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個人的二酸化炭素削減術  03.12.2005



 京都議定書が発効して以来、日本政府も真剣に温暖化ガスの削減対策を取らざるを得なくなった。温暖化防止大綱が現在検討されているようなので、それに対抗してエコプレミアム流の削減策を考えてみたい。


C先生:いよいよ民生部門(家庭とオフィス)と運輸部門(特に、自家用乗用車)からの二酸化炭素排出量の削減を本格化しなければならない情勢だ。以前の温暖化防止大綱では、シャワーの時間を短くしろだの、家族団欒を一部屋でやれだのといった効果が不明の提言も多かった。もっと、原理原則に基づく温暖化ガス排出削減策を実行しなければならない。

A君:一般市民にしてみると、何をやったらどのぐらいの効果があるのか、そのような知識もなければ、実感も無い。となると、やりようがない、というのが本音なのではないでしょうか。

B君:やはりいくつかの原理原則を根本的に理解することが必要。それこそ、温暖化リテラシーを身につけてもらわないと。

C先生:それには、何を導入に使うかが問題。そこで、すでに考えてきた一つの提案をしたい。これまで、効果が大きいとか小さいとか言ってきたが、ここでは、二酸化炭素1kgの排出を許されたら、それで何がどのぐらいできるか、を考えよう。

A君:普通は、何をするとこれだけの二酸化炭素が出るというのが普通の考え方。それを二酸化炭素の発生量は一定にしておいて、その量を出すことで、どのぐらいのことが可能か、ということを比較する。

B君:1kgの二酸化炭素の排出がどのぐらいの意味を持つか。これが分からないと、なんとも言いがたい部分が残る。

C先生:ざっくり言えば、日本人一人あたり、1年間に10トンもの二酸化炭素を発生している。これは、非常に多い。しかし、直接その人が出した訳ではない数値が含まれている。例えば、ダムや道路・橋を作った、河川を整備したといったものだ。このような社会事業といったことを含めて評価するのであれば良いが、個人生活で排出した二酸化炭素だけではないことは再確認する必要がある。

A君:内訳は、産業部門で37.5%、運輸部門で20.9%、業務部門で15.8%、家庭部門で13.3%、エネルギー転換部門6.6%、石灰石消費3.9%、廃棄物焼却など1.9%ですから、個人生活では、日本人一人あたり、1年間に1.33トンとなります。家庭部門は増えつつありますから、1.5トンと判断した方が良いでしょう。

B君:1kgのCO2を排出することを1単位と呼べば、現時点だと、1300単位分の消費活動が平均値。これを将来、例えば、800単位まで下げるとして、さて、どの部分を下げるか。こんなことを考えるには、1単位(1kgのCO2の排出)で何ができるかを理解する必要がある。

A君:1単位などという表現は硬い。それを1ウォーム(Wm=Warm)と命名しましょう。

B君:1オーム(Ω抵抗の単位)みたいではないか。まあ、良いとするか。もう一度整理すると、1Wmとは、1kgのCO2を排出する人間活動の単位であって、現時点では、日本人は平均的に、個人生活で1330Wmの負荷を掛けている。

A君:それでは、1Wmがどのぐらいのものなのかを検討します。
 化石燃料がどのような形で使用されているか、普通の家庭であれば、ガソリン、灯油、電気、ガスぐらいでしょう。ガソリンと灯油はまあ、似たようなものなので、3種類の燃料というかエネルギー源について1Wmをまず決めます。ざっくり行けば、こんな風になります。

1Wm(1kgCO2)=  
    電気       2.5 kWh
    ガソリン・灯油 0.37 L
    都市ガス    0.44 Nm3

B君:ガソリン・灯油は直感的だ。電気はまあ比較的分かりやすい。2.5kWhだから、2500Wh。100Wの電球なら25時間。しかし、都市ガスは分からないのではないか。

A君:そうですね。こんな表現ではいかが。

 都市ガスの1Wm=
       ガスの強火で1.3時間
       トロ火だと17時間

B君:お風呂をガスで沸かすと?

A君:熱効率にもよるもので、いささか難しいですが、まあ、お風呂1〜2回分。

C先生:話が徐々に日常生活に近いものになってきた。このあたりで、そんな目安をまとめたらどうだ。

A君:それでは、表の形で準備しましょう。 これがいくつかの生活上の行為について、1Wmでできること。

表1: 1Wm=1kgのCO2の放出でできること。




B君:それぞれの行為についてこれほど違うということを理解していただきたい。
 電気器具としては、一時期はやったオイルヒーターが最悪。理由は、電気はニクロム線で熱を作ってはいけない。特に、長時間使うのは良くない。

A君:照明では、白熱電球がニクロム線のようなものを高温にして光を出していますから消費電力が大きい。白熱電球を電球型蛍光灯に替えるのが、まず、第一。なぜなら、これは経済的にも合うからです。

B君:最近はやりの大型平板テレビ。液晶だから消費電力が少ないと思ったら大間違い。やはり画面が大きい分、消費電力は大きい。特に、プラズマテレビの消費電力は大きい。最近、意識のあるメーカーは努力をしているようで、減りつつあるのも事実ではあるが。

A君:液晶テレビも小さくは無いですよ。特に、ソニーのQualia005というモデルは、バックライトにトリルミナスと呼ばれるLEDを使ったものを使用。これがキレイなことはキレイなのですが、その消費電力は滅茶苦茶に大きい。40インチのものでも575Wぐらいあって、他の40インチの倍。こんな商品を開発すること自体、結構犯罪的だと思うのですが。

B君:そんなテレビを買ったら、夏のエアコンの負荷が増える。2重にエネルギーを食うようなものだ。

C先生:今回、愛知万博が行われる。そのテーマは、「環境」であることはご存知の通り。ところが、日本の企業館は、大部分が再生材料を使って作られているらしいのだが、「環境」はそれで終わり。展示物は、相変わらず、「世界最大」といった消費電力の大きそうな呼び物ばかり。ソニーのQualia005は、そのような企業感覚を反映しているもので、ソニーだけが悪いというものでもない。まだまだそれが商売になるのも事実なので、日本国民全体の責任でもある。

B君:実は、いろいろと調べた。そして、愛知万博は結局のところ、環境負荷を莫大に掛ける客寄せに過ぎない。景気回復に若干の効果と、日本全体が少々元気になる効果はあるかもしれないが。その中で、せめて消費電力ぐらいなんとかしたい、と考えているのは、トヨタ館ぐらいなものだ。愛知県田原に風力発電機を設置して、その発電量が、丁度、トヨタ館の電力を賄うようだ。

C先生:今回の愛知万博が終わったら、各企業から、展示館・展示物のためにどのぐらいの電力を消費し、どのぐらいの紙が消費され、そして、最後にどのぐらいの廃棄物がでたのか、報告を義務化したい。

A君:テレビの話題に戻ります。ここには出ていませんが、古いテレビなどだと待機電力というものが3Wぐらいあった。これだと、800時間ぐらいで1Wm。ところが、最近の待機電力は、1/5〜1/10ぐらいになった。これは完全に無駄ですからね。

B君:自動車に移るか。実は、自動車による温暖化ガス放出が、多くの家庭・個人では最大のものだ。特に、燃費の悪い大型輸入車が最悪。ベンツのSクラスだったら、都内走行わずか1kmで1Wmになるだろう。郊外なら2kmか3kmいくだろうが、例えば、100kmで走っていたとしたら、3kmは、たったの2分間。2分間で1Wmの二酸化炭素を出す。

A君:相当早い新幹線だと、250kmで走行していたとして、12分間で1Wm。

B君:飛行機だと、時速540kmで飛んでいたとして、1分間。

A君:飛行機は、実は、離陸時にかなりの燃料を消費するので、巡航高度では、おそらく2分間で1Wmぐらいなのでは。となると、ベンツのSクラスは、飛行機並みの二酸化炭素排出速度であることになる。

B君:物質の消費に行く。紙の消費も結構大きい。300gぐらいの雑誌1冊で1Wm。

A君:包装材は一般には軽いのですが、紙は割合と重たい。しかも、大量に使う。

B君:水も冷たいまま使うのであれば、それほどの温暖化効果はない。1Wmで1700Lぐらい使える。

A君:その割には、水道水の価格は高いので、節水は、エコはエコでもエコノミー効果がある。

B君:レジ袋はやはり軽量であることが利いていて、60枚で1Wm。ペットボトルだと7本、アルミ缶なら6本。

A君:ビール瓶のようなリターナブルだと、12本。

B君:同じ消費でも、野菜のようなものだと、これは作り方によって大きく違う。露地トマトだと、40個で1Wm分。ところが、真冬にトマトを食べようと思うと、2個で1Wm

C先生:この表を、後でじっくりと見て貰うことにして、次に行こう。耐久消費財を買うことを考える。

A君:資源採取から製造までの環境負荷を考えるということですね。多くの商品は、使用時の負荷が大きいのですが、携帯電話のようなものは、製造時の負荷が大きい。しかし、携帯電話のLCAデータは見つからなかった。まあ、同じ重さならデジカメと似たようなものだと思いますが。

表2:購買行動に伴う温暖化効果 1Wm=1kgCO2


B君:家の負荷が非常に大きいのは、単純に重たいから。日常生活で、1年間に1500Wm程度の負荷を掛けているとすると、コンクリートの家を買うことは、13年分程度に相当する。

A君:40坪の家は、普通は一人では使わない。家族でしょう。4人家族なら、一人当たり3年分。

B君:車の場合も、家の場合も、実際には、使用時の負荷の方が大きい。普通の車だと、1Wmで4kmとして、4000Wm分は、16000kmの走行分。走る人だと、1年分。

C先生:プリウスのように、燃費が良いと、車自体の負荷が相対的に大きくなる。5500Wmは、1Wmで8km走ったとして、40000km分以上になる。3年分といったところか。

A君:最後に、個人の活動の1年分を評価してみましょうか。

C先生:しかたが無いから、個人活動を暴露するか。こんな風になる。かなり推測に基づいているので、精度は悪い。さらに、職場における冷暖房や、照明もある程度含めている。、だから、個人生活分だとは言えない。紙の負荷も主に、職場の問題だ。

表3: 個人の活動1年分



A君:やはり飛行機に乗りすぎ

C先生:その通り。どうみても、全Wm消費量の7割は、飛行機。

A君:ということは、日本の航空機会社、JAL、ANAでの海外出張を止めれば、日本の温暖化ガス排出用は下がるということですか。

B君:いやいや。そうではない。国際線による二酸化炭素排出は、日本によるものとされていない。船が公海上で放出する二酸化炭素もそうだ。航空機や船の国籍には寄らないことになっている。

C先生:そうなんだ。その仕組み自体は非常におかしなことだ。地球に負荷を掛けていることは事実だし、航空機の負荷は、今後とも増加することが確実だから。

A君:そうですね。国籍でやるのは一つの案ではありますね。

B君:そうすると、日本における温暖化ガス排出を減らすために、SASやKLMを使うことにするか。

A君:JAL、ANAは反対するでしょうか。

B君:出発国と着陸国が半分ずつ負担するのが妥当だ。

C先生:いずれにしても、飛行機による環境負荷は、個人的にみても大きな問題だ。

A君:その次が、どうみても、プリウスのガソリン

B君:それでも、普通の車だったら倍になる。

C先生:そのぐらいにして、どうも紙の負荷が気になっている。紙が相当に使われている。相当量が送られてくる。報告書など、2kgぐらいのものが平然と送られてくる。

A君:OA化によってペーパーレスになるという話はどこにいったのでしょうかね。

B君:紙メディアは、個人的には好きだ。

C先生:しかし、無用の書類が増えたことも事実だ。とはいえ、予算を取ると、報告書を印刷せざるを得ないのも事実。

A君:最後にある太陽電池は

C先生:せめてもの罪滅ぼし。2004年の発電量3300kWh。これによって、1343Wmが削減できた。これで、プリウス用ガソリン、紙多消費の埋め合わせがなんとか出来る程度だが。
 皆様も、人間LCAを少々おやりいただき、国際線を除いた値で1000Wm以下を目指していただきたい。