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   再生可能エネルギーの高コスト体質 
       日本の国土限界を理解すべき 02.25.2018

               




 金曜日と土曜日は、リユースびんの九州シンポが行われて別府に居りました。ということで、やっとアップできました。

 さて、本日の記事ですが、再生可能エネルギーを大量導入しなければ、パリ協定に基づく2050年における80%削減は実現できないことは明らかですし、その後、今世紀後半のどこか、例えば、2080年でNet Zero Emissionを実現することも全く無理だということになります。

 しかし、これまでも述べているように、日本という国は、再生可能エネルギーの大量導入がかなり難しいのです。それは、次のような理由によります。
1.比較的小さい国土。
2.山がちで、平地が少ない。
3.人口が多いので、空地が少ない。
4.雨が多いので、太陽電池の発電量が少ない。
5.風力は、台風が来るし、一方で、無風の日もある。偏西風が不規則になる大陸の東側は不利。
6.海が急に深くなるので、洋上風力も困難。
7.送電線を張るにもコストが掛かる。
8.しかも、50Hzと60Hzという二種類の周波数を持つ世界でほぼ唯一の国。
9.国際的な自然エネルギー電力ネットワークを作るのが大変な島国。


 それなら原子力は、となると、福島第一事故のために、その未来はかなり暗いです。

 最終的には、できるだけ再生可能エネルギーを導入しても、恐らく、自給率は50%程度にしかならないでしょう。

 本日の話題は、いかにして低コストで自然エネルギーを入れたいと考えるのですが、将来を考えてみても、恐らく、世界で有数の高価な自然エネルギーが使われている国だと思います。

 その高コスト体質はどこから来ているのか。この記事を書く気になったのは、Wedgeの2月号を読んだことでして、表紙には、「入札失敗の太陽光」、「高コストの太陽発電入札失敗が示す政策不備」といった言葉が見えます。

 まずは、その記事のご紹介から。そして、「高コスト」に関する、主として、経産省と資源エネルギー庁の公式文書をチェックしてみることにします。

   

C先生:最近、太陽光発電のコストが大巾に低下しているのが世界の動向なのだけれど、それに完全に置いて行かれているのが、日本という国なのだ。これまで何の役にも立たないと思われてきた砂漠が、太陽光発電のお陰で、エネルギー生産の最適地になったからだ。昨年の終わりにサウジアラビアでの発電単価が、1.79セント/kWhになったのは極めて衝撃的。しかし、これは、土地の価格がゼロの砂漠だからこそできることだろう。

A君:日本の太陽光発電のFITの買い取り価格は、2018年は18円/kWhですから、まあ、10倍も高いのです。これでも日本でやると、少しは利益が出る程度のようですね。地面の価格が高いこと、工事費や設計費がボラれるのが原因でしょうか。太陽電池本体、パワコンなどの機器もちょっとは高いのですが、何倍ということではないので。

B君:進展しない理由として、法律的にも色々とあるようで、野外の駐車場の上に太陽電池を張ると、建設面積に参入されることになるとか、どうかと思う規制もある。

A君:太陽電池を張ると建設面積に含まれないということにもできないので、太陽電池と太陽電池の隙間を例えば、10cm以上とって、雨が降り込む構造にすれば良いとか、なんとかなりそうなのだけれど、この国は、余りにも規則がしっかりしすぎていると思います。

B君:国が国民生活に関与しすぎているとも言えるのだけれど、その根幹には、狭い国土のための高コストは避けられないし、既得権益も国土の狭さと無関係ではない。さらに、法律の抜け道を探して自分の利益だけを考えた事業を始めるという人が多いことの裏返しという点も。

A君:FITの開始当時の太陽光発電事業者が、低電圧分割という申請を行って、送電線の新設を電力会社の義務にしたというのがその典型。この自然エネルギー業界にも結構そのようなマインドの人々が居るということ。

B君:孫正義氏の太陽電池ビジネスも菅直人元首相との個人的関係で、恐らく、制度の設計にまで関与していたのに、ビジネスを実行して最大限の利益を上げた人だと言われているし。日本は、そんな人が多い国なのだ。

A君:孫さんがどこまで制度設計に関わったのか、良く分からないのですが、普通の感覚から言えば、自分で制度を作った人は、その制度の隅から隅まで知っているのだから、そのビジネスには加わらないのが、正義だとされていると思うのです。

B君:昨年、「忖度」という言葉が流行ったけれど、忖度をする役人を作ったことは、国のトップの責任。「忖度などをされたら、俺が困る」というのが本当のトップの持つべき正義観。

C先生:ちょっと無駄話が多いみたいのので、先に進もう。まずは、Wedgeの記事から説明を。

A君:了解。この記事は、朝野賢司(一橋大学・特任講師)の記述。FIT制度の批判派の一人だと思います。FIT最初の年であった2012年度の勢いは凄いものがありました。確かに高すぎた買入価格で、太陽光発電バブルでしたね。

B君:日本にもこれほど欲深い事業者がいたのか、ということを恐らく初めて実感した。ソフトバンク、オリックスを含めてだけれど。

A君:しかも、法律の隙間をキッチリと突いてくるのにも驚きでした。

B君:それ以来、日本はFITアレルギーとでも言える状況になってしまった。ちょっと制度が甘かったのは事実。

A君:そして、現時点でも電気料金に加算される賦課金は、電気料金の1割に達している。具体的には2兆1000億円。

B君:スマホ代のようなある意味ヒマつぶし用機器にあれほど料金を払っているのだから、生活必需品である家庭用のエネルギー価格は、もっと高くても良いように思う。

A君:日本のように、そもそも再生可能エネルギーが十分な供給量が無い国では、将来、どうしてもそうなるので、今から、高くしても良いかもしれません。

B君:しかし、そのような理解をしている人は少ないだろう。しかも、日本の電気は停電をしないので、日本人は電気の重要性を理解できない。使えることが当たり前の世界になっている。

A君:朝野先生の予測によれば、2030年度における賦課金は年間3兆6000億円になって、消費税額で言えば、約1.6%分に相当するとのこと。累積賦課金は、2050年までで69兆円に達するとのこと。

B君:日本という国が2050年の80%削減を実現しようとすると、どうしたって再生可能エネルギーを導入しなければならないけれど、残念ながら、最初にまとめたように、非常に高くつく国土構造になっている。事業者に過度に儲けさせるのは論外だけれど、高いことと過度な儲けは、もっとクリアーに分けなければならないと思う。

A君:まあ価格を下げることを絶対的な目標だとしたら、朝野先生のような考え方になるでしょう。しかも、どうも国が作る制度がいささか事業者に対して甘い点もあるので。

B君:確かに朝野先生の指摘を読むと、本来であれば、提出すべき事業用PVの報告書を出している企業は、35%に過ぎないのだそうだ。その理由が凄くて、システムのコストが安価な事業者が年報を出すと、買取価格より大巾に安いコストであることがバレてしまって、次年度に買取価格が下げられる仕組みが導入される可能性が高い。そこで、提出しない。反対に相対的にコストが高い事業者は、買取価格を下げさせないために、年報を提出するのだと言う。

A君:これは、未提出企業には、認定取消などの罰則を作ることが必要不可欠ですね。最初の年の呆れ果てた強欲企業が、恐らく報告書を出していないのだろうから。

B君:外国でどうなっているのか、というと、米国のOpen PV Projectというものがあって、設備別の設置住所、設置費用、発電量、補助対象プログラム、運転開始時期などが完全に公開されていて、どのような政策を打てば、コストダウンを促すことができるのか、データの解析が行われているとのこと。

A君:根拠となるデータを出させないというのでは、合理的な政策決定はできない。これは、大変な問題ですね。

C先生:というのが、現状のようだけれど、資源エネルギー庁、経産省などがどのような考え方なのか、それを報告書から探ってみよう。

A君:了解です。まずは、これ。
http://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/saiene/saienecost.html

特集記事「再生可能エネルギー」第1回となっていて、2017年9月14日の記事になります。

B君:目次は、
1.日本の再エネは高い?
2.世界の再エネのいま
3.日本でできる再エネコスト低減の取り組み
4.再エネ最大限の導入に向けて


A君:まずは、過去の振り返りからですが、2012年から年平均伸び率が29%だった。しかし、非住宅用の太陽光発電の日本・欧州の価格比較がありますが、

日本(2016年) 
 ◯モジュール・パワコン 14.1万円
 ◯工事費・架台     14.8万円
欧州(2014年)
 ◯モジュール・パワコン  8.5万円
 ◯工事費・架台      7.0万円

B君:ざっくり2倍ということだ。世界の発電コストは、太陽光の平均が10円/kWhを切ったのが2017年。そして、とうとう2円になってしまった。まあ、この記事では、3円/kWhとなっているけれど。その理由は、砂漠だからがかなり大きい。

A君:しかし、何がなんでも欧州が良いということでもないですね。ドイツは日本と同じくFITを導入していますが、2016年度での家庭負担は、2440円相当になっていて、日本の585円を上回る。

B君:勿論、ヨーロッパの再生可能エネルギーは風力。風力の強みはやはり夜でも発電できること。コストも、2015年には14円弱/kWhという価格が2017年には、8円弱/kWhまで下がっている。洋上風力発電の設置に必要な環境アセスメントや地元との調整も政府が主導するような仕組みになっていて、これが事業リスクを下げている。

A君:当然、日本もこんな方向を目指すべきなのだけれど、2017年4月のFIT法改正があって、事業効率の向上と制度の適正化を図ることになり、認定から一定期間を過ぎた未稼働の案件を排除したり、新たな未稼働案件が発生することを防止したり、色々なこともやってはいるようです。

B君:しかし、朝野先生が指摘している事業報告書の提出を義務化していないなど、やはり事業者に甘い点は残っている。

A君:次にこの記事に行きますか。
http://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/saiene/keitouseiyaku.html
 再エネの大量導入に向けて〜「系統制約」の問題と対策

B君:最初に語られていることが、同時同量の話。すなわち、電気は作る量(発電量)は使う量(需要量)と同じでなければならない。電線のどこにも貯めるための設備はないから。基礎中の基礎。

A君:このことすら一般の人々は分かっていない。

B君:さらに日本の電力系統の構造が、串団子状であるのに対し、ヨーロッパの電力系統は、格子状あるいはメッシュ状になっているから、柔軟性・安定性ともに、日本は落ちる。

A君:現在の電力会社に、電力系統を将来どこまで増強しなければならないのか、そのイメージを持つべきだと思っている人は居ないような気がするのですが。

B君:そのあたり、例によって、「国に任せる」主義がはびこっている。そうなると、結局、進む速度が遅くなってしまう。

A君:現時点は、時間の競争になっているのですが、そんな意識のある電力関係者は居ないのかもしれないですね。

B君:まあ、国が何か言い出すと、それに逆らえないという環境なのだろうか。

C先生:といったところで、国としては、東北エリアと東京エリアの連系線を強化すること、東京エリアと中部エリアの間には、50Hzと60Hzの境界もあるので、その変換容量を最大300万kWまで増強することを増強計画として発表している。しかし、こんなことになっていると、結局、電力会社は国有企業と同じだということになってしまう
 いずれにしても、すべての国は、今後、再生可能エネルギーをなんとしても増強しなければならないのだが、中でも、世界的にもっとも難しい国の一つである日本がどうするのか。他の国に比べれば多少お金がかかるのは仕方がない。
 その負担をどうするのか、産業界に負担を強いると、国際的な競争力が落ちてしまう。となると、やはり、炭素税のようなものを強化して、炭素税には国境調整を適用して、国際競争力を高めるといった方法を検討すべきだ。環境省は、どうも炭素税ではなくて、排出量取引が好みなのだ。それも当然で、排出量取引だと、企業にキャップを被せて、ある上限以上の排出については、排出量を買い込まなければならないことになる。そうなれば、排出量を一定程度に守るのは事実。しかし、排出量取引を実現するためには、企業が排出できる温室効果ガスの上限を国が決めなければならない。そのようなことが実現できる訳がない。それは、すべての企業を国有化することとほぼ同じであることを意味するのだから。
 要するに、削減量を確実に守りたい環境省、企業活動を阻害されたくない経産省で、いつでも戦いをやっている。しかし、いずれにしても、再生可能エネルギーを大量導入しなければならないのも事実。しかし、どうしても50%を超えるのは難しいだろう。そうなれば、どのようなゼロ炭素エネルギーを輸入するのか、水素あるいは水素から作ったアンモニアなのか、あるいは、どこから、可能性としては、ロシアと韓国だろうが、電線を引っ張って、ゼロ炭素電力の輸入をやるのか。こんな政治的な問題についても、今後、何年かで決定しなければならない。
 それには、政治家の意識がまだそこまで行っていないことが、最大のリスクファクターなのかもしれない。
 このように考えてみると、再生可能エネルギーが高いのそれほどでもないのと騒ぐことより、もう再生可能エネルギー100%を実現しないと、グローバル企業として認められない時代になっていることの方を重視した政策に移行しなければならないのではないだろうか。