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  家電リサイクル法等の基本原則 09.02.2007
     その1:リサイクルの目的の拡張



 家電リサイクル法の対象に、これまでの4品目に加え、に薄型テレビと衣類乾燥機が加わることとなったようだ。リサイクル料金がどうなるかなどは、未定である。

 これを機会に、このところ余り議論をしたことのない家電リサイクル法やパソコンのリサイクルについて、本来、何を根拠として語るべき問題なののか、などを議論してみたい。

 そもそも、薄型テレビの中身は、大きなディスプレイが付いたパソコンみたいなものである。似たもの同士であるパソコンと薄型テレビが、一方は、先払いのパソコンリサイクルで、そして、一方は、後払いの家電リサイクル法の対象になる。

 そこにはどんな理由があるのか。そんな疑問を考えてみたいということも、本記事を書く理由である。要するに、循環という制度設計をすることがどのように困難なのか。こんなことも若干検討をしてみたい。

 今回、書いていたら、どうにも長くなりすぎた。そこで、2回の連載という形になる。制度設計の話は、次回送り。

C先生:家電リサイクル法に、薄型テレビ、衣類乾燥機の二品目が新しく加わることになったようだ。まあ、現在までのところ、このリサイクル法は、順調に動いているように見えるものの、超長期を考えると実のところかなり議論を要する。それは、やはり日本という国がどういう方針でリサイクルを行うか、という基本的問題のひとつのように思えるからだ。

A君:家電リサイクルは、どうもその国の特徴というものを反映しています。
 例えば、
(1)家電リサイクルについては、ヨーロッパでは、WEEEなる仕組みが動き出している。しかし、日本に比べて、かなりコスト意識が強いものになっている。リサイクル料金は、明示されない形で、製品価格に含まれている

B君:ついでだから、思いつくまま色々と様々な問題点を列挙しみたい。
(2)2011年には、地上アナログのテレビ電波が止まる。一気に多くのテレビがリサイクルに回るだろう。ほとんどがブラウン管式だろう。ところが、ブラウン管のガラスはもはやリサイクル不能の状況。
(3)温暖化に関連して、石油枯渇や石炭資源についてはしばしば語られる。金属元素の枯渇は余り語られることは無いが、リサイクルによって、枯渇が防げるのだろうか
(4)家電・コンピュータはベトナム、中国などのアジアに送られてリサイクルされることも多い。果たして、それでよいのだろうか。
(5)途上国では、家電リサイクルによって健康被害が出ている面もある。
(6)一方で、富士ゼロックスのタイにおけるリサイクルのように、日本では達成できないほどの資源再利用率を達成できるのが、人件費の安い国における手分解を中心としたリサイクルである。
(7)しかし、タイでもすべての元素のリサイクルが可能というわけではない。リサイクルが不能の部品などは、日本に持って帰ってきてリサイクルをする必要がある。
(8)日本は、レアメタルの世界の生産量の半分ぐらいを使っている。将来、レアメタルが入手できないといったことは無いのか。
(9)だからといって、資源確保のために、中古品のパソコン、テレビなどをすべて国内で処理するシステムを構築すべきなのか。
(10)廃家電に限らないが、中国への資源輸出が世界に与える影響をどう見るか。

C先生:この問題も、不用になった家電を使うべき中古品と考えるのか、それとも廃棄物だと見るのか、廃棄物といっても、それを単なるごみとしか見ないのか、それとも資源だと見るのか、また、どの地理的範囲で考えるのか、どの程度の未来を見込んで考えるのか、などによって議論のやり方が違う。

A君:廃棄物か資源か、これが時代によって変わるでしょうから、条件それ自体が独立だとは限らない。

B君:確実に言えることは、これではないか。廃家電などを単なる廃棄物の問題だというのなら、日本方式で、有害性・環境影響と最終処分量の両面でほぼ解決できることが分かっている。しかし、廃家電を資源だとしてみると、主原料である鉄、ステンレス、銅、アルミ、それにプラスチックとしては、日本方式で回収可能。しかし、ヨーロッパでは、日本方式ほど精緻な方法は採用されていない。
 微量しか含まれないレアメタル類は、日本方式ですら、十分に回収されているとは言えない

A君:しかし、主原料のひとつであるブラウン管ガラスの問題は、すでに解決不能問題になってしまった。これが2011年の地上アナログテレビの終了によって状況は最悪の事態を迎える。

C先生:それが一つの整理だな。廃棄物としてなら日本方式で解決可能な問題であるということで良いが、実は、日本方式というのは、世界的にみると相当に希というか奇異というか、いずれにしても独自の方法だと言われている。ヨーロッパですら、この方法が採用されるとは思いにくい。これは、後で議論しよう。

A君:微量しか含まれない資源の問題は、日本国内の方式でも、十分に考慮されているとは言いがたい。日本のように、資源が無い国というのは、産業立国をしようとすると、大きな弱点。長期的には、なんらかの対応を考える必要がある。

B君:資源の話は、食糧自給の話と似ていてる。もしも資源・食糧の価格が国際価格で調達価格がどの国のメーカーにも共通価格であるのなら、経済活動を活発に行って、購入できるだけの利益を稼ぐことがもっとも重要。あの国には売れないといった「国対国」の敵対関係ができてしまうと、これは問題。

C先生:ということは、資源枯渇を気にする必要は無いという言い方にも聞こえる。そういう見方もあるのは事実で、例えば、液晶テレビに使われる重要な材料として、透明電極用のインジウムだが、これが世界的に不足したとしても、向こうしばらくの間は、どこかで採掘が可能だろう。勿論、価格は上昇するだろうが、だからといって液晶テレビの価格が3倍になる訳でも無い。しかも、万一液晶テレビの価格が3倍になったところで、別に困る訳でもない。液晶テレビではなくて、インジウムをできるだけ使わない別の方式のテレビが出てくるだけ

A君:となると、資源枯渇の話は、基本的に問題にならないということでしょうか。

C先生:金属元素は枯渇しそうになると、それを使わない技術が開発されて、実際には枯渇しないというのが、経済学の大原則。それは正しいのだが、しかし、いつでも、いつまでも正しいという証明がある訳ではない。経済学の専門家が期待しているものが、いつでも「技術の進歩」。温暖化対策にしてもそう。しかし、技術にも限界があることも事実なのだ。経済学者は技術が分からないものだから、無責任に「問題の解決ができる技術が開発される」という。これは困ったものなのだが。

B君:むしろ、今すぐにリサイクルをするということではなくて、しばらくの間、廃家電・廃携帯電話や廃コンピュータ基板などをどこかに貯蔵しておく。そして、天然資源が枯渇して価格が急上昇したら、取り出して再生をするというやり方が、商売として成り立つ可能性がある。そのうち、こんな方法を取り入れることを考える。そんなやり方で良いのかもしれない。

C先生:時間を超えたリサイクルという概念だが、確かに、まだ早すぎるようにも思う。そのうち考慮されてしかるべき方法だろう。

A君:資源枯渇の問題は、すぐには対応しにくい。ただし、枯渇がじわじわと進行していることは事実なので、常時、注意をしておく必要がある。

B君:現状だと、なんらかの別の方法を用いて、枯渇の可能性が高い金属類の使用速度を落とす工夫が必要かもしれない。

A君:最近、UNEPが携帯電話のリサイクル問題などを手がけているのですが、その問題意識は、廃棄物として健康被害、途上国における資源採掘に伴う生態系の不可逆的破壊。資源枯渇が問題意識に入っているとは思えない。

B君:UNEPは国連機関だから、途上国的な視点が強い。資源枯渇を問題にする国際機関は、エネルギー関連を除けば、無いのが現状。

C先生:枯渇対策としては、資源採掘による環境破壊を大々的に問題にして、資源採掘量を減らすという対策を先の取るのが順序かもしれない。

A君:使用量側のリデュースを生態系の破壊を理由にして推し進めるのが作戦として有りうる。

B君:実際、谷口正次氏の講演などを聞くと途上国におけるレアメタル類の採掘での生態系破壊は相当なもの。谷口正次氏の本は、参考になる(「入門・資源危機」新評論、ISBN4-7948-0680-9、\2500)

C先生:例えば、ニッケルという元素は、今後のエネルギーを考えると、Ni−H二次電池の原料として極めて重要な元素であるが、価格が高騰していることでも有名。以前、ニューカレドニアからの輸入が多かったのだが、政情も不安定で、また、無理やり国内の精錬所への供給優先を行って、契約不履行などが行われ、現在は、オーストラリアが最大の供給国。加えて、採掘に伴うニューカレドニアの環境破壊がひどくて大問題。

A君:ニッケルという元素は、地表から数10センチといったところにあるので、表土を剥ぐような採掘が行われるらしいですね。

B君:現状復帰を義務化しないと、本当のところは駄目なのだろう。

A君:しかし、鉄鉱石にしても、石炭にしても、採算が合うのは露天掘り。あんなに深い穴を掘ってしまったら、現状復帰などをできる訳も無い。ドイツ国内ですら、未だに褐炭の露天掘りを行っている。

C先生:かなり前から、エコロジカル・リュックサックという考え方がある。1994年に、シュミット・ブレークが言い出した。例えば、1トンの銅を採掘するために、500トンの自然資源を移動しなければならないとしたら、エコロジカル・リュックサックは500という。
 原田幸明氏(独立行政法人物質材料・開発機構)は、この数値をTMR(Total Material Requirement)と呼んで、詳細な解析を始めている。なぜならば、銅の場合などが典型例なのだが、最近、採掘できる銅鉱石の品位が落ち続けているからだ。1800年代には、品位が10%ぐらいの鉱石が使われていたが、1960年ごろに品位が1%になり、現在では、0.3%ぐらい。品位が落ちると、エコロジカル・リュックサックは当然増大する。だから、どこかに資源はあるとしても、枯渇が近い元素ほど、採掘に伴う自然破壊が格段に進行してしまう。

A君:ということは、枯渇度のようなものを意識したTMRを考慮することになりますね。枯渇度というものも良く分からないのですが、原田氏のデータによれば、
消費率=すでに使った量/(すでに使った量+可採埋蔵量)
で、次のようになっています。

表1: 金属元素の消費率



現時点で、スズや鉛などを新たに採掘しようとすると、当然、すでに品位が下がっていて、大量の鉱石や土壌が移動することになって、大規模な自然破壊を招く。

B君:一般的には、枯渇そのものが問題にされるが、それは、すでに議論したように、価格がいくら高くても良いというのなら、なんとかなる。しかし、枯渇に向かう過程で、鉱石の品位をどんどんと下げる必要があって、その方が問題かもしれない、ということ。

A君:これは、別の新しい議論をする観点にもなりえて、例えば、車を作るのに、1.2トンの鉄を使い、4グラムの白金を触媒に使ったとすると、エコロジカル・リュックサックは、鉄が大体10で、白金が100万ぐらいだから、
   使用量    エコロジカル・リュックサック
鉄  1.2トン    12トン
白金   4グラム    4トン
となって、意外なぐらい、微量元素の自然破壊に対する貢献が大きいことになる

A君:これを第4の項目として加えますか。以上まとめると、


廃家電・廃コンピュータなどを考慮するとき関連する諸問題

1.廃棄物の不適正処理による問題(健康被害と最終処分量)。
対応:日本における処理法が採用されれば、この問題は解決可能。
 しかし、国際的に日本のような処理法が採用されるには、かなり長期間を要する。

2.資源回収としての問題は、主原料と微量原料に分けて考える。
対応:主原料に対しては、日本における処理法でおおむね対応が取れている。しかし、世界的にみると、欧州の対応すら不十分。

3.微量原料については、世界中どこでも対応が不十分。しかし、資源枯渇の問題を真正面から取り上げるには、時期尚早。

4.資源採掘時における自然資源の移動量が自然破壊を招く大きな原因。エコロジカル・リュックサック的な視点も重要。


C先生:これで第一週は終わり。