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   食品のリスク騒動またも再発  12.05.2015号 upは12.01
               対応の王道は「リスク分散」        




11月30日のNHKクローズアップ現代は食品リスクに関するものでした。スタジオには松永和紀さんが出演。ビデオで畝山智香子さんが出演。このお二方は、個人的な知り合いの中でも、食品リスクに関するプロ中のプロです。

 また、放送中の食品安全委員会のビデオにちょっと顔がでてきた、佐藤洋東北大学名誉教授は、現在、委員長代理で、まさに国を背負う本物のプロです。

 実は、この赤肉(牛肉、豚肉、羊肉)と加工肉の発がん性に関する問題が、これほど引きずるとは思っていませんでした。世界標準からすれば、日本では、赤肉も加工肉も、それほど大量摂取していないことぐらい、もともと常識でして、何も対応を取る必要がないことだからです。

 この記事を書くことにしたのは、日経が11月29日に「日曜に考える」のページで『加工肉、(発がん性の)日本人に影響わずか』という記事を掲載したことがキッカケです。

 29日に若干の執筆をスタートしたところ、30日にクローズアップ現代の放送があることを偶然知って、その時間には、会食の予定があったので、ビデオに落としておきました。

 30日の夜、これを見て、本HPでも記録に残しておくべく、12月5日号の記事を完成させました。先行アップします。

 さて、まずは、日経の記事です。メインの記事は、他の新聞の記事などとほぼ同様なのですが、日経の記事の左下の囲み記事として、「健康に関するリスクの認識に専門家と社会の間にずれがあることが鮮明になった。意思疎通をうまくしないと、同じようなドタバタを繰り返すだろう」と書かれています。「専門家は評価の仕組みや手順を理解しており、科学的には誤りのないない結論を下す。ただ、食品と健康に関する限り、前提条件があっても健康に良いか悪いかの評価が決まってしまえば、社会は結論を単純化して受け止める。そして、今回のように『赤肉・加工肉に発がんリスクあり』の結論が独り歩きする」。

 そしてこの囲み記事の結論は、「リスクコミュニケーションが必要となってくる。ところが、食品安全委員会の姫田事務局長は、『情報に振り回されず、様々な食品をバランス良く取ることが大切だ』と説く」。これが締めくくりの言葉になっています。

 こんな馬鹿みたいに簡単なコミュニケーションで良いのだろうか。記者自身は一体どのようなコミュニケーションを良い例だと考えているのだろうか。などの疑問が湧きました。

 記者の書いている囲み記事には、気になる表現がいくつも入っています。例えば、『前提条件があっても健康に良いか悪いかの評価が決まってしまえば、社会は結論を単純化して受け止める』ですが、一体、記者は何を言いたかったのでしょうか。

 前提条件を抜いて、刺激的な記事を書くのがメディアの本性なのではないですか。自分達がしっかりと反省しなければ駄目でしょう。本質に迫って、食品リスクに対応する”王道は何か”、といった分かりやすいコミュニケーションを行うべきなのではないでしょうか。姫田事務局長の『情報に振り回されず、様々な食品をバランス良く取ることが大切だ』は正しいのですが、なぜ、バランスが重要なのか、説明が全く無しで、これを鵜呑みにせよ、という言葉は、コミュニケーションが皆無という印象を与えるだけです。

 今回は、以下のような順番で記述をします。

目次:

1.IARCとは何をする機関か その役割を知ろう
2.食物とは何か それは異物である
3.食品リスクに対する王道は? −> リスク分散



1.IARCとは何をする機関か その役割を知ろ

 日経の見出しからはWHOが指摘したからのように見えましたけれど、実際には、WHOの傘下の機関、IARC(International Agency for Research on Cancer)が発表したものです。IARCが余り有名でないから、WHOとしたのでしょう。

 IARCが発表している発がん性のグループ1、2A、2B、3、4といったグループ別のリストは、なかなか重要な目安でして、これをしっかり理解できるようになれば、食品・物質(その他職業などを含む)とがんという病気に対して、分かったような気分になれるのです。

 IARCによれば、次のように定義されています。

Group 1 Carcinogenic to humans      118
Group 2A Probably carcinogenic to humans  75
Group 2B Possibly carcinogenic to humans 288
Group 3 Not classifiable as to its carcinogenicity to humans 503
Group 4 Probably not carcinogenic to humans 1


 日本語訳を作れば、

Group 1  ヒトに対して確実に発がん物質    118
Group 2A ヒトに対して多分発がん物質      75
Group 2B ヒトに対して発がん物質かもしれない 288
Group 3  ヒトに対して発がん物質とは言えない 503
Group 4  ヒトに対して多分発がん物質ではない  1


 この最後の数字は、それぞれのグループに属する物質などの数です。”など”というのは、例えば、製材業という職業なども入っているからです。なにか、非常に数が少ないような気がしませんか。世の中には、何万という化学物質があるのに、合計で1000個ぐらいのデータしかないのです。要するに、分からないことが非常に多いということです。発がん物質は、元々少ないということも可能かと思います。

 もう一つここで注意をしなければならないことは、このグループは、ヒトにとって発がんのリスクが大きいかどうか、で区分をしているのではなく、極めて単純に「発がん物質かどうか」、だけを判断基準としていること。実は、だから、IARCの情報は重要なのです。適切に対応するための、もっとも基本となる情報が提供されているからなのです。

 食品安全委員会の自分のFaceBookによる説明では
https://www.facebook.com/cao.fscj/photos/
a.1453852721497288.1073741830.1453181974897696/1663879513827940/

 「IARCは発がん物質のハザードとしての特性を主に研究する機関である」と述べていますが、世の中、この文章のうち、「発がん物質のハザードとしての特性」と言われてそれが何かが分かる人ばかりならば、最初から問題などは起きません。一般には、ハザードという聞き慣れない言葉を発見した瞬間に、はい次!と捨てられて、それ以後の説明が読まれることはないでしょう

 食品安全委員会は、ハザードという言葉を恐らく覚えて欲しいのでしょうが、それだったら、もっと丁寧に説明する必要があるでしょう。しかし、もっと重要なことは、この程度の説明だったらハザードなどという言葉を使う必要はないのです。なぜなら、上で述べたGroup1からGroup4の説明が分からないという人はいないはずだからです。

 しかも、IARCは、物質の発がん性の強さ、すなわち、ハザードをGroup1からGroup4の5段階で評価しているだけで、本来、リスクを算出するときに使えるような重量あたりの発がん性(一般には毒性)の強さなどを意味する量であるハザードを示すことを目的としているわけではないのです。だから、IARCは、ハザードとしての特性を主に研究しているとも言い難いのです。

 実は、発がん性という量ですが、ある人がこれだけの量の発がん物質を摂取したら確実にがんになるというようなことが言える情報を得ることはかなり難しいのです。

 そもそも実験を行うとしたら動物実験ですし、マウスなどは、ヒトに比べるとはるかにがんになりやすい生物です。マウスには、同じものを食べさせるといったことができますが、人体実験はできないのは当然として、そもそもある人がどのぐらいの発がん物質を摂取していたか、を知ることはほとんど不可能です。

 Group1に分類されている放射線は、他のGroup1の物質などに比較すれば、受けた放射線の量とがんとの関係が、圧倒的に明らかにしやすいのですが、それでも、1mSv以下の放射線の被曝では、確率的なことしか言えません。それは、発がんという現象が、ヒトという生物にとって、余りにも当たり前のことだからです。余りにも原因が多いのです。すなわち、自分ががんになったとしても、その本当の原因は恐らく誰にも分からないのです。

 確かに、タバコやアルコールは有力な原因ではありますが、いくらタバコを吸っていても、いくらアルコールを飲んでいても、がんになるかどうかは、それこそ個人次第です。その人が、どのぐらい運動をしているか、その人がどのぐらい野菜や果物を食べているか、糖尿病のような他の発がん要因はあるのかないのか、などなど、余りにも多種多様な要因があって、その人がある発がん物質を一定量摂取したとしても、発がんするかどうか、それは解析不可能なのです。

 タバコ、アルコールの発がん作用は、一般的な摂取量、例えば、タバコを1日20本、アルコールを日本酒3合といった量だったとすると「確実に強い」としか言えません。しかし、その人がタバコを止めたら、もし、アルコールを飲むのを止めたら、他の要因よりも圧倒的に大きな改善を実現したことになるのですが、それでも、その人ががんにならないとは言えないのです。発がんについて、下がるのは、確率が多少下がるぐらいでしょう。

 要するに、がんになるのかならないのか、それは、個人の生まれついての資質と、その後の節制や努力による変化を掛けあわせたものでほとんどが決まるのです。しかし、やっかいなことには、どんな人でも、いかに努力しても、発がんの確率はゼロにはならないというものなのです。発がん物質を多少控えたぐらいで、がんの発病を避けられるといったものではないのです。

 ただし、タバコやアルコールを大量に摂取していれば、他の人よりも発がん傾向はかなり強いのも事実なのです。

 何をどう気をつけても、発がんの確率はゼロにはならないと述べました。その理由ですが、酸素を吸って生きている以上、体の中で活性酸素ができてしまうのは避けることができません。活性酸素は、発がんのかなり有力な原因物質です。

 すなわち、発がんという現象は、外部からの何らかの要因、例えば、IARCのGroup1やGroup2に属する物質を摂取することがすべての原因とも言えません。これだけで発生するという訳ではないのです。むしろ、精神的なストレスを含めて、その人の内的要因の方が強いと考えるべきものなのです。


2.食物とは何か 正解)それは異物である

 食物とは、ある動物が食べる『他の生命』を意味します。他の生命は、食べられるために存在している訳ではなく、それぞれが自分自身のためだけに存在しているのですから、敵とも言える自分を食べる生物の都合が配慮されていることはありません。すなわち、食物とは、自分用に作られた以外のものばかりです。ヒト専用に作られた食べ物などは何もないのです。これを異物と呼ぶ以外に、何と呼ぶのでしょうか。

 人類が食べているものは、どのようなものでしょうか。主食としては、コメ、コムギ、トウモロコシ、ジャガイモなど、デンプン分が多い穀物類やイモ類が選択されています。これらの穀物は、発がん性は低いとされていますが、コメには、ヒ素(Group1)が含まれていますし、ポテトチップスには、発がん性がGroup 2Aであるアクリルアミドが含まれています。ただし、アクリルアミドの生成には条件があって、それは、120℃以上に加熱されることです。ですから、普通に炊いたコメには含まれませんが、トーストとなると、やや怪しいことになります。さらにアクリルアミドを含む候補を上げれば、かりんとう、ビスケット、コーヒー、ほうじ茶などなどにも入っているでしょう。

 コーヒーですが、このところ死亡率を下げる効果があることになっています。国立がん研究センターの研究成果です。
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3527.html
 1日に3〜4杯のコーヒーを飲む人の全死亡率が、ほとんど飲まない人に比べると、24%も低いという話です。より詳しく言えば、がんの死亡率こそ有意な関連は見られなかったものの、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患では、死亡率が下がるのです。

 食物には、必ずなんらかのリスクがあるものなのです。なぜか、と言えば、繰り返しになりますが、食物はヒトという生物にとって異物だからです。ヒトも、動物の宿命として、食物を摂取せざるを得ません。具体的には、植物を食べるか、あるいは、他の動物を食べる以外に生命を維持する方法は無いのです。

 異物が嫌なら、同種の生命を食べれば良いのか。自分と同じ種を日常的に食べる動物はいません。それは、自分と同じ種は、感染症が共通ですから、リスクが大きいのです。感染症は、微生物やウイルスで伝染しますが、それ以外にもあります。かつて存在していた食人種は、特殊なタンパク質が原因になるプリオン病で死亡する例が多いと言われています。プリオンはタンパク質の一種ですが、狂牛病の病原物質です。加熱しても毒性は消えません。

 自分と同じではないけれど、自分に近い動物の肉は比較的安全です。ヒトは脊椎動物ですから、脊椎動物のタンパク質は、毒性が低いものと考えられます。となると、哺乳類、鳥類、魚類などがこれが該当します。ところが甲殻類になるといささか怪しくて、エビやカニアレルギーの症状を示す人がいます。これは、ヒトとエビ・カニのタンパク質が多少違うことが理由です。

 哺乳類である牛の出す乳である牛乳でアレルギーになるのはなぜなのか、と疑問を持つ方も居られるでしょう。赤ちゃんの牛乳アレルギーの原因は、α−S1−カゼインというタンパクだとされています。このタンパクは、動物ごとに違うのです。赤ちゃんは、腸の消化能力が低いために、α−S1−カゼインを完全に分解してアミノ酸まで分解することができず、アミノ酸がいくつか繋がったペプチドというもので止まってしまうことがあります。このペプチドは、元の物質に反応する免疫システムの持ち主にとっては、猛毒になりうるのです。

 数年前、正確には、2005年から2010年に合計4650万個販売された『茶のしずく石鹸』が起こしたのが、コムギ・アレルギー事件でした。この石鹸に含まれていたコムギ加水分解物は、完全にアミノ酸まで分解されておらず、ある種のペプチドが含まれていて、それがアレルギーの原因となりました。重症のアレルギー患者は、66人だったとされています。この石鹸の購入者は467万人だったそうですから、割合としてはかなり低いとも言えますが、タンパク質の分解物はアレルギーの原因になりますが、分解すれば大丈夫ではなくて、中途半端に加水分解したものは、却って危険だということです。アミノ酸まで完全に分解すれば、まず大丈夫ですが。

 植物性のタンパク質は、ヒトの持っているタンパク質とかなり違いますから、動物性タンパク質に比べれば、アレルギーを引き起こす可能性は高いです。大豆、そば、コムギ、落花生、ごま、などなどは、一般的なアレルギーの原因物質を含みます。

 これらの一般的なアレルギー原因物質とは別に、PRタンパク質と呼ばれる物質は、植物が病虫害の攻撃や厳しい生育環境、さらには、様々なストレス、例えば、水分制限などを受けたときに、自己防衛のために作る防衛タンパク質で、アレルギーの原因物質になります。

 ということは、無農薬栽培で虫食いのある野菜や、糖度を高めるために水分を制限した野菜や果物は、アレルギーを発症する原因になる可能性があるという点で、普通に農薬や化学肥料を使った野菜よりも危険性が高い可能性があります。

 一般社会の理解は、食品添加物を加えた食品は危険、農薬が残っている食品は危険、化学肥料は不自然といったものでしょう。場合によっては、遺伝子組み換え食品が危険と思っている人も多いかもしれません。しかし、残念ながら、これらの食品よりも、ごく普通の食品の方が、危険性は大きいと言えるでしょう。農薬や食品添加物には、厳しい規制があって、その範囲内であれば、まず悪影響は無いからです。農薬も、昔の農薬のように、有害性が大きいものは、すでに認可されていません。当然、製造もされていません。遺伝子組み換え食品は、他の食品よりも安全性の基準が慎重に決められていて、アレルギーを起こすかどうかまで試験がされています。

 一方、このところ盛んに開発されている新種の野菜類は、実は、誰も安全性の検査をしていません。要するに、天然食品であっても、完全に安全な食品などは存在しないのです。むしろ、天然食品の方が、その本体の特性が把握されていないと言えるのです。

 そのため、食品のプロが考える日本における食品リスクは、こんな順番なのではないかと推測します。

 1.食塩の過剰摂取 高血圧、胃がんなど
 2.微生物     食中毒
 3.飽和脂肪酸の過剰摂取 心疾患
 4.カロリー過剰  心筋梗塞、糖尿病、など多数


 食塩による胃がんについては、性差があって、女性の場合には、余りはっきりした傾向がでません。その理由は、女性は胃がんになりにくいく、統計が取れないからのようです。

 食品リスクの上位に、食品添加物、残留農薬、遺伝子組み換え食品のようなものは入りません。中国餃子事件のように、従業員が意図的に混入させた毒物は明らかにリスクが高いです。

3.食品に関する王道は何か 正解)リスク分散

 すべての食品は、どのようなものであっても、なんらかの有害性があると仮定することが、食品による悪影響を避ける最良の方法です。それぞれの食品に有害性があったとしても、その食品の摂取量を少なくすれば、被害は出ないという仮定は、正しいのです。例外は、特異なアレルギー体質の人で、絶対に避けるべき食品が存在しますが、通常の体質の人であれば、この仮定は必ず正しいと言えます。

 となれば、ある特定の食品ばかりを、いくらそれが好きだからといって大量に食べること、子供が食べたいと言えば大量に食べさせることは、正しい食生活だとは言えません。できるだけ多様な食材を使って、多様に調理された料理を好き嫌いなく食べることが、大きなリスクに出会わないための極意だと言えます。これが『リスク分散』です。

 同時に、すべての食品は、それが何であっても、なんらかの有用性があると仮定することも同時に必要です。その根拠は、最近、有力になってきた腸内フローラ健康影響説です。

 次の記事が、厚労省の腸内フローラ(腸内細菌)に対する公式見解のようです。
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html

 すべての人は、その腸内に100兆個(依然としてさまざまな説があるが)を持っています。ヒトの体は約60兆個の細胞からできていますから、腸内には、自分の細胞の数よりも多い数の細菌を持っていることになります。その割には、腸内細菌の重さは1〜2kgぐらいですが、それは、細菌がヒトの細胞よりも小さいからです。

 腸内細菌には、善玉菌、悪玉菌があると分類する単純な説がありますが、実際には、それほど単純ではなく、善玉でも悪玉でもない中間的な細菌が多いのが実体でして、腸内の環境によって、腸内細菌という集合体として良くもなり、悪くもなると考えるべきだと思います。

 まず、多様な腸内細菌に対して、その細菌に適した様々なエサを上げる必要があると考えましょう。腸内細菌は、なかでも善玉菌は食物繊維をエサにしているという説が有力です。食物繊維は、野菜によって、かなり違います。きっとある腸内細菌にとって、美味しい食物繊維と不味い食物繊維がある、と考えましょう。別の腸内細菌は、別の食物繊維が好きかもしれません。ということは、できるだけ、多様な野菜をちょっとずつ食べることが良さそうだ、と考えることを意味します。

 このような考え方を野菜嫌いな子供に(大人にも)教えることで、野菜嫌いの克服ができるかもしれません。

 赤肉(鶏肉以外の肉)についても、加工肉についても、同様です。

 まず、肉ですが、人体を構成している成分とほぼ同じものを食品としているのですから、食べた肉、特に、焼肉屋のホルモンは腸そのものも多いので、これが消化されるのに、腸そのものが消化されないとはなぜなのかを理解しておく必要があります。

 実は、腸は大変な労働環境にあります。腸の表面は、自分で分泌している消化酵素によって、どんどんと痛められています。そのため、上皮細胞と呼ばれる腸の表面の細胞の寿命は1日だと言われています。それでも腸がおかしくならないのは、下からどんどんと新しい細胞が作られて、腸の表面に出てくるからです。

 戦国時代の戦いは、最前列の足軽がやられると、その後ろに控えた足軽が最前列になって戦うというものでした。これを繰り返せば、いつまでたっても、戦力は維持できます。これが可能だったのは、武器がせいぜい火縄銃で、後ろに控えている足軽を大砲などで直接攻撃することが不可能だったからです。腸の表面にある上皮細胞は、戦国時代の戦いをやっていることになります。

 赤肉の場合には脂肪分が比較的多く含まれていて、消化も難しいので、腸の表面の損傷が伴います。これが過度になれば、大腸がんなどの発生につながりますので、余り多くの脂身やホルモンを食べることは、推奨できることではありません。

 戦略は、やはり、「リスク分散」です。一度に大量の赤肉を食べることはヤメましょう。

 加工肉ですが、そもそもなぜ加工肉なのか、ということを知る必要があります。それは、保存のためです(味覚という話もあり得ます)。

 まず、燻製とは、煙に肉を触れさせて有害物質を表面に作って、それで雑菌の繁殖を抑えているものです。その有害成分とは、ホルムアルデヒドやフェノール化合物などでして、これらには、発がん性があります。

 香辛料のもつ抗菌性を利用するために、ひき肉に混ぜ、肉そのものが空気に直接触れないように羊の腸に入れ、加熱殺菌したものがソーセージです。香辛料というもの抗菌作用が強いとは言えませんが、ある程度は目的を果たすことができます。しかし、香辛料の本当の目的は、その独特の香りで、肉の腐敗臭をカバーすることだったかもしれません。

 加工肉に発がん性があるのは、ある程度、当たり前のことです。したがって、こちらも「リスク分散」。一度に大量に食べることや、毎日食べることはヤメましょう。独特の味は、個人的にも大好きでしたら、適切な量を食べましょう。

4.結論

 赤肉、加工肉を大量に食べれば、大腸がんなどの原因になり得るのは、ちょっと考えれば分かることです。しかし、それは食物というものが異物であるという認識を持てば、すべての食物に対して、成立することになります。すなわち、ヒトという生命の宿命として、我々が食べるすべての食品は、どれもそれなりのリスクを持っているという認識をまず持つべきなのです。それに対応するのは、「リスク分散」という考え方です。できるだけ他種類の食品を少量ずつ食べること、これがリスク分散の実体です。

 もう一つ考えなければならないことは、食品添加物や残留農薬などは、正しく使われている場合が大部分ですし、遺伝子組換食品も、リスク評価がかなりしっかり行われていますので、通常気にする必要はありません。販売店や製造元を確認するぐらいで十分でしょう。これは、信号がある横断歩道を渡るときに、車が本当に止まるかを心配していたら、それこそ精神的ストレスで、寿命が短くなります。それと同じことです。

 また、腸内フローラの重要性も強調しておきたいと思います。自分の分身とも言える100兆個の細菌のエサは、われわれが食べる食品で、特に、食物繊維だからです。できるだけ多様な食物繊維を取ることによって、我々の相棒である腸内細菌に、できるだけ他種類の栄養を提供しましょう。

 人体とは、究極の複雑系です。複雑系を維持するには、できるだけ複雑な食生活=「リスク分散」を行うことが必須だ、という理解も、有効かもしれません。



付録:赤肉・加工肉の話題について書かれているWebサイト

 どのような意見があるかを知るために、今回、記事を書くために参照したWebサイトのリストです。

その結論は、一般論ですが、何かを知りたいと思ったら、署名のある個人で(著名な人ではない)記事をまず探して読むことをお薦めします。新聞系の記事よりも信頼ができる場合が多いです。ただ、分野によっては、「いわゆる立場がはっきりした人」が、飛んでもない記事を書いている場合も多いですので注意。その最大の例が、放射線のリスク関連でしょう。
 食品の場合には、食品添加物について、そのような例があるようです。

署名のある個人系
http://www.foocom.net/column/editor/13348/
 これは信頼できるます。松永和紀さんのサイトです。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/naritatakanobu/20151031-00051003/
 はじめて知った著者ですが、まあまあでは。
http://biz-journal.jp/2015/11/post_12583.html
 こちらもまあまあでは。

 これらの記事に比べれば、公的組織の記事は、一般に難しいです。勉強家向きだともいえますが、コミュニケーションが下手とも言えます。。

新聞系
http://jp.wsj.com/articles/SB10631682899670053547704581318182135936612
 「同研究はサラミやベーコンに発がん性があるとし、その危険性を喫煙やディーゼルエンジンの排ガスと同水準だと認定している」。こんな記述ではダメでしょう。
http://digital.asahi.com/articles/ASHC56W40HC5UTFL00T.html
?_requesturl=articles%2FASHC56W40HC5UTFL00T.html&rm=1316

 朝日にしては、と言ったら怒られるだろうが、かなりまとも。食品安全委員会の見解を推薦するのは、そこにハザードという言葉が入っていることだけからみても適切ではない。

がんセンター
http://www.ncc.go.jp/jp/information/20151029.html
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2869.html
 確実な情報だけれど、ちょっと難しいかも。

農水省
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/wadai.html
 しっかり勉強しなさいというサイト。

食品安全委員会
https://www.facebook.com/cao.fscj/photos/
a.1453852721497288.1073741830.1453181974897696/1663879513827940/

 ハザードという言葉を使って、台無しにしている。

署名なしのWebページ
 こうやって評価して見ると、著名なしの個人の記事を信用すると、かなり精神的ストレスが高まることになるでしょう。インターネットでは、とにかく、匿名記事は最初から読まないことをお奨めします。
http://powerpro.at.webry.info/201510/article_34.html
 リスクの理解に関してもう一つか
http://spotlight-media.jp/article/208414092829796606
 まあ、読まなくて良いでしょう
http://science.srad.jp/story/15/10/27/1455252/
 読まないでよし。
http://irorio.jp/nagasawamaki/20151027/271312/
 読まないでよし。
http://wired.jp/2015/10/27/processed-meat-cause-cancer/
 読まないでよし。
http://biz-journal.jp/2015/11/post_12567.html
 IARCという組織が何か分かっていない反論
http://gigazine.net/news/20151027-processed-meat-cancer-cause/
 これは、上と同じだ。
http://friends.excite.co.jp/channel/article/9034/ 最悪かも。