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  R100からR75K25へ 10.28.2007
     
紙リサイクルの一つの考察



 8月27日2007年の朝日新聞に、次のような記事が掲載された。

 コピー用紙に間伐材を認めるか現行の古紙100%維持か−−。省庁や国会、裁判所で使われるコピー用紙の規格をめぐり、林野庁と環境省が火花を散らしている。環境に配慮した物品購入法で、現在、政府が使えるのは、純粋な古紙再生紙のみ。間伐を提唱する林野庁が用途拡大を迫る一方、環境省は「リサイクルの後退につながる」と譲らない構えだ。(歌野清一郎)

C先生:大げさに言えば、行政の縦割り構造の問題か。

A君:2001年にグリーン購入法というものが成立していて、これは、国が購入する物品については、この法律の縛りを受けます。コピー用紙について言えば、グリーン購入法対象物品になっているのは、古紙配合率100%の製品だけ。

B君:いわゆるR100という製品で、再生パルプ100%でできている紙。政府が購入するコピー用紙としては、これ以外は駄目というのが決まり。他の紙、例えば、印刷用紙などは、R70の使用を認めている。

C先生:この記者によれば、印刷用紙、フォーム用紙などは、古紙70%以上とし、「間伐材や端材の利用も認めている」、と書いているが、これはミスリーディング。古紙パルプ70%とすると、残りの30%は、実になんでもよい。それこそ、インドネシアからの不法伐採した木材を原料にしたと疑われるパルプでも良い(?)ことになっている。

A君:林野庁の主張は次の通り。森林の保水力を高め、土砂崩れや河川の洪水を防ぐ効果を高めるため、補助金をつけて間伐を推進してきた。しかし、間伐材は木材としての市場価値は低く、森林に山積みされた間伐材は850万m3にも上る。事務用品の象徴であるコピー用紙に用途を広げ、間伐推進の追い風にしたい。
 林野庁の担当者は、「健全な森林を保つには間伐は不可欠。持続可能な森づくりは、温暖化防止にも貢献する。間伐材を使おうと旗振りをしている我々自身がコピー用紙にすら使えないのでは立つ瀬がない」と嘆く。

B君:自治体は、グリーン購入法に順ずることを求められては居るが、縛られるわけではないので、北海道は独自の判断をしている。コピー用紙の調達方針を見直し、北海道産の間伐材を15%以上使う条件を盛り込んだ。しかし、ためらう自治体も多い。熊本県の担当者は、「国が基準を見直さない限り、勝手に変更はできない」と言っているとのこと。
C先生:記事の紹介がまだまだ続く。

A君:古紙100%のみをグリーン購入法適合商品にしたお陰で、古紙100%のシェアは、同法施行前の00年度の11%から、05年度には34%まで伸び、古紙回収率も、ここ5年で6割から7割まで高まった。

B君:環境省は、これは、R100古紙が唯一の適合品になっているからだ、と主張している。担当者は、「古紙100%のコピー用紙は、資源循環の象徴。国の購買という公費を使って地球環境を改善していくのが制度の趣旨で、リサイクルの後退につながるような見直しは軽々にはできない」。「間伐材についても、持続可能な森林経営に役立つとの国際的な定義が確立されていない」、と突き放す。

C先生:しかも、古紙の需給の状況がこのところ大幅に変化している。古紙の輸出は、00年の37万トンから06年は389万トンと10倍増。その8割が中国向け。回収率が上がっても輸出に回ることで、再利用率は60%前後。国内の古紙の調達コストは大幅に高くなって、製紙各社は、経営上の問題からR100を作れないと主張。実際、日本製紙は、R100の製造を止めた。

A君:政治的には、規制改革会議への提案もある。「古紙100%」の基準を見直し、間伐材の利用を求める要望を、北海道と九州4県が提出。

C先生:さて、この問題の解決にはどんな方法があるだろうか。まず、どこか妙なところがあったら、その指摘をして貰いたい。

A君:まず、「国の購買で、地球環境を改善していくのが制度の趣旨で、リサイクルの後退につながるような。。。。。」
 これは、そのまま解釈すると短絡的なので、多分真意は、もしも、リサイクル率を下げると、インドネシア産の不法伐採パルプを使った紙が増えて、熱帯林の破壊が進む、と言いたいのだと思う。

B君:これは、後の話題になるだろうが、紙のリサイクルは、実は、化石燃料の使用増大を招く。だから、リサイクルすると地球温暖化は直接的には進むかもしれない。

A君:もう一つ環境省側の主張で妙なところは、本当にそう言ったとしたらですが、「間伐材についても、持続可能な森林経営に役立つとの国際的な定義が確立されていない」というところが意味不明。国際的な合意が無いという意味。京都議定書で認められた、3.8%の森林吸収が実際に何%認められるのか、どうやって判断されるのか、といった文書を環境省関係機関が発行したものから探してみると、
http://www.env.go.jp/nature/biodic/shinrin/kondan/02/mat02.pdf
http://www-cger.nies.go.jp/publication/D029/D029.pdf
といったものがある。
 これによれば、日本の場合だと「森林管理」という行為を行った場合に森林が二酸化炭素を吸収したと認定される。森林管理には、間伐を含む。となると、間伐という行為に対して国際的な合意があるようにも思える。

B君:森林吸収はなかなかその実態が難しくて、そもそも3.9%だったのが、いつの間にか3.8%になっている。

A君:林野庁の資料によれば、
http://www.oecc.or.jp/kaiho/no50/50p10.pdf
絶対値1300万t−Cという値が決まっていて、1990年の総排出量と比較すると3.8%になるというのが実態らしいですが。

B君:そして、日本の場合には、この3.8%という吸収量を認めて貰うためには、森林の手入れ=「更新、保育、間伐、主伐」が不足していて、2010年では、110万t−C程度不足すると考えられ、20万ha程度の間伐が必要だとしている。

C先生:間伐をすれば、「森林管理」になって、その分、「森林吸収分」が増えて、日本の京都議定書対応には貢献する。

A君:だから、間伐をすることに対する国際的な合意があるというよりも日本の社会が利益を得ることが問題なのでしょうか。

B君:恐らく、担当者は自分の担当のことしか考えていない。グリーン購入法を担当しているのは、環境省総合政策局。一方、「森林吸収」を担当しているのは、同じ環境省でも地球環境局。他局のことは考えないのではないか。

C先生:先週、九州でのシンポジウムで、林野庁が発表していたのだが、間伐はなんとか補助金で行うこともできる。しかし、そのときに間伐した木材を取り出して活用するところまでは手が回らない。そのため、次の写真のようになっている。



写真:間伐された木は、森林のなかに放置されている。林野庁提供。


C先生:大雨が降ると、これが流れ出して、下流域で被害を起こしたりする。

A君:これでは、そのうち腐るだけ。腐るときに、メタンも出すだろうし、温暖化にも良いことは無い。

B君:どう考えても、間伐した木材をなんらかの形で活用した方が良い。

C先生:これまでの理屈だと、
(1)インドネシア産のパルプなどを使うと、熱帯林の破壊が進む。R100を守れば、そんなことは起きない。
(2)間伐材を紙にすれば、「森林管理」が可能になって、日本の京都議定書対応が多少とも楽になる。

 簡単な話で、R100を単に減らしてR70にするのではなくて、その残りの30を間伐材からのパルプにすればよい。

 これをR70K30と書きたい。こんな規格の紙を作ってグリーン購入法の対象にすれば、環境省の心配も不要。

A君:R70K30だけでなくて、R80K20といった組成でも十分。

B君:先ほど言いかけたが、R100の再生紙は、温暖化影響だけを考えると、必ずしも良いとは言えない。



図: 再生パルプの含有量と製造に関わるCO2、蓄積されているCO2


A君:大分前のデータなので、久しぶりに見たけど、温暖化影響を考えると、バージンパルプがもっとも良い。しかし、それでは駄目な理由があって、紙を全部バージンパルプで作ると、森林への負荷が大きくなりすぎる。すなわち、森林が破壊される。しかも、セルロースには、寿命があるけど、大体4回程度は使える。となると、R70とかR80ぐらいが、セルロースのもっている能力を生かす組成だということになる。これが紙をリサイクルする理由

B君:勿論、環境省がR100にこだわってきたのにはそれなりの理由があって、この世の中には、どうしてもバージンパルプだけの紙が良いという人(本や雑誌の製作者)がいるものだから、R0の紙が作られている。全体としてリサイクル率を適正と思われる70%以上程度に維持するためには、そのためR100が必須。

C先生:最近になって、環境への貢献を本当に考えているプロの間では、間伐紙を有効活用すべきだという考え方が増えている。
 そのもっとも目立っている例が、「森の町内会」活動だ。オフィス町内会の発展形。

 以下、その内容を紹介したい。
 まず、間伐サポーター企業というものを募る。例えば、環境報告書などを作るときに、多少の貢献をしてもらう。具体的には、用紙代の10%を負担してもらう。負担する側としては、紙の値段が10%上がるが、それでも環境に良い方を選択するという考え方だ。 その費用を使って間伐を行う。「森の町内会」のやった第一回間伐では、間伐面積1.8haで間伐材赤丸47.3トンを得たが、そのために掛かった費用が、輸送費60万円、作業道開設費用17万円、伐採費用100万円。これに対して、補助金54万円、間伐材の売却代金55万円。これだと68万円不足。この68万円分を、間伐サポーター企業からの紙代10%増しで得た費用で負担する。
 間伐に寄与した紙というものを作る。これは、三菱製紙八戸工場に依頼、これまで4回の間伐を実施し、チップ化後117.3トンのアカマツを得たが、それを紙にして、製品重量122.2トン。これを「間伐に寄与した紙」として、FSC認証紙として販売。


A君:紙代など安いもので、A4で32ページのパンフレット状のものを製作する場合、印刷代が53.5万円だとすると、紙代は13.5万円程度。これを「間伐に寄与した紙」だということで15万円で買って使う。これでその企業としては、良いことをした、ということになる。

B君:比較的安上がりだし、53.5万円の費用が55万円の費用になるだけだから、それほどの負担にもならない。

C先生:善意が実るというやり方だと思う。なんでも費用が掛かると良くないという向きも居るが、この日本のような状況の国では、「善意が実る」という方法論を見つけ出して行うことが、日本人が誇りが持てる国民性を取り戻すためにも、必須なのでは、と思うが。

A君:日本の森林は、経済的に成り立たないという理由で放置されてきた。状況は多少良くなって、外材の値段が多少高くなってきたものだから、相対的に日本の杉材も条件が良ければ、使える状況になってきた。

B君:しかし、木材価格は、以前の1/3ぐらいに低下した。

C先生:林野庁から貰ったスライドを2枚ほど紹介して、今回の締めくくりにしよう。



図:木材価格の推移 林野庁提供



図:日本の森林の樹齢構成 林野庁提供


A君:その樹齢構成を見ると、間伐をするだけでなくて、木材を使わなければ駄目ですね。そして、新たに植林をする。

B君:ところが、植林をするにも費用が掛かるので、このところ皆伐を行って、植林をしない山地が増えている。

C先生:こんな現状をなんとかするために、もしも間伐紙を使うことが有効であるとするのなら、政府としても、R75K25ぐらいの紙を使うということがあっても良いと思う。林野庁の主張も、どうも、R100だけが環境に良い訳ではないという主張になると、環境省の面子を潰すので、実現は難しい。環境省の主張は、いささかリサイクルにこだわりすぎていて、紙の場合のリサイクルの目的は、森林保護だということを思い起こせば、間伐紙を使うことも、同じ目的だと言う結論を受け入れざるを得ないのではないだろうか。