならない、となれば、3.6億トンを全部CCS化しようとると、1トンのCOあたりのCCSの費用がざっと1万円として、3.6兆円の値上がり。石炭発電だと、1kWhあたり、10円上昇天然ガス発電だと1kWhあたり5円上昇。まあ、この半分だと仮定すれば、石炭発電で1kWhあたり5円上昇、天然ガス発電で1kWhあたり2.5円上昇

B君:半分だと仮定しても、現在、石炭発電の発電コスト(燃料分)は、5円/kWhぐらいとのことなので、CCSによって、10円/kWhに上がることになる。天然ガスの発電コスト(燃料分)は、2.5円/kWh上昇して、12.5円ぐらいという計算になる。

A君:実は、このようなコスト計算は、資源エネルギー庁の発電コストワーキンググループという委員会が、詳細に検討しています。
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee
/mitoshi/cost_wg/006/pdf/006_05.pdf


B君:我々の計算と元々の精度がかなり違うようで、0.1円までの精度で示されている。その結果は、
 石炭火力 
   燃料費          5.5円
   資本費+運転維持費 3.8円
   CO対策費       3.0円
   合計          12.3円
 天然ガス火力
   燃料費         10.8円
   資本費+運転維持費  1.6円
   CO対策費       1.3円
   合計           13.7円

A君:CO対策費が、我々の当初の数値だと3倍以上なので、同じ価格どころか、逆転するということになりますね。CCSが安価に実行できるかどうか、それが最大の鍵ということでうね。

C先生:というところ、大体の様子が記述できたのでは。要するに、CO対策費、これは、CCSのコストで良いと思うのだけれど、国内ですべて実施するのなら、1トン1万円として、この事業は国営企業が行うことする。なぜならば、CCSのように、COを液化して、地下に100年以上も安定に貯留するという事業だと、もし50年後に何か起きたとしても、例えば、大きな地殻変動が起きたとしても、民間企業では、その責任は取れない。そこで、恐らく、CCSは国営企業が行うことになると思うのだ。となると、その実施費用を環境税として集めることになる。その価格は、日本のようなCCSの適地がない国だと、COの1トンで1万円以上と見ておくのが妥当なのではないか。
 そうなれば、電力価格は、最低でも、
  石炭火力    20円/kWh
  天然ガス火力 18円/kWh
 そして、自然エネルギー関係だと、
  一般水力   11円/kWh
  陸上風力   22円/kWh
  地熱      19円/kWh
  太陽光(メガ) 24円/kWh
 ところが、他国の場合、特に、砂漠に設置するような太陽光だと、3円/kWh以下になっているとのことだったのだが、実は、昨年10月に、さらに衝撃的な価格が発表された。それは、サウジアラビアで、価格がなんと、1.79c/kWhとのこと。砂漠は非常に有利なのは事実なのだ。
https://www.thenational.ae/business/energy/world-s-cheapest-prices-submitted-for-saudi-arabia-s
-first-solar-project-1.663842

 日本は勿論、砂漠ではないので、大変に不利なのだけれど、それにしても、太陽光発電の設置コストが異常に高い。それは、設計料とか設置料とか言った価格(人件費)が非常に高いからだ。 先程、紹介した資源エネルギー庁の計算では、2030年のモデルプラントとして、陸上風力では、20円/kWhを切るような価格になることが想定されている。地熱も同様だし、さすがに洋上風力となると30円程度ということにはなるけれど。ということは、2040年、2050年になると、よりCO排出量を削減することが必須になって、結果的に、炭素税が高くなることが予測される。これを現時点での結論としよう。