|
|
|
過去2回連続して、「当面の課題」なる記事を掲載してきた。この記事に対して、ご質問というよりも専門家としてのコメントをいただいた。 その内容は、資源生産性の定義に関わることである。今回のHP中では、この資源生産性の指標として、 答えは、「駄目なのは分かっているが、それなりの意味があるのではないか」。 C先生:今回は、どうも言い訳のための記事になりそうだ。しかし、できるだけ、他の情報も加えてまともな形にしたい。 A君:それでは、B君が尋問係を担当します。 C先生:仕方が無いから、被告役をやるか。 B君:まず、表面的なことから。 C先生:気分の問題だとも言えなくは無い。しかし敢えて言えば、多少のニュアンスの追加を意図したものだ。それは、「リュックサック」である。 A君:解説役です。「リュックサック」とは、「隠れたフロー」の日本語訳。本名は「エコロジカルリュックサック」。World Resource Institute と国立環境研との共同研究によって提案された概念。「資源の採取にあたって、発生する副産物、廃棄物。あるいは、建設工事による掘削で発生する土」などを意味する言葉です。 C先生:投入量と書くと、そのものを生産するために投入した量という感触になるが、資源採取量と書くと、採取のときに付随する環境負荷が発生していることも考慮すべきか、という議論になることを期待してのことだった。 B君:露天掘りの鉄鉱石などの場合であれば、副生物という意味だけならリュックサックは比較的少ない。それに対して極端な場合がダイヤモンドとか金。詳しいことは知らないが、ちょっと調べてみたら、母岩中に含まれるダイヤモンドンの質量は約2000分の1とのこと。ということは、2トンの母岩を掘り出して、1kg。これは変だ。余りにもダイヤモンドの取れすぎ。 A君:母岩4トンから1カラット(0.2g)というデータも有りましたよ。 B君:そのぐらいなら有りそうな話だ。20000000分の1。2000万分の1。万という字を書き漏らしたのだな。 C先生:宝石グレードの割合は更に少ないはずだ。10%もあれば良い方ではないか。 A君:0.25カラットぐらいのダイヤをお持ちの方は、それをじっと見て、10トンもの岩が掘られたと考えて見て下さい。これが自然の改変を伴う訳。 B君:次の尋問。それは分かったが、製品重量などを使ってしまったら、資源採取量とは全く違うではないか。 C先生:その通り。全く違う。 B君:言い訳も無いのか。 C先生:無い訳ではない。鉄の場合をちょっと考える。 「銑鉄1トンを製造するのに大略1.5トンの鉱石、800kの石炭、石灰石150kを必要とします。日本の高炉製鉄会社は年間約7千5百万トン(平成12年度は8千万トン)の銑鉄を生産していますが、原料となる鉄鉱石約1億1千万トンは全量輸入に依存しています。 これら鉄鉱石は主としてオーストラリア、ブラジル、インドで採掘され船で運ばれます。運搬コストは水上輸送が最も安いので、比較的後進だった日本の製鉄業は沿岸に作られました。(昔は鉄鉱石か石炭の産地に作られた) これはブラジルのイタビラ鉱山です。 このあたりの山は、山全体が高品位の鉄鉱石で出来ているため、山を次々に輪切りにし専用運搬列車に積み込み送り出します。年間5000万トン積み出し、日本には半量が来ています」。 要するに、銑鉄の場合には、ほぼ純粋な酸化鉄が原料として使われているということを意味する。そして、鉄1トンを作るには、原料合計で2.5トン程度を必要とする。すなわち、製品になる割合が40%ということになる。 A君:資源採取に伴う廃棄物の発生は比較的少ない。 C先生:一方、半導体用シリコンの場合だが、もともとの原料は、石英(水晶、珪石)で、品位の高い鉱石が無い訳ではない。そこで、採取時の廃棄物の発生量はそれほどのものとは思えない。 B君:鉄の場合だって、石炭はエネルギー源。と考えてエネルギー源を除けば、鉄1に対して、資源は1.65倍使用すると考えればよいことになる。これは、半導体とは一桁ぐらい違うが。 C先生:その1桁を大きな違いと見るか、そうでもないと見るか。先日指摘した自動車と半導体メモリーの価格の違いは、まさに数桁違うから、1桁程度の違いならそんなにも違わないという言い訳も成り立つ。 A君:エネルギー源を別扱いすればというのが条件ですね。 B君:それについて説明を要求する。 C先生:再び被告扱いか。それは、先日来提案している6本の軸、すなわち、 A君:シリコンなどの場合、研磨クズのようなものは、最終処分されれば、3番目の項目で表現が可能であり、もしもなんらかのリサイクルプロセスに入れられれば、そこでエネルギーが必要になるから、4番の項目で表現できることになる、ということで良いですか。 B君:ここまでの議論で分かることは、資源採取量ということをライフサイクルアセスメント的にキッチリ詰めることができれば、それに勝るものはないが、もしも不可能であれば、製品重量を代替品として使用することも、全く意味が無い訳ではないということか。 C先生:ただし、それには、複数の軸を使用して総合的なものの見方をする必要がある。 A君:なぜか、我らが四軸法なるものがちらちらしてきましたね。 B君:調べてみたら、四軸法は、2000年5月に少々解説をしているだけだ。 C先生:それは、容器間比較研究会の報告書に関する記事だ。それ以後、この四軸法は結構発展している。その最大の例が、グリーン&サステイナブルケミストリー賞なる賞だ。今年から環境大臣、経済産業大臣、文部科学大臣それぞれの賞に昇格したのだが、その環境負荷の総合的表現法として、この四軸法が使用されている。 A君:もう一度解説をしますと、この方法は、2種類の同種の製品/サービスについて相対的な比較をするという条件で使用されます。その製品のライフサイクルでの@二酸化炭素排出量、A環境負荷発生量、Bバージン資源使用量、C最終処分量が、旧製品に対して新製品がどのぐらい改善されているか、といった相対的な値で示すものです。 B君:もしも、製品の価値が違うものであれば、例えば車で、プレミアム車と大衆車との比較であれば、価格を基準として規格化して比較をするという方法もありうる。要するに、100万円あたりの環境負荷量という感じだ。 A君:素材の場合であれば、機能の向上を考慮して、同一機能の量を基準として規格化して比較する場合もありえます。例えば、強度が2倍になった素材があれば、実際の製品には、半分の量を使えば良いことになりますから、機能を基準にして規格化するという方法があり得ます。 C先生:我々の表現としては、この四軸法で表現される囲まれた面積が環境負荷(=I)で、これを分母とし、そして、製品の価格・機能(=P)を分子にした指標、P/Iがかなり広範に使用できる指標になるのではないかという言い方をしている。 A君:今回提案している6本の軸ということについても、本当ならば、この四軸法で表現できる部分が大部分です。 B君:例えば、基本計画の指標の一つ、「循環利用率」。これも、単に循環して使えば良いというものではない。バージン資源使用量やエネルギー使用量が低下することが重要だ。 A君:本来なら、四軸法で表現すべきだということですか。 C先生:そこまで主張するつもりは無い。なぜならば、この指標は結構重要な役割を果たすからだ。明示的にこの指標を使うことが必要な場合がある。 A君:そうかもしれませんね。これまで、リサイクル率とか回収率とかで循環をどのぐらい実現しているか、ということを表現してきましたが、本当に必要なのは、その製品がどのぐらいリサイクルされているか、される可能性があるか、ということではなくて、実際にどのぐらいの循環素材を使用しているか、ということですから。 B君:この当たり前の話が当たり前でないのがこの世の中だ。その最悪の例が容器素材戦争に見られる。 A君:スチール缶とアルミ缶の争い。場合によってはペットボトルを含む。 B君:それそれ。スチール缶は、バージン素材だけでできていて、循環利用率がゼロだ。鉄関係者は、これを異常に気にしていて、色々と言い訳をする。 C先生:言い訳なら良いのだが、非常に変な理論を作るから困る。スチール缶の回収率は統計上の数値は非常に高くて、80%以上。この素材は電炉の原料になって、建材用の丸棒やH型鋼などになる。ここまでで止めておけば良いのに、出鱈目な議論が出てくる。スチール缶は、丸棒やH型鋼の原料になるのだから、スチール缶の環境負荷を考えるとき、鉄鉱石・石炭の採掘から粗鋼の生産までの環境負荷は、勘定に入れなくて良い、といった理論だ。 B君:なぜなら、スチール缶のスクラップは、粗鋼相当品で、それが丸棒やH型鋼になるのだから、という訳。 A君:ペット業界も帝人のように、ケミカルリサイクルをやり始めるところ以外は、そんな理論に魅力を感じているでしょうね。回収したペット樹脂は卵パックの原料になるから、石油採掘からペット樹脂生産までの環境負荷は、ペットボトルの環境負荷とは見なす必要は無い、と主張できますから。 B君:こんな理論を誰に聞かせるために作っているのか。それが問題。環境情報としては、一般市民社会が容易に理解できて、受け入れることが可能な理論なり指標なりを使わなければならない。 A君:一般市民にとっては、飲料缶を持ったときに、この缶に使われている素材の60%は再生材料ですとか、いった表現が良く、それ以外は難しい。 C先生:紙の古紙使用率のような考え方が、明確な表現法だ。もっとも、紙の場合でも、古紙利用率の分母になるのは、紙全体の重さではなくて、セルロース分だけだが。 B君:スチール缶のように、カスケードしかできない素材の公平は表現が何か、これは、確かに問題なのだが、自分達に有利な理論で、他人が理解できないようなものを出すという態度は問題。 C先生:それに加えて、スチール缶は、蓋の部分にはアルミを使っている。このアルミは、スチール缶のスクラップに入ってしまえば、酸化されてしまい利用されることはない。この問題も含めて、どのような取扱いをするか、公平な理論とは何か、それを議論すべきだろう。 A君:スチール缶関係者の間では、蓋のアルミは脱酸素作用があるし、また電炉で酸化されて発熱するから、エネルギー資源だ、という解釈すらあるそうですよ。 B君:恐るべき解釈だ。アルミを燃料に使ってよいのなら、折角の資源が無駄になるのみ。アルミは大量の電力を使用して作られているのに、それが単なる発熱源にしかならないのだから。熱はエネルギーの最下等の形態である、という熱力学的な序列を知らないのだろう。 C先生:こんな業界の都合だけの議論をしているようでは、6本の軸のうちの「拡大製造者責任」の受け入れも全く望みが無いことになる。 A君:なんだかスチール缶業界の「当面の課題」の議論が始まったような感じですね。 B君:「カスケードリサイクルを誰でもが分かるように説明すること」、これをスチール業界に対する「当面の課題」として提供しよう。 C先生:一つのアプローチが価格によるアロケーションだろう。粗鋼が5万円/トンとして、スチール缶のスクラップの価格が、まあ、アルミ缶と一緒だとなんとか引き取ってもらえるといった程度。そこで1000円/トンとすれば、スチール缶スクラップの中に含まれている鉄の価値は、粗鋼の1/50程度だということになる。この分をカスケードリサイクルの効果だと評価するのが妥当だ。 B君:一般社会の常識に合うような形の考え方を提案してもらいたいものだ。 C先生:スチール缶について妙なことを言うようだと、Justice & Fairnessが21世紀を生き抜く企業のキーワードなのだから、一般社会は自動車のアルミ化を良しとするかもしれない。社会をバカにするとそのぐらいのしっぺ返しが来る。 |
|
|