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   金属循環の将来展望
   12.16.2012
      小型家電リサイクルPart2 その将来性は?




 小型家電リサイクル法について、神奈川県で講演をしたときの第二部のPPTを掲載します。

 すでに金属は枯渇するか、という記事を書いています。
http://www.yasuienv.net/DepleteMetal.htm
 そこで使った主として原田幸明氏による図は、ここでは省略です。今回は、どちらかというと、12月26日発売予定の著書「地球の破綻 21世紀版成長の限界」の検討会で森口祐一氏が説明された図が中心です。

 今回使用する図は、
http://lebenbaum.art.coocan.jp/PPT/1126SmallApRecyclePart2.ppt
にあるPPTファイルの中にすべてあります。

 以下本論です。



金属資源が不足気味だから価格は上昇している?

 このところ金属価格は上昇ぎみである。上昇をはじめたのは2005年以降で、リーマンショックで価格は低下した。


図1 金属価格推移 その1


図2 金属価格推移 その2

 この価格の動向は、食糧やエネルギーなどと似た状況である。

 金属、食糧、エネルギーと異なる品目の価格がすべて似たような状況になっていることは何を意味するのだろうか。答えの可能性は2種類ある。

 1種類目:金属、食糧、エネルギーの需給が同時にかなり厳しくなっている。具体的には需要が増え、供給が追いつかない状況である。

 2種類目:別の要因があって、それによって品目にかかわらず価格変動が起きている。

 絶対に確実ということではないが、どうやら、2種類目の指摘が真の原因である可能性が強い。それは、過剰流動性の投資資金が世界中にあふれていることが原因である。その額は、1.1京円と言われる。

 日本の貯蓄も1515兆円程度あるが、これは、かなりのものが日本の国債に回っている可能性が高く、その意味では流動性は低い。

 図2でパラジウムとタンタルが異常な値動きをしている。その理由は、パラジウムではロシアからの供給不足、タンタルはその主たる供給国であるコンゴ民主共和国の内乱というか、紛争が原因ではないか、と推測される。

 もしも、日本国内のいわゆる都市鉱山に充分の埋蔵量があるのであれば、それを活用しない手はない。毎年毎年、800億円程度の金属が日本国内で販売される家庭用小型電気製品用として使われている。元となる資源はすべてが輸入品であるが、これが国内の家庭やオフィスに貯留されてるとすれば、相当の金額になっているはずである。


図3 物質材料研究機構にる都市鉱山

 図3は、世界の年間消費量の何年分を賄うだけの都市鉱山の備蓄量があるかを示しているが、金・銀・銅で2.5年から3年弱、鉛、スズ、コバルト、タンタル、バナジウムが2〜2.5年。白金、リチウムはもっと多いという結果になっている。


金属資源が不足する可能性は?

 さて、世界の金属資源が供給が不足することは無いのだろうか。


図4 UNEPの元素パネルによる資源と経済成長

 図4は、過去の経済成長は5回あったとしているが、その5回すべてで、地球は、安価な資源を提供した。これが今後起きる、いやそれも分からないが、起こすことが期待されている6回目の経済成長ではどうなのだろう。UNEPの元素パネルは、確実にYesとは言えないと考えているようだ。

 その一つの理由は、鉱石の品位低下である。


図5 ニッケル及び銅の鉱石品位の推移

 かつて最大10%程度の品位であった鉱石が、今や0.3%といったものが使われている。もっとも0.3%という品位の鉱石でも経済的に成立するのは、露天掘りである場合に限られている。それは、坑道掘りでは、生命の危険性が高すぎて、先進国では受容されないし、コスト的にも見合わないからである。

 最近話題の希土類やレアメタルの需給はどうなのだろうか。


図6 ネオジム、ジスプロシウム

 この図に見られるように、希土類の代表格で、永久磁石用であるこの二つの元素の価格は、このところ落ち着いている。その理由は、日本のユーザが努力して、使用量を減らしたからであり、もう一つの理由は、米国のモリコープなど、かつて中国が安値競争で潰した米国企業が、昨今の価格高騰のお陰て、蘇ったからである。

 安値で潰しても、企業はある意味で不滅なのである。儲かるようになれば、必ず再生してくる。

 加えて、紛争鉱物という問題がある。米国の上場企業は、取り扱う製品に含まれているタンタル、タングステン、金、スズが、コンゴ民主共和国産ではないことを証明しなければならない。


デカップリングとは何か

 話を戻して、資源は今後不足するのだろうか。これまで、この問題をリサイクルで解決しようとしてきたが、今後、リサイクルに加えて行うべきことは、デカップリングである。

 デカップリングとは、これまで経済成長にとってほぼ比例するとされてきた要因、例えば、エネルギー消費量、資源消費量などを、経済成長と切り離すことを意味する。


図7 資源利用とデカップリング

 この図7に見られるように、鉱石・工業鉱物、化石エネルギー、建設用鉱物、バイオマスの使用量の動向と世界のGDPの推移を比べてみると、これら4種の資源採取量の伸びよりもGDPはより早く成長することが分かる。


図8 一人あたりの資源利用量とGDP

 図8は、一人あたりの資源利用量とGDPを比較したものであり、傾向は変わらない。



図9 OECD諸国における資源利用の長期的傾向

 この図9を見ても、GDPの伸びは、物質消費量の伸びを上回っている。



図10 資源利用と所得との関係

 この図10は、対数−対数のグラフである。その傾きが1以下なので、もしも直線のグラフで書けば、所得が高くなるほど、1人あたりの資源利用量は、飽和する傾向があることが分かる。


図11 デカップリングの概念図

 この図の示すように、すでに、環境影響は、経済活動の指標であるGDPが増加すればするほど、減少することを先進国では実現している。日本では、1960年代まで、経済活動を増加させようとすれば、それだけ環境汚染が進むと考えれてきた。しかし、1970年以降、環境汚染は、個人所得が上昇するとは反対に、解消されていった。

 資源消費量の場合、環境汚染のように減少に向かうことはあるのだろうか。さすがに、そのようなことにはならないだろう。しかし、資源消費量が過去に比べてかなり少量であっても、経済は確実に成長ができるという可能性はある。

 経済的な成長も、実は、それ自身が究極の目的であることはない。最終的には、人間の幸福、Well Beingが究極の目的であり、それには、考え方の変革、あるいは、ライフスタイルの変更によって、新たな幸福感を得る可能性があるからである。

 資源消費やエネルギー消費の場合、環境汚染と違って、人間の幸福の増加にしたがって、資源消費がマイナスになるということはない。エネルギー消費量にしても、やはりマイナスになることはない。


ファクターとは何か

 経済的な成長が続けば、資源消費量は減るのではなく、僅かな消費量でも、経済的な成長ができるようになるだけである。これをファクターという言葉で呼ぶ。

 ファクター2とは、これまでの半分の資源消費量で、同じだけの経済成長を実現することを意味し、ファクター5とは、これまでの1/5の資源消費量で経済成長を実現することを言う。


図12 ファクターとイノベーション

 図12はファクター2ぐらいであれば、システムの最適化によって実現が可能であること。ファクター5になると、部分的なシステムの再設計が必要であること、そしてファクター10を実現しようとすれば、システム革新、すなわち新しいシステムを導入せざるをえないことを主張している。

 しかし、すでに本HPで述べたように、2050年には、現在の埋蔵量はおろか、現在の価格では経済的に成り立たない金属資源にまで手を付けざるを得ないことを述べた。
http://www.yasuienv.net/DepleteMetal.htmこれは、バージン資源の価格が上昇することを意味するので、将来、コスト的に見合うリサイクルが増加することと、ファクターを大きくする努力がなされることを意味している。

 すなわち、いくらファクター10が実現できたとしても、やはり資源価格は上昇する。そして、となれば、これまで使った製品の山である都市鉱山の重要性はますます高まる。


鉄にみる特殊性

 金属種によって状況が異なることは無いのか。どう考えても別格が鉄Feである。なぜならば、使用量が格段に多いこと、さらに、地球上にかなり豊富に存在している元素だからである。

 鉄の場合、リサイクルはどうなるのか。いくらでも鉄鉱石が取れれば、そこから作れば良いのではないか。

 現時点で推測できることは、別の要因でリサイクルが決まる可能性が強いことである。それは、鉄が人類の需要を満たしてしまうことと、気候変動対策である。


鉄の究極需要量は?

 日本では、一人あたりの鉄鋼のストックが約10トンである。そんなに持っていないと言うかもしれんないが、鉄橋や高速道路、建築物やスカイツリーなどに使っている鉄まで考えてのことである。地震国でもこのぐらいなので、他の国ではここまでは不要なのではないか。

 2080年ぐらいに地球上の人口は最大値になって、90億人程度というのは、かなり確実な予測値である。一人あたり8トン弱程度の鉄のストックで需要をすべて満たすとすれば、世界全体で700億トンの鉄があれば良いことになる。

 これまで生産した鉄は、現時点で恐らく300〜400億トン程度がまだストックとして残っているのではないか。

 となれば、大体350億トン程度を製造すれば、全人類の需要をほぼ満たすことになる。現在、中国の製鉄能力の急拡大によって、14億トン/年程度の製造能力がある。この能力がフル稼働すれば、25年で新たに鉄を作ることは、非常に高品位の薄板などの用途以外には不要だということになる。


気候変動と鉄の製造 − 鉄鉱石からの鉄とスクラップからの鉄

 新しい鉄鉱石から高炉で銑鉄を作るには、化学的な還元が必要である。そのため、還元剤として炭素を使うのがもっとも効率的で、水素だけを使うプロセスはまだ実用から程遠い。そのためどうしても、二酸化炭素を大量に放出するプロセスになってしまう。

 一方、鉄のスクラップを再度鉄に戻すには、基本的に電炉で溶かすことで、可能である。電気さえあれば良いので、電炉であれば、風力発電、あるいは、太陽光などの自然エネルギーで作った電力を使うことで、二酸化炭素の排出無しに、鉄を作ることができる。

 しかし、電炉で非常に高品位の鉄を作ることができるか、と言われると必ずしも得意技ではなさそうである。

 リサイクルのために必要になるエネルギーとして再生可能エネルギーを使うようになることは、別に鉄に限った話ではない。あらゆるリサイクルにとって必須であり、もしもこれが実現できれば、化石燃料を使ったリサイクルと違って、温室効果ガスの排出を気にする必要がなくなる。すなわち、かなり再生が難しい、すなわち、大量にエネルギーを使わざるをえないような対象も、コスト的に見合う限り、リサイクルが行われるようになる。コストは見合うようになることは、すでに述べているので、将来、金属資源はリサイクル量が増加することが単純に導くことができる。


リサイクルが不要になるケース

 リサイクルが不要になるケースは無いのか。それは有りうる。すでに
http://www.yasuienv.net/DepleteMetal.htmの最後に述べたように、地球上に大量に存在する元素のみで、必要となる物性を実現できるようになれば、わざわざ希少な金属などに依存をする意味がなくなる。

 これが本当に実現するかどうか。それは、現時点の科学技術の状況では、未知である。人類は、未だに可能性を全面的に追求した経験が無いからである。

 となると、最低でも50年間以上の年月を要することになるだろう。というのは、材料関係の場合、なんらかの原理原則が見つかって、それが実現するには、やはり30年程度の時間を要することが多いからである。

 ということは、材料の基本特許を取っても、余り儲かるということは期待できないということである。このような考察から、50年程度以内に、すべての希少金属が不要になるということは全く考えられない。どの希少金属を代替するか、そのターゲットが定まっていない現状を考えると、50年間以内に、汎用元素によってその材料特性が満足されてしまって、希少金属が不要になるということが起きるとしたら、それは、毒性が非常に高い金属で、リサイクルが非常に難しい金属に限られるのではないだろうか。

 その第一が、実は、インジウムではないか。これが細野教授がその代替を見出した理由なのではないだろうか。
http://www.yasuienv.net/DepleteMetal.htm


結論

 2050年程度までの間で、金属の価格が低下するという理由を見出すのは難しい。しかし、同一の機能を発揮するために使用する資源量は、どんどんと少なくなる。価格が2倍になれば、使用量が半分になって、トータルな流通価格の総額は変わらないのではないか。

 このような状況であれば、現在の都市鉱山をすぐに活用する立場で、経済性を判断するのではなく、家庭内に備蓄をしておいてもらって、必要なときにリサイクルを行なって、活用するという戦略が正しいようにも思える。

 少なくとも、2050年に埋蔵量ベースまで使い切る金属に関しては、その金属を使っている使用済み製品の備蓄をなんらかの方法で行うことが正しいように思える。