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  リスクメーターではかるリスク 11.27.2005
    



 生きていくには、リスクとの戦いが必須である。そもそもものを食べるという行為そのものが、リスクとの戦いである。というと、自然食をすれば大丈夫などという人が出てくるが、自然食だからこそリスクの大きさが不明だったり、予想以上に大きかったりする。

 このHPでは、11月25日?に発売になった監訳した本である、「RISK リスクメータではかるリスク!」の内容を若干ご紹介する。


C先生:今回、監訳した本は、ハーバードリスクセンターの2名の研究者が一般社会向けに書いた本。その特徴は、リスクメーターというものを用いて、リスクの大きさを視覚的に表示していること。

A君:リスクというものは、(もしもそんな状況になったときの危なさ)×(その状況になりがちな確率)で表現できる。これを今回の本では、それぞれ、(リスクの影響)×(起こりやすさ)という形に表現し、それぞれの大きさを視覚的に表現しようと試みている。

B君:その定義は、本当はオカシイ。なぜなら、リスクの定義にリスクという言葉が使われているから。いずれにしても「リスク」という言葉は理解しにくいようだから、まあ、仕方が無いのだが。

C先生:元々の原本が取り扱っているリスクは、48種類ある。ただし、一つのものがいくつかに分解されている場合もあって、全部で、50件になっている。しかし、今回、全部を一気に約す訳には行かなかったので、19種のリスクに限った。約1/3ということになる。残りは、この本が2刷になったところで考えることになっている。すなわち、この初版本が売れなければ、残りが翻訳されることは無い。

A君:取り合えず、10件ずつ、リスクメーターを示して見ましょう。

B君:10件とは、
1.アスベスト
2.水銀、
3.鉛、
4.大気汚染物質(室内)
5−1.粒子状物質
5−2.スモッグ
5−3.大気有害物質
6.生物兵器
7.一酸化炭素
8.DDT

A君:このなかでは、5−1.粒子状物質のリスクがもっとも大きい。その次が4.室内の大気汚染。続いて、スモッグ、そして、最近話題のアスベスト。

B君:もっとも生物兵器は???になっているが、本を買ってもらえば分かるが、そのリスクはそれほど大きなものではない。

C先生:粒子状物質は、アスベストも似たような特性があるが、肺の奥深くまで侵入するので、やはり危険性が高いようだ。

A君:それに対して、2.水銀、8.DDTは、それほどでもない。7.一酸化炭素は、室内大気汚染物質としても最大のリスク物質かもしれない。

C先生:評価がどうしてそんな形になっているのか、それは、本を読んでいただきたいのだが、丸善からの了承を得て、水銀について、本HPに掲載してみたい。試し読みという訳だ。

水銀の文章をPDFファイルで開く。

A君:次の10件ですが、
9.ディーゼル排気
10.環境ホルモン
11.有害廃棄物
12.焼却炉
13.原子力発電
14.オゾン層破壊
15.農薬
16.放射線
17.ラドン
18.太陽放射

B君:このなかでもっとも危ないのが、18.太陽放射すなわち、太陽の光だということになっている。その次が、それに関わることなのであるが、14.オゾン層破壊。

C先生:オゾン層破壊による紫外線の増加が太陽光の危険性を増しているのだが、その影響は、白色人種に対してやはり高い。黄色人種にとっては、ややリスクは低く、黒人にとってはほとんどリスクにならない。また、17.ラドンも日本のように地層が新しいところでは余り問題にならなくて、むしろ、欧米の問題である。となると、9.ディーゼル排気が日本だと最大の問題かもしれないが、それも、先ほどでてきた微粒子の問題が過半だから、5−1.微粒子と重なっていることになる。

A君:15.農薬の影響は、まあゼロではない。13.原子力発電も同様。

B君:10.環境ホルモンについては???となっているが、そもそも何が対象なのか、ヒトへの影響を見るのかどうか、といった基本的なことが???の原因。

C先生:そのあたりのことについても、本文の中には記述があるので、読んでいただきたい。

A君:次の10件。ただし、ここで解説があるのは、最初の水質汚濁だけ。
19.水質汚濁
20.事故
21.エアバッグ
22.アルコール
23.人工甘味料
24.????
25.カフェイン
26.運転中の携帯電話
27.携帯電話からの電磁波
28.電気と磁場


B君:ここでは、20.事故と22.アルコールが圧倒的なリスクになっている。多分その通りだと思われる。

A君:世界中で、アルコールによって寿命が延びているのは、余り酒を飲まない日本の女性だけだった。本当に貴重な例外と言えたのだ。しかし、最近では、アルコールをたしなむ女性が増えたので、はたしてどうなったか。

B君:次の10件
29.銃器
30.食中毒
31.食品放射線照射
32.遺伝子組換え食品
33.狂牛病
34.電子レンジ
35.自動車
36.スクールバス
37.タバコ
38.抗生物質



A君:ここだと、35.自動車、37.タバコ、29.銃器、30.食中毒が大きなリスクだ。

B君:この部分がこの本の真骨頂だとも言える。銃器、自動車と食中毒が同じ土俵に乗っているのだから。

C先生:銃器によるリスクは、日本の場合には、アメリカの場合と比較するまでもなく、ほとんどゼロだ。食中毒も、その頻度は、アメリカよりも遥かに低い。逆に、タバコは、アメリカ人は吸わなくなった。自動車は似たようなものかもしれない。となると、日本におけるリスクの大きさだと、タバコ、自動車、食中毒、銃器という順番になるのではないか。

A君:最後の10件、
39.豊胸手術
40.がん
41.心臓病
42.HIV
43.マンモグラフィー
44.医療ミス
45.太りすぎ・肥満
46.性感染症
47.ワクチン
48.X線


B君:ここも面白いところだ。かなり危険なものが多い。しかし、もっともリスクの大きいのがアメリカらしく太りすぎになっているところが興味深いところ。

C先生:日本でも徐々に肥満が増えているが、損失余命で見れば、日本のリスクは、米国の1/4程度ではないか、と思われる。だから、日本におけるリスクの順番といえば、恐らく、医療ミス、性感染症、HIV、太りすぎといった順番になるのではないだろうか。

A君:状況はアメリカと日本では相当違う。

B君:まあ、この本はアメリカの状況を主として記述しているのだが、その科学的な記述について言えば、日本とアメリカの状況では余り変わらない。

C先生:最後に、水銀の記述を掲載したい。


2. 水銀    印刷用のPDFファイルで読みたい方は、ここをクリック(261kB)

“(有害レベルに達する暴露の)起こりやすさ”・・・・・・・・・・9%
“リスクの影響(深刻性と影響を受ける人数を含む)”・・・・・・・4%

日本では、マグロ、キンメダイなどを食べるので、米国の2倍ぐらいのリスクだと考えられる。しかし、対象は妊婦もしくは近々妊娠の予定の女性のみである。

水銀は,おそらく温度計の中にある、銀色で液体の金属として、なじみがあるだろう。あるいは、看護婦や医師が使う血圧装置で,上昇する銀色の柱として見たことがあるかもしれない。水銀はおもしろい物質で、室温では液体で、温度と圧力との直接的な関係で膨張・収縮する。しかしこれは重金属でもあり、人間の神経系にとって毒となる物質の一つである。
現在、水銀は,オーブンのサーモスタットや測温体のように,温度計や他の温度感知機器に一般的に使用されている物質である。
医者が使う血圧測定器や圧力計のように,圧力を感知する機器には、水銀は広く使用されている。また水銀は,歯医者で埋められる詰物である,歯科治療用充填材の材料としておよそ半分含まれ,合金の金属どうしの接着を助ける役目をしている。ふたが開いている時には電気を付け、閉じると消す役目をする、自動車や洗濯機のフードの中の傾斜スイッチには,水銀が使用されている。水銀は電気の良導体であるため、バッテリーや蛍光灯球のスイッチに大いに使用されていた。殺虫剤やくん蒸剤,織物とワクチンの防腐剤として,ラテックス塗料における保存料および着色剤として使用されていた。
水銀の用途のうち、電池などいくつかは、水銀の毒性影響が明らかになったために段階的に禁止されつつある。

<有害性>
水銀には無機と有機の2つの基本的な形態がある。有機的な形態で最も多いものは、メチル水銀として知られている。無機の水銀が環境中の水系に混入すると生成するが、これはさまざまな方法で起こる。土壌や岩石から水域に浸出する天然の水銀もある。人為起源(人間活動の結果として起こること)の主な起源は,少量の天然水銀を含んでいる石炭の燃焼から出る水銀蒸気(環境保護庁(EPA)は、これがすべての人為的な水銀の1/3であると述べている),次が一般廃棄物の焼却、医療廃棄物の焼却,有害廃棄物の焼却による水銀蒸気と続いている。
水中や堆積物中のバクテリアは,主として海底火山から供給される無機水銀をメチル水銀に変える。バクテリアや植物性プランクトンは、摂食と同時にメチル水銀を摂取する。バクテリアや植物性プランクトンは、大きい生物によって順に消費される。食物連鎖が進むにつれて、大きい生物は小さい生物よりも多くの量を食べるので,メチル水銀の投与量は生物濃縮,つまり凝縮されてくる。水生生物の食物連鎖の頂点では、捕食者であるマグロなどの魚では,筋肉組織のメチル水銀のレベルが、水のレベルよりも1万倍〜10万倍も高くなる。繰り返すが、水銀の大部分は、天然起源である。
このレベルは,人間への有害性にとって,ある意味では非常に低い。魚を食べるのは,研究で最もはっきりと人間の健康リスクが確認されているメチル水銀への暴露の形態ではあるが、市販されている魚を平均的な量だけ食べる人のほとんどは,危険な量の水銀に暴露することはない。

<影響の範囲>
水銀は主に神経毒であり,脳と中枢神経系の細胞を損傷する。メチル水銀中毒の最も劇的な症例は1950年代に日本の水俣で起こったもので,地元の水域に流入した水銀の産業廃棄物によって,地域の主要な食料である魚のメチル水銀レベルが高くなった。非常に高いレベルのメチル水銀に暴露した子供と大人は,視力障害,四肢の刺痛や麻痺,言語障害,聴力障害,そして歩行障害に見舞われた。水俣の妊婦の間で,重度の認識機能障害を持つ幼児の出産が数例確認された(水俣での魚の消費量は,合衆国の魚の平均消費量より20倍以上も多く,水俣で食べられていた魚のメチル水銀レベルは,産業廃棄物の局部的な不法投棄によって,米国よりかなり高かった)。
1965年に,同様の水銀中毒症状が日本の新潟で発見された。1960年代と1970年代には2つの症例がイラクで起こった。これは、メチル水銀の入った殺菌剤を吹きかけられた小麦種子が,不注意で粉にされて、食用の小麦粉に混入した事故である。この症例で見られた症状は,水俣とよく似ていた。
水銀の慢性の低投与量の暴露は,特に妊娠中の女性では、非常に懸念される。水銀は、体内に蓄積し、胎盤を通過して成長している胎児に影響することがある。人間の水銀の体内半減期がおよそ2カ月(我々の身体は2カ月後に半分の水銀を代謝して、次に、残りの水銀の半分を代謝するのにもう2カ月かかり,さらに・・・という意味)であるため、水銀に一定レベルの水銀を蓄積している女性は,4カ月後にもその25%の水銀が体内に残っていて,6ヵ月後には元のレベルの12.5%,8カ月後には6%のレベルになるだろう。言い換えれば,たとえ妊娠期間中にそれ以上の水銀を摂取しない場合でも、妊娠した女性が受胎時に体内に保持している水銀のうち、少なくともいくらかは,赤ん坊を分娩するときにまだ存在するのである。
日本とイラクにおける急性中毒の症例から,妊娠中の女性による高レベルの水銀暴露が胎児の神経発達に作用することが分かっている。妊娠中に高レベルのメチル水銀に暴露した女性の子供は,歩行と会話の開始の遅滞や認識力テスト成績の低下、学習の困難を示した。また、水銀は授乳期間中に母から幼児に渡されるが、この転送が何か被害を引き起こすかどうかに関しては,決定的な研究はまだない。

<暴露の範囲>
魚は,一般的なメチル水銀暴露で,いちばん大きな潜在的な起源である。しかし、大部分の人が暴露するレベルは、有害ではないと考えられている。全米科学アカデミー(NAS)とEPAは、典型的なアメリカ人が市販の魚のうち、1日4分の1カップのマグロと同じくらいの量を毎日摂取しても,有害なレベルのメチル水銀を摂取するような危険はない、と報告している。ただし、魚のうちでも,生態系で上位捕食者であるものは他の魚よりメチル水銀レベルが高い。これは、淡水種ではオオクチバスやコクチバス、スズキ、カワカマス、レイク・トラウト、ウォールアイ,海産種では鮫やカジキ、マグロなどである。
現在の環境レベルでは、大気中の水銀は健康のリスクではないと考えられる(以前は、大気中の水銀は,特に帽子産業では深刻な問題であり,フェルトを作るのに水銀が使用されていた。そのため、「水銀中毒(いかれ帽子屋病)」という用語と,不思議の国のアリスの「いかれ帽子屋」が生まれた。)。現在の暴露レベルでは、飲料水の中の水銀は危険ではないだろう。
歯の充填材に含まれる水銀は,多くの論争を引き起こした。充填材から蒸発する少量の水銀の吸入から暴露が起こると考えられている。口腔衛生専門家は、アマルガム材料を準備するときに、この水銀蒸気に高い濃度で暴露するため,何らかのリスクがあっただろう。しかし、ほとんどの歯医者は,水銀を取り扱いに適した安全装置を持つ産業設備で、既に混ぜられたアマルガムを取リ寄せているので、こうした職業暴露はかなり抑えられるようになった。歯に充填材が埋まっている何千万人もの人と同じくらいのリスクが自然環境に存在することは、それほど想像に難くない。職業暴露(アマルガム充填材が埋まった歯科患者よりはるかに高いレベルである)した症例のうち、成人の暴露の研究では,全く、あるいは非常に低レベルの影響しか示していない。2001年の終わりには、2例の子供の研究が進行中であったが、結果は特に報告されていない。
別の形態の水銀暴露が関心を高めている。2001年、(米)医学研究所は,数種のワクチンに使用されているチメロサールという水銀ベースの防腐剤が,該当するワクチンを使用した数人の子供に自閉症などの疾病を引き起こすという申し立てについて調査を行った。その結果、チメロサールと健康状態には直接的な関係は見出せず、理論上のリスクも同様に低いことがわかった。しかし医学研究所は、ワクチンからチメロサールを取り除くという,食品医薬品局(FDA)による決定を支持した。その決定では、古いワクチンの在庫が使いきられるときに新しいワクチンにはチメロサールを使用しないようにしたため,2,3年以内にワクチン供給から完全に外れることになっている。

<リスクの削減>
2000年7月の時点で、40州とアメリカ領サモアは,地域の水域で捕獲された魚を消費する人に注意を促す勧告を発した。この勧告には,五大湖のすべてと、その他の5万2000以上の湖、23万8000マイルの川が含まれていた。勧告では、指定された水域からの魚の消費量を抑えるか、あるいは摂取を完全に避けるように提言している。彼らは妊娠可能な年齢の女性と,魚が食事の主な構成を占めるインディアンやアジア人、太平洋諸島系の民族など、独特の文化を持つ人のリスクについて、特に言及している。
EPAは、一般の消費者に対して、妊娠中または妊娠の可能性がある、あるいは育児中であれば、家族や友人が釣った淡水魚は、1週間に1食までに制限するべきであると勧告している。成人では、1食について,6オンス(約170g)の調理済みの魚,あるいは8オンス(約230g)の未調理の魚,幼児では,1食に2オンス(約60g)の調理済みの魚あるいは3オンス(約90g)の未調理の魚である.
そしてFDAは、妊娠中または妊娠する可能性がある女性、育児中の母親,幼い子供は、鮫やカジキ、ヨコシマサワラ、アマダイを食べるべきではない、と提言している。FDAのガイドラインによると、妊娠可能年齢あるいは妊娠中の女性は,店で購入した魚やレストラン調理された魚を週当たり平均12オンス(g)なら安全に食べられることを示している。したがって、ある週に、店で購入して,あるいはレストランで12オンス(g)の調理済みの魚を食べたならば、同じ週には、家族や友人が釣った魚は食べないほうがよい。この目安は、すべての魚からの体内の総メチル水銀レベルを低いレベルに抑えるためには重要である。
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EPAは,石炭火力発電所からの水銀放出を削減する計画を発表した。2004年には、EPAは最終的な一般大気汚染基準を作成して、広域の汚染物質を減少させるためにクリーンな燃料を燃焼することを要求すると考えられている。EPAは、この基準によって,1990年のレベルと比較して水銀放出を50%削減できると見積っている。一般廃棄物焼却炉からの水銀放出を1990年のレベルから90%減少させるための基準は,すでに制定されている。EPAは、医療廃棄物の焼却炉への基準によって、放出レベルは1990年と比べて94%減少すると推定している。これらの基準は有害廃棄物焼却炉からの放出を半分に削減するとEPAは見積もっている。
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それでもなお、屋外には水銀が多く存在する。身の周りの製品の中には、かなり量の水銀がある。それが何であるか分かっていれば,適切に取り扱って、安全に処分することができる。現在では、ほとんどの用途について、水銀を含まない効果的な代替手段がすでに開発されている。
連邦政府はさらに,塗料および殺虫剤への水銀添加を禁止している。バッテリー製造業者は,水銀の使用量を抜本的に抑えており、廃棄物へ混入させず、むしろ水銀を回収するために、バッテリーリサイクル計画の実行を支援している。サーモスタットや温度計の製造業者は,代替手段に転換している。自動車や家電の水銀傾斜スイッチ製造業者は,機械装置に取り替えている。合衆国の水銀の入った工業製品への需要は,1988年から1997年の間に75パーセントも低下した。