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  想定外のリスクはないのか 11.05.2006
     



 先週の話題が、死亡数の推定であった。もちろん、そこに挙がっているリスクが、すべてのリスクではない。 ソフトバンク流なら「予想外」リスクは無いのか。

 一般的なメディア情報だけを得ていると、またまた新たな環境問題が出現した、といった感覚の記事が多いので、そんな疑問を持つ方が普通である。

 しかし、実態は多少違う。例えば、アスベスト。問題になったのは、確かにクボタがきっかけではあるが、労働環境問題としてのアスベストの話は、それこそ大昔から知られていた。それがたまたま昨年になって社会問題になったにすぎない。

 環境問題だけではないが、想定外の大きなリスクというものは、なにかあるのだろうか、それとも、ほとんどすべてが想定内のリスクなのだろうか。それを議論してみたい。


C先生:まず、前回示した表への追加から行きたい。それは、ヒ素のリスクだ。前回、検討不足で、掲載不能だったものだ。
 水道水のリスクの最大のものは、ヒ素による発がんリスクだと考えられる。原水の状況が悪い場合、しかも、塩素消毒のみで処理した場合には、非意図的な塩素化合物の生成によるリスクがほぼ同程度ではないか。

A君:ヒ素の水道水の基準は、先進国は大体0.01mg/L、すなわち、10ppbなのですが、米国政府は、ヒ素の除去は水道会社にとって大きなコスト負担になるからという理由で、長らくこの値を採用することを拒否し、途上国なみの50ppbを使ってきたのです。

B君:ヒ素によるリスクは発がんリスクなのだが、低濃度の場合、そのがんは皮膚がんなので、米国では皮膚がんでは死なないと考えていたのではないか。

A君:そうかもしれません。皮膚がんも、非常に希な黒色腫メラノーマは致死率が高いですが、それ以外の皮膚がんだと、まず死には至らない。

C先生:飲料水中の高濃度ヒ素の人体影響では、バングラデシュやインドなどで、いやというほど実例があるので、それほど厳しくしなくても、という話もあっただろう。しかし、やっと米国も2006年、すなわち今年になってやっとのことで先進国の仲間入りをした

A君:2001年には、基準が厳しくなることは分かっていて、2003年にはニューヨークタイムズなどで、水道水中のヒ素が問題になったりしています。ニューイングランド地方で、井戸からヒ素がでて、それがこの10ppbなる新しい基準を超える可能性があるとのこと。

B君:膀胱がんになるようなレベルのヒ素だとまずいのかも。しかし、皮膚がんのレベルのヒ素なら、ということか。

C先生:米国の環境規制値は、大企業よりなので、ときに駄目なものがあるが、その一方で公表はすごい。実に様々なデータが公表されている国でもあるのだ。例えば、
http://water.usgs.gov/nawqa/trace/data/arsenic_nov2001.xls
には、全米の井戸中のヒ素濃度のデータがある。それを見ると、最高濃度の井戸は、なんと2600ppbと、規制値の260倍もある。場所としては、カリフォルニア、ネバダ、などの西部が多いようだが。約12%の井戸からの水が規制値の10ppbよりもヒ素濃度が高い。

A君:いかにもアメリカ流。なんでもデータ公開。しかし、規制は大企業に有利に。

B君:ヒ素の皮膚がんの発がんリスクは非常に高く、10ppbの水道水ですら、6×10e−4というかなりとんでもないリスク。ただし、死には至らない。これをどう判断するか。

C先生:まあ、結論的には、ヒ素のリスクは、蒲生さんの値に前回と同じ変換係数を掛けて表の中に入れることで対応することにする。

A君:摂取は、水からに限らないですね。大体、20%ぐらいでは水、残りは通常の食品。

B君:ミネラルウォータ中のヒ素の規制値は、日本においても、以前の米国や途上国並みの値なのだが、それによるリスクの上昇は考えなくて良いのか。

A君:水からのヒ素の摂取量の割合を20%にして、ミネラルウォータばかり使った場合を考えて補正すると、蒲生さんの値の約2倍といったところになりますか。

C先生:それも先週示した表に加えておこう。http://www.yasuienv.net/RiskSortedbyDeath.htm



注15:ヒ素(水道水と食品)による死亡数。水道水中のヒ素濃度を10ppbと仮定。水道水からのヒ素の摂取を全体の20%と仮定。
 ミネラルウォータのみ使っている場合のヒ素による死亡数は、ミネラルウォータのヒ素濃度を50ppbと仮定。ただし、日本製のミネラルウォータには、これほどのヒ素は含まれていないものと思われる。カルシウム、マグネシウムの多い外国製の硬水系のミネラルウォータが可能性が高い。


C先生:これで本題に行ける。想定外のリスクはあるのか、ないのか。まずは、世間一般の認識から行きたい。

A君:一般的には、新興感染症などが危険視されていますね。先週ご紹介した中谷内先生の本でも、鳥インフルあたりが発生すると、10万人あたりの死者が500名に達する。すなわち、がんの死者の倍ぐらいになると予想されています。もっとも、対策を余り取らない場合の予想数なのですが。

B君:SARSは、あれほど大変な騒ぎであったのだが、世界全体での死者はWHOの発表で774名、患者総数が8096名
http://www.who.int/csr/sars/country/table2004_04_21/en/index.html
もちろん、これは、WHOなどの必死の戦いの成果でもあって、もしも、対策を余り取らなければ、相当多数になった可能性がある。

C先生:現時点では、相当な対策が取られると考えた方が良いだろう。SARSで死者を出したのは、中国349名、香港299名、が飛びぬけて多く、続いてカナダ43名、台湾37名、シンガポール33名。残りの国は比較的少数で、ベトナム5名、タイ2名、フィリピン2名、マレーシア2名、南アフリカ1名、フランス1名。

A君:ただ、致死率は相当高くて、カナダなどでも17%、香港も同様。

B君:致死率が余りにも高いと、患者がすべて死んでしまうので、大流行には繋がらない。SARSは、かなり致死率が高いが、それでも、大流行をする可能性がある範囲のように思える。

C先生:本当にSARSは撲滅されたのか。これはなかなか分からない。望むらくは弱い形のSARSが生き残っていて、世界の人々の間で免疫が徐々に形成されているという状態であれば、次ぎの発生時にそれほどの致死率にはならないことが考えられる。

A君:鳥インフルが怖いのも、そこです。人々に全く免疫が無い状態で流行が始まることを想定している。今でも、少々先行的に感染者が出てはいます。しかし、ヒトからヒトの感染はまだ見つかっていない。

B君:他の感染症では、デング熱とかもあるが、サルモネラ菌とか、コレラとかいった比較的なじみのある名前が未だにに問題になっている。余り新規性は無い。

C先生:希望的観測ではあるが、現在のWHOの体制などを見ると、鳥インフルが10万人あたり500名といったような死者を出すことは無いと信じたい

A君:感染症はそんなものかもしれませんが、気になるのが、人間側の感受性が変わっていること。日本人は、感染症を減らした副作用で、どんどんとアレルギー体質になっている。また、化学物質過敏症のような症状を示す人々が増えている。電磁波過敏症は、どうやら否定されているようですが。

B君:過敏症も、やはり、それなりの対策は取らなければならないと思う。しかし、ここで語るような平均的な死亡数に影響するのは、もう少々先のことだろう。

C先生:電磁波も、WHOなどが国際基準案を提案して、なんらかの対応を取る必要が出る可能性がある。対応を要するかもしれないのは、商用周波数50/60Hzだけで(しばしば超低周波磁場と呼ばれる)、携帯電話などの周波数ではない。まして、電磁波過敏症ではない。

 もしも超低周波磁場の小児性白血病増加効果が本当ならば、もともと小児性白血病が10万人に4人程度の発生数で、超低周波磁場を浴びていると確率がその倍になる。その条件である0.4マイクロテスラという超低周波磁場を浴びている子どもの数は、WHOの推定では、約1% http://www.who.int/peh-emf/publications/facts/elfcancer_263.pdf。その後日本の研究でも、同じぐらい。死亡率を10%としたら(最近、若年性の急性リンパ性白血病はほとんど治癒できるようになってきた)、超低周波磁場による10万人あたりの死者が0.004名となって、大きいとは言えない死亡数になる。

 発症数にして低周波磁場が原因のものは日本全体で年間2〜3名との記述あり、死亡者に換算すると大体、この数値と合う。 http://www.babycom.gr.jp/eco/kodomo/s5.html このWebページ全体は、電磁波危ない派が作っているようだが、このページは、例の国立環境研究所の研究の実施者の記述であり、中立的。

 影響それ自体はまだまだ相当不確実だと思うが、ヨーロッパ的な考え方を採用すると、どうしても予防原則を適用して規制ということになる。なぜならば、死亡数としていくら少ないとは言っても、BSEに比べたら相当なものであることは事実だから。

A君:予防原則が、米国へのアンチテーゼだと見れば、まあ受け入れるのも一案。米国流はどこかでストップしないと、トンデモないリスクが出てきそうに思う。特に、人間をいじりすぎる。例えば、臓器移植とか軍隊のサイボーグ化とか。

B君:ただし、このぐらいのリスクだと、超低周波磁場への暴露を回避する対策を取るよりも、特別保険制度を作る方が良いかもしれない。航空機事故よりも低いリスクだからという訳ではないが、落雷の2倍だと考えると。

C先生:最近、BSE関連などで日本人のメンタリティーを見ていると、予防原則的な対応も仕方が無いのかもしれないと思うようにはなった。環境規制も大きなリスクが無い今、所詮は住民サービスのレベルで考えることが必要になったのかもしれない。発想自体がポピュリズム的だが。しかし、それには、対策にはコストが掛かるということを同時に示すことが必要だろう。電磁波(低周波磁場)の死亡者数も表に入れるか

A君:それでは、次ぎに行きますが、地球温暖化による死亡数の増加というものはどうでしょう。

B君:それは様々な要因があるので、分解して考えないと。
(1)温度上昇の副作用
(2)台風や急激な降雨の影響
(3)急激な寒冷化のトリガーになる

A君:温度上昇も、熱中症の増加といった直接的なものから、致死性の伝染病を持ち込む蚊の増加、例えば、マラリア、西ナイル熱、といったもの。さらには、生態系影響を経由したもので、食糧供給にまで言及するもの、などがありますね。

B君:熱中症は、日本のようなもともと亜熱帯的気候の国は余り問題はない。エアコンがあるからだ。ただし、所得格差がますます拡大するとなると、エアコンを使えない貧困層が犠牲になる可能性はあるが。特に老人層。

A君:蚊が媒介する伝染病なども、日本の場合だと、余り問題にはならないでしょう。駆除すれば良いので。大体、蚊に刺されるのが希な国ですから。

B君:食糧供給は、単独で大きな問題。世界的には、降水の分布が変わってしまうことによる影響、すなわち、乾燥地域がますます乾燥し、多雨地域がますます多雨になるという影響は、ある程度見込んでおく必要はあるだろう。これは要注意。

C先生:(2)台風や急激な降雨の影響は、確かに地震よりも、死者の総数は多いのだ。どうも、地震や津波のような瞬間的にインパクトのある災害とちがって、洪水は無視される傾向が高い。

A君:特に、バングラデシュのような低地が多い国では、洪水のリスクは非常に問題だ。しかし、現状はかなり改善されていて、1991年の洪水のように死者13万人といった状況は、もう起きないのではと思いますが。

C先生:しかし、人口が増えすぎるとなんとも言えない。土地が十分でないので、危険なところに居住するから。

B君:先進国でも、博多駅周辺が洪水になったように、急激な降雨への対応が不十分地下構造物の洪水の影響は、これは真剣に対応しておかないと、そのうち、思わぬ被害がでるだろう。地下街が一瞬にして冠水して水死者多数などいう話は、余り嬉しくない。しかし、数100人までの話だろうが。

C先生:(3)の急激な寒冷化の話は、まだまだ予想されなくもない、といったところか。

A君:ヨーロッパ以外には深刻な影響は出ないのではないでしょうか。もちろん、地球レベルの話ではあるのですが。

B君:北欧にとっては、結構深刻な話なのかもしれない。

C先生:食糧供給の問題に行こう。食糧とバイオマスエネルギーが土地を奪い合うということがしばらくは心配ではあるが、少なくとも現時点では、食糧は余っている。しかし、人口の増加とともに、状況は厳しくなる。同時に、エネルギー源としてのバイオマスの重要性が増大するため、農地が圧迫される可能性がある。それに、人口との関係が非常に大きい。

A君:人口爆発が起きるという人が未だに居ます。国連の人口推計で、皆さん中位推計を信用して、2050年に90億人ということが共通認識になっているようなのですが。

C先生:人口推計というものが何をやっているか、しっかりと見極める必要がある。日本の人口予測は、そのうち、出生率が多少回復するという希望的観測が含まれた値。しかし、国連の人口推計だが、現時点での特殊合計出生率などの統計値が若干修正されるものの、現在の数値が未来に渡ってまずまず有効であるとの仮定に基づいて計算されているものに過ぎない。そして、現時点のように全世界的な出生率が低下傾向にあることが明らかな場合には、どうしても補正が追いつかない。そして、低位推計しか当たらないことになる。

A君:出生率の低下状況ですが、確かに、世界的な傾向として低下中。特に、アジア諸国では低下。しかし、アフリカとイスラム圏では疑問です。

B君:それにしても、コンゴ民主共和国、ウガンダのような国の人口が、それほど増加するとは思えない。2050年における人口上位15ヶ国に、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、エチオピア、ウガンダ、エジプトと5ヶ国ものアフリカが入っている。こんな訳は無いと思うのだ。大体、ウガンダのような資源の無い国だと、一体だれがその人口を養うのか。しかも、ウガンダは、2004年の人口が2780万人。これが50年間に5倍弱に増加するという予測なのだ。コンゴ民主共和国も、5580万人から1億7千万人になるという予測だ。

C先生:色々と調べて貰ったら、国連人口予測では、ウガンダが世界中で最高の出生率を維持するような予測になっている。

A君:その理由は、アフリカのしかも最貧国であること、さらに、イスラム系の国であるということ、この両方の要素が共存しているからではないか、ということで。

B君:それにしても、ウガンダの状況を放置したらひどいことになる。やはり、適切な援助をおこなって、出生率の自然減を実現すべきではないか。

C先生:悪くても、現在の下位推計値程度に納まらないと、2070年前後と予測される食糧需要の極大をしのげないのではないか。すなわち、世界人口が80億を超しては駄目のような気がする。日本にも飢餓が起きる可能性が出てくる。もっともそうなっても、「貧乏人は、穀物を食え」、とどこかの首相が発言するようなことになって(歴史的には、「貧乏人は麦を食え」、池田勇人。本意は別のところにあったとの説が有力だが)、昔と違って、メタボリック症候群が解消され、かえって健康になる可能性も無きにしも非ず。

A君:次ぎのリスク。エネルギー価格の上昇で、暖房が十分に行き渡らずに凍死が増加。

B君:世界的に有り得るが、日本でそれは起きないことを望みたい。日本の産業構造では、エネルギーコストの上昇も、余り負の影響がでないような構造に変わりつつあって、現在時点さらに構造を強化しつつある産業もあるので、石油高騰の影響は余り無いと考えて良いのではないだろうか。

C先生:もっとも、高い原油を買えるだけの経済力を維持することは重要だ。必須事項だ。エネルギーだけでなく、食糧も自給も問題。食糧は自給というシナリオも不可能ではないとは思うものの、かなり困難かもしれないので。
 すなわち、2050年をイメージしたとき、日本という国が何で食っているのか。海外からエネルギーを輸入するには、海外に輸出するものが必要だが、何を売っているのか。

A君:もっとも簡単なのが、大企業が海外で稼ぐという方法。そして、稼ぎでエネルギーを買って、日本に輸入する。

B君:金は入るが、日本国内に雇用が無いか。これは社会的な安定性という意味から見て不合格だ。

A君:しかし考えてみたら、そんな企業がエネルギーを買っても、日本列島には入ってこないような気がしてきた。

C先生:2050年、日本が何で食っているか、という問題だが。最近、日本産業が緩やかな劣化を始めているような気がする。ソニーのリチウム電池の話にしても、その例かもしれない。ただ、ソニーの話は、弱点がばれたために、回収をネタにして、将来絶対的に必要な電気自動車用のリチウム電池の開発に関わる技術的ノウハウを盗まれたかもしれない。そんなことを含めて、緩やかな劣化と表現しているのだが。

A君:日本を支えるという気概のない若者の存在。単純ミスを簡単にしてしまう人間の増大。人間的要素は大きいのではないかと思います。教育でしょうかね。やはり。

B君:教育問題は、非常に重要。今からでもがんばるしかないが、内向的なメンタリティーを解消する方向性も持たせないと。

C先生:さて、そろそろまとめに行きたいが、以前のアスベストのようなリスクは、今後は出ないと本当に言えるか。

A君:個人的には「言える」、と思っています。

B君:同感。ナノマテリアルも、リスク研究が平行して行われる時代になった。

C先生:米国のように、すでに見てきた水道水中のヒ素の基準に見られるような、大企業優先的な環境政策が取られる国ではないことも救いかもしれない。日本は、米国の経済だけを見ている。見るだけなら良いが、米国的考え方を導入してしまったことは危険だ。米国の製造業はいずれ航空機産業とソフト産業だけになる。

A君:米国のような企業利益を最優先する社会を目指すと危ないですね。何が起きるか分からない。環境を優先しておいても、企業利益にはそれほど悪影響は無いことが、歴史的に証明されているのですが。

B君:まあ、日本経済新聞に外資系証券会社が人間が書いているようなアメリカ一辺倒の論説は、信用してはいけないということなのかもしれないな。

C先生:となると、残るはテロか。それとも、北朝鮮からのミサイル攻撃か。

A君:北朝鮮からの攻撃を防止するのだ、という核武装派というか武闘派が増加することによるリスク増大の方が危険性が大きいような気がする。

B君:エネルギーの原発依存は増えるだろうが、その事故の確率は、人為的なミスと、テロによる破壊の両方を考えなければならないのだが、まあ、当分は大丈夫か?? 両方ともやや心配。

A君:原発は、ミスに関する限りリスクの絶対値としては、軽水炉と黒鉛炉では違うので、余り大きくは無いです。しかしテロは気持ちが悪い。

C先生:となると、最後の大リスクが、日本という国の財政破綻だろうか。

A君:安倍政権になって、経済成長率を3%にするのだ、といった考え方がどうも主流になっているのが気になりますね。増税軽視政策。

B君:大田経済財政担当相がその推進役か。すべての改革には、経済的な発展が必須といった表現をしている。成長神話という20世紀の遺物を未だに引きずっている。

C先生:むしろ問題にしたいのは、日本国民がメディアのお陰で身につけてしまった納税忌避的な考え方だ。税金だけでなく、公共的な料金について、「馬鹿馬鹿しくて払えません」といった本が売れたりする。日本国民のメンタリティーは、最低でも現在の税金を2倍ぐらいにしないかぎり実現できないような中程度の政府、あるいは大きな政府と言うべきかもしれないが、それを無意識に望んでいる。何かあったときに、警察を頼みにするといった考え方を変えないと、小さな政府には対応できないのだ。

A君:確かに馬鹿馬鹿しくて払えない、とメディアが扇動しているのは気になりますね。実際、国のような組織で、すべての税金が有効に使用されるなどということは幻想に過ぎないのですが。世界中、どこでもそんなことは起きない。

C先生:そのため、政治家が選挙を気にして増税を言い出せない。とりあえず、参議院選挙。それが終われば、当然衆議院選挙。選挙が続くと、増税を言い出せないという馬鹿な構造になっている。

B君:税金関連の馬鹿馬鹿しくてに関連することだが、身近なところでは、NHKがちくったために大幅な時間的損失を招いた環境省などの随意契約批判。税金の本当の意味での有効活用を考えると、随意契約が必須という事業もあるのだ。

A君:大体、NHKが公的に税金に近い金を集めて、それで随意契約をやっていないのか。全部競争入札でやっているのか。他のメディアによるNHKの批判が必要不可欠。

B君:別のメディアがNHK批判をやるべきなのだが、メディア同士は、不戦条約があるから、そんな叩きあいにはめったにならない。以前やっていた朝日とNHKの例は珍しい。

C先生:多少話題がずれた。日本の財政破綻が比較的近い将来に起きそうなことがまずは大きなリスク。そして、長期的には、日本産業が競争力を失うことがさらに決定的に大きなリスクということ。これが結論か。要するに、外部的な環境リスクが最大のリスクということよりも、日本の内部が問題ということで良さそうだ。

 とは言うものの、世の中は、旨くできている。日本政府が財政破綻すれば、インフレになって、政府の借金は問題でなくなる。日本産業が競争力を失えば、食料の国内価格が高くなり、多くの人々が農業を始めるようになって、自給率は上がる。だから、最終的には、なんらかの状況には収まるだろう。問題は、過度的な状況に対応できるか。すなわち、その変化の速度がどぐらいかが重要。その変化の過程で相当ひどい状況が起きるということにも覚悟が必要。個人レベルで色々と考えて対策をすることも不可能だとは思えない。外貨で貯金をしておく、金地金を買い込んでおく、自給自足のために農地を準備しておく、といった方法論が有効なのかもしれない。要するに、どれほど未来を真剣に考えるか、それが重要だということだろう。