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  リサイクル直感教材Ver.2 02.01.2003



  2001年1月に、リサイクル実感教材なるエクセルによる循環を表現できるプログラムVer.1を公開した。先日も述べたが、最近リサイクルの本を書いている。そこで、この教材を使おうと考えたのだが、状況が変わっていて、プログラムを変える必要が出てきた。

 それはなぜか。今年、帝人がペットボトルのボトルへのケミカルリサイクルを開始するとされている。これまでのプログラムでも、リサイクルの表現は可能だったのだが、ケミカルリサイクルが、通常のマテリアルリサイクルに比べると、エネルギー的にも、環境汚染の面でも有利なことは無いということを表現する必要が出てきた。

 そのため、循環のフローを全面的に見直して、新しいプログラムを作成したので、ここに公開したい。

 利用環境:Excelのマクロを使って実現されているので、マクロが実行可能な環境が必要。Excelを使うことができれば、まず問題は無い。
 
 画面解像度:現在、ズームを75%にすることによって、1024×768の画面(XGA)で丁度フィットするように作成してある。しかし、Excelのツールバーが多数使用されている状態だと、画面のサイズが不足する。メニューから表示→ツールバーにして、できるだけ表示されているツールバーを減らしてください。あるいは、メニューから表示→ズームで、倍率を適当なところに指定してください。

 著作権:特に主張はしません。配布されるときには、作成者が誰であるかを付記してください。


使用マニュアル 

(0)ダウンロード

 ファイルrecycle_new.xlsをダウンロード。ファイル名を右クリックして、メニューから「対象をファイルに保存」を選択してダウンロードして下さい。サイズは、100kB強ありますので、多少時間が掛かるでしょう。

(1)プログラムの読み込み

 Excelのバージョンが何か、余り意識していませんが、恐らく、Excel98以降程度なら動作するものと思われます。ただ、動作確認は、Excel2000によって行っています。
 ファイル recycle_new.xlsを開くと、マクロの有効、無効を確認するメッセージが出るので、必ず、「有効にする」を選択して下さい。無効にすると、プログラムが動作しません。

(2)表示される画面

 通常、左上がU72、右下がAK112ぐらいの範囲が表示されるはずです。もしもこの部分が表示されないようならば、この範囲が表示されるように、表示を調整して下さい。以下表示画面です。

(3)操作可能なこと

 以下の3種類の操作が可能。それ以外は無意味。
@ バルブ開閉用スピンボタンの操作。
A FlowChartと書かれたコマンドボタンを押すこと。
B エネルギー消費、コスト相対値、環境汚染相対値の原単位テーブルの値を書き直すこと。

(4)バルブ開閉用スピンボタンの操作

 「循環」を含めて、製造・消費などに関わる人間活動は、物質を流している。まず、物質の流れは水の流れのようなものだと考えます。その流れの量を制御するバルブとして、4つのバルブが用意されています。すなわち、リユース率制御バルブ、リサイクル率制御バルブ、水平率制御バルブ、プラ水平率制御バルブの4種であす。いずれも、白丸で表現されています。

 それぞれのバルブの近傍に、開閉を制御できるスピンボタンがあります。開閉度がゼロだと、水平方向へすべての水が流れます。上▲のボタンを押せばバルブが開き、下▼ボタンを押せば、バルブが閉じます。増加減少は5を単位として変化し、開閉度の最小値は0、最大値は100となっています。

(4−1)バルブ開閉に伴って起きる変化

 バルブの開閉度を変えれば、当然のことながら、流れる量が変わります。矢印の近くにある赤い数値がその矢印を流れている物質量を示しています。最小量が0.0で最大量が100.0になっています。全部の流量を変えては何がなんだか分からなくなりますので、使用/保守の右側にある矢印を流れる流量は、100.0で固定されています。

 すべてのバルブが0になっている状態は、全量が使い捨てになります。すなわち、100.0の使用/保守を確保するためには、地球から100.0採取し、最終的には、地球に全部=100.0が排出されることになるからです。

 矢印を流れる量を数字で表現しているだけですと、全体的な様子を一目で判定するのは困難です。そのため、FlowChartボタンが用意されています。このボタンを押すと、別の窓が開いて、線の太さで流量が表現された図形が得られます。
 この図形を出してみると、流れが実感できると思います。不要になったら、closeボタンをおして閉じてください。

 一例を示します。これは、リサイクル率が50%、水平率が50%の例です。

 バルブの開閉度を変えると、上に2つ、下に1つ示された棒グラフが変化します。いずれのグラフも2本の棒からなっていますが、上の棒が、全く循環の無い状態を基準にした負荷・コストなどを示しています。詳細は、(5)で記述します。

(4−2)リサイクル率制御バルブの効果

 このバルブを開けると、リサイクルが始まります。中間処理され、廃棄されていた製品の一部が、収集/リサイクルへと移動を開始します。水平率=0、プラ水平率=0だと、そのまま直進して、別用途に行きます。例えば、リサイクル率制御バルブを50%開けると、別用途に45.0の流れが行くことになります。それは、リサイクル工程では必ず廃棄物がでるが、その割合を10%(固定)であると、仮定しているためで、別用途に行くのは、50×0.9=45となります。

 このバルブを開け閉めして、リサイクルの効果を確かめて見てください。是非注目していただきたいことは、地球からの資源採取量が、このバルブをいくら変化させても100から変わらないことです。リサイクルが効果を生むかどうか、それは、そのリサイクルによって製造される「再生品」がどのぐらい有効活用されるか、によって決まるのです。

 現在、ペットボトルの回収量は、40%を超したところです。ペットボトルから再生されたPET樹脂は、ポリエステル繊維やシートなどに使用されています。かなり中国などへ輸出もされているようです。

 いくらリサイクルをしても、ペットボトルの使用量を減らさないと、資源の節約にはなりません。

 これで終わりですので、リサイクルバルブを全部閉じてください。

(4−3)リユース率制御バルブの効果

 このバルブを開けると、リユースが始まります。容器の場合で言えば、ビール瓶や牛乳瓶がリユースの代表格です。一升瓶などというスター級が昔はあったのですが、最近は、落ち目になっています。

 リユース率は、例えば、ビール瓶の場合でしたら、95%ぐらいにしてみてください。5%がリサイクルあるいは廃棄されることになりますが、これで、ビール瓶が20回使われることに相当します。

 なぜならば、製品製造から5.0という量が使用/保守に供給されて、100.0という機能を果たすから、100/5=20になって、20倍有効に使われていることになるからです。

 この状態でFlowChartボタンを押してみると、リユースループだけにモノが流れていることが良く分かるはずです。

 牛乳瓶は20回どころの使用回数ではないはずです。その状態をこのプログラムで実現しようとすると、ちょっと裏技を使う必要があります。AD82のセルを選択して、直接数値を入れてください。例えば、98と入れれば、50回使用の状態になります。

 ヨーロッパ諸国では、ペットボトルもリユースされている国が多いです。それは、リユースによる環境負荷削減効果が大きいからです。これは、後述。

 それでは、リユース率をゼロに戻して次に進んでください。

(4−4)水平率バルブ、プラス水平率バルブの説明

 リサイクルには、水平リサイクルとカスケードリサイクルがありますが、この2つのバルブはその流れを決めるものです。

 鉄にしても、アルミにしても、はたまたガラスにしても、マテリアルリサイクルと呼ばれていますが、実際には、高温にして液体の状態に戻されて、再度利用されています。再素材化にかなりのエネルギーが掛かります。アルミが再素材化に比較的エネルギー使用量が少ないのは、融点が低いことが大きな要因です。

 プラスチックも、直接液体に戻して形を変えるだけで製品を作るマテリアルリサイクルがありますが、これは、非常に少ないエネルギーで再利用が可能です。使用済みの塩化ビニルのパイプや継ぎ手などは、マテリアルリサイクルでもとの製品に戻すことが可能です。

 多くのプラスチックは、使用済み製品が、元の製品に戻る水平リサイクルが行われることは極めて希です。水平リサイクルが行われているのは、工場から排出される端材が、再度粒状に成形され、製品製造プロセスに戻されること場合に限られていました。

 ところが、ペットボトルがペットボトルに戻るということになりました。それがケミカルリサイクルというものです。高分子であるPET樹脂を、化学的に分解して、化学原料に戻し、精製して再度高分子を作り、石油を原料とする新品の樹脂と全く同じ性能のものを作ることができる、というのがケミカルリサイクルです。

 すなわち、PET樹脂のケミカルリサイクルが実施されるようになると、プラスチックのリサイクルには、全く違った二種類のプロセスがあって、その違いを表現しようとすると、2種類のバルブを設ける必要があります。そこで、プラスチックのマテリアルリサイクル専用に、新たにプラ水平バルブが出現しました。

(5)リサイクル効果の判定

 リサイクルを行うのは、それなりに意味があるからだと考えられます。本来の意味は、資源・エネルギーが有効活用されること、が原理原則です。しかし、経済的な行為である以上、コストが大きな要因になります。また、環境負荷として、最終処分量や水質汚染などが減少することも重要な要素です。

 そこで、リサイクルにともなって、資源消費量、エネルギー使用量、最終処分量、環境負荷量などがどのように変化するかを表現できるようにしました。

 資源消費量は、地球からの採取量です。最終処分量は、地球への排出量です。いずれも、数値で表現されますから、一目瞭然。

 エネルギー使用量、環境負荷量、コストは、それぞれのプロセスがどのぐらいの寄与があるか、その相対的な値を入力する必要があります。当然、原材料にも素材にも製品にも輸送というプロセスが関与しますが、それは、例えば、製品の輸送に関わる負荷は、その前の製品製造プロセスに含めて考えることにすれば、良いと思います。

 現在入力されている値は、厳密なものではまるで有りません。
エネルギー消費量
資源採取   1
素材製造   5
製造プロセス 2
使用/保守 1
再生      2
中間処理   1
リサイクル    2
再素材化   4
他用途     0
最終処分   2

コスト相対値
資源採取   1
素材製造   3
製造プロセス  2
使用/保守  2
再生      5
中間処理   1
リサイクル    5
再素材化   2
他用途     0
最終処分   3

環境汚染相対値
資源採取   3
素材製造   3
製造プロセス 2
使用/保守  1
再生       3
中間処理   3
リサイクル    2
再素材化   2
他用途     0
最終処分   8

こんな値が入っています。少なくとも、対象がアルミだったとしたら、素材製造と再素材化の値の比が不適当でしょう。その他の素材については、まあこんなものかもしれません。


(6)例題:ペットボトルのケミカルリサイクルの効果判定

 入っているデータがいい加減ですから、この議論は相当にいい加減ですが、ものの本質は、こんないい加減なデータでも分かるという例だとお考え下さい。

 まず、バルブの開閉率を次のような値にして下さい。

 リユース率   0
 リサイクル率 50
 水平率     0
 プラ水平率   0

このとき、エネルギー消費量の値を読むと、11.65になっています。環境汚染は16.05、コストは12.7です。この値を基準にします。

さて、水平率を0から50まで上げてください。

 エネルギー消費 11.65 → 11.2
 環境汚染    16.05 → 15.15
 コスト      12.7  → 12.25

のように変化しましたので、確かに、効果があることは分かります。

 それでは、水平率を0に戻して、リユース率を10にして見ます。

 エネルギー消費 11.65 → 10.785
 環境汚染    16.05 → 14.845
 コスト      12.7  → 12.13

のように変化しました。リユース率をたった10%、すなわち、10本に1本をリユースするだけで、50%ものボトルtoボトルを行なうよりも効果があるのです。

 資源採取量は、確かに50%の「ケミカルリサイクルによるボトルtoボトル」の方が少ないのですが、プラスチックの場合には、資源採取はエネルギー消費と同義ですから、ここをどのように理解するか微妙です。

 最終処分量は、逆に、リユースを行なった場合の方が優れています。

 このシミュレーションが、実態をどのぐらい表現しているか、それは良く分かりません。しかし、「ケミカルリサイクルによるボトルtoボトル」をやる企業側が、このようなデータを提示し、なぜボトルtoボトルをやるのか、その議論を巻き起こして欲しい、と思います。

(7)読者の皆様への宿題

@ ペットのマテリアルリサイクルで、ボトルtoボトルも不可能では有りません。ただし、見かけは悪くなります。リサイクルのための環境負荷は、ケミカルリサイクルによるボトルtoボトルよりは、多少ましです。どのぐらいましか、ご検討いただき、ボトルのリユースを含めて、容器の見かけや安全性を含めて、どの方法が最良か、それぞれの方法の優劣を判断してみて下さい。

Aどうしても容器が中心になってしまうのですが、他の素材や製品のリサイクルに適用可能かどうか、ご検討下さい。

(8)お願い

何か不具合がありましたら、是非お知らせ下さい。