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  未来を読むのに必要な作業とは   09.19.2010   




 菅内閣のメンバーが確定した。現時点では、副大臣、政務官などの役職は空席。
 菅内閣が最初に取り組むべき課題は、景気対策。特に、デフレ・円高という声が圧倒的である。

 民主党の代表選挙直後、日銀が介入したら、為替レートは一瞬にして85円を回復。

 これを見れば、確かに、日本だけが無策であったように思える。しかし、不快感を持っている国は多いようだ。一方、韓国は為替相場への介入を継続しているのに、問題にされることはない。その理由は、2008年の韓国の国際収支が赤字だったことが大きいのかもしれない。

 日本では、リーマンショックの影響があったにもかかわらず、2008年にも国際収支が黒字だった。それが日本という国。だから円高になったって当然でしょう。これが諸外国の考え方なのだろう。

 今回の内閣改造で環境大臣になったのは、松本龍氏。地域活性化などに関する発言はあるが、地球環境問題に関して、どのような考え方なのかは、今のところ不明。

 ということで、ここからが本論。目の前に課題・問題が山積されているのに、なぜ未来を読むなどという、無謀な行為をしているのか。それは、2050年に日本の温室効果ガスを80%削減するということを実現できる社会像とはどのようなものか、ということを検討する必要があるからである。

 基本的に未来は読めないのだが、もっともらしいストーリーを書くということが役割だとしたら、一体どうやって「もっともらしさ」を担保したら良いのだろうか。それにはどんな作業が必要なのだろう。



C先生:未来を読むこと、本来、これは相当な難問だ。だから、ストリーを書くことだとレベルを落として対応している。しかし、依然として難問。なぜ、こんなことを検討しなければならないのか。詳しくは、中長期ロードマップ小委員会の議事次第、
http://www.env.go.jp/council/06earth/y0611-12.html
のマクロフレーム中間報告資料をご覧いただきたい。
 この難問に単一の結論が出るということはなさそうなので、今回のHPも、作業結果を共有するのが目的。

A君:まずは、日本における温室効果ガスの排出源から説明しないと。

B君:どこにデータがあるかを今回は併記するか。まず、温室効果ガス排出量ならば、環境省。
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg/index.html

A君:どれを見ればよいか、と言われれば、このグラフ。
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg/2008ghg.pdfのこの図。



図1 セクター別の排出量の推移

B君:産業部門からの排出は着実に減っているものの、それでも、現状で、エネルギー起源のCO2発生量の36.8%を占める。これまで減ってきているのは、省エネ努力と業種にもよるが生産減少。省エネ努力が今後どのぐらいの効果を生み出すのか。それは投資コスト次第だと言えるが、もしも投資コストが非常に高ければ、投資はされない。そして、産業は規制の緩い海外へ移転しまう。

A君:日本経済がいまだにモノづくりに依存しているということを意味していて、もしも、80%削減を力技で実現しようとすると、モノづくり、特に、素材産業は、日本国内には無いという状態になる。

B君:技術が変わらないで、CO2を80%削減しようとという話だと、その通り。
 ところで、エネルギーの視点から検討するとどうなのだろうか。それに答えるのが、エネルギー消費量ならば資源エネルギー庁。http://www.enecho.meti.go.jp/info/statistics/jukyu/result-1.htm
 このページから2008年の本文を開く。
A君:2008年という年は、リーマンショックのお陰で、とんでもない年だった。そのためあらゆる数値が激変している。例えば、図表3に示されているGDPと一次エネルギー国内供給の推移でも、2007年と比較して、ガタッと減少している。



図2 GDPと一次エネルギーの推移  2008年エネルギー需給実績の図表3

B君:この図は、なかなか面白い。京都議定書の基準年である1990年以後、日本の一次エネルギー供給量はかなり急激に増加している。

A君:その原因は、工業生産が伸びたからではなくて、1992年に終わったバブル経済の影響で車が大きくなり、ビルも派手になって、また、冷蔵庫も大きくなり、といったこと。

B君:面白いのは、その割には、GDPは余り伸びていないということ。普通、GDPが伸びる場合には、エネルギー消費量も増大するのだが、先進国の場合だと、GDPの伸びの方が大きいのが普通。

A君:GDPとエネルギー消費量との関係、しばしば弾性値と呼ばれる数値を作ってみますか。



図2 エネルギー弾性値の推移

B君:1990年から2000年まで、エネルギー消費量は増えるが、それに見合う分のGDPが増えたということではなかった。2001年に少し消費量が戻るが、それからは、消費量が増えないのに、2003年までGDPは増加、また、2004年から2007年も同様。2008年への変化は、再び、エネルギーとの相関が大きくなる。

A君:2001年以降、運輸、民生の両部門で省エネが進んだという理解で良いのでしょうね。

B君:ところで、日本のGDPがどのような産業によって構成されているか、という構成比だが、大体製造業が21%と言われているが、これは、世界的に見て、どのぐらいのレベルなのだろうか。

A君:国際比較ですか。そんなデータだと、総務省統計局ですかね。実際に出ているのは、国連のデータなので、データになるのがかなり遅いですが。
http://www.stat.go.jp/data/sekai/03.htm

B君:ファイルとしては、これか。
http://www.stat.go.jp/data/sekai/zuhyou/0307.xls
 2008年のデータもあるではないか。
しかし、変なデータで、合計が100%にならない。重複しているようだ。
 それはそれとして、2007年に21%であった製造業の構成比が、2008年には19%に減少している。

A君:約20%ということにして、他国との比較ですが、次の表のようになります。

日本         20%
イラン        10%
インド       17%
インドネシア   27%
韓国        28%
サウジアラビア  9%
シンガポール  24%
タイ        38%
米国       13%
カナダ      14%
メキシコ     19%
アルゼンチン  22%
ブラジル     18%
イギリス      13%
イタリア      18%
オランダ      14%
ギリシャ      10%
スイス       20%
デンマーク    15%
ドイツ       23%
フランス      12%
ロシア       17%
オーストラリア  11%
ニュージランド  15%

表 GDPへの製造業の寄与率 出所:国連データ

B君:こうしてみると、米国、カナダ、イギリス、オランダ、フランスあたりが12〜14%ぐらいで、これらは似た者同士であるような感じがする。
 そして、ドイツ、日本、スイスが似ている。韓国も、現時点では28%と極端に高いが、そのうちドイツ、日本レベルまで製造業が下がるのではないか、と予想できる。

A君:製造業への就業人数も大体そんな感じだと思うのですが、チェックしますか。

B君:やはり総務省統計局ですね。
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.htm
 第一表で最新の状況が分かります。
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/zuhyou/05401.xls

                  合計   男    女
15歳から64歳の人口   8112 5337 5712
労働力人口15〜64歳  6003 3460 2544
就業者15〜64歳     5688 3265 2423
農業・林業            256  148  108
建設業             503  428   74
製造業            1029  724  305
情報通信業          190  144   46
運輸業             341  280   61
卸売・小売業         1059  525  533
学術研究、専門・技術    208  137   71
宿泊業、飲食サービス    383  152  232
生活関連、娯楽        247   97  150
教育、学習支援        281  120  161
医療・福祉           633  153  480
その他サービス        463  273  189
公務               214  166   48

表 日本の就業状況 22年7月 単位:万人


B君:長い表だが、要するに、労働人口を6000万人として、1000万人が製造業に従事している。17%ぐらいということ。

A君:そして、GDPの約20%を生み出している。まあ、人口に比例しているとも言える。

C先生:先程の国連の統計で、タイのGDPに対する製造業の割合が38%にもなっているということが、今後の日本の戦略を示唆しているのではないだろうか。

A君:タイの次はベトナムが、そして、場合によってはその次はインドネシアが製造業を担う。インドネシアは今27%ですが、そのうち35%ぐらいを製造業で稼ぐようになるという可能性はありますね。

B君:となると人件費が安いこれらの国が製造業、特に、組立産業の主力を支える国になる。

C先生:中国は今はものすごく勢いがあるが、2020年に人口がピークになると、その後の高齢化の速度は日本の比ではないので、2040年代には、世界の製造業を支える国では無くなるだろう。

A君:そのとき、中国は、様々な経済的な矛盾をどのように解決するのかという大問題に直面する。

B君:特に、組立産業はベトナム、インドネシアなどに移行すると予測されるので、中国は何で生きるのか。要するに、今の日本の問題が中国の問題になる。

C先生:日本が今後製造業で生き残るには、相当に高度で、儲けの多い製品だけに特化することが条件になるだろう。ということは、GDPへの貢献は、限定的ということになるのかもしれない。

A君:というと、2050年には、製造業のGDPへの寄与率は減り、当然、就業人口は減らさざるを得ない。

B君:まあね。しかし、2050年などという超長期の方向性を探るのだから、日本の過去の歴史をチェックして見たいものだ。

A君:長時系列データというものがありまして、
http://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.htm
産業別で別の表になっています。しかも、月別のデータがあって、取り扱いが結構厄介。

B君:それなら、農業、建設業、製造業、サービス業、農業ぐらいで良いのではないか。

A君:それでも厄介。作業時間が1時間以上でしたね。農業は全く別のファイルになっているし。
 一応、完成。



図3 就業人口の推移 色々と定義が変わっているようだ。2002年に小売業が奇妙に減少しているのは、飲食店が別項目に移動し、他のものと合体したため。統計の連続性が喪失。

B君:製造業の就業人口は、1970年にはすでに飽和していて、1992年、奇しくもバブル経済が崩壊した年だが、それ以後、就業人口が減っている。サービス業の就業人口が伸び続ければ、今後40年間で、3000万人レベルに到達していても不思議ではない。

A君:日本の総人口が減って、我々の推定値が2050年で9000万人。現在から3000万人の減少。就業者数も老齢化でかなり減りますから、全就業人口の1/2近くがサービス業になるというシナリオも、絶対におかしいとは言えない。

B君:今後20年間で製造業就業人口が500万人減るというのはあり得るような気がしてきた。

C先生:となると、先進国共通の問題なのだが、イギリス、アメリカのような金融業に重点化した国として、日本は生きるのか。

B君:やはり、アイルランドやアイスランドの失敗を見ると、どうも金融業シナリオ自身が怪しいように思える。ギリシャの次は、アイルランド、さらには、ポルトガルか。それをすべてドイツが救済するのでは、EUの未来が危うい。

A君:日本は、金融業は無いでしょう。しかし、なにで生きるにしても、日本の場合、まず、どうしてもエネルギーの輸入は必須。食料もコメや野菜、あるいは、畜産品、さらに技術開発があれば魚類は自給したとしても、他の穀物は輸入しないと。

B君:ということは、日本の未来産業も国際的な商品を扱わないと、輸出産業に成りえないので、生存が不可能ということになる。

C先生:金融業は確かに国際商品を扱っている。サービス産業は、人が移動しないと、国際商品にならないという欠点がある。

A君:稼ぎを全く別のところでやるというシナリオはあるのでしょうか。例えば、日本国籍の企業が海外でバンバン稼ぐ。それを日本国内に還元する。

B君:企業がお金を稼いだとしても、そのお金は、企業のフトコロに留まっているのだから、それを日本国内に回すには、投資させる必要がある。なんらかの美味しい商売が無いとダメだろう。

A君:トヨタ、パナソニックはハウジングをやっていますよね。

B君:人口が減る国だから、住宅産業は成長産業とは言いがたい。やはり、なんらかの無形の国際商品を商売のネタにしないとダメなのではないか。

A君:iPadのように、新しいコンセプトを提案し、実際の製造は台湾と中国で行うといったやり方。コンセプトの輸出。あるいは、設計図の輸出。

B君:人口が少ない国であれば、そんなことで稼ぐことも不可能ではないが。

C先生:アップルがあっても、米国全体に影響するような経済効果を出すことは非常に難しい。無形の国際商品の代表企業だからといって、マイクロソフトが米国で長期間生存できるとも思えなくなってきた。

A君:グーグルがなんでも無料でやってしまうから、ソフト業界も大変。Androidは勿論対アップルの有力兵器だが、Chromeはブラウザ名でもあるが、同名のOSも無料で、Windowsも今後どうなるのだろう。日本のソフト業界は、もともと世界で戦うことは諦めていて、個々の企業の個別状況に合わせて、ソフトの擦り合わせを行うことでなんとか生きている。ゲーム業界も、どうやら優位性がなくなりつつあるようだ。日本製のゲーム機に対応するだけで、他のプラットフォームへの展開、例えば、3D映画、3Dテレビ、対戦型インターネットゲームへの展開が遅れた。

B君:グーグルは、無料で検索ソフトや他のソフトを使わせて、その人の嗜好を情報として収集し、それを活用している。究極の個人情報である健康状態を無料だけれど精緻な相談システムでも作って集め、それをグーグル的な商売の種にするといった発想はどうなのだろう。最終的にはそれを医療・健康サービスに繋げて、医療、リハビリ、介護、の分野で「日本流のおもてなし」を提供して生き延びる国になるなどという発想は?

A君:まああり得るかもしれない。

C先生:そんな国になれば、素材を中心とした製造業主体の国に比べれば、エネルギーの輸入も少なくて済む。場合によっては、海洋エネルギーと原子力で自給といったシナリオも書けるかもしれない。となれば、国としても成立する可能性もある。
 しかし、そんな形態の国が日本という地域に住む人々にどのぐらい幸福感を与えることができるのか、それは問題かもしれない。なんらかの達成感というものが存在することが、どうも、どのような組織にも、どのような人種にも必要のような気がするが、果たしてその時代の人々は、何に達成感を感じているのだろうか。