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OA紙の「エコ度」バトルとLCA 12.02.2007 |
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本HPで間伐材からのパルプを使っている紙をグリーンだという主張もあってもよいという趣旨で、紙のエコ度を取り上げたのは10月28日。この記事は、10月21日博多、西鉄ホールにおいて行った自らの講演と、林野庁の講演を元に書いたものであった。 http://www.yasuienv.net/R75K25.htm グリーン購入法の特定調達品目の検討会が開催され、再生パルプの30%程度は、出自が明らかな(森林認証など)バージンパルプで置き換えても良いことなりつつある。 http://www.env.go.jp/policy/hozen/green/g-law/19kentoukaikaisai.html これで丸く収まったという訳ではない、その検討会での資料には、4種類のLCAデータが引用されたのだが、同じLCAという方法論ながら、全く異なったデータだったのである。 −−−−−−−−−−−−− 訂正と追補:12月6日 その1 ブログの方で、通行人さんからのご指摘があったので、時間的な経過について明らかにしたいと思います。 10月28日に本HPに掲載した記事は、10月21日に博多の西鉄ホールにおいて行った自らの講演と、そのときに行われた林野庁による講演をもとに書いたものです。 この間に、10月26日に特定調達品目に関わる会議が開催されたのですが、それを把握しておりません。通常、会議の記録がWebで公開されるのは、数日後です。事前に予告はされるのですが、そこまで情報を追いかけることはしておりません。 その後、11月16日にTBSからの取材を受けるに先立って、11月8日ごろ資料1を受け取りました。そしてWebでもチェックしましたが、その時点では、この資料1は、改定中とのことで、Webからは入手不可能でした。その後改定され、現時点では現バージョンが入手可能になったようです。 12月2日付のこの記事は、資料1の現バージョンに基づいて書いたものです。 通行人さんのご指摘は極めて適切なものでした。感謝申し上げます。同時に、グリーン購入法へのリンクも追加しました。 その2 古紙パルプと呼ばれるものが、輸入品ではないとのこと。これは、日本製紙連合会からのご指摘。謹んで訂正します。日本国内において、牛乳パックなどからパルプを作っている事業者があるとのこと。 C先生:LCAという方法論は、絶対的な真実を示す方法ではない。LCAでもっとも重要なプロセスの一つにバウンダリー(境界条件)の設定というプロセスである。この部分は、LCAを実施する人が自分の意図をもっとも良く反映する形で決定する。ということは、この部分を解析すると、そのLCAの意図が見えるということになる。 A君:今回公表された4種類のLCAのうち、一つはCRESTのときの研究チームが出したデータではないですか。 B君:そのデータは、次のようなものだ。 ![]() 図1: CREST研究の時代(2001)につくった再生紙のLCA B君:トータルなCO2排出量は、再生パルプを使った紙の方が少ないが、化石燃料起源のCO2に限れば、R100がもっとも多い。 A君:次々とデータを示しましょう。次の図が、日本製紙連合会資料 ![]() 図2: 再生紙R100のLCA B君:日本製紙グループが提出していたLCAのデータとうものがあったようで、先ほど捜したのだが、HPにはもはや無い??? 産経新聞が今年の4月25日で示しているものも同じものらしい。多少表現が違うのだが。 ![]() 図3:日本製紙グループが発表したデータ。 A君:その他に、王子製紙のある工場のデータとして、日経エコロジー2007年11月に出たものがあります。 ![]() 図4:王子製紙のある工場のデータ。 A君:このデータの主張は、近年廃棄物、例えば、古タイヤや廃木材などを燃料として使うことが一般的になって、その結果、化石燃料の使用をほとんどゼロの状態のR100を作ることも可能だということです。 C先生:現時点で、このような4種類のLCAデータが入手可能。これらがどのような境界条件を採用して計算したものなのか、それを探り、その結果から、企業の本音を引き出そうというのが、今回の目的。 A君:それには、まず、CREST研究時のデータの説明が必要。 C先生:境界条件だが、ものの流れに関しては、これは常識的なもの。古紙は回収され古紙市場に入り、それを使う。恐らく、この点は、他のLCAでもそれほど変わらない。問題は、そこからだ。再生紙の製造時のエネルギーをどこから得るかだ。 われわれは、回収された古紙のうち、再生紙に本当になるのは、50%程度ではないか、という仮定をした。化学パルプから作られた紙だって、セルロースだけからできている訳では無い。塗工剤とか内填剤いう名称で無機物質が加えられている。炭酸カルシウムや粘土などがその実体。それは、インクジェット用などであれば、にじみを制御するのが目的だし、PPC紙であれば、静電気が旨く乗るような特性を制御するもの。 それ以外にも、短くなってしまった紙の繊維も、古紙にはならない。ペーパーモールドの原料になる場合もありうるが、それにもならないような質のものもある。それらは、熱回収されて製造工程のどこかで有効活用されているという仮定を用いた。 さらに、後でも出てくるが、アロケーションという問題もあって、まあ、こんなものだろうという配分を行っている。 そのためもあって、われわれのデータでは、R100の場合で、バイオマスからのCO2発生量は、化石燃料由来を含めた全CO2発生量の約42%に相当する。化石燃料が58%ということだ。 一方、図4の王子製紙の2004年版のデータだと、廃棄物燃料と黒液との占める割合が48%。廃棄物燃料に古紙からの使用不可能なセルロース部分の燃焼を含めているのか不明だが、いずれにしても、われわれのデータとそれほど大きくは違わない。化石燃料の寄与率は52%となっているが、廃棄物燃料の一部も化石燃料由来だと考えるべきものがある。例えば、廃タイヤであれば、天然ゴムだけからできている訳では無い。合成ゴムの原料は当然石油。 A君:最近、エコタイヤと呼ばれる商品がでてきていますが、天然ゴムは不思議なことに転がり抵抗が少ないらしい。そのため、ダンロップのEnasave ES801だと70%が非石油原料。横浜ゴムのDNA E−specだと80%が非石油原料。 B君:通常のタイヤだと45%ぐらいが非石油原料らしい。 A君:製紙用に使っている廃棄物燃料の中身は、木屑が重量ベースで60%と圧倒的。タイヤとRPF(廃プラと古紙から作る燃料)が残り。 B君:発熱量で考えれば、多少差が縮まる。いずれにしても、廃棄物燃料の中には、石油起源のものがかなりあることになる。 C先生:といった検討を行っても、王子製紙のLCAは、われわれのLCAと余り違わない境界条件を用いて計算されたものではないか、と思われる。 A君:ところが日本製紙グループのデータ(図3)はデータが大幅に違う。R100の製造にともなって排出されるCO2の96.5%が化石燃料だということになっている。 B君:そういう計算もできるというだろう。まず、再生紙を作るときのプロセスで、もっともエネルギーを要するのは、紙を抄いた後で乾燥する工程。この工程での熱量は、バージンパルプの場合では、リグニン分などが起源の黒液を燃やして得ている部分がある。この黒液からのエネルギーは、そのすべてがバージンパルプからの抄紙のためにだけ使われると「仮定」すれし、再生紙を抄くときには、全く使われないとでも仮定すれば、そんな結果を出すことは可能。 A君:それはLCAで重要な問題であるアロケーションと呼ばれる問題。実際の工程では、黒液からのエネルギーは一部再生紙の製造プロセスで使われているものと思われるのですが、それを意図的に整理して、黒液由来のエネルギーはバージンパルプを製造するためだけに使われると「仮定」することもできなくはない。 B君:その仮定が妥当かどうか、その説明が十分に行われていれば、その説明に基づいて、議論ができるのだが、日本製紙グループについては、HPに説明を見つけることができなかった。 C先生:日本製紙連合会の資料は、どちらかと言えば、日本製紙グループのものに近い。ということは、業界は、どうやら勢力が2分されており、多くの企業は、日本製紙グループと同様の状況にあると思えばよいのかもしれない。 A君:さて、それらの状況とは何か、ということになりますか。 B君:2006年の7月8日の日経に、「日本製紙・王子製紙は、古紙の使用を拡大する」という記事が出ている。 「日本製紙は、08年度までに古紙を原料化する設備の生産能力を約2割増やし、日産5500トンに引き上げる。酢力の石巻工場のほか、岩沼工場、八代工場、釧路工場で順次実施。 王子製紙も古紙原料の生産能力を約1割増強して日産4500トンに引き上げるほか、古紙を原料とする紙の品質強化にも投資する。古紙に含まれるインクを除去する工程を改良するなどして、紙の白色度を高める。主力の苫小牧工場と印刷用紙を生産する富岡工場に投資する」。 A君:どうもその記事を読むと、原燃料高騰が原因となっていますね。重油などの高騰で、チップの価格も1〜2割アップ。2005年には両者合わせて原燃料高だけで536億円の負担になり、経常利益減少の主因になった。一方で、製品の価格転嫁は進んでいない。 B君:まだ記述があって、「日本製紙グループの製紙原料に占める古紙の割合は04年度が51%で、これを2010年までに62%まで引き上げる。 王子製紙はすでに同60%台だが、今後も古紙原料の原料設備を増強していく方針」。 A君:さきほど、日本製紙のHPに再生パルプのCO2負荷に関する情報が無いということでしたが、再生紙については、2006年のCSR報告書で、再生パルプをOA紙などに使うと、漂白にコストが掛かるという記述がありますね。 B君:こんなところが周辺状況だな。 C先生:なんとなく読めてくる。もう一つ重要なことが勿論、中国。大量の古紙が輸出されているということだ。中国は、まだまだOA紙の質を問題にするような市場だけではないので、少しでも安い紙を作ればよい。ということで、古紙を買いあさっている。ところが、日本の紙市場は、多少違う。例えば、印刷用紙だと、雑誌の編集者などは、自分の書いた記事の見栄えが良いことを望むことが多いので、白色度の高いバージン紙での印刷を希望する。価格的にそんなに違う訳ではないから、それが認められる。OA紙にしたところで、やはり品質が第一というのが日本市場。 A君:となると、高価な古紙を買って、それを高度に漂白してOA紙にするにはますますコストがかかる。新聞紙とか板紙には白色度が低くても良いから、なんとかなる。コストを重視すれば、再生パルプの用途として白色度が問題になるOA紙というものを考えたくない。 B君:しかし、R100のOA紙は、グリーン購入法の対象になっている。となると、全く無視するわけにもいかない。 A君:もしも、すでにもっている設備があるのなら、しかもその設備が白色度の高い再生紙を作ることに適しているものならば、余りコスト負担の増加なしに、R100を作り続けることができる。しかし、現在の設備では、白色度の高いR100を作ることが不可能ということならば、新たに設備投資をしてまでR100を作ることは避けたい。 C先生:昨年7月の日経の記事がその状況を見事に描いている。日本製紙グループは、古紙の利用を2割程度増やすが、それはコスト面からの理由である。すなわち、単に量を増やすということのようだ。といことは、さらに投資をして、古紙の漂白工程などを改善・増強しようという訳ではない。一方、王子製紙は、すでにかなりの設備を持っているが、量的には1割程度の増加をするが、同時に脱墨・漂白プロセスを改善するということを表明している。 A君:なるほど。結論がでたようですね。現時点で、王子製紙は、すでに工程的な改善もすでに進んでいて、かなり品質の悪い古紙からでも、白色度の高いR100を作ることができるが、日本製紙グループのプロセスでは、恐らく品質の良い古紙からしか白色度の高いR100を生産することは難しい、ということでしょう。 B君:となれば、日本製紙グループとしては、製造コストを削減するという立場だろうから、高い古紙を購入することもできない。となると、R100を供給しないということにならざるを得ない。 C先生:そのあたりを正直に言う訳にいかない理由があったのだろうか。自分が日本製紙グループの経営者でも同じ判断をするだろう。そして、正直にそのような説明をするだろう。しかし、今回は、もともとこの業界では常識であった「再生紙CO2負荷は高い」ことを使うことを思いついた人がいたのだろう。 A君:それが墓穴を掘った。前回のHPで述べているように、紙のような木質型の製品では、 1.再生可能資源新規使用量 2.製造時のCO2排出量 3.廃棄(3R) の3種類の負荷を考慮することが妥当。製造時のCO2排出量だけで議論をすることの妥当性はない。 B君:要するに、紙の環境負荷の最大のものは、森林面積の減少である。できるだけ木質セルロースの持っている特性を生かす使い方をするのがベストということ。これがモッタイナイ思想と一致していて、紙繊維がモッタイナイかどうか、が環境負荷を考えるときの第一の項目。CO2の排出は第二の項目だろうか。 C先生:恐らく、紙の総合的な環境負荷が何かということに対して、余り知識の無い管理職がGOサインを出したのだろう。 A君:一方、グリーン購入法の特定調達品目の基準も変わるのですが、こちらは? B君:恐らくだが、王子製紙だけで現時点でのR100の需要に見合うだけの生産は十分可能なのだろう。 A君:一方で、森林認証をもっている森林からのパルプなら、再生可能資源だからということで、森林の減少にもそれほど悪い影響を与えているというものでもない、という解釈もあって、部分的に、出所がしっかりしているパルプはOKということにしたのだろう。 B君:バージンパルプだと確かにインドネシア産などの怪しいものが存在する。しかし、古紙パルプなら、本当に認証をしなくても大丈夫なものなのだろうか。古紙パルプの輸入量は? A君:例えば、こんなサイト、 http://www.beitsubo.com/news/article.asp?news_id=13490 に古紙パルプという言葉はあって、どういうものなのか明示されていないのですが、これは、恐らく輸入量では。 B君:計算すればすぐ分かる。 古紙:153万5千トン 古紙輸入:5千トン 古紙輸出:25万1千トン ここまでの合計だと178万1千トン 古紙パルプ:1万6千トンを加えれば 古紙合計が179万7千トン もしも引き算をすれば、 古紙合計が176万5千トン 古紙合計が180万トンだと言っているのだから、輸出されたものではない。 A君: C先生:
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