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   最近の質問と回答 その3 
 2011.10.16




 今週末はなかなか大変なスケジュールでした。しかも、大学、学生関係ばかり。土曜日の昼過ぎに北大でのCRESTサイトビジットから帰り、TEEN(http://www.env.go.jp/earth/coop/temm/project/teen.html)に参加する学生3名との相談会に出席。どうせやるならインパクトのあるプレゼンをすることを推奨。テーマはグリーン・キャンパスとのことだが、重点とするポイントを、できれば東日本大震災と結びつけるようにと要請。

 日曜日の朝、ダイヤモンド社が企画した「学生による学生のためのエネルギーを考えるプロジェクト〜エネルギーの未来2011」のイントロダクションセミナーの講師。http://www.mentor-diamond.jp/mc/seminar/energy1_2.html
 参加者80名というかなり大きな規模でした。学生諸君がしっかりと話しを聞いてくれました。今後、かなり様々なプロセスを経て、最終的には学生の提言をまとめるようです。やっと日本も先を見ることが色々と行われるようになってきました。


 そして、やはりスティーブ・ジョブズの追悼文を少々。これは別のPageとして掲載します。

 放射線リスクの報道について、新しい絵を一枚書きました。こんなものです。


 どうも、日本のメディアは、本質が分かっていない故に、いつでも両論併記。そして、両論のそれぞれの論者の選択が怪しい。もっと、具体的な全体感をもったメディアでないと、対応が不可能な時代になっているのですが、それが分かっていても、変えられない。特に、下のケースのように、座標軸に原点(真)と絶対値が付いている場合への対応が、全くできないのが日本メディアの特徴だと思います。


 さて、
 今回も最近の質問のまとめ。話題はエネルギー供給問題です。


エネルギー供給問題についてのQ&A

質問:日本が省エネを進めることのメリットはどこにあるのでしょうか。

回答:3点ぐらいのメリットがあるかもしれません。
(1)省エネをして、一人あたりのエネルギー使用量を下げることができれば、エネルギー自給率が上がります。ということは輸入に要する外貨をあまり稼がないでも済むようになります。より安定な国家になるでしょう。
(2)省エネ技術というものは、今後世界中で必要になります。その最先端を歩いていれば、日本の技術が世界に貢献できることでしょう。併せて、稼ぐこともできるかも。
(3)化石燃料文明は300年、もしもその後に原子力文明に行ったとしても1000年。それが終われば、その後に続く人類の歴史は、再び自然エネルギーに戻るでしょう。勿論、核融合という選択肢も無いとは言えませんが、これが実現できるかどうか、100%の保証は無いので、勘定に入れません。自然エネルギーへの依存度を上げることの最大の条件が、エネルギー消費量そのものを下げることですので、300年後を先取しした社会を作ることになるでしょう。


質問:今回の福島原発の事故は、確率として1000年に1回起きる程度の問題だったと言われますが、それについて、どのように理解すれば良いのですか。

回答:これは哲学的にものすごく難しい。なぜならば、人間には寿命があって、長くても90歳程度だとしたら、1000年という時間を、自らの人生の中に、あるいは、価値観の中に組み込むことは不可能に近いのです。1000年後には、核燃料が枯渇している可能性が高いので、今回の福島のパターン、すなわち、巨大地震が誘発する原発事故というタイプへの遭遇は、ひょっとすると、日本どころか、人類最後の経験だったのかもしれません。
 別の表現をすれば、地震誘発型の1000年後の原発事故を回避するために、今、あなたはいくらの投資をしますか。実際のところ、こう問われても答えようが無いのが現実です。ただ、原発事故全体を考えれば、そして、世界全体を考えれば、来年また起きる確率は確かにゼロではありません。原発テロを起こそうと思えば、起こしうることは確かですので。
 リスク科学という問題解決法は、ハザードが余りにも大きく、発生確率が余りにも低い問題は取り扱えない。これが現実です。せめて、年に何回か世界中で起きるぐらいのこと、例えば、飛行機事故のようなものがリスク科学の対象として限界だと思います。
 要するに、すべての人にとって、個人の価値観のレベルも超している問題なだけに、答えはありません。自然科学が現代人に提示している、いくつかの解決不能な問題の一つかもしれません。


質問:日本の森林バイオマスが有効に活用されない理由はどこにあるのでしょうか?

回答:森林バイオマスを活用するには、まず、林業そのものが復活する必要があります。日本の林業の欠点は林地が急斜面であり、過去行われていた労働集約型から、重機を導入した現代流への転換が行われていない地域が多いことです。この転換に必要不可欠なものが林道の整備ですが、地域によっては、所有者すらはっきりしないところもあり、そのようなところに林道を通すのは、手続き上大問題です。
 このような特性をもつ山林は、手入れが悪いため、台風による大雨などで、木材が流れだしたり、場合によっては、土砂崩れが起きることが多いとされています。すなわち、手入れ不良であることが、周辺にリスクと迷惑を掛けています。となると、山林に手入れを行う義務を課すること、もしもそれが不可能であれば、地元の森林組合に所有権を無償譲渡することを法制化することが必要かと思います。
 かなり遠回りですが、個人の土地の所有の自由は認めるが、その土地に対して義務も課すという考え方に日本全体を変えることが、森林バイオマスの活用が行われるようになる近道のように思います。


質問:原発がダメになると電気自動車もダメになるという説明がありましたが、もっと詳しく?

回答:原発という発電方式ですが、日本では、出力調整というものを行わないことを合意しているために、常に一定出力で運転が行われているものです。このような特性を有する電力をベース電力と呼びます。もしも原発がフル稼働すれば、深夜には電力が余る傾向が出てきます。石炭火力も同様で、燃料コストが安いから、電力会社としては、夜間にも運転をして売上を増やすことが戦略的に正しい選択だと思われます。
 余った電力は、何か用途を見つけるか、あるいは、貯蔵する必要があります。貯蔵としてもっとも現実的な方法が揚水発電です。夜間に下池から上池に水を汲み上げ、昼間のピーク時にその水を使って発電をすることです。しかし、揚水発電のコストは高いもので、余剰電力は、できるだけ売ってしまった方が利益がでます。そのため、電気自動車の充電が夜間に行われれば、多少安価でも売ることができるようになります。
 ところが、原発がなくなると、夜間に電力が余る傾向ではなくなります。となると、夜間に電気自動車に充電することは、そのために別途なんらかの火力発電を動かすことになります。そのため、深夜電力は昼間の値段と余り変わらないものになることが想像されます。


質問:揚水発電の発電容量はかなり大きいですが、原発との関係、さらには、原発がなくなったら、揚水発電はどうなるのでしょうか?

回答:現時点では、揚水発電は原発の一部のようなものです。原発を一定の出力で運転し続けて、夜間などに電力が余るような状況には、揚水発電で電力を貯蔵し、昼間の急激な電圧変動への対応することによって、安定な電力供給に資するという考え方です。
 昼間の急激な変動ですが、日本人がまじめに取り組んでいる昼休みの節電による需要減少に対応するには、水力発電のように、5分以内で停止状態からフル発電に立ち上がるような形式の発電機が必須なのです。
 原発を止めると、昼間の節電を止めることになる可能性も皆無ではないですね。


質問:海洋エネルギーとして何が有望だと思いますか?

回答:期待しているのは、津軽海峡での潮流発電です。
 海洋エネルギーには、潮流、潮汐、波力発電などがあるとされています。その他に、温度差発電、海流発電などがあります。いずれも、海水をなんらかの方法でエネルギー源とするものです。
 風力発電を海上に設置する洋上風力は、海洋エネルギーに分類すべきものではないでしょう。
 さて、海洋エネルギーのうち、温度差発電は、深海の温度である4℃と海面の温度差を利用して発電する方式ですが、熱帯ならいざしらず、日本では使えないことが証明されている発電方式です。
 波力発電は、波の力を利用するもので、近海では風力と同様に、気まぐれエネルギーの一種です。
 潮汐発電は、汐の満干による発電ですが、これならば、不安定ではありますが、予測が可能です。
 潮流発電には多種類のものがあります。鳴門海峡の渦潮のような流れを何と呼ぶのが妥当なのか。潮汐による潮流でしょうか。この流れを使うことで、発電はできますが、一日に潮流が止まる時間がありますし、方向が変わりますので、それなりの対応は必要です。
 もっと安定なものが津軽海峡や宗谷海峡を使う潮流発電です。対馬海流が日本海に流れ込んでいますが、出口が少ないため、日本海の潮位は、太平洋側に比べて1mぐらい高いのです。そのため、津軽海峡では、日本海側から太平洋側への潮流があり、ときに潮汐によって止まることがある程度です。
 このような流れを活用すれば、かなり安定に発電をすることができるでしょう。
 黒潮の流れを使うといったことも考えられますが、ときと場合によって、流れる場所が変わるので、なんらかの方法で場所を移動できることが必要となると、送電線をどうするのか、などといった問題があって、実現は難しいように思えます。


質問:海洋エネルギーの開発の障害となっていることは何ですか?

回答:1つは技術的な問題で、いかに効率よく発電をするかでしょう。まだまだ検討が不十分だからです。
 さらにもう一つは送電の問題です。海中を遠距離に渡って送電する場合には、交流ですと送電ロスが多いので、直流送電をすることが原則になります。となると、コストがマイナス要素になる可能性があります。
 さらにさらに難しい問題が日本に存在している既得権の問題です。海洋の場合には、漁業権でしょう。
 漁業権は法律によって定められているものですが、その補償はやり方が定めれらているようなものではなく、一般的な民法上の補償で、しかも、想定される被害によって補償額を決めるようなものでもない、というのが慣習らしく、なんとも不可解なものです。
 東京湾アクアラインでは、数100億円の補償金が払われましたが、漁獲量に対しては、日陰や漁礁ができたことに類することなので、却ってプラスだったのではないでしょうか。


質問:今後のエネルギー供給について、世界で見本になる国はどこですか?

回答:残念ながら、ありません。太陽熱、太陽光を導入して有名になったスペインですが、財政的には厳しい状況になっています。イギリスは先端的なことをやりますが、果たして、どこまでそれが継続できるのでしょうか。ドイツも、結局のところ、フランスから原発の電力を買っている状態を抜け出すことができなければ、自国のリスク的には同じようなものです。却って悪質かもしれないです。


質問:地熱の活用をもっとできるということに同意しますが、具体的な方策は?

回答:開発に掛かるコストを考えると、また、地熱を供給するパイプが詰まりやすく、交換が必要であることを考えると、それほど安価ではないことが問題ですので、やはり、電力会社に高く買い上げて貰うということが、成立条件になると思います。
 安定な自然エネルギーですので、量的にいくら買い上げても問題ありませんので、風力よりもメガソーラーよりも高い価格で買い上げる方針でも採算には乗ると思います。


質問:海上風力発電は有望とのこと。困難な点は何ですか?

回答:日本の海岸が急に深くなっていることでしょうか。デンマークなどの周辺は、海の深さが10m程度ですので、全く問題は無いのですが、日本の場合、陸地の影響を受けない程度ということで、200mぐらいでも沖合にでたら、深さが数10mもあるというのがザラだと思いますので。特に太平洋岸がそのような状況かと思います。
 そのため、日本の洋上風力は浮体型といった方式も考えられているようです。


質問:今後、ときどき停電するような供給にすれば、新たな産業が起きるということですが、もっと詳しい説明は?

回答:ふざけた発想だと言われるかもしれませんが、計画停電の怖さは、企業にも市民にも染み付いたと思います。もしも、あのようなことが再現されるのであれば、通電されているときに蓄電しておいて、停電になったら電力を使うといった考え方をもつ人が増えるかもしれません。そのため、家庭用蓄電デバイスという新たな産業が生まれる可能性があります。もっともこの蓄電デバイスとして、電気自動車を使うという考えを主張している人がいますが、それは自動車が走らない場合、要するに我が家のプリウスのような場合であれば、可能かもしれませんが、毎日、運転をするような電気自動車では全く可能性が無いでしょう。
 もしも、現在のように、深夜電力が安価であれば、夜の間に蓄電してそれを昼間に使うといったことも可能になるから、蓄電デバイスが売れるという考えは甘いと思います。
 深夜電力が安価であったのは、原発が相当量の電力を発電していたからできていたのだ、とすでに説明している通りです。
 もっとも、ピーク電力になる夏の昼間の電力使用量を下げる必要に迫られれば、深夜電力を安いままに維持し、蓄電デバイスを買ってもらうという戦略はあり得ます。要するに、来年の夏にピーク電力価格を高くするといったことが起きるかどうか次第、ということですが、来年の夏も大丈夫のような気もしますが、国民の危機意識が薄れたら、それだけ逆に危険かもしれません。


質問:直流送電と通常の送電の大きな違いについて、説明して下さい?

 直流送電にも何種類かあります。ここで進めるべきだと主張しているのは、高圧の直流送電、言い換えれば、電力幹線用の直流送電です。直流は、電力のオンオフが難しいとされていますので、また、安全性も問題とされています。そのため可能な範囲内でできるだけ高圧が良いということです。
 メーカーによっては、家庭内には「最後は直流」という機器が多いのだから、直流で配電するのが正しいと主張しているところもありますが、それには全く同意しません。
 幹線用の直流送電のメリットは3つ。
(1)電力損失が少ない。特に、海中ケーブルの場合には顕著。
(2)交流よりも電線の断面全体を使って電流が流れるので、細い電線で足りる。
(3)周波数というものが無いので、同期をするという厄介さが無くなる。


質問:大量に自然エネルギーを導入すると、電力網が不安定になるとされていますが、直流送電という解決法にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

回答:最大のメリットは、上記項目の3番目だと思います。すなわち、直流で送られてきた電力を半導体素子によって交流に変換してある地域の電力網に流しこめば、例え、この電力網が停電しても、他の地域の電力には影響を与えないため、結果的に強いシステムにすることができます。
 そのため、不安定な風力や太陽光による電力を大量に使えるようになる可能性がでてくるように思います。
 ただ、それ以前に、不安定電力株式会社という第二電力会社を造ることがより効果的かもしれません。直流ですので電圧さえ一定に保てば良いので、最大供給電流は制限されますが、蓄電用ならば、これで十分だからです。また、不安定な自然エネルギーで可変ピッチ可変速の揚水発電を駆動することができるようになれば、電池で貯めるよりもコストは格段に低いことでしょう。


質問:固体電解質型燃料電池が10月17日(明日)発売予定ですが、購入しますか?

回答:多分しません。現在、太陽熱温水器を所有しているからです。エッ、理由が分からない。説明します。
 これまで実用になっていた高分子型の燃料電池は、発電効率が徐々に高くなって30%程度にはなりましたが、電力だけを利用するのであれば、天然ガスを使ったコンバインドサイクルによる発電の熱効率が60%を超すことを考えれば、それほど威張れたものではありません。ただし、お湯を同時に沸かすことができるシステムなので、そのため、効率が良いと言われていました。
 固体電解質型燃料電池であれば、発電効率だけでも、通常の天然ガス発電機よりは高い45%程度にはなりますが、それでも、それだけで正当化するのは弱いと思います。やはり、お湯を同時に得ることによって、実質75%程度の熱効率を実現して初めて威張れる設備です。
 太陽熱温水器は、化石燃料を使いません。我が家のように冬期の集熱量を最適化する特殊な設置方法を採用すれば、真冬でも完全に晴れれば、お風呂1回分のお湯がぎりぎりで沸きます。家庭でのお湯のニーズというものは、お風呂を除くと、それほどでもないのです。
 ただし、もしも、家庭に給電される電力が不安定なものになるということであれば、それを補う機能も持ちうる固体電解質型の燃料電池が必須になる可能性もあり、そうなれば、話は別です。


質問:エネルギー供給技術に関して、明日、夢を1つ実現すると言われたら、何を実現して欲しいですか。

回答:現在使われているリチウム電池は、もはや開発の余地が余り無いように思います。もしも、リチウム電池を性能面、安全面、コスト面、使用資源面で超す次世代の二次電池、例えば、マグネシウム電池が明日できれば、それで世界に電池革命が起きるでしょう。これが夢かもしれません。