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  国際的リサイクル網をどう構築するか 05.01.2005



 3Rイニシャティブ閣僚会合(議長:小池百合子環境相)というものが20ヶ国が参加して、29日、30日の両日、新しくできた東京プリンスパークタワーで開催され、リサイクル品が国際的に流通しやすくなるよう、関税などの輸出障害を低減することを柱とする議長総括を採択した。
 7月に英国で開催されるG8で報告するほか、来春をめどに事務レベル会合を開くことも決めた。

 これが閣僚会議は中古品の関税に注目しているが、それ以外にも、3Rにまつわる多くの困難な点がある。先日、グアム島の最終処分地を見せてもらったのも、その実態を知りたかったからである。


C先生:日本のような国に住んでいると、リサイクルをすることが当然になっている。それを前提とした社会システムを構築することが可能だからである。しかし、グアム島のようなところでは、例えば自動車をリサイクルしようとしても、電炉工業のような鉄スクラップを処理する産業が存在しない。紙をリサイクルしようとしても、再生紙を作る工業が存在しない。だからリサイクルは極めて難しい。

A君:国際的な枠組みとしては、バーゼル条約なるものがあって、一般には、廃棄物というものの輸出入はできないことになっている。勿論、両国が合意すれば可能ではある。

B君:厄介なことには、廃棄物というものの定義が国によって違う。

C先生:しかも、日本から輸出された家電製品などが、途上国で環境配慮なしに分解されて、環境破壊と労働者への被害が起きている。

A君:現在、経済が躍進中の中国ですら、静脈産業はまだまだレベルが低い。

B君:環境規制はあるのだが、それを守ろうという意識が国全体に普及している訳ではない。日本のように、法律ができると、それを守るのが当然と思う国は、世界的に見ても極めて希な存在。国民レベルでそれを知らないし、役人もそれを守らせようとしない。むしろ、見逃しておいてそれをネタに何か自分に有利なことをしようというレベルの国も多い。

C先生:実際のところ、そのような国内の状況を改善するのは、それぞれの国の政府の責任であって、国際的には、それを前提とした枠組みを作ることが正しいとは思えない。しかし、そうせざるを得ない部分もある。

A君:日本だって、リサイクルの本格化は、容器包装リサイクル法が施行された1997年以降。

C先生:まあ、そんな背景で、この3Rイニシャティブ閣僚会合なるものが行われ、28日には、そのサテライトシンポジウムが国連大学で行われた。そこでパネルディスカッションがあったのだが、その議論を紹介しようと思う。

A君:午前中に、EU、米国、中国からの基調講演があって、午後からパネルディスカッションが行われ、そして、分科会に別れて若干の議論が行われ、また、会場に戻ってまとめと閉会。

B君:すでに「今月の環境」で報告したように、EU、米国、中国はトーンがかなり異なっていた。

A君:午後のパネルディスカッションは、テーマが、「各国内における循環型社会構築と国際的な資源循環システムの構築」で120分。スピーカー5名となかなかタイトなスケジュール。

アジア経済研究所 小島道一氏
「アジアにおける3Rと国際的リサイクル」

キャタピラー株式会社 ジョー・アレン氏
「キャタピラーにおける再生サービス」

富士ゼロックス株式会社 藤原 仁氏
「アジアパシフィックにおける統合的リサイクルシステム」

タイ工業省 スモンマン・カラヤシリ氏
「工業省の環境管理戦略」

バーゼル条約事務局 桑原幸子氏
「3R社会実現のためのバーゼル条約の役割」

B君:発表資料に含まれている重要情報をまとめてみよう。
 まず、小島道一氏の発表。
 廃棄物の輸出がバーゼル条約によって規制を受けるが、日本では、廃棄物とは、有価物以外を言うが、多くの国では、再生資源は廃棄物である。中古品は廃棄物ではない。
 例えば、使用済み家電であるが、このジャンルには、中古品と廃棄物を含むものと考えられる。
各国の対応だが、
☆日本:輸出入に特に規制はない。
☆中国:使用済み家電は1998年に輸入禁止になった。2000年に他の使用済み電機も輸入禁止。2002年に、破砕された使用済み家電も輸入禁止。
☆香港:輸出入に特に規制はない。しかし、環境保護局によって、判定が行われている。
☆フィリピン:部品の輸入には、事前通告と同意が必要。
☆タイ:コピー機なら5年、他の家電製品なら3年以内のものは輸入が認められている。

A君:中国は、素材の輸入は認めているが、それでもときどき止まる。使用済みプラスチックの輸入は、中国が圧倒的に多い。2003年の輸入量は、小島さんによれば、次の通り。

B君:中国が廃プラスチックを吸収している様子が良く分かる。

A君:次の表が、事前通告と同意に基づく有害廃棄物の輸出入の実態。EU域内での輸出入が非常に多いことが分かる。それに比べて、アジア圏内での物質の移動はほとんど行われていない。それは、無駄な廃棄が多いことを示唆するのではないでしょうか。

C先生:小島さんの推奨事項は、以下のようなものであって、至極ごもっとも。
(1)リサイクル状況の統計がない。把握が必要。
(2)リサイクル産業が環境対応を完全に行うことが前提である。
(3)不法輸出入の国際的監視と管理が必須。
(4)リサイクル用材料の輸出入は、途上国におけるリサイクル技術の進展とともに、見直しが必要。
(5)有害廃棄物の輸出入も各国で見直す必要がある。なぜならば、すべての有害物を自国内で処理するのは不可能。日本なら可能だが。
(6)中古品の貿易に関しては、コンセンサスが無い。もう一度、どのように管理すべきか、検討が必要。

A君:次の発表が、キャタピラ社の機器再生事業。キャタピラ社は、ご存知のように、大型の輸送機器、土木建設機器、大型エンジンなどの製造業。社員8万人、売り上げ300億ドルという巨大産業。

B君:年間、5万トンぐらいの商品が再生されている。再生品の価格は新品の50%ぐらいである。使用済み品が戻ってくるように、デポジット制を採用している。埋め立てゼロを目指している。中古品には関税上の配慮が必要と主張。

A君:この企業が作っている製品は、どちらかというと、単品生産に近いのではないですか。大量に流れている商品というよりも、手作りに近いのでは。単品生産だから、どんな製品が戻ってきても、なんとか再生が可能。

C先生:どうもそのような気がした。再生を行うことを義務化すると、全く新しい製品を設計するときに、再生が前提となってある制限ができるはずなのだが、そんな質問をしてみたら、そのような理解をしているとは思えなかった。技術的な進歩の速度が余り速くは無いのではないだろうか。

A君:それにしても、今回のシンポジウムで発表させるために、アメリカが強引に送り込んできた企業のようですが、アメリカだって、それなりにやっているのだ、ということを主張したいかったのでしょう。まあ、特殊なケースでしょうが。

B君:米国では、もしあるとしたら、航空機の世界もそうかもしれない。かなり再生が行われているのではないだろうか。

C先生:次が富士ゼロックスのタイにおけるリサイクル工場建設の話。アジア太平洋地域のコピー機のリサイクルを、日本でやるよりも、どこかより近いところで行うことが効率的。しかも、日本でやるよりは、人件費が安いので、手分解を徹底的に行うことが可能。となると結果として、リサイクル率が向上することが期待できる。

A君:予備的な調査を2001年夏に開始。タイにターゲットを定めて、2002年夏に交渉開始。そして、2003年夏にタイ政府から許可。2004年には、輸出側の国から許可を得る。2004年12月に完成。

B君:当然のことながら、タイ国内での環境負荷が発生しないように、しかも、タイ国内での雇用の創生などの寄与もできることが原則になっている。

C先生:先ほどの手分解を採用しているために、日本の分類よりももっと細かい分類が可能になって、埋め立て率が25%からなんと0.4%まで低下した。トレーサビリティーも確保している。ただし、ある種のどうしようもない物質も発生しているので、それは日本に運んでいる。

A君:公表されませんでしたが、多分、感光ドラム上の感光膜ではないでしょうか。セレンと多少の砒素からなる膜で、タイでは適正処理は難しい。

C先生:という訳で、タイのリサイクル工場は成功。しかし、タイでは、コピー機は、5年ものまでの輸入を特別に認めたようだ。コピー機というものは、商品寿命が非常に短いのが特徴で、関東圏では、以前、2年でリースバックで戻ってくると聞いた。関西圏は、多少長い。現時点では、そんなことも無いとは思うが、やはり5年で確実に戻るのだろう。だから、可能になったともいえる。ところが、これを家電に採用しようとすると、いきなり困難が生じる。商品寿命がいずれも10年程度あるいはそれ以上だからだ。

A君:ということで、次はタイ政府から工業省の発表。

C先生:タイ工業省の発表は、比較的無難なもので、特別ここでまとめる必要もないものだが、やはり、ゼロックスの試みは成功だと判断されているようだ。確かに、それによって、産業ができたとも言えるから。

A君:最後に桑原さんによるバーゼル条約の話でしたね。
バーゼル条約の目的は、
☆ヒトと環境への悪影響を防止すること。 
1992年5月に発効し、現在、165ヶ国が批准。

C先生:後でまとめるが、国際的なリサイクル網を構築しなければならない理由は、ヒトと環境への悪影響を防止しつつ、限られた地球上の資源の有効活用を図ることが重要だからだ。しかし、現状では、途上国へ有害廃棄物を輸出して、埋め立てることによって、先進国が利益を得るという構図を防止するために、バーゼル条約があると言える。EUの有害物に対する規制の考え方などを見ると、まあ、現状では仕方が無い対応だとも言える。さらに、途上国が、まだ、リサイクルを産業にしようとするような対応ができておらず、基本的に廃棄物の輸入は禁止という態度。これがやはり問題の一つ。産業として、手分解が有効であるのだから、経済発展のある段階にある地域・国では、リサイクル産業を導入することは、メリットがあるはずなのだが。

A君:桑原さんの発表では、廃棄物の発生と経済の成長がデカップルしなければならないというような言葉もありましたが、これは、製造業でやっと達成され始めていることであり、まだまだごみは出ます。最終処分量は、日本では1991年にピークで、それからかなり急激に減少はしていますが。

B君:桑原さんの発表は、やはり国際機関特有のもので、あまり具体性が無かった。無色透明だった。

C先生:現状では、バーゼル条約の存在を十分尊重して、ことを進めるのが最善であることは事実だろう。事前通告と同意があれば、一応、輸出入はできるのだから。

A君:本HPとしての解析と推奨に話を移しますか。

B君:まずは、全体的な原則から。すでに、議論が多少行われているが、リサイクル可能な資源という名称の廃棄物については、処理を誤れば有害であることに間違いは無い。ただし、適切な処理が非常に難しいというものでもない。とは言っても、どこか最後のところで、処理困難物が出て、それらは日本のような国で処理するのが妥当。それを含めて、適切な管理によって、ヒトと環境への悪影響を避けることは前提条件。それに加えて、限られた資源の有効活用という論点が必要不可欠。

A君:ヒトと環境への悪影響を最小限にしつつ、どこまで資源を活用するかというバランスの取り方が重要。

C先生:まあ、そんなまとめでよい。しかし、それ以外にも、考え方として重要な要素はある。それは、製品のリサイクルや廃棄物の管理は、誰の責任なのかという問題だ。例えば、冷蔵庫を新しいものにした。そのとき、廃棄される冷蔵庫は、日本の場合であれば、家電リサイクル法によって、消費者が処理費を負担して、適正に処理されることになる。これは、環境の考え方に基づいて言えば、排出者責任(PPP原則=Polluters Pay Principle)なるものだと思えばよい。
 しかし、製造者に返すという方法論もあって、日本の家電リサイクル法にもそのような精神が盛り込まれていて、費用負担は消費者だが、適切な処理をするのは、製造者であることになる。しかし、処理は他の企業に委託した形になっている。いずれにしても拡大生産者責任の一つの形態だと考えることができる。
 ゼロックスなどのコピー機の場合だと、リース制度で動いている場合が多いから、その場合には、引き取りから最終処分まで、すべての生産者の責任だということになる。すなわち、コピー機は、拡大生産者責任(EPR=Extended Producer's Responsibility)なるもので処理されていると言える。この自社で責任をもって処理するという形態であるゆえに、タイに処理工場を持つことが可能になったとも言える。
 そこで、この両者を一つの図に描いてみると、こんな絵になる。この両極端は現在でも可能であるが、これ以外に良い解があるかどうか、それが最大の問題だともいえる。


A君:例えば、日本に中国などから製品が輸入されたことを考え、これを如何にリサイクルするか。まずは、家電リサイクル法のように、PPP原則を適用して、消費者に費用負担を求める。となると、心情的に国内で処理されることが当然ということになって、処理され、そして、リサイクルされたキレイな素材が中国などに戻る。
 しかし、コピー機のような場合には、EPRが適用され、自社が責任を持つ形で、タイに処理工場ができる。そこで手分解による高度のリサイクルが行われ、そして、雇用の創出も起きる。
 当然のことながら、このような枠組みであれば、バーゼル条約もクリアーできる。どうも、資源の有効活用という面から言えば、後者の方が優れているように見えます。

B君:であるとするのなら、Case1と書かれたその方法をできるだけ、Case2に近づければ良いことになる。それには、バーゼル条約が一つの障害になりうる。なぜならば、消費者から処理費を取っているので、その金額を処理費として付けて輸出したら、恐らく問題になる。現状から言えば、処理費だけとって、処理しないといった業者が出るだろうし。

A君:となると、家電リサイクル法も、自社処理を原則として、自社の処理工場を中国につくり、そこに送って完全処理をする。しかし、処理しきれないものは、日本に持ちかれる必要がある。

B君:タイの場合、なぜゼロックスが許可されたのか分からないが、中国だと許可されない可能性も高いのではないか。動脈産業だと許可されるが、静脈関係は許可されないのではないか。

A君:やはり各国の国内法の整備が重要だといういうことになる。単に文言としての法整備ではなくて、実質、コンプライアンスがしっかりと利いたシステムを作ることが最重要事項。

C先生:ゼロックスの場合には、どうも企業への信頼というもので許可が下りたようだ。となると、やはり信頼性の高い企業が処理事業を行う必要がある。やはり家電製造業が、連結決算を行うような処理事業を持つべきなのではないだろうか。

A君:もう一つの問題は、コピー機業界だと、リースであることもあって、使用企業がリサイクル費用を明示的に負担している訳ではない。機器のリース料金の中に組み込まれている。ところが、家電製品のようなものだと、製品価格にリサイクル費用を含むような形にもできなかった。もっとも、コンピュータや自動車は、結果的に前払いの形になったのだけれど。

B君:前払いであれば、企業側が責任をもって処理することになるから、その処理工場をタイに持っていくことも不可能ではない。ただし、販売後3年という条件ではきついかもしれない。

C先生:先日、10年ものの古いテレビを家電リサイクル法に則って処理してもらったが、まだ、画面は出ていた。だから、リサイクル法に乗ったからといって、必ず解体しなければならないという規制のやり方は、資源有効活用の観点からはいささか疑問。ただし、ごみ問題での最大の問題はやはりなんといっても不法投棄なので、ある程度の無駄は仕方が無いとも言えるのだが。

A君:テレビを変えた話は、まだHPに乗っていませんね。

C先生:そのうちにまた。

B君:まあ、さまざまな問題点があって、国際的なリサイクル網を完成させるには至っていないというのが結論か。

A君:しかし、ゼロックスのような例が出始めているので、今後に期待。

C先生:しかし、それには、もっと経験を積んで、ヒトと環境への悪影響が出ない形で、かつ、不法投棄を誘導しない形で、資源の有効利用を図る必要がある。これまで検討してみると、どうもパソコンの処理を候補にして、最適な方法を検討するのが良いように思えてきた。