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リサイクル直感教材Ver.2 02.01.2003 ![]() |
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2001年1月に、リサイクル実感教材なるエクセルによる循環を表現できるプログラムVer.1を公開した。先日も述べたが、最近リサイクルの本を書いている。そこで、この教材を使おうと考えたのだが、状況が変わっていて、プログラムを変える必要が出てきた。 それはなぜか。今年、帝人がペットボトルのボトルへのケミカルリサイクルを開始するとされている。これまでのプログラムでも、リサイクルの表現は可能だったのだが、ケミカルリサイクルが、通常のマテリアルリサイクルに比べると、エネルギー的にも、環境汚染の面でも有利なことは無いということを表現する必要が出てきた。 そのため、循環のフローを全面的に見直して、新しいプログラムを作成したので、ここに公開したい。 利用環境:Excelのマクロを使って実現されているので、マクロが実行可能な環境が必要。Excelを使うことができれば、まず問題は無い。 著作権:特に主張はしません。配布されるときには、作成者が誰であるかを付記してください。 使用マニュアル (0)ダウンロード (1)プログラムの読み込み (2)表示される画面 (3)操作可能なこと (4)バルブ開閉用スピンボタンの操作 それぞれのバルブの近傍に、開閉を制御できるスピンボタンがあります。開閉度がゼロだと、水平方向へすべての水が流れます。上▲のボタンを押せばバルブが開き、下▼ボタンを押せば、バルブが閉じます。増加減少は5を単位として変化し、開閉度の最小値は0、最大値は100となっています。 (4−1)バルブ開閉に伴って起きる変化 すべてのバルブが0になっている状態は、全量が使い捨てになります。すなわち、100.0の使用/保守を確保するためには、地球から100.0採取し、最終的には、地球に全部=100.0が排出されることになるからです。 矢印を流れる量を数字で表現しているだけですと、全体的な様子を一目で判定するのは困難です。そのため、FlowChartボタンが用意されています。このボタンを押すと、別の窓が開いて、線の太さで流量が表現された図形が得られます。 バルブの開閉度を変えると、上に2つ、下に1つ示された棒グラフが変化します。いずれのグラフも2本の棒からなっていますが、上の棒が、全く循環の無い状態を基準にした負荷・コストなどを示しています。詳細は、(5)で記述します。 (4−2)リサイクル率制御バルブの効果 このバルブを開け閉めして、リサイクルの効果を確かめて見てください。是非注目していただきたいことは、地球からの資源採取量が、このバルブをいくら変化させても100から変わらないことです。リサイクルが効果を生むかどうか、それは、そのリサイクルによって製造される「再生品」がどのぐらい有効活用されるか、によって決まるのです。 現在、ペットボトルの回収量は、40%を超したところです。ペットボトルから再生されたPET樹脂は、ポリエステル繊維やシートなどに使用されています。かなり中国などへ輸出もされているようです。 いくらリサイクルをしても、ペットボトルの使用量を減らさないと、資源の節約にはなりません。 これで終わりですので、リサイクルバルブを全部閉じてください。 (4−3)リユース率制御バルブの効果 このバルブを開けると、リユースが始まります。容器の場合で言えば、ビール瓶や牛乳瓶がリユースの代表格です。一升瓶などというスター級が昔はあったのですが、最近は、落ち目になっています。 リユース率は、例えば、ビール瓶の場合でしたら、95%ぐらいにしてみてください。5%がリサイクルあるいは廃棄されることになりますが、これで、ビール瓶が20回使われることに相当します。 なぜならば、製品製造から5.0という量が使用/保守に供給されて、100.0という機能を果たすから、100/5=20になって、20倍有効に使われていることになるからです。 この状態でFlowChartボタンを押してみると、リユースループだけにモノが流れていることが良く分かるはずです。 牛乳瓶は20回どころの使用回数ではないはずです。その状態をこのプログラムで実現しようとすると、ちょっと裏技を使う必要があります。AD82のセルを選択して、直接数値を入れてください。例えば、98と入れれば、50回使用の状態になります。 ヨーロッパ諸国では、ペットボトルもリユースされている国が多いです。それは、リユースによる環境負荷削減効果が大きいからです。これは、後述。 それでは、リユース率をゼロに戻して次に進んでください。 (4−4)水平率バルブ、プラス水平率バルブの説明 リサイクルには、水平リサイクルとカスケードリサイクルがありますが、この2つのバルブはその流れを決めるものです。 鉄にしても、アルミにしても、はたまたガラスにしても、マテリアルリサイクルと呼ばれていますが、実際には、高温にして液体の状態に戻されて、再度利用されています。再素材化にかなりのエネルギーが掛かります。アルミが再素材化に比較的エネルギー使用量が少ないのは、融点が低いことが大きな要因です。 プラスチックも、直接液体に戻して形を変えるだけで製品を作るマテリアルリサイクルがありますが、これは、非常に少ないエネルギーで再利用が可能です。使用済みの塩化ビニルのパイプや継ぎ手などは、マテリアルリサイクルでもとの製品に戻すことが可能です。 多くのプラスチックは、使用済み製品が、元の製品に戻る水平リサイクルが行われることは極めて希です。水平リサイクルが行われているのは、工場から排出される端材が、再度粒状に成形され、製品製造プロセスに戻されること場合に限られていました。 ところが、ペットボトルがペットボトルに戻るということになりました。それがケミカルリサイクルというものです。高分子であるPET樹脂を、化学的に分解して、化学原料に戻し、精製して再度高分子を作り、石油を原料とする新品の樹脂と全く同じ性能のものを作ることができる、というのがケミカルリサイクルです。 すなわち、PET樹脂のケミカルリサイクルが実施されるようになると、プラスチックのリサイクルには、全く違った二種類のプロセスがあって、その違いを表現しようとすると、2種類のバルブを設ける必要があります。そこで、プラスチックのマテリアルリサイクル専用に、新たにプラ水平バルブが出現しました。 (5)リサイクル効果の判定 リサイクルを行うのは、それなりに意味があるからだと考えられます。本来の意味は、資源・エネルギーが有効活用されること、が原理原則です。しかし、経済的な行為である以上、コストが大きな要因になります。また、環境負荷として、最終処分量や水質汚染などが減少することも重要な要素です。 そこで、リサイクルにともなって、資源消費量、エネルギー使用量、最終処分量、環境負荷量などがどのように変化するかを表現できるようにしました。 資源消費量は、地球からの採取量です。最終処分量は、地球への排出量です。いずれも、数値で表現されますから、一目瞭然。 エネルギー使用量、環境負荷量、コストは、それぞれのプロセスがどのぐらいの寄与があるか、その相対的な値を入力する必要があります。当然、原材料にも素材にも製品にも輸送というプロセスが関与しますが、それは、例えば、製品の輸送に関わる負荷は、その前の製品製造プロセスに含めて考えることにすれば、良いと思います。 現在入力されている値は、厳密なものではまるで有りません。 コスト相対値 環境汚染相対値 こんな値が入っています。少なくとも、対象がアルミだったとしたら、素材製造と再素材化の値の比が不適当でしょう。その他の素材については、まあこんなものかもしれません。
入っているデータがいい加減ですから、この議論は相当にいい加減ですが、ものの本質は、こんないい加減なデータでも分かるという例だとお考え下さい。 まず、バルブの開閉率を次のような値にして下さい。 リユース率 0 このとき、エネルギー消費量の値を読むと、11.65になっています。環境汚染は16.05、コストは12.7です。この値を基準にします。 さて、水平率を0から50まで上げてください。 エネルギー消費 11.65 → 11.2 のように変化しましたので、確かに、効果があることは分かります。 それでは、水平率を0に戻して、リユース率を10にして見ます。 エネルギー消費 11.65 → 10.785 のように変化しました。リユース率をたった10%、すなわち、10本に1本をリユースするだけで、50%ものボトルtoボトルを行なうよりも効果があるのです。 資源採取量は、確かに50%の「ケミカルリサイクルによるボトルtoボトル」の方が少ないのですが、プラスチックの場合には、資源採取はエネルギー消費と同義ですから、ここをどのように理解するか微妙です。 最終処分量は、逆に、リユースを行なった場合の方が優れています。 このシミュレーションが、実態をどのぐらい表現しているか、それは良く分かりません。しかし、「ケミカルリサイクルによるボトルtoボトル」をやる企業側が、このようなデータを提示し、なぜボトルtoボトルをやるのか、その議論を巻き起こして欲しい、と思います。 (7)読者の皆様への宿題 |
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