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     こんなやり方でSDGsに取り組もう   
       ガラスびんリユースを例に:その1「原理編」  12.16.2018

               



 先日、ガラスびんリユース全国協議会と生協関係の方々約50名ぐらいに対して、水道橋の水道会館で、ガラスびんリユースをSDGsの対象にしたとき、どのようなやり方があり得るのか、という講演をしました。

 この例は、極めて特殊な対象SDGsを活用するということですから、当然のことながら、他の分野の方々がSDGsを実施する際には、全く参考にならないように思われるかもしれません。

 しかし、現実は全く違います。SDGsの取り組み方は、実は、どんな企業・どんな対象にも適用できる「共通」かつ「正式な方法」があるのです。これは、2015年9月26日にニューヨークの国連で合意された文書にすべて書かれているのです。先週号にも一部書いたことですが、残念ながら、日本国内では、そのようなアプローチが合意文書に書かれていることが、ほぼ完全に無視されています。

 現時点、日本における共通理解と言えば、もっとも普通のSDGsへの取り組み方は、17ゴールから自分たちが簡単に取り組めそうなものを選択して、そのあるべき効果を議論することなく、何かを行い、それでSDGsへの対応が満足された、ということにするのが、もっとも一般的です。同時に、バッジなどが社員に配られる企業が多いようです。

 それでも「完全に悪い」とは言えません。もともとSDGsには、非常に多様な取り組み方を許容するという精神があるために、やらないよりは遥かに良いのです。

 しかし、そのようなやり方では、担当者が徒労感を得るだけ、という場合が多くなりそうな気がするのです。自分達だけで決めたやり方でやっても、「これが正しい」と正当化をすることが難しいからです。環境省の文書などを参考にして、何かを真似して実施した場合には、さらに満足感を得るのは難しいでしょう。「自分の仕事としてのSDGs」にしかならないからです。本来、SDGsは、ある程度決められた方法論に基づいて、その方法論を自らの課題にあてはめてみて、どのような方法論が最適なのかを本気で考えて取り組むものなのです。

 本日は、「ガラスびんリユースを対象としてSDGsへの取り組み方を解説したパワポ」から抽出し、他の領域であろうが、全く別の目的であろうが全て通用する「共通の原理原則」について、記述をしてみたいと思います。その最大の効果は、担当実施者が、「なんとなく自分自身の視野が広がったことを実感できると同時に、大きく、かつ、共通の視野をもって取り組んだ結果として、自分が良いことをやったという実感が得られ、それによって、少し偉くなれたような感覚を得ることができるということ」、だと思うのです。

 最後に、ここでは、ガラス「瓶」を「びん」と表示します。「瓶」以外にも「壜」という文字もあるのですが、どうも最近、これらの漢字が余り使われていないように思うからです。


C先生:先週、エコプロ展でかなり苛立ったことを発言してしまったが、今週は、その埋め合わせとして、誰でもできる「正しいSDGsへの取り組み方」を親切に書いてみることにしたい。

A君:本当に親切になりますかね。

B君:親切ということは、「簡単にできる」ということではない。本当の親切とは、「SDGsに取り組んで良かった」、と担当実施者が本気で思えることなのだ。

A君:ということは、若干苦しむことも含めてということでしょうね。

B君:何をやるにしても、「未知のことをやる」のだから、いわば、まだ登ったことのない山に登ったり、行ったことのない外国で一人で旅をしたり、という行為と似たり寄ったり。そのときどうする。

A君:外国に一人で行くとなれば、そもそも、どこに行くか、それを決めなければならないので、様々な旅行案内書や、Webを調べて、自分の興味に合うところはどこかを探しますね。そして、そこに到達するには、どのような方法論があるのか、できれば、英語のページでそれをチェックして、必要なら、電車の切符を予め買っておくとか、そんなことでしょう。もちろん、宿泊先を選択して予約することも重要ですね。

B君:正に、SDGsもそんな対象なのだ。一般的な海外旅行のやり方は書かれている。しかも、そのやり方以外には、正しい方法は無いと思えるような記述になっている。しかし、具体的にどの場所に行くのか、どこに宿泊するのか、などは完全に実施する人間の自由なのだ。その選択によって、なんらかの効果がでること、旅行の場合であれば、「来て本当に良かった。計画・準備が良かったからだ。次回はもっと良い計画を作ることができる」と思えること、これが本当の満足感だと思うからだ。
 SDGsの場合も似たような条件だけれど、成功の確信が持てるようなものを選択し、次に、どのように実施するかを考えて、そして実行する。その効果を自分自身で判定する。まあ、現在の世界の流れ、日本だと世間の流れに合っていないと、その効果はすぐには出ないのものの、もし未来予測が正しければ、なんらかの反応が帰ってくるものだ。

A君:海外旅行で良い場所に行けたという満足感が得られたとしても、自力でやった場合には、それでは終わらないのが普通。しばらく時間がたって見ると、最初の印象に加えて、その場所を訪問した意味などが、これまでとは違った面から分かる、というような経験もできますね。

B君:特に、自分で選択し、自分で手配し、自分でリスクを犯しながらある地を訪問した場合には、満足感が大きいはずなのだ。団体ツアーに参加して、バスの中では大体は寝ていて、目的地に付いたら、ぞろぞろと皆の後を付いていく。これでは、得られる満足感は低い。まさに、お金をドブに捨てているようなものなのだ。やはり苦労しないと、印象が薄い。

A君:確かに。環境省などが親切に用意してくれている「xxガイド」を盲目的に実施すると、「バスのなかで寝ている」ようなものなので、まあ、徒労感だけが残るのが、SDGsなのでは。

B君:国連の合意文書は、自分で解釈しないと、何もできない。しかし、それを自分で解釈しつつ、実施してみると、もし何かの効果が少しだけでも見えれくれば、その満足度は確実に高まる

A君:まあ、当然ですね。それでは、早速。

B君:次のようなことがベースとなる記述だ。
(1)「合意文書の題名は、SDGsではない」ことから。
”Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development"
(2)この文書は、「行動プラン」であって、その直接的な対象は、一義的には、People、Planet、Prosperityである。加えて、Peace、Partnershipが重要な目標である。
(3)Peopleとは:貧困の解消が入り口で、最終的には人権の尊重。
(4)Planetとは:気候変動の防止・生態系保全。
(5)Prosperityとは:すべての人が生活をEnjoyできること。
(6)Peaceとは:戦争・暴力のない世界。
(7)Partnershipとは:多くの人々との連携。
(8)そして、最後の結果が、「我々の世界が変わった」と言えること
(9)それには、「自らの企業、組織、個人も同時に変わった」と言えることが条件。


A君:実は、以上の内、(3)〜(7)が、「5個のP=5Ps」と呼ばれるものです。目次的に短く書きましたが、フルの記述はかなり長くて、それを若干要約すると、次のような記述になっています。
(3)People: あらゆる形態とあらゆる状況での貧困と飢餓を終わらせ、人の尊厳と平等が守られた形で、かつ、健全な環境の元で人々の能力を活かすことができる世界を実現すること。
(4)
Planet:地球を劣化から守ることを義務付けられている。持続可能な消費、すなわち、天然資源の持続的なマネジメントと気候変動防止によって、将来世代と現世代のニーズを実現可能にする。
(5)
Prosperity:すべての人が豊かで充実した生活を守りつつ、経済的発展、社会的変革、技術的進化が自然と、かつ、協調的に行われる。
(6)
Peace:恐怖と暴力から開放されて平和が行き渡り、正義が守られ、誰一人取り残さない社会を作る。平和無しに持続可能な発展は無いし、持続可能な発展なしに平和も無い。
(7)
Partnership:持続可能な社会に向けたパートナーシップを再度活性化することによって、すべての国、すべての政策決定者、すべての人々の参画して、最貧国、最脆弱国のニーズに集中しつつ、2030の課題を解決することができるようにように、あらゆる方法論を活性化する。

C先生:一応、原文の英語をここで示してくれ。本格派は、我々の訳ではなく、英語を読むべきなのだから。

A君:了解です。
 People: We are determined to end poverty and hunger, in all their forms and dimensions, and to ensure that all human beings can fulfil their potential in dignity and equality and in a healthy environment.

 Planet:We are determined to protect the planet from degradation, including through sustainable consumption and production, sustainably managing its natural resources and taking urgent action on climate change, so that it can support the needs of the present and future generations.

 Prosperity:We are determined to ensure that all human beings can enjoy prosperous and fulfilling lives and that economic, social and technological progress occurs in harmony with nature.

 Peace:We are determined to foster peaceful, just and inclusive societies which are free from fear and violence. There can be no sustainable development without peace and no peace without sustainable development.

 Partnership:We are determined to mobilize the means required to implement this Agenda through a revitalised Global Partnership for Sustainable Development, based on a spirit of strengthened global solidarity, focussed in particular on the needs of the poorest and most vulnerable and with the participation of all countries, all stakeholders and all people.

B君:ここで、具体的な進め方をまとめてみよう。こんな感じでどうだろう。

実施手順:

Step(-1):次のWebページを開く。
https://sustainabledevelopment.un.org/post2015/transformingourworld

Step 0-1「健全な環境の元で」が、最初かつ最終の条件、「貧困がやはり最大の問題」。この二点が共通の概念であることを、原文を読んで確認する(Preambleの最初の2行)。
Step 0-2自社として取り組むべきとゴールを17からいくつか選択する。

以下は、選択したゴールそれぞれについて検討する。

Step 1:解決すべき対象の問題について。5Psとして記述された項目が「対象別に改善する対象である」と考え、その実現プロセスを、できるだけ深く思考することによって創出する。

Step 2:その実現プロセスを想定し、それによって、どのような効果がでるか。それを科学的な検討によって明らかにす。例えば、資源とかエネルギーなどが関係する場合には、ツールとしては、LCA(Life Cycle Assessment)が有力と考えられる。

Step 3テストケースを実施して、実際に、LCAの手法など、採用した方法論が正しいと信じることができるか。すなわち、何か見落としはないかを検討する。

Step 4:それを実施する際に、どのような人々の協力が必要不可欠であるかを考察する。

Step 5協力者が経済的に成立する条件は何かを明らかにし、その条件が満たされる形で実施する。

Step 6:実施の状況を明確に解析し、予測された環境面での効果がでているかどうか、できるだけ具体的に検証する。

Step 7関係する人々と、その効果について検証し、さらなる改善点があるかどうかを議論する。

Step 8:改善することによって、効果がどのぐらい増加するか。その改善のためにどのぐらいの費用の増額があるかを推定する。

Step 9最終的な実施スタイルを決定し、効果が十分あると判断されれば、実行し、もしも、不十分であれば、全く別の対応を考慮し、見つかれば、Step 1に戻り、見つからなければ、終了

以上

A君:まあ、細かいところでは、修正が出るのではないかと思われるのですが、一応、リユースびんの場合について、検討をしてみましょう。

B君:しかし、リユースびんとは何か、となると、知らない人が大部分なのでは。少なくとも、若者は絶対に知らない。

A君:そうでした。びんビールをご存知でしょうか。びんビールは例外は若干あるものの、そのびんは、ビール会社の持ち物でして、使用後回収されて、洗びんされ、再度利用されます。
 昔は、すべてのびんは、使用後に酒屋に持っていって返すものだったのです。それが洗びん事業者によって、キレイになって、再度使われる。

B君:なぜこれを取り上げるのか。それは、容器の選択に関して、経済発展が始まって以来、日本社会の特性がフルに適応されてきた。その特性とはなにか。日本のビジネス社会でもっとも尊重されることは、繰り返して語った来たように、「利便性」が第一、「効率性」が第二だった。効率性には、金銭的な合理性が含まれている。これまでパリ協定の説明で色々と述べてきたように、「気候正義」がパリ協定の根本的な原理原則であるということだけれど、これは、日本のビジネス社会の基本的な原理原則では全く理解ができない。

A君:もっとも「利便性」が高く、「効率的」なことを追求した結果として、「使い捨てのプラスチック容器」が理想形であることが証明され、主流になった。これが歴史。

B君:しかし、「使い捨てプラスチック」は、現時点だと海洋生態系に対して害を与えるという可能性が高いので、プラスチックの使用法について、検討が開始されたのが現時点。

A君:だから、「利便性」、「効率性」は、最初はある程度無視して、取り組むことが大前提になった。

B君:実際、フランスあたりだと、「人間、余りにも便利になると碌なことをしない」という思いが社会に残っている。最大の被害者は、生態系と貧困層か。

A君:日本という国は、もともと、「利便性」「効率性」以外の原理原則の無い国なのだ。こんな国に、「パリ協定」「SDGs」を行動原理の大原則にするという現時点での世界的な流れをどうやって仕込むのか。まあ、最初から無理なのかもしれない。

B君:世界では、金融界がそれに気付いて、ESG投資や、TCFDへの情報開示などが求められるようになった。ところが、一般社会では、例えば、廃プラの海外輸出などの問題について、仕組み変更の始動が遅いので、日本社会は確実に遅れることだろう。

C先生:もはや一回分を超えた。そろそろここで第一部を終わって、次回は、そもそも「びんリユース」というものの説明から初めて、どのようなことを考えることになったのか、という結論を説明してみよう。